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TGJC mission file 3:target<十四人目の執行官> 1

小説書きながらゲームしてアニメする生活をしていたら二か月分の授業とレポートをためてしまいまして四日で二か月すっ飛ばす経験をしました。

まぁ、学業が死ぬほど嫌いなので死にそうでした。

以上。

「で、こいつが例の奴か?」

TGJC本部に突如として現れた客人。

 彼女の名はユリ。

 今日、突如として派遣されてきた新たな執行官、ナンバーは13。

「こいつ、信用に値するのか?」

 警戒心たっぷりのマサキに対してユウキは落ち着いて。

「ま、まぁ身元の確認も家族関係の確認も取れてますし……。何しろ執行官プログラムの合格点数を突破してますし……」

 と受け入れる姿勢を取り始めていた。

「なぁ、タツミはどう思うよ」

 マサキがタツミに話を振ると彼は。

「おぉユイナ、ちゃんと飯は食ったか? すまんなパパ朝から本部に呼び出されちまってんだ。まぁ俺は料理できねぇから博士に作ってもらったやつが冷蔵庫に入ってるからな。ちゃんとあっためてから食えよ」

 と電話をしていた。

「タツミ、すっかりパパだねぇ♪」

 ミカはにやにやしながらタツミを眺める。

「皆さん、今日からよろしくお願いします!」

 ユリは深くお辞儀をした。

「えぇ、こちらこそ。ユイナさんの部屋は今余っていた奥の部屋ですので、一度お荷物を置いてきてくださいますか?」

 スズは彼女を丁寧に部屋へ案内した。

「何かあるな」

「うお、リュウ来てたのか」

 マサキは背後に立つ革ジャンを着て腰に剣を刺す男に驚く。

「まぁ、大事な話があると吉原総理殿から召集を受けているからな」

「お前は相変わらず山の中で武士の修行か? のくせに服装現代すぎるだろ」

 執行官№6リュウは自称武士道を貫く剣士である。

 服装が少しミスマッチだが、その腕は確かで過去には飛来する戦車の砲弾を切り裂いた実績も存在する。

 ほとんどの場合で山の中で武者修行をしているらしく、年に数回しか顔を見せないTGJC執行官の中で最も謎の存在である。

「まぁ、緊急招集がかかったから少し驚いていたけど、このくらいの事でよかったよ」

「全くだな」

 後ろから更に現れるオーバーサイズの白いセーターを着た身長の低い緩い感じの男の子とガスマスクを指先で回す高身長の男。

 執行官№10ユウヤ基本的にマイペースな性格で、部屋でゲームしている確率の高い男。たまにゲームセンターに行くために外出する。

 巷では、ゲーセンの王子として少し有名らしい。

 彼は作戦立案の能力にとても優れており、どのような任務の作戦もすぐに完成させることが出来る。

 彼の能力は防衛戦において本領を発揮する。

 その横のガスマスクを指先で回す男。

 執行官№5トオル科学実験の天才。毒ガスから回復用薬の生成まであらゆる薬物学において類い稀なる才能を見せた。

 科学者というと、研究室にこもり続けているようなイメージが付きがちだが彼は健康的な生活を送っているうえ、街中のカフェで読書をしながら本を読むなど、科学者のイメージとは正反対の性格である。

 が、寒いのが苦手で冬は部屋のこたつに引きこもっている。

「にしても、スズが新人に対して下から出るとは珍しいこともあるもんだ」

 マサキの言っているスズとは執行官№12の事である。

 彼女はアサルトライフルを二丁両手に持って敵陣に突っ込むほどの戦闘狂であったが、いつしか小説で読んだ高貴なお嬢様にあこがれを持ち、典型的な金髪ドリルへと進化したのである。

