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TGJC mission file 3:target<十四人目の執行官> 2

がんばります

 ユウキを囲う護衛達はアサルトライフルを構える。

「安全装置の解除はお済ですか?」

 ユウキはハンドガンを下げ、腰から閃光弾を取り出し上部に投げる。

 すかさずグラスをかけて中心から脱出する。

「うぁぁ!」

 男達は目を奪われ悶絶した。

「クソ! 撃て! ヤツを確実に殺せ!」

 目もままならない者の銃の発砲など当たるわけもない。

 むしろ、同士討ちで数が次々に減っていく。

「全く……見てられません。ここの軍隊の教育はこれほどにまで戦闘に向いてないとは……。職業を小石とかに変えたほうがいいんじゃないでしょうか」

 ユウキは残党を銃でねらい撃ち確実に仕留めていく。


 暫く撃つ内に敵は居なくなってしまった。

「全く、こちらだけ早く終わってしまったようです……」

「そうはいかないぞ」

 奥から全身を防弾着で包みミニガンを二つ同時に所持した男が姿を現す。

「命知らずですね。ミニガンを二つなんて腕が消し飛びますよ」

「普通の人間では無理だろうな。ここは本当に素晴らしい。薬物などによって体を改造してくれるのさ。まぁ、俺は成功して完全なる人知を超えた力を手に入れたが、もう一人は失敗して怪物になってしまったらしいがな」

 そういうと男は問答無用でミニガンを放ってきた。

 ユウキは急いで柱に身を隠し弾丸をよける。


 しかし、まもなく弾丸により柱が崩壊する。

「おっと!」

 ユウキは柱を飛び移り弾丸から身を隠し続ける。

「どうした執行官。攻撃してこないのか?」

「するさ!」

 ユウキは柱から飛び出し男の上のシャンデリアに向けて銃を撃つ。

 弾は接続部の鎖を壊し、巨大な金属とガラスが大きな音を立てて大男の脳天に直撃する。


 少しして大男はシャンデリアを投げ飛ばし、高笑いする。

「残念だったな! 俺の痛覚は改造されている! それに筋力の改造もされている!」

 と言って男はミニガンを再度構える。

「痛覚鈍化改造すると自分の体のダメージが分かりにくくなるからやめた方がいいですよ」

 ユウキが言うのと同時に大男の防弾ヘルメットの隙間から血が垂れる。

「な……!? 一体どこから」

「頭全体じゃないでしょうか。確かにそのヘルメットの隙間は僅か。なので怪我の確率は低いですが、もし切り落としたカッターの刃程の小さな刃物がヘルメットの中に入った場合、それは外への出口を失いあなたがヘルメットを外すまで中をさまよい続ける。それに、その防弾素材は部分的なもの。弾丸程の強い衝撃を受けると一時的に硬化する素材が使われているという事です。つまり、殴打等の衝撃や斬撃によるダメージは完全には防ぎきれない」

 ユウキは銃口を背後の残っている柱に向け、弾を放つ。

「つまり、天井崩壊などの衝撃には耐えられないという事です」

 柱はギシギシと音を立て、壊れていなかった柱にもひびが入って聞き、やがて天井が崩壊する。

「クソがぁぁぁ!」

 断末魔と同時に天井が崩壊し、男の上に大量の家具や照明が降り注ぐ。

 ユウキも急いで室外へ退避し、屋敷が崩れるのを見た。

 

