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TGJC mission file 7:<Before the Storm> 1

この部のタイトルなんかしっくりこないからそのうちかわるかも…

変わらないかも…

 ロシリア遠征より帰還後約四週間。

 タツミの体も回復し、無事に退院し普通に生活していた。

 博士は未だカナダにいるが、タツミのカルテを見たらしく彼は電話でこっ酷く叱られた。

 

 遠征前、タツミが八重原に頼んだミルリグロス卒業の件は、タツミ達に奪還を依頼した後彼女によって遂行され、書類は出来ているという事だった。

 また、八重原 里香はクローズバリアアイランドに軟禁され、久乃に対して担保としている。

 部隊演習場には他の執行官達が一足先に到着し、練習を再開しているらしい。

 しかし、タツミの部隊は未だ教官の空席が続いていた。

 退院してから今までの間、戻らなかった理由はもちろん白髪の狩人死亡に関する情報を探っていたからである。

 タツミは色々な人をあたってみたが、真相は掴むことが出来ず、捜査は難航。

 更に、彩芽の方も手詰まりの様で一時中止となった。

 それが約二日前。

 そして、現在は更なる問題に襲われていた。

 現在早朝。

 この時間帯にタツミはたたき起こされる。

「パパ! 今日は遊園地連れてってくれるんでしょ!」

 タツミの腹の上にまたがるユイナ。

 更に後ろからカオリが現れ、準備完了を伝える。

 ベッドからゆっくり体を起こし伸びをする。

 倒れたユイナの両脇に腕を入れ、抱え上げて床に下ろしてやりクローゼットの取っ手に手をかける。

「ちょっと」

 カオリが後ろから声をかけ、タツミを振り替えさせる。

「タツミ君はスーツしか着ないし服選びのセンス無いからこっちで用意してあるから」

 そういって椅子に掛けられた男性用の服を軽くたたく。

 タツミはそちらに向かいながら、上に来ていたインナーを脱ぐと筋肉質の体についた無数の古傷が露わになる。

「……その傷……」

 カオリは、簡単に開くことのない傷だと知ってはいるが、一部自分のために受けた傷だということを知っているため、心配の眼差しを送った。

 タツミの体を見るたび彼女の表情はこうなるため、あえてタツミは何かを言うことは無いが、彼女の目線を切りながら鼻から溜息を流す。

 おかれた服を着ながらタツミはカオリに予定を問う。

「だから、遊園地に行くの。そうそう、なんかタツミ君今大変そうだったし、護衛として久乃さん呼んでるから……」

 その言葉を聞いてタツミは動きを止める。

「八重原と知り合いなのか?」

「え、えぇ……。タツミ君の入院中にたまたま病室で会って話したの。タツミ君の直属の部下だって……」

「そうか。気を付けろよ。そうやって内部に忍び込もうとする人間もいるんだ。今回は八重原だったからいいが……」

 そういって動きを再開した。

 

 丁度着替えが終わり、リビングにたどり着く頃、家のチャイムが鳴る。

「八重原です」

 インターホンの外には畏まった様子で少し頭を下げた八重原がいた。

「はーい! 今開けます!」

 カオリは返答し、家の門を開ける。


 その数分後、八重原はようやくドアの前に姿を現すころには皆の出発準備が完了していた。

「迎えに参りました」

 一見私服に見える八重原だが、防弾チョッキを内部に着込み、至る所に武器を隠しているの。

「八重原、武器を隠すならもう少しなじませた方がいいぞ」

 タツミが話しかけながら彼女の肩を叩くと、カオリが。

「え!? 武器!? 一体どこに……」

 と驚く。

「まぁ、素人の目ならごまかせるかもな」

 タツミはユイナの手を引きながら山を下りガレージの方へ向かおうとすると。

「教官、本日は私が」

 と言って車のキーを見せる。

「だがな……」

「ロシリアは私の依頼です……。そのせいで三人の時間を減らしてしまったのも同然。なので、三人、家族水いらずの時間を楽しんでいただきたく思います」

 前のめりに畳みかけてくる八重原に押されるタツミ。

「わ、わかった……」

 その圧に耐え切れず、許可を出してしまった。

 

