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本当の家族 8




 ベティーナの事を見捨てる覚悟をしてほしいと考えているのではないかと、フィーネは仮説をたてた。


 そうであるなら、このタイミングでフィーネに会いに来て、そして血縁だと主張する意味も理解できる。彼女も同じ力と血筋の持ち主、王族に搾取される側だということをフィーネに強調して、協力を効率的に求めるためのマリアンネの行動なのかもしれない。


 ……そうなると、確かに真剣に考えなければならないわ。フィーネ。ベティーナは私とは道をたがえる。それにいつまでたっても寄り添ってはいられないわ。


 こうして、警告しに来てくれる血縁がいてくれる、私にも血の繋がりのある人がいる。本来そういう人間と繋がって大切にしていくものだ。ベティーナとの関係性は、フィーネにとって重要ではない父を同じくしているだけの異母姉妹だ。ほぼ他人といっても差し支えない。


 けれどもそれを分かっていつつも、フィーネは物事はそんなに単純ではないと、考え直す。暫く沈黙したフィーネの事をうかがうマリアンネににっこり微笑んで彼女の問いに真摯に答えようとした。


(読まなくて大丈夫)

「血縁というのはたしかに、重要視する点ね。それは私もその通りだと思う。それに、どうやら、この力は汎用性も高くて私の知らない多くの人から望まれているのだと思う。必ず必要で、それが人生にも関わるのだからより確実な方法でその恩恵を受けたいと多くの人が望んでいるはず、けれども血は途絶えて家はなくなった。でも後継ぎがいない事によって途絶えたと聞いていたのに教団には立派に成長した貴方がいる。つまりは、その上部組織と言い換えても問題のない、王族が何かしらの動きをしてことによる結果だと思うの」


 ペラペラと言葉を紡いで、フィーネは続ける。


(読まなくて大丈夫)

「だから、同じ王族に権利を奪われることになる私と貴方は同じベクトルではなくとも、同じような損失を受けることになるのね。だから、そのことについて共闘して、立ち向かうためには確かにベティーナの存在は貴方にとって障害と感じるかもしれない。愛情というものがあったら、確かに、不安要素だと思うかもしれない。でもそこまで盲目ではないわ、私だって愛し方については考えることができるわ。それに、同じぐらいマリーを大切にしてくれるかという質問だったわよね。それはもちろん、同じ尺度をもってあなたにも接するわ、でも私思うのだけど、大切にするとは一体どういうことかという問題についてよ━━━━

「お姉ちゃん、簡潔に言って」

「…………ベティーナのことは、考えるわ。もちろん貴方のことは同じ血を持つ人間として接する」


 なぜかマリアンネに説明を打ち切られて、簡潔にフィーネは整理して言った。しかし、これでは伝わらないと思うし、正しさに欠けると思うのだが、と少し不安になった。


 マリアンネは、じっとフィーネの事を見据えて、それから、何故か腹に手を当てて、それから口を開く。


「私はベティーナより、大切じゃない?」

「大切の定義にもよるわね。重要視するべきと、考えたらそうするし……それになにより……私は多分、目の前にいる人の事を最重要視するわ。割と情に弱いのよ」

「……」

「だから、また会いに来て、貴方がどんな風に私に関わりたいのか教えて、あ、ハンス達に怪しまれない程度でね」


 それに、人が人を大切にする要因として、血の繋がりや関係性ももちろん大切だが、それらは要素に過ぎず大切にしたいと思うだけの共に過ごした記憶が最も重要だと思う。


 だから、仲良くなりたいと望むのなら、まずは会うことが重要だ。フィーネは持論だけどねと心の中で予防線を張って、マリアンネの反応をうかがった。


「会いに来れば、私を妹にしてくれる?」

「……妹にはできないけれど、家族みたいに大切に貴方に接することは出来ると思うわよ」

「ふぅん。……へー。お姉ちゃんって変わってる、こんなこと急に言われて、私のこと気持ち悪くないの」

「どうして? 何か筋道の通らない理論があったかしら」

「……」


 フィーネは首をかしげて、何か考え違いをしていたかと考えを巡らす。


 そんな彼女を見て、マリアンネは、自分がいかに非常識で、多くの場合に理解されない要望を言っているのかわかっていたので、当たり前のようにそう反応する従妹の姉を理屈っぽいのに、非常識だと言ったりははしないのだな、と不思議に思った。


 それはそれで好都合であり、望んでいたことであるのだが、こうもあっさり受け入れられると、その後にこのマリアンネの事を大切にしてくれると宣言してくれた彼女に対する要望も特に思い浮かばなくて、出された華やかなお菓子を口にして「……そんなことなかった」とぽつりと言うのだった。


「そうよね。でもこうして来てくれて早速で悪いんだけど、なにか魔物の襲撃の原因になっていそうなこと知らない? 実はもう後ろ盾は手に入れることは出来ていて、後はそこに頼るだけなんだけれど、やっぱりベティーナの為に出来る事をやりたくて」


 フィーネは最初から今まで、マリアンネがフィーネの状況を伝えてこの状況を打破するために、今までの質問ややり取りがあったのだと考えていたから当たり前にそんな話題を振った。





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