 その後しばらくしても男が再度姿を現す事は無かった。

「さて、ウォンは取り逃がしましたが屋敷はクリアですね。まっさらに。なんちゃって」

 ユウキはたまたま落ちていた軍事の所持していたライフルと弾を盗み、残党の掃討へと向かった。





「あぁもう! 殺さないで無力化とかめんどすぎるだろ! ここの軍隊何人教育してんだ! こんなことなら麻酔弾の一発でも持ってくればよかった!」

 軍隊駐屯地前、瓦礫に身を隠しミニガンを床に置き、攻めてくる人間にハンドガンで応戦するマサキ。

「確かに、大人の軍隊は処理許可が下りたけどその他の子供は生け捕りだもんね! 困っちゃうよ……」

 ユイカも少し溜息を吐く。

 しかし、子供の軍隊はその様な事お構いなしにアサルトライフルでの発砲を続けてくる。

「何方か、スモーク持っておりませんの? 投げ込んで近距離格闘に持ち込めば気絶させることが出来ると思うのですが」

 スズの言葉を聞いたマサキは懐から大量のスモークグレネードを取り出す。

「ちょ、あなたなんでそんなにスモーク持ってるのにすぐに出さないのよ!」

 とスズは少し怒る。

「いやー、すまん。忘れてた」

 と笑いながら敵地にスモークを投げ込み銃をしまう。

「行くぞ!」

 マサキの後を追うように二人も銃をしまい、身一つで敵に突っ込む。

 三人は視界の悪い煙の中でも飛んでくる弾丸に一切怯むことなく近接戦闘を挑む。

 彼らは銃口から出る火花をみて弾道予測と大賞の位置を割り出しているのである。

 そして間もなく煙が晴れて気絶し倒れる子供達の中心で三人は汗をぬぐいながら立っていた。

「なんか随分とあっさりやれちまったな」

 マサキが言うとユイカは一人の少女の服をめくる。

「どうかいたしました?」

 スズはユイカの手元を覗いて驚愕する。

「注射痕……」

 彼らの体には今まで幾度となくブースタードラックなどを使用した痕跡が残っていた。

「ウォンのやつ、まさか子供のころから訓練を受けさせれば俺達みたいな精鋭部隊が作れるとでも思ったのか? 片腹痛いな。俺達は先生や国の支援があってこその精鋭部隊だ。どうせ、こいつらの事を出来損ないだの不良品だの言って散々苦しめたんだろうよ。さて、こいつらをどうやって運ぶ? 俺たち三人だけじゃ運びきれないほどいるぞ」

 マサキは少し不機嫌そうに言う。

「そうね、気絶しているうちに拘束して目を覚ましても大丈夫なようにしておきましょう。そして、ここの殲滅が終わったら皆にも協力してもらって連れて行くのがいいわね。どうせウォン輸送用の航空機が来るでしょうから、その人たちに頼んで追加で何台か送ってもらえばいいのよ」