 電話を終えたタツミの服の裾をサオリがつかむ。

「そうだな、サオリ。頼んだぞ」

 タツミが言うと、彼女は部屋へと帰っていった。

 執行官№3サオリ。

 機械学の天才。

 小さな追跡装置から隠しカメラ、ミサイルに至るまでありとあらゆる機械学を専門とする。

 実は、タツミ達の使用している飛行デバイスは、彩芽とサオリの合作と言っても過言ではない。

 だが少し内気で人としゃべろうとしない。

 だが、TGJCのメンバーは彼女の服のつかみ方やジェスチャーで全てを読み取る。

 ちなみに、彼女ほど顔で物を語る執行官はいないと思われる。

「私も彼女の周りを張っておきましょうか?」

 どこから姿を現したスレンダー体系の女性。

 執行官№9ユウカである。

 彼女は暗殺を得意分野としている。

 特に彼女の投げナイフ術は秀でた物があり、無音で飛んでくる巨大な刃物はそれはそれは恐ろしい。

 彼女の任務は完ぺきで、仕事中は一切の失敗をしない。

 TGJCの中で一番天然である。

「ふむ、そうだな。ユウカに任せよう。その前に捲れたスカート直した方がいいぞ」

 タツミは白い目でユウカにいう。

 彼女は頬を赤らめスカートを押え。

「わ、忘れなさい!」

 と叫ぶ。

「まぁ、まだ黒と決まったわけではないですし……」

 いつものように優しく抑えるユウキ。

 彼は特に秀でた才能を持っているわけではないが、全てにおいて常人以上。

 いわゆるオールラウンダーである。

 更にその性格から誰とでも仲良くなれ、非常に高い統率力を持っているといえるだろう。

 彼にヤジを飛ばせるのはタツミ位だろう。

 だがユウキが少し口調を荒くして接しることのできる人物もタツミだけである。

 そのため彼らは親友の様な立場を確立している。

 だが、勘違いしないでほしいのはTGJC執行官達の間に序列などという概念は存在しておらず、皆家族の様な感情を持っている。

 だが、ユウキとタツミは過去に大喧嘩をしており、その時にタツミが放った『なんだ、お前も人に指図できるじゃねぇか』という言葉のおかげでタツミの前では感情的になれるのである。

