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兄が届けてくれたのは  作者: くすのき伶
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誰が僕に

タカは、ハルの寝息のような呼吸音を聞いて、気を失ったまま寝てしまったと思い、寝室のベッドへと運んだ。


体をベッドに寝かせ、床に胡座をかき、ハルの耳元で話しかける。


「ねえ、ハルさん」


ハルが全く反応しないのを確認し、タカが続けて言う。


「ハルさん……ちょっと気になることがあるんです」


「僕が視えたものはね、さっきも言ったけど、ハルさんだと思う」


「それで、誰が僕にそれを見せてくれたんだろうって」


静かに寝息をたてるハルの横で、タカが話し続ける。


「意識を失ってる間、ハルさんが僕に見せようとしたのか、あるいは他の人が見せたのか……」


「ねえハルさん。……ハルさんが僕に見せたの?それとも……お兄さん?」


タカがハルの寝顔をじっと見つめて言う。


「僕は……。……ヒロだったら、いいなって……」


「ヒロだったらいいなって思った」


ハルはずっと静かに寝息をたてており、タカの言葉には反応していない。


「ヒロが、ハルさんとこ行けって僕に伝えたくて、それで見せてくれたのなら、僕は嬉しい。だって……」


「だってそれは、僕を頼りにしてくれてるってことでしょ。それに、まだ僕たちの世界に居るってことだから」


「でも僕は、視てるばっかりだよ」


タカの目には、涙が溜まり始めていた。


「声も聞きたいし、話もしたい。ヒロの考えも、知りたい」


はぁーっと大きく息を吐き、今度はハルの兄・キヨヒロに話しかける。


「ヒロ、お前が見せてくれるのは、全部ハルさんに関係のあることばっかだよな。お前は、本当に俺とハルさんを……」


「お前は……」


「どうして俺が視たいと思う時に、見せてくれないんだよ。なあ、ハルさんと俺が合うって……」


「そういうことなのか?それがお前の気持ちなのか?」


タカはベッドに額を押し当て、しばらくハルの静かな呼吸音を聞いていた。


その呼吸音がなぜだかとても心地よく、タカもそのまま眠りについてしまった。





それから数時間が経ち、ハルが目を覚ます。


左手に違和感を感じ、顔を少し起こすと、左手の上にタカの髪が重なっていた。



「あの、タカさん」



タカはハルの呼びかけに反応しない。


流石にこの体勢では起きたときが酷だろう、そう思ったハルは、分厚い毛布を床に敷き、タカの体をゆっくりと倒した。


仰向けになり、少し口が開いたままの、無防備なタカの寝顔は、とても美しかった。


ハルはタカに触れたくなるのを堪え、布団をかける。


このままこの寝顔をずっと見つづけたい、ハルはそう思った。





いつも読んでくださり、ありがとうございます!


ちなみになのですが、タカがハルに対して敬語とタメ口を使ったり使わなかったりしているのは、彼の感情のブレからです。距離を保つために基本は敬語で話しますが、たまに素でタメ口が出ちゃっております。本気モードになったり、兄の話になったときなどなど...


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