TGJC mission file 13:<Anknown Devils> 1
遂にニート卒業が見えてきた三月悠です。
いやまぁ今でも一応収入はありますけど。
このペースだとTGJCの完結は半年くらいで終わりそうだけど、TGJCシリーズの完結には四年くらいかかるかもしれないという事実。
山梨県某所、政府秘密軍事区画。
その区画の中心である校庭に立つ二十四人のボロボロの兵士達と控える四人の兵士。
そして大きなカメラを抱えたテレビクルー。
彼らの前に姿を現したのは、イギリス秘密諜報特殊工作員のクリス・ヴォ―ドレット、そして白い悪魔、獅童辰巳。
タツミはゆっくりと壇上に上がり、拡声器を握った。
「やぁ諸君、戦場からのご苦労。それと同時に地獄へようこそ」
彼の一言でミルリグロス部隊も直轄部隊の兵士もゴクリと唾を飲む。
「さて、本物の戦場はどうだった? さぞ楽しかっただろ。今回俺が受けた命令は貴様らを飛行兵に育て上げる事、だったな。それもたった一月で。ということで今すぐに……と言いたいところだが、今日の所は座学だ。良かったな。三十分後、B棟二十四号教室にて全員着席せよ」
『はっ!』
威勢のいい返事と共に兵士たちは駆け足で去っていく。
壇上から降りたタツミはふーっとため息を付き直轄部隊の方へ向かっていった。
「お疲れ様です、教官!」
「あぁ。悪いな、初の命令がこんなんで」
「いえ、問題ありません。我々直轄部隊は教官の手足、どのような命令とて不満などありません」
「そうか。何か欲しいものがあったら言えよ。ボーナスだ」
「はっ、ありがとうございます……。教官って……実はいい人なんですか?」
「実はってなんだよ」
軽く笑いながら今度はクリスの方へ向かっていく。
「なんか兵士の様子見るだけでお前がどんな教育したのか分かるな」
「なんだ、俺をサディストの鬼教官みたいに言いやがって」
「その通りだろうが……」
雑談していると、テレビクルーが歩み寄ってきた。
「この度はよろしくお願いします!」
一人顔のいい女がいる。
「あぁ」
「吉原総理大臣から殺される危険があるって言っていたから少々緊張していましたが、ゼロさんがいれば安心ですね!」
ディレクターと思わしき人物の言葉にクリスが顔を青くした。
しかし、タツミは真顔で受け流す。
「えっとー……今日の段取りの件は事前に書類を送らせて頂いたのですが、目を通していただけたでしょうか?」
「問題ない。その女は訓練に参加するのか?」
「あ、えっと、彼女は出来そうな項目で体験として参加させていただきたく……」
「出来る項目?」
「筋力トレーニング等の物をさせていただいて、リアクションを撮れればと考えています。さらに、もし何か取材期間中に任務に行かれるようであれば同行させていただき、皆さまのご活躍などを放送させていただけたらなと考えております」
「それで? お前らは何を撮りたいんだ? 無駄に同情を買いたいドキュメンタリーか?」
「……皆さまの姿をそのまま撮りたいと考えています」
「そうか」
去ろうとするタツミの背に女が話しかける。
「あ、あの! よろしくお願いします! えっとー……」
「ゼロだ。そっちは」
「あ、私は【中宮 沙雪】と言います!」
「そうか。せいぜい殺されないようにな」
そう言い残して彼は再度歩き出した。
「おいおいタツミ、なんだか随分おとなしくなったじゃねぇか。昔のお前なら最初の一言で銃抜いて脅しくらいはしてただろ」
「奴は俺らのありのままを撮りたいそうだ。それなら後で嫌でも分かるだろうよ」
「あぁっと……あんま口を出す気はねぇが、戦力は削ぎすぎるなよ……」