 ちなみに、ユウキはものすごく料理やお菓子作り、裁縫などが得意である。

「まぁ、半信半疑を貫けばいいと思うよー♪」

 といったのは執行官№2ミカ。

 今となってはいつも元気な女の子だが、昔は割と暗い性格だった。

 なぜ彼女が今のような正確になったのかは謎だが、絶対的に重要な人間最強と歌われたスナイパーだから皆助かっている。

 そして、これも謎だがサオリと一番仲が良い。

「まぁ、それが妥当かもね」

 椅子に座ってコーヒーをすする女性。

 彼女は執行官№4ユイカ。

 いつもポニーテールである。

 彼女の戦闘スタイルは男が一度はあこがれるという二丁拳銃。

 彼女が戦闘で通った道には投げ捨てられたからマガジンが大量に落ちている。

 だが、いつもマガジンを捨てるのでいつも拾って来いと怒られている。

 投げ癖は未だに治っていない。

「私も賛成する」

 執行官№7ミズキ。

 彼女は潜入や盗みの達人。

 気配を完全に消せることを一番の自慢として持っており、いつどこへだって忍び込める。

 更に手段は問わず、目的のためにならなんでもする。

 ちなみにバージンは守っているらしい。

 彼女曰く、初めては居もしない好きな人のためにとってあるらしい。

 きっと彼女には好きな人は現れないだろう。

 理由はすぐにわかる。

 ちなみに、今はマサキが受けでタツミが責めだといって鼻血を流していた。

「私は皆に従うことにするよ」

 アカリの言葉には皆少し驚く。

 執行官№11アカリ。 

 普段ミカと並ぶほどのテンションでムードを作る彼女が中立を宣言したからである。

 彼女は空間把握能力の天才で砲撃による命中率は九十九パーセントを誇る。

「なに驚いてんのよ。私今日重い日なの」

 とため息をつく。

 彼女の中にはあまり羞恥心がないようだ。

 まぁ、その場の全員が彼女の言動には慣れているから溜息だけで言葉は流れすぎていく。

「わかった。中立でいよう」

 マサキも静かに言う。

「何言ってんの能筋。考えるのを放棄しただけでしょ」

「あ? なんだと? もっかい言ってみろぺったんこ」

 執行官№8マサキ。

 彼は自慢の筋肉で突撃をメインとする。

 壁を突き破りミニガンを放つなどかなり力押しの戦闘をする。

 よくペアを組むミズキとしょっちゅう喧嘩している。

 もちろん、皆からは夫婦喧嘩として処理される。

 暫くしてスズとユリが奥から戻ってくる。

「えーっと、ユリさんといったか? なんで執行官になろうとしたんだ?」

「そ、それは、昔、ゼロさんに助けてもらったことがあって……ずっとこの仕事にあこがれていたんです」

 タツミ達を顔を見合わせる。

「あんたが俺に助けられたっていつの話だ……?」

「そうですね……五年ほど前でしょうか。テロリストの私的軍隊養成学校にとらわれていた私を保護してくれた時です」

「あぁ。あの時のがきんちょか」

 タツミは何かを思い出したかのように言った。

「何だタツミ、知り合いか?」

「俺が一緒に漂流したガキだ」

 彼の言葉に全員が頷く。

「そ、その節は大変お世話になりました……」

 ユリは深々と頭を下げた。


 それから皆は彼女のここまでの経歴などを詳しく聞くことにした。

 彼女によると、現在の技量は軍隊にいるときに培ったものが基本となっているらしく、解放された後はメンタルケアのみを受けていたという。

 執行官になった理由は何度聞いてもあこがれていたのみ。

 何かが引っかかったタツミは吉原総理大臣に連絡を取った。

「なぁ、ちょっと聞きたいんだが、今回の採用試験は誰が行った?」

『あぁ、よく君達のもとに情報を集めてきてもらっている政府の特殊諜報機関の幹部だ』

「なんだと? なんであんたがやってない」

『私は正直評価基準が分からなくてね。君たちの先生も今はもういないし……』

 はた吉原は溜め息交じりに話す。

「なら、何故俺らを採用試験に呼ばなかった?」

『それが、特殊諜報機関の責任者の男が推薦したい人間がいると直談判しに来てね。執行官や私には手間をかけさせるわけにはいかないとかなんとか……』

「で、その諜報機関の責任者とやらは信用できるのか?」

 タツミの率直な聞き返しに。

『そこなんだけど、実は僕も不安なんだ。技量も才能も確かなものがあるし、経歴等には不審な点は見られない。断りようがなかったんだ。それに、過去TGJCのかかわった事件の被害者となると、必ずカウンセリングなどを受けるから日々の行動も半監視されているような状態になるからね』

 吉原も少し不安そうだった。

「そうか」

 タツミは静かに電話を切った。


 その後皆の元に戻り、何事ものかかったかのようにふるまった。









 五年前。

 当時まだナンバーが割り振られて間もなかった頃、TGJCに一軒の事件以来が転がり込んできた。

【クリスチャン・ウォン】という男が日本に巨大な私有地を購入し、そこで私的軍隊の養成や武器、麻薬の製造がおこなわれている。

 それらを破壊し壊滅させよ。

 これが事件の依頼であった。


「今回の目標は一組織の破壊だ。誘拐や立てこもりの制圧ではない。こちらの地の利は無いからな。気をつけろよ。特に今回は五十メートル以上ある崖に面した海がある。そこに脱出口が確認された。蟻一匹たりとも逃がすな。残念ながら、対空及び対水中の完全武装を持っているらしい。そのため、今回は輸送機の限界高度一万五千キロメートルから降下する。その後、八百メートルでパラシュートを展開。その後は各自分散の後、建物を制圧。その時、一人、海の方の脱出口を押えて経路を断つ。ここからは質疑応答として作戦を詰める。何かあるか」

 前に立ってホワイトボードを指さしながら説明しているのはユウヤ。

「制圧目標建造物の数は?」

 ユウキは手を挙げて質問する。

「そうだな、制圧しなくてはならない建物は全部で七つ。まずはウォンの屋敷。次が軍隊の宿舎及び駐屯地。そして薬物研究所に武器研究所。そして倉庫区画に迎撃区画だ。それに加えて例の脱出口だ。割り振りは屋敷に一人〈ユウキ〉、宿舎駐屯地に三人〈ユイカ、マサキ、スズ〉、薬物研究所に二人〈ミカ、トオル〉、武器研究所に三人〈サオリ、リュウ、ユウカ〉倉庫区画に一人〈ミズキ〉、迎撃区画に二人〈アカリと俺〉、脱出口に一人〈タツミ〉というところだ。他には?」

