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TGJC mission file 7:<Before the Storm> 2

まぁ、原神のために書き貯めておきたいって言ってたじゃないですか。

実は現在三部分先まで書き終わってるんですが、投稿するという行為を忘れておりました。

まぁ、一気に出さず今まで通り週一ペースでの投稿をしていくつもりですので今後ともTGJCをよろしくお願いします。

「教官、長期出張前に言ってくださっていた例の名簿、完成しました」

 整列した訓練兵の前に八重原が出てきてファイルをタツミに手渡す。

 無言でファイルを開いて目を通す。

「……。よし、今から言う四人は後で俺の所に来い。一人目、山科やましな りょう。二人目、三波 良太。三人目、大林 凛。四人目、矢崎 健斗。以上だ。その他の者は変わらず訓練に励め」

 タツミに名を呼ばれた四人は絶望の表情を見せていた。

 皆忘れているかもしれないが、まだこの選出がミルリグロスではなく、TGJC執行官№0直属の特殊部隊員になるということを伝えていないからである。

 彼ら四人は、タツミがいなかった間にも訓練を怠ることなく、一生懸命に励んできた。

 八重原は、その光景を見てなんだか少し心が痛んだ。


「俺、あの人が本当に強いのか疑うわー!」

「疑うというか弱いっしょ! なのにあんな偉そうにしやがって!」

 訓練兵たちはタツミの前から解散しながら聞こえるように技と言っているかのような大声で陰口を言う。

「あなた達……」

 止めようとする八重原の肩をタツミがつかむ。

「放っておけ。好きに言わせておけばいいさ。ああいうやつらが一番最初に死ぬからよ」

 にやりと笑い、鋭い眼光を訓練兵に送った。


 その後、部屋で座りながらボーっとしていると、部屋のドアをノックし四人が入ってくる。

「教官! 今までありがとうございました!」

 四人は一斉に頭を下げる。

「は? ちょっと待て?」

「一応、我々の中ではしっかりと訓練に励んできた次第ですが、教官のお目がねにかなわぬのならば、思い残すことはありません! ですが教官、一つ教えていただけませんか! どこが悪かったのでしょうか……?」

 山科が四人を代表して話す。

「落ち着け」

「アタッ!」

 タツミは山城の脳天に右手の側面を落とした。

「はぁ。四人とも、とてもいい訓練態度だった。それに技能面においても申し分ない」

 そう言いながら四人を来客用のソファーに座らせた。

「いいかよく考えろ。卒業だぞ? 世間一般で卒業の後は何が来る?」

 タツミは彼らの反対側に座り足を組む。

「就職……? 進学……?」

 矢崎が声を漏らす。

「そうだ。俺が言い渡したのはクビではない。卒業だ。まぁ、別にミルリグロス部隊に残りたいならそれでもいいが……。どうだ、俺達の組織直属の特殊部隊員にならないか?」

 四人は目を丸くした。

「それってどういう事でしょうか……?」

 大林は声を震わせている。

「つまるところ、国家に所属しないいわゆる私的軍隊という形になるわけだが……。給与などに関しては保証しよう。どうだ、悪い話ではないと思うが……」

 四人はそれぞれに顔を見合わせたのち。

「よろしくお願いします!」

 と頭を下げた。

「よし、それに伴って演習場も変わる。寮の荷物をまとめて明日の朝までにここを発てるように準備しておけ。話は以上だ」

 四人が部屋を出ていくと同時にタツミは何気なくテレビの電源を入れる。

『今日はこの老舗から生中継を……え!? は、はい!』

 アナウンサーが慌てた様子で映った後、映像が切り替わる。

「なんだ、台本にミスでもあったか?」

 立ち上がってコーヒーを入れながらテレビを見る。

『我々は警察革命軍です! 本日は、とある報告のためこの放送に割り込ませていただきました』

「沢渡……?」

 突如、テレビに映りこみ演説を始めたのはほかでもない。数日前に会った沢渡だった。

『我々警察革命軍は、汚職にまみれたこの日本政府などを変えるために生まれた組織です。世間では、あの政治家は人身売買にかかわっただの、裁判官はヤクザとコンタクトがあるだの様々なうわさが飛び交っています。中でも、総理大臣が殺し屋を雇い、反抗する野党や権力者の暗殺を命じているという噂に皆も恐れているかと思われます。そこで、我々も本物の殺し屋を雇うことを決断しました。汚職にまみれた政府を変える組織なので、非常に苦しい判断を強いられましたが、やはり目には目をです。我々はこの方と契約を結びました』