「んなことしねぇよ。めったなことがない限り」
「お、おう、そうだな」
タツミが教室に入ると同時にがやがやした教室の雰囲気が一気に凍り付く。
「……まだ十五分前だぞ。好きにしてればいいだろ。俺だってオフの時は遊ぶんだからな?」
彼のらしくない発言にクラス中がどよめいた。
「おいタツミ、マジでどうしたお前……」
「あ? あぁ、別に大した事じゃない。今朝、吉原とか博士と会ってきたんだけど、俺が暴れるかもって言って精神安定剤を打たれてな。まぁ今日一日は座学の予定だったし問題ないだろ」
「流石だな……」
色々話しているうちにチャイムが鳴り響き、全員が一斉に席に着く。
「よし、始めるか。貴様らはなんで日本に返されたか知ってるのか? 朝川隆二」
「はっ! 単独飛行兵士としての訓練を受けるためです」
「よし。次、飛行デバイスによる飛行時に一番大切なのはなんだか分かるか? 三原栄太」
「はっ! バランス……だと思います」
「まぁ、悪くはない。いいか、飛行デバイスに置ける戦闘で最も重要なのは背筋だ。いいか? 飛行中、自分が地面とどのような角度にあったとしても踵から頭頂部まで直線である必要がある。さらに、そのまま銃を頭上に構えて撃つ。銃の反動は全て右肩および右腕にかかる。つまりだ、生半端な覚悟じゃ腕ごともげるからな。次に度胸だ。度胸がないやつは一番に死ぬ。恐怖が集中力に勝った瞬間、お前らはゲロ吐いて糞尿垂らしながら白目向いて地面に真っ逆さまだ。別に冗談言ってる訳じゃない。常に地上との距離を一定に保っていられるならいいが、高度数センチ程度を飛行することもある。ということでこれを見ろ」
そう言いながら、タツミは天井からスクリーンを引き出し映像を流した。
「これは、どこかの誰かさんが始めて飛行デバイスを装着したときの映像だ」
その映像には八重原の初飛行時の物で、彼女の主観とタツミの主観、どこから撮影したのか分からない三人称の映像だった。
「八重原は度胸も元々の肉体もあったおかげで僅か二週間程度で飛行デバイスを完全に使いこなしていた。と言うことで、貴様らは明日から二週間で基礎肉体形成、二週間で飛行訓練だ。まぁつまりだ、今日一日で飛行デバイスに関する知識を貴様らに叩き込むからってことだ」
スクリーンを戻し、ボードに飛行デバイスの書かれた紙を貼り付ける。
「いいか? まず、足の裏以外の場所にジェットはない。全て足の裏の四門のジェットだけで制御する。同時に装着するゴーグルに脳波の観測装置や無線機能、目標への距離などなどが詰め込まれている。その脳波の観測装置によってジェットは制御されている。ただし、ジェットの可動域は上下左右全て十五度のみ。急激に向きを変えたい場合には先ほどのビデオで俺がやっていたように片足を地面に向けるなどをする必要がある。その他噴出力の調整なども脳波だな。先ほども言ったが、姿勢の固定には相当な背筋が必要だ。もちろんパワースーツ等も着用し補助するが、戦場では何が有るかわからない。もしかしたら流れ弾でパワースーツへ電力を供給していた配線がちぎれるかもしれない。ヒドラジン燃料のタンクに鉄片が飛来して片足のジェットが使用不能になる可能性だって十分ある。一応、つま先に補助のジェットがあるが、これはバランスの安定化と地上への接近速度低下の為に使われる物だから過信は出来ない。基本説明はこんなところか。次にレベルの説明だ。出力設定はレベル1からレベル8がある。レベル1は点火、まぁ基本的には少々熱が出るだけで用途はない。次、レベル2も1と大差はないが、これには多少の減速効果がある。と言うことで全員起立して窓から校庭を見ろ」