「全員殺すか?」

 足を組んだタツミは仕事のスイッチが入ったらしく、少し恐ろしい表情を見せた。

「そこなんだけど、私的軍隊の中には子供も教育されているという情報が入っているから、俺達と同じくらいの年齢の子達は保護しようか。それと、最近TGJCに拷問官の役職が出来たらしくて、そこの初実践としてウォンだけは生け捕りにしてほしい。まぁ、腕の一本や二本折れていても問題はないと思うけど。ほかに何かあるか?」

 すると今度はマサキが手を挙げて。

「なぁ、その屋敷とかって半壊しちまっても文句は言われないよな?」

「あぁ、問題はない。好きに暴れてくれ。他は?」

 ユウヤの問いかけに手を挙げるものは居なかった。

「よし、大体こんなもんだ。もし何か質問とかが有ったら遠慮なく聞いてな。こちらでうまく調整する。作戦開始は四日後。皆準備を始めてね」

 皆席から立ち上がり各々の行動を開始する。

 タツミは拳銃とナイフ、ユウキはアサルトライフルにレーザーポインターとサーマルスコープの取り付け、ミカはスナイパーライフルのスコープを倍率の低いものに、ユイカは新調した肩掛けのガンホルスターを身に着け二丁の銃を両脇に差す。

 トオルは様々なガス弾や噴射機の準備、リュウは刀の手入れ、ミズキは手袋型のグラップルフックの手入れとハンドガンにサイレンサーを取り付ける。

 マサキはミニガンの弾倉の準備、ユウカはナイフを数十本専用のベストの内側にセット、ユウヤはハッキングツールの確認、アカリはグレネードランチャー等の手入れ、スズは専用に作られた強化されたアサルトライフルの手入れをしていた。