 ユイカは軍隊の子供たちの手足を縛り一か所にまとめ始めた。

「そうですわね。私たち三人では運びきれませんものね」

 スズも納得し、三人は拘束作業に取り掛かった。





 執行官分散後。

 武器研究所内。

「一つ聞きたいのだが、ここに三人も派遣する必要があったのだろうか?」

 リュウは、暗い研究所内を進んでいっても敵が出てこないことに退屈しているようだった。

「まぁまぁ、どんな兵器が眠っているか分からないじゃない? もし、バイオロジックな兵器が出てきたら一人じゃ対処できないかもしれないじゃない」

 ユウカの言葉にサオリも頷く。

「とはいえ、危険な武器があっても持つ人間がいなければ意味はないと思うが……」

 リュウが言うと。

「無人……ロボット……ロマン……!」

 サオリが目をキラキラさせ始める。

「ないない! 人間以上の戦闘力を持つ物なんて存在しないって! サイボーグとかならまだしも無機物なんて!」

 ユウカはそう言ってサオリの前に跳びながら出る。

 そうすると、突如彼女の足元が沈みサイレンが鳴り響く。

「ありゃ……?」

 リュウとサオリはユウカをひどく冷たい目で睨む。

「ま、まぁ皆退屈してたんでしょ? な、なら敵が攻めてきていい運動になるじゃない! ね? ね?」

 そういわれたがユウカの事を刺す目線に変化は無かった。

「なぁサオリ、この警報早い事止められないか?」

 サオリは警報装置の基盤を取り出し、機械の内部を探る。

「とにかく、サオリが警報の事を調べ終わるまで持ちこたえるぞ」

 リュウは腰の剣を抜き構える。

「えぇ……。私一対複数の戦闘は苦手なんだけど……」

 ユウカが泣き言を言っているとリュウが彼女の頭上に拳を振り下ろす。

「お前のせいなのだから少しは働け」

「痛い……」

 三人は準備を始めてしばらくすると。

「いたぞ!」

 と軍人が何人も押し寄せてくる。

「さて、いっちょやりますか」

 リュウは腰を落とし敵に直進して切り殺していく。

「切り捨て御免」

 彼が剣を収める頃には辺り一帯が血の海へと変化していた。

「まぁ、私にも多少は非があるでしょうから、少しくらい仕事しますね」

 ユウカはコートの裏からナイフを取り出し敵めがけて投げ始める。

 敵は反撃の隙も無く次々と倒されていく。

「サオリ! どうだ、何か分かったか?」

 リュウの言葉にサオリは頷き、ボタンを押す。

 すると、警報の音が突如として猫の鳴き声に変わった。

「ちょ、なにこれ……」

 困惑するユウカの後ろでサオリがクスクスと笑った後、警報を止める。

「これで援軍が止まってくれるといいんだがな」

 リュウが言っていると。

「大丈夫……。誤報……。流した……」

 サオリが二人に向けて親指を立てた。

 その後、三人は武器研究所の中にガソリンを放ち外に出てから火をつけた。

 直後、研究所は激しい爆発と共に消え去った。






 倉庫区画。

「あー誰もいない―。私の気配ってそんなに薄いっけー。あーそうだー気配消してるんだー。にしても見張りもいないとか不用心すぎるでしょー」

 死んだ魚の目をしてひたすらガソリンをまき続けるミズキ。

 そして、彼女の言う通り誰一人にも合わず倉庫区画は燃えて消えた。

「あー、もし私が小説にでも登場してたら描画とんでもなく少ないんだろうなー」

 ミズキは激しい溜息をついた。




「ふむ、私の屋敷を問答無用で荒らしてくるとはTGJCというのも失礼な人間共だな。おい、リチャード、いるか」

「はい執事長リチャードここに参上いたしました」

 暗い地下を歩くウォンのもとにどこからか執事服を着た男が現れる。

「リチャード、ユリとマイナを私の護衛に連れてこい」

「かしこまりました」

 ウォンの命令を聞いたリチャードはまた闇へと消えていった。

「チッ、まぁ一旦逃げ切ってまた力を蓄えてからやり直せばいい話。実験資料や資金は外国の倉庫に既に映してあるさ」

 ウォンは腹を立てながら長い地下道を歩いていると、またどこからかリチャードが現れ二人の武装した子供もその後を追って現れる。

「ユリ、マイナ。脱出口の飛行機のエンジンを……!」

 ウォンが命令した瞬間、通路の先で激しい爆発が起こる。

「何事だ!」

 四人は小走りで状況確認に行く。


「いやぁ、もう少し耐爆性能のある飛行機を用意した方がいいと思うぞ?」

 奥から呆れた顔をして現れる黒い戦闘服の男。

「何者だ貴様!」

「俺? 俺はTGJC執行官№0と申します。以後よろしく。まぁ今後関わることがあるかは不明だけどな」

 タツミはウォンに笑みを見せる。

「頭首様、お下がりください。ユリ、マイナ、この男を殺しなさい」

 リチャードが命令すると、二人の子供がタツミに向かって突撃し、至近距離で銃弾を発射する。

「確かに、至近距離で弾丸を放てば狙いを定める必要はなく、確実に敵に弾丸を食らわせることが出来る」

 タツミは説明した瞬間に右手で二つの弾丸をつかみ取る。

「ただ、その技はブースタードラッグにより筋力を増強させた義手の持ち主には一切通用しませんのでご注意を。あ、それとその技使って一撃で仕留められなかった場合、大きな隙が出来るのでご注意ください。以上、執行官№0様からのありがたいお言葉でした」

