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第2話 メイド試験

 成人の祝福は、15才となっている。祝福は、地元でするのが慣例になっているので15才の誕生日前の年に卒業となる。

 入学は8才の9月1日、全寮制で召使の数は貴族の格式により決まる、卒業は、14才の9月末日。6年間、王都の王立貴族学園で過ごす事になる。


 ウーバは、乳母としての仕事がなくなり、二人の面倒を見るメイドとして働いていた。


 双子が5才になった春、ジャックから部屋に来るように言われる。中には、老夫婦がいて、部屋隅の机で作業をしていた。

 「ウーバ、脱げ。」

 ウーバは、躊躇せず一気に脱いでしまう。

 「座って、手を出せ。」

 老婆が椅子を出し、ジャックはサイドテーブルを引き寄せる。腕をテーブルに。

 掌と肘の間をアルコールで消毒すると、剣山が付いた刷毛で小豆大の丸い円を描く。


 終わると。

 「次は、ここに座れ。」

 サイドテーブルを示す。

 大人しく座ると、右太ももの内側に近づく老爺。

 「痛いだろうが動かないでくれ。」

 剣山で出来た刷毛で刺し「ドラゴン」の絵柄を描いていく。


 終わると、今度は反対の太ももの内側に近づく老婆。胴の長いドラゴンを描いていく。


 「服を着ていい、そこに座れ。」

 ジャックの正面、奥で老夫婦が見ている。

 「お前の修業は終わりだ。それは、終了の印になる。お前は、俺達の仲間として認めよう。」

 老夫婦は、笑顔で頷いている。


 「では、最初の刺青だが、『闇ギルド』の構成員の印となる。闇ギルドは、褒賞しだいで誰でも暗殺するし、どんな機密でも持ち出してくる。ただし、そんな仕事は半端な金では無いがな。もし、お前を知らない闇ギルドが、誰から印をもらった?と言ったら俺の名前を出せ。」

 頷くウーバを見ながら、右の太ももを指さして。

 「2つのドラゴンの刺青。右のドラゴンは西のドラゴンと言う、まあ、慣れ親しんだドラゴンだ。普通にドラゴンでいい。左のドラゴンは、東のドラゴンと言う。別名は、龍と言う。

 ドラゴンは、力を表す。対して龍は、知識・情報を表す。それぞれ、自分が得意な方を持っている。このどちらかを持っているのは、後ろの庭師が作った組織だ。

 お前が困った時、命がけで助けてくれる。報酬は不要だ。逆に、ドラゴンから助けて欲しいと言われた時、命を惜しまないで助けてやって欲しい。

 今までは、俺の為の組織だったが、お前が仲間になった事で方針を変える。組織は、双子の命により動く。もし判断に困ったら、双子の意に沿うかで動け。」

 「分かりました。」

 「明日の朝、門前に行商人の馬車が止まる。お前は、闇ギルドについて・行商人の組織と仕組み・商売・貴族との付き合いを覚える為、全国を渡り歩く。

 終了は、メイド試験の前までとする。それまで、双子とは会えない。いまのうちに済ましておけ。」


 次の日の朝、ユーノの家から遠ざかる一台の荷馬車があった。


 ・・・・・・・・


 双子8才の7月終わりの日、領主屋敷から使いがやってきた。

 「メイド試験を、8月5日朝8時から行う。」

 ただそれだけを言うと、戻って行った。

 しばらくすると、老夫婦の所に行商人がやってきて、ひと言二言、話をすると町へと戻って行った。


 8月5日朝7時30分、一台の馬車が領主屋敷の門前に止まった。女の子のメイドが、一人降りてくると、門番は通用の小さい門を開け中にいれる。

 女の子は、案内も無しに屋敷へと向かう。幾度か通った道らしく、迷うことなく玄関へと歩いていく。


 ドアのノックの後、開いたホールの左右に控えているのは、メイド達と執事達。出て来たメイド長が挨拶をする。

 「おはようございます。これから町の有志によるパーティーが始まります。あなたには、手伝いをしてもらいます。」

 手を軽く挙げると一人のメイドが、一歩前に出てくる。

 「彼女の指示でお願いいたします。では、パーティーの準備を始めてください。」


 パーティーは、庭での立食パーティーで始まった。遅い朝食となるので、軽い食事と飲み物がメインになる。時間は決まっていないようで、領主との顔合わせの意味が大きいらしい。

