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崇高な愛 8




 フィーネをいくらやる気にさせるためだとしても、それは流石にシャレにならない。というか、黒魔法も白魔法もどちらも高等魔法であり、相当な才能と魔力がなければ操れないし、簡単に相手に干渉して行動を操ろうなどと考えるのも、やろうとするのも、いけない事だ。


 だから、フィーネは悪ふざけに怒ったつもりでそう言った。


 しかし、そんなフィーネの言葉にカミルも真剣でそして、少しだけ傷ついたような顔をして口を開く。


『冗談じゃないよ。馬鹿。僕は、君を助けたいの、君が幸せになるところが見たいの、そのためなら、魔法だって使うしそれに……』

 

 それに……の後の言葉をカミルは飲み込んだ。それはフィーネが知る必要がない事で、言わなくてもいい事だった。


『とにかく、君を助けなきゃ、それなのに、なんでそんなに怒るんだよ!!』

「……だって、それはやっちゃいけないでしょう?カミル……?」

『駄目なことなんてないよ。前の君もそうだった、君は、馬鹿だよ。相手は、君の事殺しにかかってきてるのに、手段を選ぶから!!』


 今はそんな話をしているのではなく常識として、良くないという話をしようとしていたのに、カミルは前のフィーネのことも絡めて、切羽詰まったように苦しそうに言う。


 しかしカミルの指摘はあながち見当違いでもなく、フィーネには、手段を選ばない姑息さが足りなかったから、ベティーナとハンスの手から逃れることができなかったのも事実だった。


 ……そうだとしても、私は他人の意思に反して害することはしてはいけないと思うし、黒魔法だって、使わないに越したことは無いと思う。


 黒魔法は、便利で、確かに物事を自分の思い通りにするのに持ってこいの力だ。けれども、そんな他人を思い通りにする力なんて、歯止めが利かなくなることが目に見えているし、実際に有名な黒魔法の使い手はことごとく、自死を選んでいる。


 そういう、根拠があったうえでフィーネはカミルをいさめようとしたのだが、カミルの中にはそれではフィーネは生きられないという、こちらもまた前のフィーネがそうであったという根拠があった。


 これでは、主張がぶつかる。それは理解できて、同時に今だけその衝突を回避する方法も頭に浮かんだ。


 大きく息を吸って、フィーネはふっと短く息を吐いた。


「……感情的になってごめんなさい。カミル」

『謝ってほしいんじゃない、君に考えを改めてほしいだけ』

「ええ。……行くわ。侯爵邸にいく、今回はそれでいい?」


 フィーネがそう言うと、カミルは少し難しい顔をして、それから渋々と頷いた。その反応にフィーネは安堵して、苦い表情をしているカミルのそばに寄って、両手で抱きしめた。


 包み込んでみればやっぱりフィーネより一回りほど小さく、口論をしたからか、カミルの体は少し緊張していて、年相応に彼も傷つきやすいのだと理解した。


「カミルは白魔法も使っているのよね?」

『なんだよ、止めないよ。君って何考えてるか分かりづらいんだ』


 確証はなかったがあえてそう聞くと、カミルは簡単にそう答えてやっぱりと思う。フィーネが怒っていることは大概の場合、伝わりづらい、それなのにカミルはフィーネの感情を良く読み取り、理解してくれる。


 そんな芸当をできるのはやっぱり魔法の補助があったおかげなのだ。




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