 自宅前には高級リムジンが止められていた。

「どうぞ」

 八重原はリムジンの後方のドアを開けて三人を中に誘導した。

 タツミは溜息をつきながらカオリユイナを先に乗せ自分も乗り込んだ。

 その後彼女はドアを閉め運転席へと向かった。

 内部は向かい合いのシートになっており、テレビ、冷蔵庫等も完備であった。

 運転席とは完全に隔離されており、三人だけの空間が確立されていた。

「凄ーい……」

 ユイナは圧巻されていた。

 タツミは溜息をついて足を組む。

「しかし、あいつどうしちまったんだ。前まではこんな従順な奴じゃなかったぞ?」

「そうなんだ。病院の中で意識のないタツミ君に対してもこんな感じだったから、元からなのかと……」

 タツミは首を横に振った。

「パパ! 私最初これ乗りたい!」

 ユイナは元気に園内マップを広げてジェットコースターを指さす。

「大丈夫かなぁ? お前にはまだ早いかもしれんぞー?」

 話しかけられたタツミはすっかりパパへと変わり、目線をユイナの所まで落としていた。

「大丈夫だよ! 私大人だもん!」

「そうかそうか! 成長したなユイナ! 偉いぞー?」

「偉いぞって遊園地行くの初めてじゃないの……」

 二人の会話にカオリが突っ込みを入れる。



「ようやくついたなぁ!」

 リムジンとはいえ、長く座っていると血流が悪くなったりするもの。

 タツミは外に出て背筋を伸ばす。

 二人も後から出てくる。

「まだ開園前なのに人が多いわね……」

「まぁ、今日は休日だからな」

 ユイナの迷子防止のため肩に彼女を乗せ、タツミ達は列に並ぶ。

 

 暫くして開園のアナウンスが流れ三人は人ごみに押されながらもなんとか広いところまでたどり着いた。

「これは……弾丸をよけるよりつらいな……」

 タツミはユイナを肩から下ろし手をつなぐ。

「その感覚は分からないわ……」

 カオリは少し冷めた表情で見ていた。

 その後三人は先ほどユイナの指したジェットコースタを目指した。


 彼女の所望した乗り物は、園の比較的奥まったところにあったため、ほとんど並ばずに乗車できることになった。

「レバーを下げるので手を挙げてください!」

 係員の女性が、横三人乗りのコースターのレバーを下げに来る。

 ユイナが楽しそうに手を挙げる様子を見ながら両端に座るタツミとカオリも手を挙げる。

 その後、レバーが下がり、また別の係員の出発の掛け声と同時に、ゴンドラがゆっくりと急な坂を上っていく。

「やばい……思った以上にやばいわ……」

 坂の半分を過ぎたあたりでカオリの顔が青くなりはじめる。

 その表情をみたユイナはタツミの方に視線を向けた。

「ん? 怖いのか?」

「全然! カオリちゃんがなんか怖いみたいだけどパパはどうかなって」

「ぱぱも全然大丈夫だぞ! カオリは怖がりさんなんだな」

 タツミとユイナはカオリの方をみて笑ったが、彼女はそれどころではなさそうで文句を言う気にもなれなさそうであった。

 やがてコースターは頂上へとたどり着き、カウントダウンのアナウンスが流れると同時に、タツミとユイナは手を挙げて。

「3! 2! 1!」

 とカウントダウンをした。

「0!」

 二人がそういった瞬間、コースターは速度を上げ、坂道を下っていった。

「わーーーー!」

「おー」

 ユイナとタツミの二人の声をかき消すように。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!」

 とカオリが絶叫する。

 