 途中、グラスが割れたり。料理のテーブルが倒れたりと予期せぬトラブルが起きる。メイドも執事もそんな時は、付近に誰もいない。ウーバが処理をする事になる。

 誰かが飲み物を、お客様にかけたり、手配した帰りの馬車が来なかったりと、トラブルはパーティーの間続いた。

 お昼の昼食が済むとパーティーは、お開きとなる。後片付けを終えると、一室に呼ばれる。


 「メイド長?」

 「よろしいです。」

 「執事長?」

 「同じく。」

 軽く会釈をすると、二人は部屋から出て行った。

 「君は、合格した。では、次の試験の準備をしよう。1時間後に、裏の修練場に来たまえ。」

 領主がそう言えと、ウーバは部屋を出て行く。

 軽く食事をもらい、次の試験の準備にかかるのだ。


 修練場には、見知らぬ人達が待っていた。

 「私は、騎士団長を務めている。領主様は、先ほどのパーティーの挨拶に出かけられた。しかし、上では、前領主様が見ておられる。」

 騎士団長の視線の先、窓辺に人影が見える。

 「試験は、3つ。最初は、その服装での護衛適正。相手は、私の弟子。彼。」

 示す先に、若い男が頭を下げた。

 「お嬢様役。」

 そう言うと、若い男の隣の女の子が一歩前に出る。

 「の後方を歩いてもらう。そこを襲われた時の対応を見る。殺気をだして向かうから、護衛するだけでいい。時間は1分、これ以上だと人が集まってくるという設定だ。」


 修練場の端に移動する、林の脇を歩くので襲撃者が何処から出てくるのか分からない。

 1/4程で、見知らぬ男が林から前に出てくる、しかし、殺気を帯びていない。そのまま、お嬢様の後方を歩いて付いていく。

 1/2程行くと、斜め前方から足早に向かっている覆面男。明らかに殺気を帯びている。

 素早く腰に手を入れ2丁のナイフを取り出す。男は、柄に手を掛け一気に抜き取り、剣をそのまま振りぬく。お嬢様の前方に移動して、襲撃者の盾になる。

 『キーン』

 金属同士のぶつかる音。ウーバの持ってるナイフは、片刃になっていて手元に軽い返しが付いている。ナイフを滑らして指が切り落とれない様にしてある。

 刃の無い方で、剣に当て方向をずらしていく。次の動作がしずらいのか、男は一歩後方に下がると、剣を持ち替え上段に構える。

 ユーバは、腕を交差させ、後方にお嬢様がいる位置取り。

 男は、腰をかがめるとそのまま前方に走りこむ。背の低いウーバを狙い、剣を振り落とすのだ。

 ユーバは、カツカツとつま先で土をほじる。間合いを見て、ガッ、土を蹴り上げる。

 顔に当たり躊躇する男。その一瞬、腰を落とし前方に飛ぶ、間合いを詰めると軸足を前につき、回転しながら体重を蹴る足に移動させ、脇腹を蹴り上げる。

 ザッ・・。たまらず体勢を崩すが、騎士団で鍛えているのだろう。転ぶ事無く、よろけながら剣を持ち替える。


 「そこまで。合格だ。」

 騎士団長の声。男は、少し恥ずかしいのかうつむき気味に戻って行く。

 「次は、戦闘試験。最初は、対魔法戦。着替えをするなら早くしてくれ。」


 ウーバは、メイド服、腰に手を当て紐?を引き抜く。サッ、舞台の瞬間着替えを思わせる様にメイド服が地面に落ちる。

 腕と顔以外は真っ黒の黒装束。腹に手を入れ覆面と手袋を取り出し装備すると、真っ黒な人体が出来上がる。メイド服を軽くたたみ、騎士団長へと持っていく。

 「これは預かっておく。では、こちらの魔法使いの紹介だ。」

 さっきのお嬢様役が、出てくる。杖の頭に幾枚ものプレートが音もなく、ひらひらと舞っている。