全員が窓辺から見つめる先の校庭では、八重原が一人ぽつんと立っていた。
「聞こえるか?」
『はい』
「レベルツーでハイジャンプだ。貴様ら、よく見ておけ、レベルツーにはブーストの力がある。それをうまく使えば……」
校庭からタツミ達の教室までは約六十メートル、そして三階。
「いいぞ」
『はっ』
数秒もしないうちに八重原は高くに飛び上がり、教室の窓に突っ込んでくる。
「アイツ……」
タツミはため息を付きながら窓ガラスを開けた。
彼女は窓の隙間から華麗に教室に着地する。
「アホ、お前窓ガラス割って突っ切るつもりだっただろ」
「……すいません……」
「まぁいい。とりあえず、こんなところだ。そして、レベル3でいよいよ飛行開始だ。そこからの速度変化は口でいうより体感したほうが早い。実戦で体感しろ。その次は装着方法の――」
その日はただひたすらに座学が続き、生徒たちに教えることを全て叩き込んだ。
翌日、早朝五時。
「んだよタツミ……朝っぱらから」
タツミ、クリス、巨大な箱を引いた八重原の三人はタツミ召集の元、宿舎棟に集まっていた。
「八重原、アレ、持ってきたか?」
「えぇ……一応。けど訓練兵は大丈夫ですが……テレビスタッフの方は……」
「知らん。いいからよこせ」
「はい」
彼女が箱から取り出したのは巨大なガトリング銃だった。
「おいタツミ……まさか」
「耳の穴塞いどけよ。もちろん空砲だがな」
そう言って彼は両腕でガトリング銃を固定してボタンを押す。
すると、小さな機械音と共に砲塔が回転を始めた。
「3,2、1!」
カウントダウンの直後、けたたましい爆発音が建物全体を包み込む。
約二分間の快音の後、タツミは腰に刺していたマイクを抜いて声を入れた。
「おはよう諸君。なに、礼はいらない。十五分後に全員校庭に集合せよ」
ミニガンを片手で持ちながら校庭に向かうタツミを追う二人。
「訓練兵はいいとしてよ、女優とかテレビは無理じゃないか?」
「知らん。それに、昨日五時十五分に校庭集合だと伝えてある。それで遅刻するならそれは向こうの責任だ」
「そう……だったのかよ。んなら先に言えよな」
十五分後。
「よし、全員集まったな。言っておくが、朝五時だ。良心的な時間だろ?」
タツミは空砲のミニガンを片手で上空に向かって放ち、全員の背筋を正す。
「さて、今日からが本当の地獄だ! 校庭五周、筋トレは随時指示する。その後、戦闘訓練で朝は終わりだ。始めろ!」
『はい!』
訓練生と女優、カメラを持った男一人が走り出した。
校庭の端に向かうタツミの背後から別のテレビクルーが追いかけてくる。
「ゼロさん、この間にインタビューとかさせていただいてもいいでしょうか?」
「……あぁ。だが、外だしアイツらもいるぞ」
「問題ありません」
「そうか」
校庭の端。
「え~、それでは……ゼロさんは現在日本で最強の戦力と言われていますが、それは事実でしょうか?」
「戦力というのは、力、知恵の双方によって決まる。俺は確かに戦力はあるが、戦術的な脳は良くない。場数とその場の判断だけで乗り越えてきている。それに、俺は運が悪くてな」
「運……?」
「あぁ。いつになっても死ねやしねぇ。俺の運が良ければとっくに死んでるはずなんだがな」
「それは……」
「あぁ、そうだな、貴様らメディアは体外向きを気にするからな。あれだろ? それは生きたくても生きれない人への批判に値するとかだろ?」
「そうですね……」
「だとしても俺は言わせてもらう。いいか? 死んだほうがマシだ。俺はもう人間じゃない」
「え、えっと、話題を変えましょう! そうですね……今までで最も過酷だった戦場は?」
「過酷だった戦場……ロシリアか?」
「あぁ、ありゃきつかったぜ」