 コースターが終了し、出口から手をつないでタツミとユイナが出てくる。

「楽しかったね!」

「あぁ、そうだな」

 二人の元にベンチに座っていた八重原が現れる。

「おや、カオリさんは……」

「カオリちゃんはあそこ!」

 ユイナは遥か後方から真っ青な顔と共に出てきたカオリを指さした。


 ふらふらと近づいてきてカオリは。

「気持ち……わるい……」

 とすっかり目をまわしている様子だった。

「少し八重原と休んだらどうだ?」

「そうする……」

「ってことだ。頼んだぞ」

 八重原は軽く頭を下げカオリに肩を貸しながらベンチへ向かった。

「ぱぱ! あれ!」

 次にユイナが指さしたのはコーヒーカップ。

「よし!」

 二人は素早く列に並ぶ。


 二人の順が来る頃にはカオリも少し回復し柵の外によりかかりながら見ていた。

「私、真ん中のやつまわしたい!」

「よし来た!」

 タツミはカップの中に座りユイナを膝の上に乗せる。


 ブザーと同時に、カップがゆっくり動き出したのに対し、タツミ達のカップは周りからドン引きされるほどの速さで回り始めた。

 係員は出口でビニールを用意しはじめ、周りの客は手が止まり、何もできなくなるほどだ。

 やがてカップの動きが止まる。

 タツミは膝の上のユイナを降し、カップの淵をジャンプで飛び出し着地。カップに作られたドアを外から開けユイナをエスコートするように手を取り、二人とも真直ぐ出口へ向かう。

