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崇高な愛 12




「ベティーナ様!先程の続きを見せてくださいませ!」

「ごきげんよう、ベティーナ様のお姉さま」


 ガゼボ近くはある程度開けた場所があって、それなりの大きさの噴水がある。噴水の真ん中には女性の持った水瓶から水が流れ出るオブジェが噴水らしく鎮座している。


 その噴水の淵に腰かけていた令嬢のうちの二人が、ベティーナに声を掛けてそしてついでとばかりにフィーネにも反応を示した。


 フィーネの名前を呼ばずにベティーナのお姉さま言ったのは、故意だろうと思いつつフィーネは柔和な笑みを浮かべて「ごきげんよう」と返し軽くお辞儀をした。


 魔法の続きを見せてとお願いされたベティーナは、まんざらでもないような笑みを浮かべて噴水の方へと移動していく。


 フィーネはそれについていこうか少し迷って、辺りを見回した。噴水のあたりにいるベティーナは魔法を使い始めて、わっとそこにいる数人が沸く。それをガゼボでお茶をしながら見ているのは、主催者であるロジーネと彼女と話をしている令嬢たちだ。


 それ以外には、開けているところに置いてあるパラソルの下で、ビュッフェスタイルに並んでいるお茶菓子を楽しんでいる令嬢が数人。


 せっかくここまできたのだから、ロジーネに話しかけることが一番優先だろうと思うが、フィーネはつまらないと陰口を言われたことが頭をよぎって、退屈させてしまうくらいなら、ロジーネからの評価は少し無礼で凡庸な令嬢と思われていた方がいいだろうと思い、ベティーナの方へと足を向ける。


 ベティーナは、噴水の水に手をかざし、宙に浮かせてくるくると円を描かせて、勝気な笑顔を見せた。


「すごいですわ!ベティーナ様」

「やはり魔術師の道に進むべきよ」

「そう? こんなの低級な魔法よ誰にだってできるわ」


 もてはやす二人の令嬢に、ベティーナは余裕の笑みを浮かべている。しかし、その魔法を長く持たせることはできないのかパシャンと音を立てて水が落ちる。


 ……たしかに、四元素で構成される魔法のうちの一つの素体を操れるだけでも、貴族としては上出来、それに修練なしにはできないことだものね。


 純粋に平民の彼女がここまでできるようになるには、それなりに努力が必要だったはずであるのでフィーネも心の中で称賛した。それに、血筋のせいではあるが魔法が一切使えないフィーネにとっては、魔法を少しでも使えるというのは、とてもうらやましい事だった。


 しかし、ふと違和感があって、良く知った妹のことをじっと見る。


 彼女は力むとき自らの服の裾を強く握る癖がある。それは小さいころから変わらず泣くときも怒っているときも同じ仕草をするのだ。それなのに今は片手を服の裾に隠して拳を握っていて、他の令嬢たちの隣に座る。


 そして令嬢たちには見えない位置で、何かを噴水の中に落とした。


 …………ベティ、ズルしてまで称賛されたかったのね……。


 それが何かは、見ずともフィーネはわかって、妹に若干引いた。


 魔物を狩ることによって採れる、魔法の宿ったアイテムだろう。それなら平民でも使うことができるし、ベティーナは金にものを言わせてズルをしていただけで、努力はしていないのだった。




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