背後で聞いていたクリスが割って入ってきた。
「そういや、あの船の上で戦った仮面兵は誰だったんだろうな」
タツミは首を傾げる。
「あぁ、お前が珍しく攻撃を貰ったアイツか」
「そうそう。ま、あの時はそれどころじゃなかったしな」
「えっと、ロシリアでも戦闘を?」
「あぁ。レーリズを潰した」
「レーリズは米に降ったはず……」
「かもな。けど、オルネリア・ウォルコットを殺したのは俺だ」
その後も暫く話した後、立ち上がってランニングを終えた訓練兵達の元へ向かっていく。
「二分休憩。その後筋トレ開始」
ミニガンを置き、アヤメニウム製の棒を懐から取り出す。
「タツミ、その棒は竹刀じゃあないからな」
「分かってる」
続々と集まり準備を整えた訓練生たちの中心に立った。
「腕立て百回、腹筋百回、背筋三百回だ」
『はっ!』
「あぁ、別にサボってもいいぞ。死ぬのはお前らだ」
訓練生たちが筋トレを始めると、上空に輸送ヘリが到着する。
「やぁゼロ! ちょっと無線の暗号固すぎないかい?」
ローター音に負けないよう、拡声器を持って話しかけてきたのは博士だった。
「そろそろ来るころだと思ってたよ」
タツミはロープで荷物を抱えながら降りてきた菊城博士の元へ行く。
「貴様らは続けろ」
「ん~、君は相変わらずだね~」
「……酔ってんのか?」
「まさか! いやぁ、遂に君に似合う武器が出来たと思ってね!」
「はぁ……。なんか、アヤメニウム製バット第三号が来るっつーからわざわざ持ってきたんだが?」
初号バッドを見せながら尋ねると、博士はまた高笑いした。
「はっはっは! まぁまぁこれを見ろ!」
彼女は荷物から見た目全く同じバットを取り出しタツミに手渡す。
「棒じゃん」
「まぁまぁ、側面を押し込んでみなさんな!」
タツミが棒を強く握ると、両端からさらに棒が飛び出し、大鎌へと変形した。
「名付けてグリムサイズだ!」
「死の大鎌とは……」
「ちなみに、もう一度押し込めば棒状に戻るぞ!」
彼がもう一度押し込むとカタカタと音を立てて棒に戻る。
「おぉ」
「いやぁ、私もまさか二日で島とここを二往復するとは思わなかった」
「俺もまさか昨日減血剤を撃たれた相手に大鎌貰うとは思わなかった」
「撃たれたとは失礼な。打たれたと言ってもらいたいね」
「博士昨日なんて言って俺に減血剤撃ったっけ?」
「『遊びで作ったエアガンの威力を確かめたいから背中で受けてくれ』だろ」
「撃ってるだろうが」
「まぁまぁ、鎌の詳しい説明と行こうじゃないか!」
博士はタツミの肩を叩いて用意された武器の試用場へ向かった。
「さて、この鎌には君の両手足と同じシステムが搭載されている。血液による燃料生成から高熱を発生させる。最高到達温度は三千五百度。君の義手に搭載された接続システムによって接続可能だ」
「待ってくれ博士、接続システムなんてあったのか?」
「そうだよ。主にメンテナンス用で、液体チューブなんだけどね。まさか、三千度以上の君の腕をほんの数分程度で常温に冷却できる訳がないだろ? 君も知っての通り、君の体は本来生命活動を継続できないほどに損傷している」
「それは良く知ってる。肉体と人工体の比率がとっくに後者のが多いことだってな」
「そう、だから君はトイレに行かないだろ? 腎臓が破損していて尿を作る機能が死んでいるからね」
「つまり?」
「君の中に蓄えられ、老廃物として排出されるはずの液体は君の体内に埋め込まれた冷却水生成装置に取り込まれ、両手足の冷却と、君の肉体と人工体の接続部が火傷するのを防いでいる。君が冷却のために取り付けられた通風孔を開けた時に出る煙はその水が蒸発した水蒸気だ」