 沢渡が紹介し、前に出てきた『殺し屋』の男。

 白い髪に青い目。

 年齢は二十代後半から三十代前半と行った所か。

『初めまして、日本国人の皆様。私の名は白髪しらがの狩人と申します』

 その言葉にテレビの向こうのマスコミがざわつく。

『先日、白髪の狩人は殺されたと……』

 マスコミの質問に、沢渡は。

『あれは嘘です。理由はわかりませんが、カナダ政府が捏造したものだと思われます。何より、ここにいるのが証拠です』

 と落ち着いた様子で話す。

「教官!」

 同じ番組を見ていた八重原が慌ててタツミの部屋へ向かって目にしたもの。

 まだ湯気の立つコーヒーを背後の台におき、椅子に座りあの恐ろしい殺し屋としての笑みを浮かべたタツミだった。

「教官……?」

 その顔を見た彼女の背筋には、命の危機に瀕した時の様な寒気を感じていた。

「八重原か。問題ない。面白いじゃないか。あの殺し屋には俺を名乗れるほどの技術があるのだろ?」

「ちょ、ちょっと待ってください?」

「おうどうした?」

「『俺を名乗れる』?」

 八重原の顔を見てタツミは我に返り口を押えた。

「あ、いや、そのなんだ? てっきり他の執行官が来たのかと……」

「いえ、教官最初『八重原か』って。私は、警察革命軍がTGJCの噂についての話題を出したから危険について知らせようかと思ったのですが……」

 タツミは溜息をついて白髪の狩人に関する情報を簡単に説明した。

「なるほど……。私の気になっていた点についてもようやく納得がいきました」

「殺人衝動の吐け口か?」

「はい。私は衝動が来たときダウンドラッグを服用していたのですが。まぁ分かりました。お願いなのですが、この後警察革命軍の噂に乗じてシラガの狩人が大量発生する可能性も見込めます。見分け方などは……?」

「それだ。あいつは自己紹介の時何と言った?」

「えっと……シラガの狩人と……」

「そうだ。だが、本当に俺の事をそっちの名で知っているヤツは白髪はくはつの狩人という。俺の場合地毛だ。わざわざグレーヘアーを名乗ると思うか?」

「た、確かに……。心得ました」

 タツミは溜息をついた。

「して教官、この偽男に関する情報は私が集めてきましょうか?」

「いやいらない。というか、もし本当にあいつが俺達TGJCの情報を入手しているのであれば向こうからくるはずだ。そのうえで返り討ちにすればいい。まさか、こんなにも早くあの男と敵対関係を持つことになるとは……」

 とタツミは悪だくみをしているかのような笑みを浮かべた。


 その日の昼。

 タツミは、面倒ごとに巻き込まれぬよう近くの土手でコンビニの飯を食っていた。

 満腹感に浸り、やがて眠気に襲われたタツミはそのまま草むらに寝転がり目をつぶった。


「獅童さん、獅童さん」

 激しく体を左右に揺らされ目を覚ますと、横には沢渡がいた。

「獅童さん、こんな所で寝ていていいのですか? 確か、一児の父親であらせられて……」

「問題ない。信頼できる人間に預けている。というか、今はまだ中学校だろ」

「ちゅ!? 中学生!? えっと……タツミさん今おいくつで……?」

「あ? 十八だ」

「そうすると……五歳の時に……!?」

「まさか。あいつは孤児だ」

「そ、そうでしたか……それは失礼を……」

「かまわない。それよりお前はこんなところで何をしている?」

「ただ、知り合いを見かけたから……」

 タツミが睨みつけると、沢渡は息をのみ、話をつづけた。

「本当にあなたの眼光にかないませんね……。先日あなたが去り際に置いていった言葉について僕なりに考えてみました。つまり、獅童さんは勝てる見込みをつくれと言いたかったのですよね? 自分の身に迫っていた危機、それは近くに暗殺者がいるとか殺し屋がいるというわけではなく、言葉だけの我々だとすぐに政府権力に潰されてしまう。そういう事ですよね? なので、我々も勝ち筋を見出すため動きました! 今日の生放送見ていただけましたか? シラガの狩人の引き込みに成功しました!」

