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けじめ 6






「魔物化した子爵の息子と口論しながら郷土料理を楽しんできたって、それで結局、転変も治してきたんでしょ?」

「郷土料理は絶対に食べたかったんだろうね……えへ、んへへっ。駄目だ。お姉ちゃんおしろい」


 確かに、側仕えたちもその話を聞いているときに、その場に居た。そして、フィーネがその話を心底真面目に話しているのがなんともアンバランスで面白かったのを三人とも覚えている。


「でも、あれからまだそれほど時間が経ってないのに、もう半分以上領地を回ったって、本当に過労が心配だよ」

「それはたしかに……でもお姉ちゃんにはアルノーがいるよ」

「そーだけどさー。……あ、そうそうそれに、アルノーだって忙しくて、フィーネと一緒にいるけど全然仲が進展してるように思えないもん、駄目だよね仕事ばっかりにかまけてさ」


 それも、まあおおむね賛成できる意見であり、フィーネはあの若さにして多大なる仕事量を楽しみつつもこなしている。


 そんな彼女に文句ひとつ言わずについて回っている、アルノーは、誰がどうみてもフィーネに振り回されていて、あれが惚れた弱みという物かと思わずにはいられない。


「そうだね、だってあの二人が恋人らしくしているところ見たことがないもん。きっとお姉ちゃんが忙しいからだね」

「そうそう、いつになったら籍入れるんだか。結婚だけでも先にすればいいのに」

「うんうん、えへへ、なんかもどかしいね。他人の恋路って」

「ねー、恋愛結婚なんだからもっと幸せそうにしてほしいよ」


 カミルとマリアンネはそんな風に言って、うんうんと二人はホットミルクを飲みながら、そういうが、側仕えたちは、そういう自分たちはどういうつもりなのかと問いただしたくなる気持ちが、芽生えて仕方がない。


 側仕えたちは三人で視線を交わして、もう少し準備ができていない風を装っておこう!と意思疎通をする。そうすると、カミルはあ、と思い出したように、マリアンネを見た。


 きれいに切りそろえられたマリアンネの可愛らしいミルクティー色の髪がさらりと揺れて、小さく小首をかしげる。


「そうだ、マリー。一緒にお風呂入ろうよ」

「……、……な、なんで?」

「だって僕ら家族になるでしょ、だからそれっぽいことしようと思って……て、嬉しくない?」


 従者たちは心の中で……カミル様ぁぁ!!と荒れ狂った。ギンッと瞳を鋭くさせて、従者たちはカミルの姿を覗き見た。しかしながらその瞳は純粋であり、男の下卑た欲望などみじんも感じさせない純朴な笑みだった。


 カミルとマリアンネだって、ほぼほぼ恋愛結婚のようなもので二人がお互いを好きあっているのはいるのは、城中の誰もが知っている事実。しかし、仲がよすぎるあまりに恋愛的な意味での進展をあまりせず、やきもきしているのは従者全員の悩みだった。


 特にカミルは、何故だかマリアンネがどれほど触れたり一緒に眠ったりとアピールしても、仕方ないなぁとニコニコしているだけなのだ。


 マリアンネの方は多少なりとも男女のそれについては知識があり、子供のようなハグをしたり手をつないだりという事の先にあるものについて理解はしていた、そして意識もしているように思う。


 しかし、どうだろうこれは恋愛的な発展とみていいのか。しかしながらそうでもなければ、一緒に入浴などしないだろう。


 そういうつもりでは無いのならマリアンネは怒ってもいい案件である。怒って少しはそういう事について学ぶべきだといってもいい!!そう従者たちは考えているがその気持ちはマリアンネに伝わらない。


「え、ええ~?えへへ、いいよ。嬉しい」

「良かった。そう言えば僕、君とお風呂するの初めてだ」

「そうだねぇ、いつもは私しか脱いでなかったもんね」


 ……!!??


 カミルとマリアンネはやり直し前の、手酷く暴力を振るわれたマリアンネの体を綺麗にして、できるだけ清潔になるようにしていた時の話をしていたが、そんな事情を知らない従者たちの動きが流石に止まった。


「うん、そもそも汚れないしね。それに、僕さ実は水に浸かると変なことになるんだよ」

「変って?確かにカミルが水に濡れてるところ見たことなかったね」

「うん……水に入るとさ、こう、不自然に水をはじいちゃうんだよね」

「ええ~?んへへ、それはいっかい見てみたいっ」

「やだよー恥ずかしいじゃんっ」


 赤面しながらそういう我らが国王は、水をはじく成分でできているらしくそしてそれが恥ずかしいらしい。


 もはや意味が分からなかったが、もう何も考えず側仕えたちは支度を済ませて、今日も一緒に眠る仲睦まじい二人の事を菩薩のような表情で見治めた。今日も今日とて平和である。


 のちに、混浴したカミルが流石に意識し始めて、やきもきする城の雰囲気から甘酸っぱい雰囲気にがらりと変わり貴族社会の間にも空前の恋愛ブームが到来したのはまた別のお話である。






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