 その様子を見た観客は感嘆の声を上げた。


 以降、このコーヒーカップを最高速で回した後、飛び降りて一切の乱れなくパートナーをエスコート出来たら恋が実るという噂が出来たのはまた別の話。



「全く……あなた達の三半規管はどうなっているのよ……」

 カオリは呆れていた。

 四人で歩き出そうとした矢先、前方から悲鳴が聞こえてくる。

「泥棒!」

「どけぇ!」

 全身黒ずくめの男には不似合いな真っ赤なカバンを抱えて人ごみを突き飛ばしながら走ってくる。

「誰か! 捕まえて!」

 男の後方から甲高い女声が再度響く。

「ふむ、俺は無理だな」

「え? タツミ君なら強いから……」

「殺しちまう」

「あぁ……」

 カオリは一歩後ろに下がった。

「では、私が」

 八重原が一歩前にでて身構える。

「どけぇ! クソアマ!」

 突っ込んできた男の腕を八重原は強く掴み、一本背負いで投げ飛ばす。

 彼女の飛ばした男が宙を舞いながらユイナの方に飛んでくる。

「え?」

 ユイナにかかる影が段々と大きくなっていく。

「はぁ。だからあいつはツメが甘いんだ」

 タツミはユイナの前に立って飛んできた男の腰のあたりを蹴り近くの鉄柵に激突させ意識を奪った。

「ほれ」

 男の持っていたカバンをむしり取り、女性に投げ返す。

「本当に、ありがとうございました」

 頭を下げる女性を背に再度四人は歩き始めた。


「教官、先ほどは申し訳ございませんでした」

「あぁ。まぁ、初撃以外なら手加減できるからな。サッカーボールを蹴った気分だった」

 ユイナはタツミの腕を引っ張る。

「やっぱりパパは強いんだね!」

「おうよ! パパは強いんだ」

 タツミは手をユイナの頭に乗せ撫でる。


 その様子を見ながら後ろでカオリは考える。

『やっぱりこう見ると若いパパなんだけど……ついこの前まで海外でいっぱい人を……信じられないよね……』

「どうかされましたかカオリさん?」

 八重原が速度を落としカオリに並んで歩く。

「い、いえ……。えっと、八重原さんはタツミ君の教え子……なんですよね? やっぱり放任主義なんですか……?」

「まぁそうですね。同僚からはそういう風な陰口は聞いたことがあります。しかし、実際は皆の技量をしっかり見ていますよ」

「タツミ君は物教えるのとかすごい下手だからね……」

「ただ、実力も確かですから、そこに物議をかますことなんて出来ないですよ」

 二人は顔を見合わせて少し笑った。

「八重原、ちょっといいか?」

 タツミが前方から声をかける。

「では、私はあちらに」

 八重原はカオリに軽く頭を下げて素早く前に行った。

「どうされましたか教官」

「WSだ。どうだ?」

 彼女は何かハッとした様子で目玉を動かす。

「確かに……。私が思うに32でしょうか」

「そうだな。いけるか?」

「問題なく。ただ、手を出さずの状況のため万が一の状況を考えて一応確認した方がよいかと」

 タツミは顎に手を添え考える。

 その後、歩みを止めぬまま手持ちのイヤホン型無線機を取り出し八重原に手渡す。

「これを付けて離れて待機。俺の合図を待て」

「承知しました」

 八重原は人ごみに紛れ、うまく別行動へ切り替えた。

 その様子を見ていたカオリが質問する。

「な、なにかあったの?」

「WS32だ」

「ダブリューえす……?」

「ウェスト方向に三人、サウス方向に二人。何者かが俺達を監視している可能性がある」

「それじゃあ……」

「まだ敵対勢力と決まったわけではない。単に、いつまでも演習場に戻らない俺を政府が監視しているだけかもしれない。俺達はとにかく普通にしていればいい」

 そういうとポケットから小さな長方形の板を取り出した。

「ユイカ、暑くないか? 仰いでやるぞ」

 タツミは小さな板で不規則に仰ぎ始める。

「何してるの?」

 ユイナは少し不思議そうにタツミを見上げる。

「これはな、声も音もいらない会話でな? モールス信号っていうんだ。この小さい鏡で太陽光を反射させてメッセージを送っているんだよ」

「すごーい! ねぇねぇ! なんて送ったの?」

「ん? 『何者だ 身元を明かせ 返事がなければ殺す』ってね」

 ユイナに説明するタツミの横でカオリは更に呆れる。

「笑顔でなに伝えてんのよ……」

「コミュニケーションだ」

「なわけないでしょ……」

 タツミは二人とアトラクションを目指しながら監視者を見ていたが、返答がくる様子はなかった。

「無返事だな」

『了解』

 少し離れた高台で何かが素早く動き、黒い影から液体が噴き出した。


「ねぇねぇタツミ君、私一応TGJCの皆に訓練されているんだし、学校の送り迎えとかの護衛っているかな?」

「ん? 突然どうした」

「い、いやほら、前ロシリア行く前とかTGJCの皆が時間を見てきてくれていたじゃない? 別に大丈夫かなぁと……」

「あぁ、それなんだが今のお前は弱いぞ」

「へ?」

「正直、あの訓練時間で人間を鍛え上げるなんて不可能なんだ。最低でもあのトレーニングを三年以上続ける必要がある」

「あ、あれを三年……」

 カオリは顔を青ざめる。

「そう。だから、俺達は最低限の技術を教えた。お前の呑み込みが早いからな、あの場だけは知識だけで一連の動作をできたかもしれないが、今はすでに抜けきっているぞ。つまりお前は今、ただ知識のある人というだけで、それに準ずる応用力や次へつなげるための道がない。簡単に言えば、弾丸と銃を持っているがマガジンがない感じ……これは違うのか……? まぁとにかく、今のお前は大して強くない。そして、中途半端に技術があるせいでそっちに脳みそを回してしまいがちになるため、むしろ普通の高校生より弱いかもしれないぞ」