「アレ俺の尿だったのか!?」
「まぁ、水に近いがな。だから君の両手足のメンテナンスの時に、中に設置されたフィルターも変えてるんだぞ?」
「……そりゃどうも」
「とにかく、前回のメンテナンス時にチューブを増設してな、それを接続することで冷却水を送り込める。今までは君の腕の熱さと冷却を利用していたが、今回のは熱効率が数倍だ」
「けど、前に博士俺の腕のエネルギー作成の効率をこれ以上開けると血液量が危ないみたいな事言ってなかったか?」
「何を言っているんだ君は。私が増設したのは冷却水用のチューブだけだ。君の戦闘痕には残るだろ? 大量の血が」
「まさか……」
「そうだ。ここに輸血用の血液パックがある。鎌で裂いてみろ」
タツミが鎌でパックを裂くと、中の血が鎌の刃に付着した。
その瞬間、刃の部分に凹みが現れて血を取り込む。
柄の先端のほうが排熱口として開いて蜃気楼を生み出した。
「冷却チューブを繋いでみてくれ。右手の手首の中だ」
タツミが手探りで探すと、手首の一部が外れてチューブと接続部分が姿を現す。
「接続していない状態で限界まで伸ばすと自動で巻き取られる。接続しているとどんな状態でも巻かれないから、武器を落しても安心だ」
「けど、体に触れたら終わりだろ」
「まぁね」
暫くすると、蜃気楼を出していた部分が煙に変わる。
「動作も問題ないようだね」
「なるほど、正しく死神の鎌と言うわけか」
タツミが軽く笑っていると、八重原が筋トレの終了を伝えに来た。
「なら戦闘訓練だ。お前とゼロ部隊も参加しておけ。えっとなか……なか……たに?」
「教官、中宮沙雪です」
「そうだ、そいつの相手は俺に任せておけ。ちょっと脅してやろうじゃねぇか」
「畏まりました」
約二分後、校庭隣接サブグラウンド。
タツミは中宮沙雪とそのテレビクルー達をサブグラウンドに連れてきていた。
カメラの前だからと言って彼は態度を変えたり、言葉を包んだりはしない。
「さて、ウォーミングアップは終わったか?」
「はい!」
中宮の返事は良いものだったが、その顔には僅かな疲労感が見える。
「貴様らには基本的には訓練に参加してもらうだけだが、もしこちら側に何かしらの依頼が入った場合には同行させるように吉原に言われてる」
「はい」
「俺らの掃除は確かに汚れ仕事だが、糞尿を集めたり畑を掘り起こす様な仕事じゃない。敵の巣穴に少数で降り立ち、短時間で殲滅する。そんな場所では例えマネキンであっても、流れ弾や爆発によって塵と化す。言いたいことは分かるな?」
「自分の身は自分で――」
「違う。殺られる前に殺れ。いいか? 自分に降りかかる災いを心配するより先に災いを排除しろ。なに、難しい事じゃない」
タツミは左手で自分の眉間を指さした。
「ここを狙って、トリガーを引くだけ。安心しろ、もしそれで死なねぇ様な相手ならそこからは俺みたいな化け物の出番さ」
近くに立てかけられたアサルトライフルを二丁持ち、片方を中宮に投げ渡す。
彼女は銃を受け取った瞬間、その重さに僅かにふらついた。
「その銃は『TTT MK2(トリプルティー マークツー)』。どこぞの天才がFN SCARのフレームを採用して作った次世代型アサルトライフルだ。重量はフルカスタムで三千七百グラム、7.62x51mm弾薬を使用する。この銃のセーフティーは指紋によって動作する。お前の銃は既にお前の指紋でプログラムが作動しているから気を付けろよ。装填数は四十発、マガジンだ」
タツミはマガジンの刺さったベルトを渡し、彼女は身に着ける。
「リロードは横のボタンを押しながらマガジンを抜き、新しいマガジンを入れるだけ。中宮、アサルトライフルの経験は?」
