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兄が届けてくれたのは  作者: くすのき伶
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大学生の頃のハル

「え?僕……は、普通の学生というか」



タカがハハっと笑う。

「そこを詳しく!」



「あはは。学校生活でそこまで濃い思い出はなくて。バイトの思い出ばかりですね。掛け持ちしてたりしたので」



「お兄さんを探そうとして、と言ってましたよね」



「はい。でもまぁ、遊ぶお金も欲しかったですしね。その頃は車移動でしたし、行動範囲が広がると楽しみも増えてったというか。僕、知らない道とか知らないお店に行くのがすごく好きで」



「へえ、運転好きですか?」



「まあ、そこそこ。タカさんは?」



「僕は苦手で、目が疲れちゃうんですよね」



「ああ……」



「あ、そんなしょっちゅう使っているわけじゃないんです、ただ、視たくないものも視えたりしたら運転は危ないので」



「そう……なんですね」



「はい。いや、でもたいしたことじゃないです」



「ちょっと、そういう話もあとで聞いてみたいです。僕、いままでそういう視えるとか視えないとか、感じるとか感じないとか、人と話したりしてこなかったから」



「はい。僕も、なんだか仲間ができたみたいで嬉しいですよ。全て話終わったらそういうお話しもしましょう」



「はい」



「話が脱線しちゃいましたね。戻しましょうか。知らない道行くのが好きってことは、好奇心旺盛なんですか?ハルさん」



「うーん、どうなんでしょう。でも知らなかったことを知れるのは、嬉しいことが多いです。だからいろんなバイトも経験しましたし。何かを知るって、それがどんなことであっても世界が広がる気がして。選択肢も増える気がして」



その言葉を聞いてタカは、少し複雑な感情になった。


知らなくてもいいこと、知って後悔することも世の中には山のようにあるだろうに、と心の中でつぶやいた。



タカのそんな気持ちを察したのか、ハルが続けて言う。



「タカさんがこうして兄のこと僕に伝えてくれるのも、嬉しいですよ。タカさんだって友達を亡くして辛いでしょうに、僕にこうして会いにきてくれて、わざわざ話してくれて。それが兄に呼ばれたからであっても。兄の意図は僕は分からないですけど」



「あ……」



「好奇心とは違いますけど。兄がもういないってこと知れて正直辛いし、ちょっと喉の奥が痛いです。でも昨日言ったように、ずっとそんな気はしてたので。タカさんが教えてくれて、心のトゲ……?みたいなのが取れたような。って、また分かりにくいこと言ってますね僕」


ははっとハルが悲しい表情で笑う。



タカはそんなハルの表情をチラッと見た。

夜とはいえ、月明かりで表情は少し読み取れた。



「……なら、よかったです。でもハルさん、悲しい感情ってあとから襲ってくるから、あまり無理しないで下さいね。無理するなだなんて、僕が言うとあまり説得力ないですけど」




「わかりました。ありがとうございます」




タカは、ハルは本当に兄に似ているな、と思った。そして小さく深呼吸をした。




「ハルさん、お兄さんが大学の4年に入った頃に、弟の……ハルさんのことを僕に教えてくれたんです。高校のときに"弟がいる"とは言っていましたけど、深い内容までは知らなかったので」



「そうなんですか。兄は僕のことなんて言っていたんですか」



「離れて暮らす弟がいるって。親の離婚で。実はお兄さんもハルさんに会いに行こうとしていました」




「え……」




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