「そ、そうなんだ……」

 彼女は肩を落として落ち込んだ。

「安心しろ。お前、あの合宿の最終日に指南書もらったんだろ? それを見て、一度正しい形に直してから実践で組み合わせて使えばまた習得できるさ」

「タツミ君は凄いね……」

「いや、俺だって定着には苦労したぞ。相手の行動パターンは読めないことのが多い。つまり、相手の行動から自分の取るべき行動を絞り、確率的に動くしかないのさ」

「タツミ君でもつらい訓練とかあったの……?」

「俺? まぁ俺は……」

 その話をしようとしたとき、タツミの表情筋が固まり言葉が出なくなる。

「だ、大丈夫……?」

「あ、あぁ問題ない。そうだな。俺はわけあって受けてないがあいつらが前に富士山三往復ランニングがつらかったらしいぞ」

「富士……?」

「なんか、ふもとから山頂までランニングするんだと。三往復。皆二十四時間以内に終わったらしいがな」

「えっと、普通に三往復した場合どのくらいかかるの?」

「登りで六時間、下りで五時間と考えると約十一時間で一往復ってことになるな」

「ねぇ……とある事情って……もしかして義手の……」

「いや、その時じゃない。まぁ、その時の俺の話なんて聞かない方がいい」

 タツミは溜息をつきながら到着したアトラクションの列に二人を先導しながら並ぶ。

 一瞬空気が固まったが、そのすぐ後に今まで通りの雰囲気を取り戻し無事楽しい遊園地は終わった。

 帰りも再度八重原に送ってもらい、追ってもなく帰宅した。


 二日後、タツミは演習場に復帰するといってカオリとユイナをおいて家を出て行った。

 普段は、笑顔で送り出すカオリだったが、遊園地の日の今までに見たことがないようなタツミの恐れた顔が妙に引っかかり、引きつった笑いになってしまった。



『あれ? カオリちゃん。どうしたの』

「クリスさん……えっと、聞きたいことがあるんですが……。タツミが昔執行官プログラムを外されていた時のプログラムのことで……」

『あー……。えーっと、殺戮兵器プログラムのことだよな? あれは、そこそこの人数が受けた殺し専門のプログラムだ。そうそれだけ。本当にそれだけだ。じゃあな!』

「あ、ちょっと!」

 カオリが引き留める間も無くクリスは通話を切った。







 演習の合間に昼食をとるため町へと出かけたタツミ。

 皆班ごとに行動をしているため、一人で出かけるなんてことは珍しくなかった。

 

 ふらふらと街を練り歩き、食べたいものを決めて店に入る。

「そういや最近落ち着いたカフェとか入ってねぇし……ここにすっか」

 案内されるがままに席に着く。

 コーヒーとサンドイッチを注文し、窓際でひっそりと待つ。

 やがて到着した料理をくちに入れ、雰囲気をたしなむ。

「はぁー」

 タツミがコーヒーの香りをかいで息を吐いたとたん。

「全員動くなぁ!」

 男性の大声と数発の銃声が聞こえる。

 店内では悲鳴が響く。

「通報しようなどと考えるなよ! サツが来たら直ぐにわかるからな! もしそんなことしたらこの女の頭をぶち抜くからなぁ!」

 男は銃を店員の女性のこめかみに突きつける。

 その様子を横目にタツミは落ち着いた様子でサンドイッチをかじる。

「銃を捨てろ! さもなくば撃つ!」

 今度は客の中にいた男が震えた手で銃を構えて叫ぶ。

「何だテメェ?」

「俺は巡査の沢渡さわたり 公平こうへいだ! その女性を解放しろ!」

『巡査? あぁ、警察の一番下っ端か』

 タツミは脳内でぼんやりと相関図を思い浮かべコーヒーを一口飲む。

「俺は金が必要なんだ! 金をよこせ!」

『全く馬鹿な男だ、あのさわ……なんたらという男は。問答無用で男の脳天を貫けば静かになるものを』

「そんなことをしても意味がない! 君も早く自首をするんだ!」

「貴様に何が分かる! 警察官殿はいいよなぁ? 給料も安定してもらえるしなぁ?」

「僕は金目当てで警察官になったのではない! 誰かの笑顔を守るために警察官になったんだ!」

「黙れ!」

『あーあ。そりゃ追い詰められた犯人は暴挙に出るわな』

 男は案の定銃口を沢渡の方に向けて一発放つ。

 弾は幸い外れ、近くの壁に刺さる。

「おとなしく投降しろ! お前の……!」

「黙れぇぇ!」

 男は店員を押し飛ばし、沢渡に銃を向けたまま突進し始めた。

 沢渡はピストルを納め、生け捕りにするために腰を落とし武術の構えをとった。

 しかし、男の放った適当な弾丸が沢渡の右太ももを掠り、膝をつく。

 男は彼に馬乗りになり脳天に銃口を突きつける。

「ここで君がトリガーをひけばもう後には戻れなくなる。後悔はないのかい?」

 沢渡が発したこの一言が、傍観していたタツミになぜか響いた。

「死ねぇぇ!」

『……別に助ける義理は無いんだがな……」

 タツミはテーブルに備えられたつまようじを一本取り、ダーツの様に投げる。

 つまようじは、男のトリガーの引かれた銃のスライドとハンマーの間に挟まり発射を阻止した。

「ど、どうなっていやがる!?」

 隙を見つけた沢渡はすかさず馬乗りの男をひっくり返し、取り押さえた。

「いたたたたた!」

 男は抵抗むなしく、手錠をかけられた。

 沢渡は周囲の歓声を受けながら応援を呼び引き渡した。

 タツミは一部始終を見ながら勝手に厨房のカウンター内に入りお冷を自分で入れる。

 再度席に戻り足を組んでいると、沢渡がタツミの方にやってくる。

 しかし、タツミは目線を向けることなく応答する。

「なんだ」

「いえ、先ほどは助けていただきありがとうございました」

「さぁ? 何のことだか」

「あの爪楊枝、あなたが投げてくれたんでしょ?」

「爪楊枝?」

「あの取っ組み合いで、空気抵抗なく爪楊枝を投げるため先端を向けて投げたと推測すると、この方向から飛んできたとしか考えられません。ちなみに、このブロックの席に座っていたのはあなただけですよ」