 そういって突撃してきた二人の子供の脳天に拳を振り下ろし気絶させる。

「おい、ウォン。一つ教えてやる。訓練が未完成な状態でブースタードラッグを使っても一切の効果は期待できないぞ」

 タツミは表情一つ変えずにウォンの元へ一歩、また一歩と近づいていく。

「リチャード!」

「はい」

 ウォンの呼びかけに答えたリチャードはすでにタツミの背後を取ってライフルを構えていた。

「面白い。確かに子供とウォンには捕獲命令が出ているが老人は殺してしまっても構わないだろう」

 タツミはリチャードがアサルトライフルを放ってくるのと同時に体を回転させ退避し、ハンドガンを数発撃ち返す。

 弾の一つがリチャードの頬をかすめ、傷をつけたが決め手となる弾丸は無かった。

「いいですねぇ。このリチャード、久しぶりに気持ちが高まってきました」

 リチャードは口角を吊り上げ更にタツミに向けて銃を撃つ。

「いいね爺さん! 俺も抵抗ままならない老人をいたぶるのは趣味じゃないのさ!」

 二人は暫く攻防を繰り返したが一向に状況が変化する様子はない。

「やるなぁ爺さん。けど、俺もそろそろ終わりにしねぇと仲間に申し訳ねぇからな」

 そういってタツミは懐から赤い液体の入った注入器を取り出し首に突き刺す。

「いいかウォン、見とけよ。完成した人間の使用するブースタードラッグの効果という物をな!」

 彼が薬を体内に注入した瞬間に目や爪から血があふれ出す。

「もろ刃の剣というやつですね」

 リチャードもタブレット型の薬を口に放り込む。

「あぁ、本当は五回分の薬が入ってたんだが全部使い切っちまった」

 タツミの体の銃弾のかすり傷が更に広がり血液が噴き出す。

「行きますよ」

 リチャードは銃を捨て懐から巨大なナイフを取り出す。

「近接攻撃か! いいねぇ」

 タツミもハンドガンをしまいサバイバルナイフを構える。


 二人は暫く睨み合った後、同時に突進した。

 二人とも腰を低く保ち、距離を詰める。

「もらった!」

 リチャードのナイフがタツミの首元に当たるかと思われた瞬間、リチャードの視界からタツミの姿が消える。

「なに!?」

 リチャードが視線を動かそうとした瞬間彼の体が宙に浮く。

「訓練された人間同士の近距離格闘戦で道具に頼るのは愚か以外の何物でもないぞ」

 タツミはリチャードのナイフの刃が当たる瞬間、地面を這いつくばり彼の足を払ったのだ。

「まぁ悪くなかったよ爺さん。じゃあな」

 そういって地面にリチャードが落ちる瞬間に喉元にナイフを突き刺す。

「ガハッ!」

 リチャードは口から血を吐き出し息を引き取った。

「さて、おっさん、あんたは生け捕りの令が出てるからちょっくら気絶させてもらうぜ」

「ふ、ふざけるな!」

 ウォンはサブマシンガンを取り出しタツミに向けて撃ったが、抵抗むなしくみぞおちに拳を入れられて気絶させられてしまった。

 タツミが緊張を解くように息を吐くと彼の視界が大きく湾曲する。

「クソッ、薬の使用量は守った方がいいな……貧血気味だ」

 そう言いながら彼は両肩に三人を乗せて皆と合流した。




 ウォンの敷地中央に着陸した巨大な輸送ヘリのもとに執行官達は再集合した。

「ウォンは確保したぜ。あとは頼んだ」

 タツミはウォンを航空機の乗員に渡した。


「あと二機ほど航空機を呼んでください。保護した子供達も輸送しなくてはならないので」

「わかりました」

 ユイカの頼みを聞いた航空隊員は部下に合図を出した。

 その後、航空隊員は一礼して飛行機に乗り込みウォンを輸送していった。

 そして直後、タツミは密かに口から血を吐き出した。

「チッ、もう少し持ってくれよ俺の体……!」

 