「あぁ。見たぞ。あの男は本当にシラガの狩人なのか? 確かに、俺もカナダで殺されたという報道を聞いたときはさすがに捏造じゃないかと疑った。しかし、あの男が本物であるという証拠がどこにあるというのか。世界中には色々な薬物、遺伝子工学の発展により、白髪なんて珍しいものでもない。第一、俺だって白髪に赤目。本物のシラガの狩人が俺な可能性もあるんだぞ?」

 タツミが寝転がりながら真面目に話すと沢渡は声を上げて笑う。

「ははは!」

「何がおかしい」

「すいません! 孤児を引き取って育てているような方が伝説の殺人鬼なわけないじゃないですか! ご安心ください、あの方は本物ですよ」

「ほぉ? 根拠は」

「彼に関する全ての個人情報はどこを探っても出てきませんでした。そんな人間、まともなはずがありません。それに、彼の体術、射撃術は非常に洗練されていて、高速移動を可能とする日本の古来より伝わる忍術も実践していただけましたし。まぁ、やり方や解説に関することは教えていただけませんでしたが……」

「忍術……」

 タツミは右手を顎に乗せた。

「はい、ここまでそろえば獅童さんにも警察革命軍にご参加いただけるかと思いまして……」

「そうだな。俺を勧誘するには五十点だ。娘が孤児だという話は今日出したが、俺に子がいることは認知していたはず。汚職にまみれた政府がもたらしている実際国民に目に見えて分かる被害はなんだ?」

「えっと……不当裁判等ですね……それに若者が圧力をかけられクビにされたり政府関係の子が優遇されたり……」

「そうだ。実はあの時言ったお前に迫っている危機には二つの意味があった。一つはお前が言ったもの。そして、もし俺が警察革命に協力し暗殺されたら? 残された子はどうなる。それに、その状況を目の当たりにした子持ちの人間が革命を続けられると思うか?」

「確かに……」

 沢渡は顔を俯けた。

「俺はあんたらに期待しているさ」

 タツミは乾いた笑顔を向け立ち上がった。

 そして一言。

「頑張れよ」

 沢渡の肩に軽く手を乗せ土手を上って去っていった。



「頑張れよ沢渡。俺を殺せるもんなら殺してみやがれ」

 少し離れた土手の上で沢渡を背に感じながら呟いた。

「安心しろ。直ぐに殺してやるさ」

 すれ違いざまに何者かがそう言い、タツミは後ろを振り返ったが、すでにいなくなっていた。



 その晩、タツミはベッドの上で手を頭の後ろに回し天井を見つめていた。

「忍術……。そういえば昔……。一度行くか? あそこに……。そういえば前、八重原は俺の事を生物兵器の原石だとか言っていたよな……。チッ、俺の受講開始から二か月後位に入ってきたから知らねぇだけだ。俺はあそこで……」

