無自覚鈍感瞬足系主人公の楽々スローライフ、あれ、また俺なんかやっちゃいました?俺の瞬足がおかしいって、それって弱すぎるってことだよな?
作者は少しサイコパスってよく言われるから(なんでだろ)過激な表現に注意した方がいいかもです!
主人公が無双するの楽しんでください!
レディースアンドジェントルメン(←いやかっこつけんな!笑笑)!いよいよ物語のはじまりです!
佐藤瞬足と呼ばれていたその男はいつも瞬足をはいていた、信じられないかもしれないが、ほんとうなのだ。瞬足という名前は本名で、あだ名ではないという。彼は妻と彼らの子供と暮らしているらしく、家からはいつも子供の元気な声が聞こえた。僕はいつもその子供の声を聴くと胸を締め付けるような気持ちになった。子供のときの生きることに対する根拠のない楽しさが失われてしまったことを思い出すからかもしれない。なぜ彼が瞬足を履いていたのか、わからないまま彼はどこかへ行ってしまった。そこには何か儀式的理由があったのかもしれないし、あるいは足がはやくなりたいという子供じみた考えを捨てられないでいたのかもしれない。海辺で拾ったウィスキーのボトルキャップをいまだに捨てられずにいる僕のように。
彼と僕の最初の出会いは公園で、売れない画家が描いた絵のようなピンク色の空だった。彼は公園のベンチに座っていて、どこか遠くの方に目をやっていた。何かを思い出そうとしているように見えた。彼の履いている瞬足だけが美しい曲の中の不協和音のように場違いに思えた。その姿にはまるで壊れた洗濯機のようなある種の存在感を感じさせられた。僕はその時ひどく疲れていてので(なんでかはどうしても思い出せない、あるいは思い出したくないのかもしれない)彼の隣に腰かけ、彼にならい空を眺めることにした。公園は秋の夕暮れの爽やかな香りがした。鉄塔に設置されたスピーカーから五時半を告げる童謡のメロディが流れた。それは僕に幼少期の幸せな記憶の断片を思い出させた。
「なんで、瞬足を履いているんですか?」
と、僕は尋ねた。なぜ初対面の彼と話そうと思ったのか、ノスタルジックな雰囲気が僕にそうさせたのかもしれなし、あるいは彼が瞬足を履いているということが僕を大きく困惑させたのかもしれない。彼は少し驚いたようにこちらを見た。そこにはどこか醒めたような趣きがあった。
「ああ、妻にもらったんですよ」
彼は瞬足を眺めながら無機質な声で答えた。僕はなにも答えられなかった。日本語が学びたての外国語であるかのように、言葉たちが自分の手の届かないところに行ってしまった感覚になった。
「一番大切なものをなくしたら、なくしてないように演じるしかないのです、たとえ壊れそうになっても」
と、彼は腕につけた妖怪ウォッチに目をやり、言った。
秋風が木々を揺らす音が聞こえた。
僕は彼の言っていることが理解できなかったが、そこには深い悲しみのような、海の真ん中に一人で取り残されたような感情を僕に与えた。僕は彼になんて声をかければよかったのだろうか。僕はただ黙って彼の瞬足を眺めることしかできなかった。しばらく二人で瞬足を見つめたまま時間が過ぎた。僕は汚い字で瞬足に書かれた俊太郎という文字を検分するように眺めていた。それは3分程度だったのかもしれないし、1時間もそうやって過ごしていたのかもしれない。まるで時間がねじれてしまったようだった。彼はずっと黙っていた。やはりそこには壊れた洗濯機のような存在感があるのを僕は確かめた。僕はやりようのない気持ちと共に立ち上がり、帰路に着いた。僕はずっと彼のことを考えながらその日を過ごした。
「おかえりー!瞬太郎ちゃん!」
佐藤瞬足がドアを開けると同時に彼の妻の元気な声が聞こえる。
「ただいま!ママ!」
瞬足は虚な目を浮かべながら子供のような声で言った。
口だけが異様に笑っていた。
瞬足は楽しそうに3DSで遊んでいる。
ふと、彼は窓の外に張り付いた空に目をやった。
窓からはまるで、何かを切り裂こうとしているような尖った三日月が見えた。
フクロウの鳴く声がこだましていた。
瞬足の視界が不透明な光に満たされてゆく。
その向こうに微かに使い込まれた3DSが見えた。
「もう壊れてしまったんだ、この家は」
彼は思い大きな声で笑った。その笑い声はどこか金属的な響きを持っている。
もう終わりにしよう、そう瞬足は決意し、三日月のような鋭利なナイフを手にした。
読んでくれてありがとな!(←いきなりタメ口笑笑笑笑)
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