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兄が届けてくれたのは  作者: くすのき伶
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お兄さん、気づいてましたよ

「え……」





「正確に言うと、僕が "ああこの人は弟の恋愛対象のこと気付いているんだな" と察した、に近いですけど。お兄さん、気づいてました」



タカの呼吸が少し乱れる。



「幼少期の頃の話を昨日してくれましたけど、お兄さんはハルさんを守るだけじゃなくて、いろんなところを見ていたんだと思います」




「そう……だったんですね」




ハルは、自分がゲイであることを兄に話したことはない。離れて暮らすようになったのはハルが中学の頃だったし、当時は自分でも確信を持てないでいたので、そういう話をすることもなかった。



「兄弟って、不思議ですね。言葉を発しなくとも、しぐさだったりちょっとした違和感で何かを感じとるんでしょうね」




タカがまた深呼吸をする。




「あの、タカさんさっきから息が荒れてきてるようですけど……大丈夫ですか?」



「大丈夫です、すみません」



「いや、あの、タカさんちょっと休憩しましょう」

タカが大丈夫です、と言った直後に少しよろけたので、ハルが慌てて言った。


そしてまた深く深呼吸するタカ。




「すみません、ハルさん。しんどくなったら言えとか言っておいて僕が先にへばってきてしまって」

呼吸を乱しながらハハっと笑うタカ。




「え、いえ、それは大丈夫ですけど……」



「移動教室だけじゃなくて、一緒に昼飯行ったり学校帰り駅まで帰ったり。さすがに男同士で一緒にいすぎて、まわりからは変な目でみられていたかもしれません」

ハハっとタカは照れたような笑いをした。



「お兄さんは僕が嫌われている理由も知っているようでしたけど、そういうの全く気にならないとか言ってました」



「子供の頃ずっと僕を近くで見てたから、こういうタイプの人に抵抗なかったんですかね」



「そうですね。ハルさんのお兄さんは、本当に優しいんですよ」


タカが続けて言う。



「僕は孤独にも孤立にも慣れているし、別に高校卒業するまで嫌われたまま1人でいてもいいと思っていました。でもお兄さんが友達になってくれました。なんだか本当の自分を "友達" として見てくれていたようで、嬉しく感じていました」



タカは、その頃ハルの兄の存在が自分の中で大きくなっていったのを思い出していた。


それはとてもあたたかい海に包まれているかのような、そんな感覚に近かった。


一度でも楽しい感覚、幸せな感覚を知ってしまうと、そこから離れたくなくなるということをタカはこの高校生活で知った。



高校2年になるとクラスが別々になり、3年になるとまた同じクラスになった。



クラスが違う2年の頃もハルの兄はタカのクラスによく遊びにきていた。



「大袈裟なこと言うようですけど、お兄さんは僕の高校3年間を守ってくれた、大切な友達です」



「そうだったんですね」



「お兄さんが高校時代に僕にしてくれたことは他にもあるんですけど、先に進んでその後の話をしますね。つ……次は大学に入ってから……になるんですが……」



「えっ、はい」



「すみません、大学以降は……僕たちは」

タカの呼吸がまた大きく乱れる。



「えっタカさん、大丈夫ですか」



「すみません、ハルさん。急で申し訳ないんですけど今日の夜、もう一度会えませんか」


タカが肩で大きく呼吸をしながら言った。



「あっはい。大丈夫ですけど」



「急にすみません、今度は時間を決めましょう。19時あたり、どうでしょう」



時刻は15時をまわっていた。



「わかりました。それよりも体調大丈夫ですか?呼吸がおかしいです。19時に来ます……けど」



「大丈夫です、これいつものことなんです。ほんと、すぐ疲れちゃって……はは。じゃあ19時に。本当にすみません。できれば今日は夕方までこの海を一緒に眺めたかったんですけどね」




こうしてハルとタカは19時にまた会う約束をして、その場を離れた。




宿への帰り道、ハルはタカの辛そうな息づかいが気になっていた。

視えることと何か関係があるのだろうか、兄との過去の話は、タカにとっても辛い話なのかもしれない、などと考えながら宿に戻っていった。


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