 独り言をつぶやこうとした瞬間、胃の中で胃液が暴れだすのを感じたので、タツミは一度思考を放棄した。

「仕方ない……。一度一人で行ってみるしかない……か」

 そういってため息をつきながら眠りについた。


 次の日、早朝。

 卒業した四人の指示を的確にし、飛行機での輸送を開始。

 その後、出かけるという旨の手紙だけを残しタツミは演習場を出た。


 日本海に浮かぶ小さな孤島。

 海岸からはうっすらと本土が見えるほどの距離の島だが、現在人の立ち入りを禁止している。

 この島では、過去に狂った人間たちによる狂ったプログラム授業が行われていたからである。

 飛行デバイスを使用し、地に降り立ったタツミの前には、ツタの絡まり生い茂る緑に飲み込まれかけている白い壁の建物。

「もう二度と来ねえと思ってたし、来たくもなかったんだがな。来ちまったよ。御剣みつるぎ島」

 タツミは歩いて白い建物に入る。

 木々の侵略により、所々割れていたり埃を被った入りしているが、中は学校の教室の様になっていた。

 唯一違う点で言えば、一階なのにどの階段にも下りがあるという事、つまり地下があるのだ。

 中に入ったタツミは水道をひねったりスイッチを押したりしてみる。

「どうやら水は止まっているが電気は来ているみたいだ……」

 地下階段を下った先にあったスイッチを押すと、一斉に電機が付きまるで病院の手術室の様な真っ白な壁で作られた廊下が延々と続いていた。

「確かこっちだったような……」

 曲がり角の先に会った巨大地下教室。

 そこを見たとたん、タツミの様子が急変した。

 頭の中を流れる真っ赤な記憶。

 そして未だ聞こえる激しい悲鳴と怒号。

 更に教室の中には未だ血痕や人骨が転がっていた。

 タツミの脈波どんどんと早くなり、呼吸が速く、浅くなっていく。

 ヒューヒューと息を吸い込む音を上げ、床に垂れるほどの冷や汗をかき、歯をがちがちと鳴らす。

 そして数秒後、タツミの視界は黒く染まり、その場で倒れて意識を失った。





 同日、昼下がり。

『TGJC各員に通達。午後三時、通信会議室にて依頼がある。吉原』

 というメールが皆に送信された。

 その指示に従って会議室に集まったのは十名。

「タツミはどうした?」

 リュウが腕を組みながら問うても誰も返事をしない。

「八重原ちゃんに聞いてみたら?」

 ミカは携帯を出して彼女に連絡を取った。

『教官ですか? 教官なら今朝用事があるって出かけていきましたけど……』

「帰宅時間とか言われてない?」

『い、いえ全く……』

「そう、ありがと♪」

 電話を切って首を振った。

「一応依頼内容を聞いて、それから受けるか聞いてみましょう。招集の依頼の場合、偵察や調査の任務の可能性が非常に高いからね」

 ユウヤは苦笑いしながら言った。

 そうこうしているうちにモニターの電源が入り、吉原と連絡が繋がる。

「タツミが今音信不通でな。どっかに出かけてるらしいんだが……」

 マサキが説明すると。

『やはりですか……。実はこの依頼はタツミ君に出そうと思っていたのですが、昼に連絡をしても全くで……。まぁ偵察なのでいいでしょう。内容は、御剣島という島の調査です。この島は過去、封鎖されて現在は人の出入りを完全に断っているのですが、数週間前から小さな船で向かう人影が度々目撃されているのです。理由や内容に関しては見当がつかないのですが……』

 と内容の説明を始めた。

「我々とて暇ではない。そういう任務は軍にでも回してくれないか」

 ユイカがきつめの口調で断ろうとしたが吉原は首を横に振った。

『御剣島に入ることは国家内での最上級機密にも匹敵る行為だ。あの島では昔……非人道的行為を毎日のように行っていた場所だからな……』

 吉原は目を下にそむけた。

 その後、結局依頼を受ける事にした執行官達は、夜御剣島への出立を決めた。


「それにしても、非人道的行為ってなにかなぁ~? 殺し? 拷問?」

「ミカ、それについて議論するのは少しあれじゃないかな……?」

 ユウヤは引きつった笑みを見せる。

「にしても、なんだかマサキ静かね。まさか……毒キノコでも食べた……?」

 いつも騒がしいはずのマサキが何か真剣な顔をして悩んでいるのをみたミズキが謎の嫌悪感を覚えた。

「いやな、前に聞いたことがあるような気がするんだよ……御剣島って……」

「え、何その答え……キモイ……」

「黙れぺったんこ!」

「あ? そっちっが黙りなさいよ! この能筋男!」

 夫婦喧嘩の様子を苦笑いしながら皆に割って入るようにトオルが口をはさむ。

「確かにどこか聞き覚えがある。一体どこで……」

 少し間をおいてサオリがユウカの服の裾を二、三回引っ張る。

「ん? どうしたの」

 サオリはユウカの耳元に近づき耳打ちをした。

「それよ! 確か御剣島ってタツミが殺人兵器養成プログラムを受けていた島だわ!」

「それですわ! しかし、あの男はそのプログラムを受けたことに関しては話してくれましたけれど、内容とかに関しては一切お話していただけませんでしたわよね……」

 スズはあきれ顔で言う。

「けど、なんかそのプログラムの事に関して話すタツミの顔ってなんかこう……これ以上踏み込んじゃいけないし尋ねてもいけないって感じがして聞けないんだよね……」

 アカリが溜息をつく。

「もしかしたら過去の資料があるかもしれない。あのプログラムを受けた人間は強くなるらしい。もしかしたら剣の鍛錬に……」

「やめなさい。あのタツミが内容を話したがらないのよ? 相当辛いものなのよきっと……」

「しかしユイカ、前にタツミが言っていたプログラムに関する内容でまず心を無にしてから始まるみたいなことを言っていたじゃないか。剣術に置いてそういう点は見習わなくてはいけないのではないだろうか?」