「無いです」
「そうか、なら構えろ」
その言葉と同時に中宮は自分の思いつく格好でライフルを構えた。
タツミは彼女に歩み寄り、持ち方の指導をする。
「よし。前方の土嚢に照準を合わせろ」
「はい」
「撃て!」
「はい!」
轟音と共に数発の弾が飛び出したが、それに驚き中宮は直ぐにトリガーを話してしまった。
「何をしている?」
「す、すいません……」
「いやいいさ、確かにこの音量の銃声は本番じゃ中々しない。こっちは潜入のためにサイレンサーを付けてるからな。むしろ敵から聞こえてくる位の距離だ。安心しろ」
「……」
「さて、このマガジンが無くなるまで続けろ」
「……でも……」
「なんだ? 生きるか敵に鉛玉をぶっこまれるかち○こつっこまれるかっつー話してんのにひよってんのか? 俺はテメェに死なねぇ術を教えてんだ。あれこれ考えてねぇで生にしがみつけ」
すると、そこにディレクターが駆け寄ってくる。
「ぜ、ゼロさん! 沙雪ちゃんは殆ど銃は触ったことないし、人を撃つなんてもってのほかな人生を歩んできたんです」
「そうか。なら人を撃つ感覚を教えてやる」
タツミは不機嫌そうに土嚢の前に立った。
「いいか? 善悪ってのは三人称からしか生まれねぇんだよ。それにな、テメェらが命を預けてる相手は既に人であることを止めた哀れな化け物だ。人殺しは犯罪? 銃刀法違反? はっ、クソ食らえだ! こっちは生きる為に必死になって弾丸飛び交う地に向かってんだ! テメェらの命背負ってな! 背負ってんのはお前らテレビの人間だけじゃねぇ。日本全ての命だ! 頼んでねぇとか、勝手に背負われても困るとか言い出すなら好きにしやがれ。なんと言われようが俺達の正義は俺達だ。理解したなら手を動かせ」
「……はい」
「撃て」
「え」
「俺を撃て。人を撃つ感覚を知りたいんだろ? なに、安心しろ、お前に俺は殺せない」
気の引ける様子の彼女だったが、ゆっくりと銃口を持ち上げる。
すると、横からクリスが声をかけた。
「安心しろねーちゃん! そいつは正面からアサルトライフル食らう位じゃ死にゃしねぇから! 戦車の砲撃を金属バットで跳ね返す男だからな!」
「おいC(クリスの現在のコードネーム)、その話どこで聞いた?」
「イギリスに送られてきた部隊の連中が言ってたぜ。お前が不真面目な訓練兵の体内にグレネードを突っ込んで内側から爆破させた話もな」
「バカ言え、そんなことしてない。ベルトに挟んでやっただけだ。片道切符をな」
「しかもお前、もう一人死人出してるだろ」
「月岡か? アイツは馬鹿だったな。俺の力を試すだとか言って俺に死闘を申し込んできやがったんだ」
「結果は?」
「この場にいないほうが敗者だ」
「惨い殺し方をしたって聞いたぞ」
「知らん。三千度の金属に突っ込んできたのは向こうの方だ」
「だそうだよ、ねーちゃん!」
中宮はおおきく唾を飲み込み、照準をタツミの眉間に動かす。
「いつでも来い」
「……行きます!」
彼女の声と同時に無数の弾が飛び出しタツミに向かった。
しかし、その弾はタツミに当たるどころか、彼の背後の土嚢にすら当たらない。
「あれ……? 空砲……?」
「そんなわけないだろ」
タツミは両手を開いて鉄の塊を地面に落す。
彼の腕の人工皮膚は溶け、金属製の義手と排熱口があらわになっており、目の色は赤から黄色へと変わっていた。
「どうだ? 人を撃つ感覚は。あと、四十発中致命傷になる部分に飛んできた弾は五発だった。もっと精進しておけ」
そうう言い残して彼は去っていった。
お酒とかたばことかの描写したいけどやっぱり無理だなぁ。
あと一年半待ってください。
二十になるので。