 そして四日後日の暮れた後。

 執行官達は仕事を開始した。

「よし、ハッチを開けろ!」

 タツミの指示と同時に輸送機のハッチが開く。

「ではこれより、任務を開始する」

 執行官達は一斉に走り出しハッチから飛び出す。

 彼らに襲い掛かる空気抵抗は酸素ボンベやゴーグルによってカバーされている。

 皆重い武器等それぞれの道具を持っているのでバランスは非常に取りにくいはずだが、誰一人として体制は崩れない。

「高度一万地点を通過。敵、未だ反応なしだよ♪」

 ミカの報告を聞いたタツミは指示を出す。

「全員、体制を地面と直立に。空気抵抗を極限まで減らすぞ。このままの速度ならアカリくらいの射手がいたらおしまいだ」

 彼の指示通り全員だ更に降下速度を上げていく。

「高度五千地点を通過。敵に反応あり! 対空レーダーがあたし達の事探知したっぽい!」

「総員煙幕の展開を開始、速度を落とさず着地地点方向への移動を開始! これより、分隊内以外の通信の一切を遮断する。では、健闘を祈る」

『了解』

 サイレンの鳴り響くウォンの私有地の上空で十三本の煙がばらばらの方向へ散っていく。


「ユウヤ、お願い」

 パラシュートを切り離したアカリは対空砲の入り口付近でグレネードランチャーを構えながらユウヤにお願いする。

「おっけ~」

 ユウヤがカバンからタブレット端末を取り出し入り口の電子ロックと接続してタイピングを始める。

 それからたった二~三秒後、扉の鍵は解除された。


 アカリは扉を蹴り開けながらグレネードランチャーの弾を放つ。

 弾は弧を描き地面と着弾すると同時に激しく爆発する。

「あれ、誰もいなかったみたい。次いくよ」

 彼女はランチャーを降し、更に奥へ歩を進める。

「相変わらずアカリは人使いがあらいね」

 ユウヤは愛想笑いでアカリの後を追う。


「何者だ!」

 後を追っていたユウヤの背を銃を構えた軍人が刺す。

「ありゃあ、フルオートアサルトライフルに防弾チョッキ。僕のマシンピストルじゃかなわなさそうだね」

 彼が軽く両手を挙げた瞬間、横から弾が飛んでいき、軍人の足元に着弾した後爆発する。

「おぉこりゃ問答無用で……」

「当たり前でしょ。私の大事な家族に銃向けてんのよ?」

 アカリは腰に手を当てランチャーを背に戻す。

「やっぱアカリは頼りになるね」

「さぁ、今ので私たちの存在が露呈してしまったわけだから、ちゃっちゃと対空砲ぶっ壊すよ!」

 ユウヤはアカリに何本もの長いケーブルを渡す。

「これを全ての迎撃砲入り口の電子キーにつないでください! 全部同時に開けられますよ」

 彼女は頷き長いケーブルを絡ませないようにキー一つ一つにケーブルを差し込んでいく。

 数分後、アカリが戻ってくると。

『侵入者の位置を捕捉。各員防衛フォーメーションCを実行してください』

 ユウヤがタイピングを始めながら。

「スピーカー放送? なんだか時代遅れな感じだね」

 と鼻で笑う。

「まぁ、何百と兵士がいるんでしょ。個人回線は分隊ごとの通信でいっぱいのはずよ」

 アカリが周囲を警戒していると。

「よし、全キーロック解除」

 マサキはタブレット端末に刺さるコードを引き抜く。

「ケーブルは?」

 アカリが尋ねると。

「大丈夫。このケーブルは使い捨ての量産型だから。ブービートラップとして使ってもいいよ」

 ユウヤは笑顔で話す。

「そりゃ好都合!」

 アカリはケーブルをナイフで切り、グレネードランチャーの弾でブービートラップを周囲に張り巡らせる。

「じゃあ、僕はこのブービー要塞の中心でアカリに指示を出すから。とは言っても、僕が教えられるのは兵士の来る方向だけだけどね」

 ユウヤの端末にはブービートラップの周辺地図と迫ってくる大量の赤い反応。

「さすが天才。それ、私の腕のモニターにでも写せないの?」

「そ、それをやると僕の仕事がなくなっちゃうんだけど……まぁ、次の仕事までには出来るようにプログラムしておくよ」

 マサキは愛想笑いをしながらアカリに指示を開始した。




 執行官分散後。

 薬物研究所正面。

「なぁミカ、本当に正面突破するのか?」

「今更何を言ってんの。トオルの後ろにはこの天才スナイパーミカちゃんがついてるのよ? あんたは安心してガスと銃弾をばらまきなさい♪」

 トオルは少し呆れた顔をして扉にプレートを張り付けスイッチを押す。

 すると、プレートが激しい煙を出し始めたのち剥がれ落ちる。

 トオルは近づき、指先で扉を押すとボロボロと崩れていった。

「トオル、あんたまた恐ろしいもん作ったわね……」

「別に? ただの超低温液体と金属融解液を混ぜ合わせたものを噴射しているだけよ。まぁ、人間が食らったら一瞬でカチンコチンだから気をつけろよ」

 そういいながらトオルはミカにガスマスクを渡す。

「な、なんかこのガスマスク分厚くない……?」

「そりゃ市販のガスマスクで俺の毒ガスを抑えられるわけないだろ」

 トオルは顔全体を覆うガスマスクをつける。

「サーマルスコープをつけていても濃霧の狙撃は苦手なんだけどなぁ」

 ミカも溜息をつきながらマスクをつけた。

 直後、騒ぎをききつけた研究員たちが武装しておくから走ってくる。

「お出ましか」

 トオルは紫糸の液体の入ったガラス玉を投げる。