「そうか。じゃあな」

 タツミは立ち上がり沢渡の横を通り過ぎようとした。

「あ、待ってください! ぜひお礼を!」

「必要ない。ただの気まぐれだ」

「まぁそういわずに……。外に移動販売の有名店のクレープ移動販売が来てるんですよ! ぜひおごらせてください!」

「……。はぁ、わかった……」

 しつこい沢渡にタツミは同行することに決めた。


「どうぞ」

 沢渡はベンチに座って待つタツミにクレープを手渡す。

「あぁ」

「それにしても、お強いですね。軍の方か何かなのですか?」

「いや? あぁ、俺は獅童だ。獅童辰巳。一般人だよ」

「本当ですか?」

「ふむ、していえば一児の父だ」

「ほ、本当に何もないんですね。なら、我々に協力していただけませんか! 貴方の様なお強い方をならきっと!」

「は?」

「あぁ、僕は警察革命軍の者です。ご存じ、今の日本は汚職にまみれています。それに総理大臣は秘密裏に殺人組織を作って悪人を殺しているとか……。悪人は、絶対に逮捕され、法によって裁きを受けるべき。問答無用で殺されるなんて……」

「ほいほいとそんな話一般人にしていいのか?」

「というか、警察革命軍と言えばもう日本中で知れ渡ってる名前だと思いますが……」

「そうなのか……。なぁ、その組織本当に安全なのか?」

「……安全とはいいがたいですね……。特に僕はいわゆる上層部というやつだからね……。命を狙われることも多々あるよ……。さっきの強盗もきっと僕の事を偶然を装って殺しに来たんだと思われます」

「なるほどな……」

 タツミは溜息をついて最後の一口のクレープを頬張り包み紙をごみ箱に投げ入れる。

「で、なんでお前はそんな活動しようと思ったんだ? 普通の人間であれば周囲の波に揺られるがままに動くはずだ。お前幹部なんだろ? つまり活動の中心。その真意を聞かせてもらおうか」

 沢渡は少し表情を曇らせた。

「……あなたは……人を殺したことがありますか……?」

「俺か?」

「へ、変な質問してすいません! あるわけないですよね! ……でも僕はあるんです。もちろん、意図的なものではなかったんですが……。僕が十歳のころ、父が冤罪で捕まりました。当時母は、父の無実を証明するため、寝る間も惜しんで活動をしていました。というのも、冤罪の内容が明らかな嘘。そして事件当日、父と母は二人でいたのです。ただそれ以外の証言はありませんでした。そして僕の十一歳の誕生日の日。家に全身黒ずくめの男が一人乗り込んできたのです。母は、僕を守るため男に立ち向かいましたがあっさりと……。僕は必死で逃げ回りました。そして台所から包丁を持ち出し……。政府はこの事件を『強盗事件』として処理したんです。そして数年後警察になった僕は、父の事件に関する秘密ファイルを入手してしまいました。まぁもうお分かりですよね」

「その黒ずくめの強盗は、唯一の証拠人を始末するために政府から派遣されたものだったのか」

「はい……。だから僕は今の警察……いや、日本政府を変えて見せる! 汚職している人間はしっかりと法に裁かれるべきなんだ! なのであなたのお力添えを……」

「断る」

「え!?」

「なぁ、法ってなんだ? お前の父の最後の審判を下したのは誰だ?」

「なので、汚職しない裁判官を……」

「汚職しない? そんなの夢のまた夢だ。もし、お前の父親を無罪にしてやるから革命軍に潜入するスパイになれって言われたらどうする? それでもお前は断れるのか?」

「それは……」

「な? それに、お前は人間の善悪をみわけられる自身があるのか?」

「その自信はもちろん!」

「そうか。ならお前が今瀕している危機を感じ取れないのか?」

「まさか……どこかに暗殺者が?」

 沢渡は腰を上げて周囲を警戒する。

「はぁ。もういい。じゃあな」

 タツミは足早に沢渡の前から姿を消した。

あー原神リリースまでに数話分ストック作りたい……

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