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本当の家族 9





 もちろん、ベティーナの事をそんなに救おうとするは何故なのかと聞かれればカミルが先程言ったことをマリアンネにも滔々と語ろうと思っていた。


 しかしマリアンネはそもそも、フィーネが姉になってくれるのであれば基本的にはどうでもよいので、振られた話題に唐突さを感じながらも”前の事”を思い出してフィーネに話す。


「襲撃って教団の?」

「そうよ」

「精霊王様が怒ってるのは、精霊の魔力を横取りしてるからだよ。あとそれで王族が儲けているから」

「……精霊王様って」

「だから、ローザリンデ様が怒ってるの、それを指摘してあげるの?ベティーナの為に?」

「そ、そうね。そういう予定よ。しかし驚いたわ。どうしてそんなこと知っているの?というか精霊王様ってどういう存在なの?」


 あっけらかんというマリアンネに、フィーネは驚いて矢継ぎ早に質問をする。しかしマリアンネはそんなことより、ベティーナのためにという部分が引っかかったらしく、フィーネの本当に聞きたい部分には答えずに言う。


「それがお姉ちゃんなりの大切にするっていう事?」

「え、ええと、どちらかというかこれは、きっと、そうではないのよ」

「違うんだ」

「うん、そうね。ただ、やったという私が見切りをつけるための行為よ。結果を生まなくても意味を持つ」

「なんか難しいけど、自己満足って事?」

「それに近いわ」

「ふぅん、じゃあ、お姉ちゃんの大切にするってどんなの?ていうか、今更だけど家族として接するってどんなのか知っている?」


 話はすり替わりフィーネは仕方なく、考えた。家族のありかたフィーネの望む形それは、きっと今のベティーナとのかかわり方とは遠く離れている。


「……対等である、関係だと思うわ。大前提としてだけど」

「それから?」

「……そうね、相互的である事も重要ね」

「それで?」

「……そうであったうえで、コミュニケーションをとれるといいと思う」


 その三つがフィーネの思う家族の理想像であり、それがなされている場合にはきっと支えになったり、時には助けにもなりうる関係性な気がした。


「じゃあ、私ともそれをしてくれる?」

「……問題ないわ。多分」


 家族としての接し方という意味で言った事ではあったが、マリアンネには満たせない要素もないし、それほどに、大切に思いあって強いつながりが欲しいのだと望んでいると言われていると思えば拒否する理由もなかった。


「じゃあ、コミュニケーションとろうよ。家族ってどんなことを話すと思う?」

「……」


 今までの概念的な問題なら、フィーネは答えられたが、具体的な話になるとフィーネにだって、どんな風に話題を選んだらいいのかなんて分からなかった。


 幼い日の母親との記憶は薄っすらあるものの、それだってフィーネが考えて話をしていたのではなく一方的に母から話されることを聞いていただけなのだから参考になんてならない。


「多分、話したいことを話すと思うわ」

「じゃあそれで」

「私が話すの?」

「だって、聖職者の話なんてつまらないでしょ」


 マリアンネも別に話したいことがあるわけでもなかった。家族として、姉として、フィーネに存在してほしかっただけで、別に何かに困っているわけでも話し相手がいないわけでもなかった。大司教のおじさんも意外と話の分かる人だし。


 それに対して、フィーネも、なんだか妙だと違和感というか、そんなものを感じていた。


 家族というのを強調するのに、その概念だけが重要視されていて、中身は別に必要なさそうだと思ったのだ。であれば、彼女が求めるものはわからないが、今一番、気になることを聞くことにした。


「じゃあとりあえず、教団の内情というか、その魔力の横取りについてとか、あ、そうだ、テザーリア教団の聖地の事とかはわかる?」

「結局、教団の話? まぁ私のわかる範囲なら話すけど、お姉ちゃんだし」

「そう!助かるわ。それなら私も何かあなたに家族らしいことを返した方がよさそうね」

「! 例えばどんなこと?」

「…………? 一緒に入浴したり、するのだと思うのよ」

「そうなんだ、でも難しいかも、私は体を清めるとき色々手順があるから」

「難儀だわ。では一緒に買い物に行くのはどう?」

「嗜好品は基本的に持たない事になっているから、買い物には行っても買えないわ」


 聖女というのは、もともとテザーリア教団に存在しない役職だ。しかしながら神にその身を捧げたも同然として、暮らすマリアンネの生活は、自由のすくない生活であった。


 マリアンネ自身はさほど気にしていなかったし、この生活も長いので慣れてしまったが、こういう時に不便なのだなとなんとなく思った。


「難しいのね。では、こういうのになってしまうわね」


 ひねり出した家族らしさが通用しなかったフィーネは、本当に一辺倒でマリアンネには悪いと思っていつつも手を伸ばして彼女の頭を撫でた。


「マリーがいてくれて助かってるわ、色々教えてちょうだいね」

「……すごくいい。これが家族なんだね」

「多分そうよ」


 フィーネは可愛くて小さい頭を撫でながら、自信ありげに言った。


 それから二人は、色々話をしながら対策案を作った。お互いに家族らしいとはなんだろうと考えながら、時折それらしい事を話し合いつつ奇妙な姉妹関係を構築していくのだった。






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