「このガスはまだ序の口。液化しているが空気に触れた瞬間に気化する催涙ガスだ。降下時間も大してない。ミカ、今の内に研究所内の高台に昇って狙撃ポイントを確保しろ」

「わ、わかった」

 ミカはスナイパーを一度収め、ソードオフのサブマシンガンを持って走り出す。

 トオルは堂々と研究所内に入っていき、数本の試験官を構える。

「さぁ、始めようか!」

 彼はまず青い液体の入った試験管を投げる。

 地面に落ちて試験官の中から出た液体が煙を出して気化していく。

「次!」

 トオルが次に投げた赤い液体が地面について割れると、突如周囲が燃える。

 研究員たちは地面に倒れ叫びをあげてもがく。

「ちょっとやり過ぎか……?」

 トオルが研究員を見ていると、彼の右から二人の研究員がアサルトライフルを持って現れる。

「くたば……!」

 と彼らが叫んだ瞬間、後方から二発の銃弾が襲い掛かり二人の頭を貫く。

「助かったぜ」

「安心して♪ 私が絶対守るから!」

 ミカはスナイパーのリロードを開始する。


「敵はたったの二人だ! 援軍だ! 援軍はどうした!」

「そ、それがこの区画には二人ですが、その他の区画にも敵が来ていて援軍は見込めないとのことです!」

 焦る敵の中央をトオルがゆっくりと歩きながらガスをばらまき、背後からは弾丸が襲い掛かる。

「科学者のくせに戦闘もできないとは……。学者の風上にも置けんな」

「いや、トオルのが異端だと私は思うけどなぁ」

 二人が話していると、奥から三メートル位の身長の男が姿を現す。

「ううぅぅぅ」

 唸る大男の見た目は今にも皮膚がはち切れそうなほど筋肉が膨張し、全身からは煙が出ている。

「トオル、ちょっとこいつやばいかも……! あいつ、スコープで見るとピンク一色だよ!」

「あぁ、どうやらこの研究所では人体実験もしているらしいな。どう見ても筋肉増強剤とブースタードラックの反復使用による肉体改造だろう。まぁ、それ以外の薬物も多量接種しているようだな」

 トオルは大男に向けてガラス瓶を投げた。

「的が大きいから当てやすいな」

 そう思っていたが、大男は手足を地につけ四足歩行の獣のような形態をとり、ガラス瓶を回避する。

「なに!?」

 回避後の着地点に向けてミカが弾を放つも、大男はまたよける。

「す、スナイパーの弾丸をよけるなんて……!」

 大男は壁に張り付き吠える。

「ミカ、こいつ、筋力のリミッターを解除していると見た」

「リミッター?」

「人間は筋肉を最高でも二~三十パーセントしか使えないようにリミッターをかけている。この男はそれを百二十パーセント以上に開放している可能性がある」

「じゃ、弱点かなにかはないの?」

「人間は筋肉のリミッターをかけている理由は解放しすぎると骨やその他の部位が持たないから。つまり、時間経過で弱っていくだろう」

 考察しながら二人は縦横無尽に駆け回る大男を回避しては攻撃をする。


 しかし、いくら経っても大男が弱る気配はない。

「どういうことだ?」

 トオルはガスを噴射し引火させ、大男を爆発に巻き込ませる。

「どうだ?」

 大男は一瞬動きを止め、トオルの方を見る。

 ヤツの顔は半分以上燃焼で溶けていたが、数秒もしないうちに皮膚が再生していき、元通りの顔に戻ってしまう。

「そうか、それでこいつが動き続けられるのか」

「ど、どうするの?」

 トオルは冷や汗をかきながら口角を吊り上げる。

「いいか、科学者は目標達成のために何でもやる人間なのさ」

 と、扉を破るためのプレートを手に持つ。

「ちょ、トオル! それは危険だよ!」

「はっ、正面突破はお前も大好きだろ!」

 トオルは大男に向かって全力で走り出した。

「うらあぁぁぁ!」

 彼に合わせて大男も四足歩行で正面突破しに来る。

 唸りながら全力で走る大男の後ろには地割れが出来るほどだ。

「トオル!」

 ミカの声など彼は一切聞かず、プレートを大男の拳に突き立て、プレートのボタンを押した。

 しかし、トオルは大男の拳に耐え切れず後方へ吹き飛ばされ、そのまま気絶してしまった。

 絶体絶命かと思われたが、タイミングよく装置が発動し大男の手から凍り始める。

「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 叫びながら大男は凍り付いていった。

「えい!」

 ミカは凍った大男に向けて銃を撃つと、ばらばらに崩れていった。

「トオル!」

 ミカはスナイパーをしまって彼に駆け寄る。

 気絶した彼を担ぎ、研究所を後にする。








 執行官分散後。

 ウォンの屋敷、食堂。

「やぁ、執行官君。私に何かようかな?」

 長机の奥で落ち着いて食事をとる男。

「クリスチャン・ウォン。覚悟しろよ」

 ユウキは銃口をウォンに向ける。

「まぁ落ち着きなさい。君も一緒にどうだい?」

「銃を向けられているというのに随分と落ち着いているんだな」

「あぁ、何故なら脱出口位いくらでも用意してあるからな」

 そういうと、ウォンは椅子ごと地下に降りていった。

「待て!」

 ユウキは追おうとしたが、大量の護衛に囲まれてしまい動けなくなってしまった。

小説の最後に必ず次の物語に続く部分をつけてるんですが、それで次の章のタイトル予想ゲームとかしたら面白いかなーと思いました。

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