 誰もタツミの体の事には気づかず、マサキ達の拘束した子供たちを運ぶ作業をしていた。

「なぁ、この後ここの子供達はどこに行くんだ?」

 リュウが尋ねるとユウキは。

「政府が太平洋上に所有している島に専用の施設を作ったらしいです」

 と説明した。


「私達……殺す?」

 タツミの後ろで二人の少女が抱き合って怯えている。

 ウォンのボディーガード、ユリとマイナだ。

「いや、お前達は収容される。安心しろ、死ぬことはないだろう」

 そう言った瞬間タツミはまた口から血を吐き出す。

「病院……陸地のより少し離れたところの島のが近い」

 ユリとマイナはタツミの腕をひき、船へと連れていく。

 普通、そんなはずはない。

 確かに海沿いの田舎の私有地だが、陸地の方が近いに決まっている。

 しかし、血を流し過ぎていたタツミにその様な思考をする力は残っておらず、言われるがままについて行ってしまった。

 三人は船に乗りこみ、ユリとマイナがエンジンをかける。


 暫く船が進んだ後、突如どこからか魚雷が船に向かって発射される。

「警戒態勢……下がってない……!」

 ユリは軍事小型ボートを手動で操縦し、魚雷や海上砲台から発射される砲弾をよけておきへと急ぐ。

「ユリお姉ちゃん、私海上砲台の停止できないかやってみます。砲台に極力船を近づけてください」

「だ、だめ! そんなことしたらマイナが危ない!」

 そう言った瞬間。船体後方を砲弾がかすめ、船を大きく揺らす。

「大丈夫、たまには私にもお姉ちゃんを守らせて!」

 マイナの言葉にユリは渋々砲台に近づけた。

 彼女は船から砲台に飛び移り中に入っていった。

 ユリは彼女を置いて防衛ライン脱出を急いだ。

「マイナ……! 無事でいて……!」

 暫く船を走らせ、ようやく防衛ライン脱出するというところで船体の後方に魚雷が着弾する。

 スクリューが破損し船はコントロールを失い、更に砲撃を浴びてしまった。

 直後、マイナのおかげか攻撃が停止した。

 徐々に浸水を始めていた船だったが、ぎりぎりのところで持ちこたえる事に成功した。

 かと思いきや、一難去ってまた一難。

 海上の天候が突如荒れ始め、マイナとの合流は叶わず、船は波にさらわれ大海原へと流されて行ってしまった。






 タツミが目を覚ますと、目の前には綺麗な海と砂浜が広がっていた。

「……ここは……」

 体を起こし辺りを捜索していると、ボロボロの服を着たユリが海の幸を持って現れた。

「体……大丈夫……?」

 ユリは海藻や貝、魚を漂流物の籠にいれてタツミに歩み寄る。

「あぁ、問題ない。俺の体はそこまで軟じゃない」

「嘘。三日間寝てた。大丈夫なはずない」

 ユリはそう言うとタツミの脇腹を人差し指で突くと、タツミの足は力を失くして崩れた。

「およ?」

「骨髄の足信号の部分と連結している所を押した。普通は殴ったりしてもダメージは少ない」

「こりゃ参った」

 タツミは足に力を入れて自力で立ち上がる。

「で、ここはどこだ?」

 二人のいる島は、雲一つない快晴で綺麗な海が辺り一面に広がっていた。

 しかし、少し離れた場所には黒い雲が空を覆っている。

 まるで台風の中心にいるような感じだった。

 時折潮風に乗って雨が吹いて来るが、天候の変化する前兆などは一切見られない。

「ここは太平洋上の魔の海域。船や飛行機を受け付けない、外界から遮断された島」

「まさか、クローズバリアアイランドなのか? 魔の海域の中心に存在する島。本当に台風の目の中心にいるわけか」

「そう。だから気候も安定していて、遭難でよくある天候の変化での熱中症や凍死を一番に考える必要はない。ただ、百年以上嵐が止んだ事は一度もないから救助も期待できない」

