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TGJC mission file 6:<対レーリズ日英共同特殊同盟> 3

おそくなりやした。

しかしなんと!

今回二節分!

いつもの倍量ボリュームたっぷり!

「ねぇトオル、本当にこの作戦うまくいくのかな? 宣戦布告もしないでいきなり攻め込んでいるわけだから、街や建物の警備隊はまだ残ってるんじゃないかな? 目的地まで結構遠いし。飛行デバイスでもなければこの距離を『加勢』という名目で渡るのは難しいんじゃないかな?」

「あぁ。それは俺も思ってタツミに聞いてみたんだが、絶対大丈夫だそうだ。多少の兵は居るだろうが女子供ばかりだろうと言っていたよ」

「別に私達に隠し事なんてしなくていいのにね。もう拷問して情報を聞き出したってことはわかってるんだし、今となってはタツミが非道な事をやっていても恐れを持ったり幻滅したりしないのにね」

「そうだな。まぁ、だがあいつ実はものすごく優しい男だからな」

「そうね。『他人』に対してはとても優しいわね」

 ミカは溜息をついた。

「確かに、いくら一緒にいようが俺達はあいつの家族という名の他人だからな」

 トオルも少し口角を上げて呆れ気味に言った。

「ほら、見えてきたぞ」

 彼の指さす先に、小さな町外れのウッドハウスが現れる。

「あそこに監禁されているのね?」

 ミカはライフルバックから単眼鏡を取り出し辺りを見渡す。

「ほ、本当に人影がないわね……」

「中に何人かいる想定で行こう」

 二人は少し離れた場所に着陸し、銃にサイレンサーを取り付ける。

 ミカも近くの木の陰にライフルバックを隠しハンドガンを構える。

「別にスナイパーで室内狙っていてくれてもいいんだぞ?」

「舐めないでよね。それに、ここは周辺に狙撃ポイントもないし」

 更にガスマスクを装着し、ゆっくり家に向かう。

「行くぞ」

 トオルはドアを突き破り、内部に毒ガスグレネードを数発投げこむ。

 グレネードは地面とぶつかると同時に青白い煙をまき散らし、視界を靄で覆う。

「絶対にガスマスクは外すなよ」

 彼が忠告した瞬間、奥から何かが倒れる音がする。

「ほ、本当に大丈夫? 救出対象死んでないよね?」

「問題ない。情報によるとターゲットは地下に監禁されているらしい。つまり、このガスは空気より軽いため、上へと昇っていく。だから地下には影響を及ぼさない。多分」

「多分!?」

 二人は部屋の奥へと進み、地下室への扉を見つける。

 小さな梯子で薄暗い地下へと降りた二人は、銃に着けたフラッシュライトを点灯させ周囲を見渡す。

「こいつは多分後から素人によってつくられた洞窟みたいなもんだな」

 トオルは、加工のされていない土や石丸出しの壁や床を見て言う。

「奥に檻がある……こ、これはひどいわね……」

 ミカは奥にあった木の檻の中を見て言葉を失う。

 中では少女が鎖につながれ、ボロボロの服を着ていた。

 近くに銀色の皿が置かれており、上には食べ物とはかけ離れた食べ物らしきものが置いてあった。

 とても人間が生活できるような空間ではなく、少女も衰弱して虫の息だった。

 様子を見かねたトオルがミカに注射器と液体を投げ渡す。

「ま、まさか……」

「違う。超凝縮した栄養剤だ。見た感じ、彼女が生きているのは奇跡に等しい。下手をすれば直ぐに死んでしまう。その薬は即効性だ。とりあえず免疫辺りの抵抗力を通常の人間レベルに戻してくれるだろう」

