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兄が届けてくれたのは  作者: くすのき伶
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兄の写真

次の日、ハルはCDの音源をタカにメールで送った。


「あのCDの音源です。音、ちゃんと入ってますか?」


返事はすぐに来た。


「大丈夫です。ありがとうございます」




それから数日後、ハルのスマホが鳴った。タカからの電話だった。


「ハルさん、いま大丈夫ですか?」


「あっはい。大丈夫です」


「あの音源、ありがとうございました」


「いえ。どうですか?」


「え?」


「あの音楽、聴いてるんですか?」


「ああ、はい。毎日聴いてます」


「毎日……そうですか」


「ほら、何か視えるかもしれないし」


「ああ、そう……ですよね」


「それでね、ハルさん」


「はい」


「さっき、ハルさんにメール送ったんです」


「え?あ、そうなんですね。いま見ます。ちょっと待ってください」


ハルがパソコンを起動し、メールボックスを開く。

ギシっと鳴る椅子の音がタカの耳に入った。


「届いてます?」


「あ、はい!きてます。添付されたメ……」


「送ろうと送ろうと思ってたのに、今頃になってすみません。お兄さんの写真です」


ハルがメールを開くと、大人になったハルの兄・キヨヒロの写真が10枚ほど添付されていた。


タカと2人で写っていたり、サエとタカと3人で写っていたものもあった。


桜の季節だろうか。桜の花びらが地面に降り積もっていた。


「え……これって」


桜の花びら……それは以前、タカがハルに見せたあの映像と少し似ていた。


満面の笑みで写るタカの顔。


ハルは、ずっと見たいと思っていた大人になった兄の顔よりも、タカの笑顔のほうに目がいってしまっていた。


「ハルさん?」


「……」


「あれっ……聞こえる?」


「あ!ああ!すみません、写真ありがとうございます。いやあ、兄、大人の顔してますね、はは」


「かっこいいでしょ?君のお兄さん」


ふふっとタカは笑って言った。


「あは、あ、はい。かっこいいです」


しばらく黙ったまま写真を見るハル。


タカも黙ったまま、ハルが話すのを待っていた。





「タカさん……ほんと、ありがとうございます」


「いえ」


また少しの沈黙が続いたあと、タカが聞いた。



「ハルさん、あれからお母さんと話したこと、思い出したり……は、してない感じですかね?」


「あ、はい。すみません。思い出そうとしたんですけど……何も」


「あっいや、謝らないで下さい。実は僕もこの音楽聴いてたら何かアイデアふってくるかなーって気持ちもあって毎日聴いてたんですが、でも何も」


「……」


「じゃあ、また。連絡します」


「はい……わざわざ、ありがとうございました」



ハルは、兄の写真を一枚いちまいじっと見てから、深く息を吐いた。

ビールを飲もうと冷蔵庫を開けると、6本セットで買ったビールが残り1本になっていた。


「はあ。ビール……買いに行こ」


そう呟いてから、バルコニーのドアを閉めた。




ハルとの電話を終えたタカは、サエにメールを送った。


「サエちゃん、聞きたいことがあるんだけど、ヒロはこの音楽いつから聴いてたの?どのタイミングで聴いてたのかな?サエちゃんが知ってること、全部聞かせてくれる?」





その日の夜、サエからメールが届いた。





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