プロローグ
「はぁ、はぁ、はぁ、――――――くっ」
俺は今、何処かもわからない所にいる。
空は暗い雲に覆われていて、フランスか、イタリアかはよくわからないが、西洋風の街中にいる。
そして今、ついさっきまで走っていたんだが、情けないことに自分の足が限界のようでガクガク震え、ついに“それ”に対する恐怖で腰を抜かしてしまった。
よく漫画やTVで、人はどうしようもない恐怖を目の前にすると、逃げるか、腰を抜かしてその場から動けなくなるかのどちらかだろう。
自分は前者でありたいと思っていたが、そう甘くはなくどうやら後者のようだった。
「ちっ」と、つい舌打ちをしてしまった。今さらながら家族や友人の顔や、思い出が走馬灯のように流れていく。
あーあ、如何してこうなったかな……。
そんなことを考えていると“そいつ”がもう俺のすぐ側まで来ていた。
その時、もう自分は死ぬんだと悟った。すると、いままで有ったはずの恐怖は不思議となくなり、その後に残ったのはそいつ、いや、“自分自身”に抑えようのない怒りが込み上がってきた。
それと同時に、食われているというのに、幸いなことに痛みというものがまるでなく、代わりにどうしようもない笑いが漏れた。
そうして、一人の少年の世界はいとも簡単に崩れていった――――――――。
そう、
世界が崩れるのはたったの一歩でよかった…………。
読んで頂き有難うございます。なにぶん初めてなので、迷惑をかけることが多いとは思いますが、気長に見て頂ければ幸いです。