腹が立たない間抜け 5
…………あ、喋りすぎた。
そう考えて、きゅっと口を噤む。だってフィーネにとっては、人を分析するというのは、好意を示す最大の行為であり、それに、長らくそうして、ハンスのことを理解しようと、ひたすらに分析を繰り返していたのだ。
それが、外に出て、興味深い性格の人と話をできる機会ともなると暴走するのは当たり前の事だった。
「……」
「……」
フィーネはとても気まずくなりながら、な、なにかフォローを、とぐるぐると思考を回したが、上手い言い訳が思い浮かばない。どうあっても墓穴を掘るような気がしてならない。
……じょ、冗談って言っても、駄目かしら……。
ふと、また視線を逸らして、言い訳も言わない姿に、ロジーネはなんとなく彼女が幼く見えて、ふっと思わず声を漏らして笑った。
「……お友達にはなってくれないという事ですか?」
「! い、いいえ! なりたい! 私、その、ごめんなさい、変な性格をしているのは私の方で、よくフィアンセを怒らせているし、偏屈だと言われるし、最近は自重していたのだけど! 今度はつまらないって言われて!」
ロジーネが怒ってない事を少しでも示せば、すぐにフィーネは、言い訳を重ねてきて、そんなところまで小さな弟や妹とそっくりで、こんなに理論的な事をいう子なのに、なんて、面白い性格をしているのだろうとさらにおかしく思った。
「ベティーナにもよく、揶揄われるのよ。もっとイマドキの話題についていけるようになりたいのだけど、ほら、勉強した次の年には、そんな流行もおわっているでしょう?」
「あら、年寄りのようなことを言いますね」
「そ、そう?イマドキな子はそう思わないのかしら、彼女たちにとっての一年って長いそうだものね、たしかそういう論文もあったはず」
そう焦りながらしどろもどろにいう、フィーネにロジーネは、貴方は自分を何歳だと思っているの?と聞いてしまいたくなったが、「人の年齢と人の感じる時間の長さについての相関性は、それなりに感じている人の多い現象で━━━━と聞いてもいない話を話し始める彼女の声を聴きながら、もう一度、噴水に集まっている令嬢たちの方へと視線を向けた。
先ほどまでは、大きな化け物のように醜く見えたのに、個々に見ていけばば、大概が楽しそうにしていても、ほんの数人、噂話が得意ではなさそうな子もいて、フィーネの言ったことも一理あると納得した。
この場所で生きていかなければならなないのなら、居心地の良い場所に作り替える努力をしてみても損はない。
「ねえ、フィーネ。私が個別に関係を持つのなら、どの子がいいと思いますか?」
「……、……そうね」
それから、フィーネとロジーネはあの子はこんな子だろう、きっとどんな性格だ、と令嬢たちの花園の観察をそれなりに楽しんで、お茶会を満喫した。
それは、お茶会としては少々、独特な楽しみ方ではあったので、楽しみは人それぞれ……にしても、この二人はみょうちきりんだなと、姿を消したまま一連の流れを盗み見ていたカミルは思いつつも彼女たちの話に耳を傾けた。