 ユリの言葉にタツミは少し笑って。

「大丈夫、TGJCの持っている輸送ヘリなら雲より高い高度で飛行して、回収に来れるから」

 ユリは少し黙った後、タツミに質問を投げかける。

「一体何者? TGJCって何?」

「そ、そうだなぁ……なんというか、ウォンみたいな強い犯罪者集団をぶっ壊すための特殊部隊だよ」

 タツミは大まかに説明した後、ユリに質問を返した。

「なぁ、君達地下道で俺にわざと俺に負けただろ。確かに、君達が目を覚ました後の演技は完ぺきだったよ。『殺すの……?』ってやつ。けど君達分かってたでしょ。俺達が悪人として襲いに来たわけじゃなかったの。一体なんでだ?」

「私は、ウォンに両親を殺されて誘拐されて軍隊に入れられた……。マイナは私の唯一の生き残りの家族。私は、ウォンの部隊で一番強くなることを条件にマイナの命の保証を約束していた。でも、ウォンが倒されて二人で誘拐されるならそれでもいいと思った。地上からリチャードに呼ばれるまであなたの仲間と戦ってた。でも、殺意なかった。だからこの人たちは私達を殺すために来たんじゃないと分かった。だからわざと負けた」

「そうか」

 ユリの話を聞いたタツミは少し笑って砂浜に倒れた。

「いやー、安心した! もしあんたが敵だったら俺は死んでるはずだ!」

 タツミの言葉を聞いたユリが腹を抱えて笑い出す。

「何を言っているの。私があなたの敵だったらこの島で目を覚ました時点であなたを殺している」

 二人は砂浜に寝転がり笑った。



 それから二人の無人島生活が始まった。

 とは言っても、そこまで過酷なものでもなく、船の残骸から蒸発を使った濾過装置を作成してすぐに水問題も解決した。

 食料なども二人にかかれば直ぐに調達できてしまい、どちらかと言えばバカンスを楽しんでいるような感じになっていた。

 島には豊富に食料が存在し、しまいには果実ジュースまで作成して二人でたしなんだりしていた。

 約二週間後。

 二人が肉を恋しく思い始める頃、島の遥か上空に巨大なヘリコプターが姿を現す。

「タツミ!」

 アカリとユウヤがヘリで島に迎えに来る。

「おーお前ら! 丁度肉が恋しくなってきていたんだ」

 二人はロープで回収され、本土へ帰還した。



 これがユリとの出会いだった。





「そういえば、本部から新たな指令が来ていたみたいだよ」

 ユウヤが本部から届いた資料を持って言う。

「おや、なんて書いてあるのですか?」

 ユウキが尋ねるとユウヤは説明を始めた。

「特殊諜報機関の情報によると、未知のテロ因子が山梨県山岳部に拠点を構えているらしいです。その因子の排除が今回の任務だそうです。大きな崖に作られた巨大な屋敷が目標のようです。しかし、この情報は未確認な情報が多すぎるような……警戒した方がいいかもしれないね……」

 その言葉に全員が頷き、作戦会議に移行する。
























「いいな? 裏切ればあいつの命はないと思え」

「わ、わかっています……」

「まぁ、二人とも。今の所その様なそぶりは見せていないじゃないか」

「だからあなたは甘いんですよ」

「あぁ、こいつの言うとおりだ。詰めが甘い」

「まぁいい。これであれもおしまいか」

「ようやくあのクソガキを殺せるわけか」

「あぁ、楽しみにしておくといいぞ」

今回は四部構成になりそうです

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