 「模擬戦は、3分。ただし、相手に致命傷を負わせる直前に止めろ。その段階で終了とする。」

 魔法で、直前に止める?無茶振りしている。

 「はじめ。」

 魔法使いは、杖で地面を叩く。無詠唱で土壁がせり上がってくる。もう終わりかと思われた時、土壁が霧散、大量の土が舞う。それは、陽動・・杖をユーバに向け、火球を発射。彼女の火球は、粘性火球。一旦付着すれば、なかなか消えない炎が服を燃やす。消そうともがく、その間に次の魔法が襲い掛かる。

 しかし、火球は、半透明な壁にぶつかり霧散する。

 「障壁シールド持ちなの。」

 魔法使いは、土壁を再度、複数構築し隣の壁に移動する。壁越しにユーバの位置を確認しようとするが・・いない?

 ガラーン。杖を蹴飛ばされ、腕を後ろに組み敷かれる。ナイフは、首元にあった。

 「そこまで、合格だ。」


 「次は、戦闘実戦だが、剣はどうする?必要なら貸し出すが。」

 「不要です。」

 ユーバは、ナイフに魔素をまとわりつかせる。一時的なショートソードが2本で出来た。光無し某映画のライトセーバーだが、実剣と何度も打ち合うほど、強度がある訳ではない。短期決戦用の武器だ。


 「ほお、面白い事をする。相手は、私の愛弟子だ。」

 それまで、立ってみていた男が出てくる。中肉中背、ただし、消え抜かれた体は、無駄な筋肉がない。

 背負っていた、大型のロングソードを抜き、ユーバへと歩いて来る。


 「開始。」

 程よい間合いになった所で開始の合図。

 ユーバは、腰を下げ、足指先に魔素を貯める。スタートダッシュの指先で魔素が弾け、体が弾丸と化す、そのまま右手セーバーを振り上げると、勢いで振り下ろすが・・ガッ・・鈍い音で止められたのが分かる。右手は、ロングソードと一緒に止まっているで、体だけ突き進む。クルッ、猫が身をひるがえす様に体を変えると、両足で胸板を蹴る。もんどりうって倒れるかと思いきや、後方に片足を伸ばし踏みとどまる。

 ユーバは、両足で着地するが、姿勢は死に体。

 男は、それを逃さず、横になっている剣をそのまま横払いのまま間合いを詰める。

 セーバーで受けても勢いで飛ばされる。ユーバは、再度足に魔素を集め、瞬間飛び上がる。横殴りの剣を図らずもかわし、剣先をやり過ごし着地、まだ死に体のままになっている。

 男は、剣の勢いを更に増し、そのまま回転して切り裂こうとする。

 セーバーで受ける暇は出来たが、受ければ体勢が壊される。さればと、わずかの時間に賭け、地上に触れよと体を低くしダッシュ。男の足首にタックルする。

 男は、慌てもしない。不動のまま剣を下に流す、そのまま勢いでユーバを斬ろうとする。

 男の足首のユーバ、もとより男が倒れるとは思ってもいない。そのまま足にしがみついてしまう。自分に向けた剣は無意識に威力が落ちる。ユーバは体を斬らせるが致命傷にはならない。再度、剣を振り、ユーバを斬ろうとするが、ユーバは上に軽くジャンプしてしがみつく。


 「そこまで、・・合格だ。」

 ユーバのセーバーは、魔素を解き、ナイフに戻っていた。首元にナイフ。


 「さすが、ジャックの弟子だけあるな。ナイフの扱いが上手い。」

 「いえ、私は孫弟子になります。」

 「ほう。」


 それから、久しぶりにあった子供達と再会を喜ぶ暇も無く、学園へ行く準備に明け暮れる日々になる。


               あなたに、幸おおからんことを

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