「確かに、プログラムの大まかな流れは話してくれていたし、そんな事も言っていたけど……。確か、感情を無にして、人格を再構成、殺人を享楽と認識させるだった気がするわ」

 リュウは少し言葉に詰まったが、まだ取り込む意思を見せていた。

「うまく扱えば……」

「ねぇ、タツミがプログラムを受けていた一年間に罪の大小にかかわらず囚人が一斉に何処かへ輸送された話、聞いたことあるでしょ」

 ユウカはリュウの肩を強めにつかんだ。

 その様子を見た彼はさすがにあきらめる事にした。


 深夜の廃島はとても暗い。

 しかし、木々に覆われた白い校舎の中からわずかな明かりが漏れ出していた。

「これは……学校の校舎?」

 ユウヤは目を凝らして考える。

「しかし、明かりがついてるってことは人がいる確率がたけぇわけだ」

 マサキはライフルを抱えて中に入っていった。

 皆は一度地上に出ている校舎を散策し何も無い事を確認したうえで地下に向かった。

 

 足音の響き渡る真っ白な廊下を進み、散策をする。

「こ、これは……」

 皆が目撃するもの全てに嫌悪した。

 それもそのはず。

 所々石が丸出しの汚い牢屋。

 その中の壁には無数の傷が彫られており、血痕も多々あった。

 また、『殺して』『死にたい』等と彫られている箇所も少なくなかった。

 地面には何も置かれていない。

 吉原の話によると島内部は全て閉鎖前から触れてもいないという事なので、当時からなにもなかったのであろう。

 ただ一つ、部屋の隅に小さな穴が掘られており、中からは異臭が発生していた。

「きっとトイレだね」

 ユウヤは鼻をつまみながら懐中電灯を当てた。

 牢屋内に光は存在せず、扉に開けられた小さな窓から差し込むものだけだった。

 

 さらに先には、ありとあらゆる拷問器具の置かれた部屋。

 古びた木の看板には懲罰室と書かれていた。

 中には血痕はもちろん、滴る途中で凝固した血液まで存在した。

 さらに所々人骨と思わしきものが吊られていたり積み上げられていたりした。


 次に見つけたのは『風呂場』とかかれた部屋。

 しかし、中に浴槽やシャワーは無く、ただただ広いだけの部屋だった。

「こ、ここがお風呂場……? どうやって?」

 ミカは少し周囲を見渡しながら言った。


『この先訓練場』

 と書かれた看板を目にしてそちらをめざした一行の前に現れた、倒れたタツミ。

「タツミ!」

 皆は駆け寄って彼の安否を確認する。

「大丈夫、息はある。けど酸欠みたいね。ミズキ、酸素缶ある?」

「あるよ!」

 ミズキは急いで缶を取り出しユイカに投げ渡した。


 

 暫くしてタツミは目を覚まし、目の前の光景に驚く。

「なんでお前らここに……?」

「それはこっちのセリフだ。数週間まえから不審者が目撃されたといえから来たが……タツミが犯人だったとはな」

 マサキは呆れた表情を見せた。

「まて、俺がこの島に来たのは十一年ぶりだ。きっとその不審者は俺ではない」

 タツミは落ち着いた様子で否定した。

「で、アンタはなんでこんなところで倒れてたわけ?」

 ユウカがタツミを問い詰めようとする。

「い、いや明確な理由はよくわからない。この訓練所を視界に入れたとたんに……」

 タツミは再度顔色を悪くし、黙り込んだ。

「だ、大丈夫ですの?」

 スズは少し心配そうに顔を覗き込む。

「あぁ問題ない。……そろそろ話せるかもな……。ここで行われていたことについて……」

 タツミは壁によりかかり天井を見つめた。


 この話は今から十一年前、タツミの年齢が七歳だったころにまでさかのぼる。

missionfile20前後でTGJCは一応完結する予定ですが、すでにTGJC2(仮)やTGJC3(仮)、TGJC4(仮)のいわゆるプロット的なのは完成しております。

なら一緒にすればいいやんと思うかもしれませんが、少しずつ話の内容が変わってきたり、登場人物が多すぎたりと色々問題がありそうなのでこうして分ける形を考えることにしました。

今後ともTGJCをよろしくお願いします。

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