 それを聞いたミカは檻を銃のグリップで破壊し中に入り彼女の腕に薬を入れた注射器を突き刺す。

 少女は一瞬体を痙攣させたがすぐにおとなしくなった。

「しかし、まずいなガスマスクは二つしかない。さっきガスを投げすぎたせいでまだ地上はガスまみれだぞ……」

「え!?」

「これを使うしかないか……」

「な、何それ……」

「爆弾だ。地上までトンネルを……」

「ま、まって? それ使ったら多分この家上から崩れてくるよね?」

「かもな」

 トオルは壁にリモート起爆式の爆弾を埋め込みながら言う。

「ちょ、ちょっと待って? この子どうするの? 意識も回復しきってないのよ?」

 焦るミカの方を見てトオルは今までに見たことないくらいの笑みを浮かべて親指を勢いよ立てる。

「ちょ! ま!」

 そういった瞬間、トオルはスイッチを押した。

 壁が激しく爆発し、辺りに砂埃が巻き起こる。

 衝撃で家がゆっくりと傾き始め、メキメキと音を立てて柱にひびが入り窓ガラスが割れ始める。

「おぉ、こりゃまずい」

 トオルは空いた穴に二人を誘導し外に出す。

 その後、発火液を家に投げつけ燃やす。

「お前らもっと離れたほうがいいぞ。さっきの毒ガス、火にあたると爆発するぞ」

「な、なんでそんな危険な事してんの!?」

「ガスが空気に流されて消えるのを待つか爆発で効果を消すかの二択だな」

 そういった瞬間、家が膨れ上がり激しく爆発を起こす。

 更に温度は上昇し、家の破片もすべて溶けるように消えていき跡形もなくなった。

「あ、相変わらずマッドだね……」

「どこがだ? 後処理も考えて科学者だぞ? はっはっは!」

 トオルはえぐれた地面を見ながら高笑いをした。

「そういえばさ、私達ターゲットの確保後は飛行機まで輸送だよね? どうする? 縛る?」

「その発想は悪党だろ。別にこの様子じゃ立つ筋肉も残ってないだろうし。というか、少しでも転んだ瞬間に骨折しそうだぞこの体。丁重に輸送すべきだ」

 その瞬間、二人の無線にユウヤの声が入ってきた。

『集合地点 旧シベリア港 以上』

「地点変更? まぁいい。こちら5.変更を了解」

 トオルは少女を抱え上げ、近くにあった車に近寄る。

「ちょ、車? 誰の? え? 勝手に使っていいの?」

 混乱するミカにトオルは。

「安心しろ。この町はレーリズの拠点だからな。持ち主が帰ってくる可能性は低いだろ」

 と言いながら窓ガラスをたたき割り、中から開錠する。

 少女を後ろの席に横たわらせ、エンジンを直結して電源を入れる。

「早くライフルを持ってこい」

「う、うん」

 ミカは走って先ほど置いたバッグを取りに行った。


「誰?」

 車の中で少女がかすかに目を開け運転席で懐の武器を取り出しているトオルに話しかける。

「俺は№5。あと、あっちから走ってくるのが№3」

「№……? どこの所属のエージェント……?」

「強いて言えば日本だ」

「日本? なんで……?」

「別に俺らは日本人というだけで日本の代表として来ているわけじゃない」

「じゃあなんで?」

「依頼だ。お前を捕獲しろってな。これから日本に輸送する。別に拷問したりするわけじゃねえから安心しろ」

 そう言いながら液体の入ったボトルを取り出す。

「栄養剤だ。点滴と同じような成分構成だ。毒ではない」

 ボトルの蓋を開け、自分で飲んで見せた後ボトルを少女に渡す。

 彼女はゆっくりと中身を飲んだ。

 そうこうしているうちにミカが車に乗り込んだ。

「よし、行こうか」

 すると、前から街に残っていたレーリズの人間が押し寄せてくる。

「ポリシアタウンよりは少ないんだろうがそこそこいるなぁ。爆弾はこれ以上持ってないしハンドガンとスナイパーライフル。ガスも使えない。面倒だな」

「ちょっと待ってね……」

 ミカはスナイパーを取り出し空のマガジンに手早く七発の弾を込める。

 ダッシュボードの上に銃を固定しスコープを覗き込む。

「ガラスカッター無いのか?」

「そんなものないよ♪」

 そういってミカがトリガーをひくと、弾丸は敵の中心へ飛んでいき、勢いよく爆発した。

「ね? これなら地面えぐらないでも範囲攻撃できるでしょ?」

「すごいな、なんだそれ?」

「博士からのプレゼントで弾丸のプライマーの所に導火線がつけてあって、コア内部に仕組まれた爆弾に時間経過で着火して爆発する、時限榴弾て感じかな」

 そういって次々弾丸を打ち込んでいくうち、だんだんフロントガラスのヒビが広がっていく。

 しかし、そんな事気にせずトオルはギアボックスを動かし一気に車を加速させ、集団の間を抜けた。

「轢いたか?」

 トオルは街の検問所のゲートを跳ね飛ばしながら言う。

「さぁ? まぁ大丈夫じゃない?」

 二人は郊外へ抜け、目的地を目指した。





『き、聞こえる?』

 ポリシアタウン中央ビル二階を攻略する三人の元に銃声で消えてしまいそうな声の通信が入る。

「おう、どうしたサオリ?」

『い、今からブレーカー落として連絡網とかも全部遮断するからね……』

「頼むぞ」

『う、うん!』

 タツミは後ろから襲いかかってきた敵の顔に肘を入れながら言った。

『カウント……3……2……1……0』

 サオリが言った瞬間、ビル内全ての電気系統が消え、内部の明かりが外から差し込む光だけになる。

 タツミは右目を暗視モードにし左目にアイパッチを巻く。

 マサキは暗視グラスをかけ、クリスは所持していた暗視ゴーグルを頭から取り付ける。

「マサキのそりゃなんだ?」

 クリスはマサキの暗視ゴーグルを指さす。

「これか? こりゃ暗視グラスだ。眼鏡と見た目は一切変わらないが暗視ゴーグルの機能が取り付けられている。ヘルメットに取り付けたりベルトで占める必要がないから便利だぞ」

「相変わらずお前達の部隊の科学力は進み過ぎてやしないか?」

「かもな」

 二人は軽い会話をこなしながら襲い来る敵を次々打ち抜く。

 三人は次々と攻略していき、十階に到着。

「マサキ、そろそろいいぞ」

 タツミは近くの窓ガラスを蹴り割る。

「わかった」

 マサキはパワードスーツのパネルをいじり、窓から身を乗り出して上をめがけてグラップルフックを射出した。

「じゃあ行ってくる」

 彼はワイヤーを巻き取りながら壁伝いに昇っていった。

「タツミ、マサキ一人だけ行かせて良かったのか?」

「あぁ。俺らの侵入経路は下だと伝わっているはずだからな。屋上から会議室への警護は薄くなっているはずだ。あとは閉め切られた会議室の窓とドアに爆薬を仕掛けてもらう。その間に俺達は一気に上へ駆けあがる。単純だろ? というか、早く俺達も登った方がいいぞ。下の奴らに通信入れておいてくれ。

「わ、わかった」

 クリスは無線機のボタンを押し。

「こちらクリス。撤退準備を開始せよ」

『最後まで理由は教えてくれなかったわね』

「あぁ、ユイカの嬢ちゃん……。実はな、ロシリア政府はレーリズと一緒に俺達も一網打尽にする気なんだよ。だから、頃合いを見計らってロシリア軍の爆撃機や戦闘機、戦車に兵隊が押し寄せてくる。アメリカがロシリアに宣戦布告した今、その作戦を決行するかは分からないが、まぁ確率としては半分ずつ位だろう」

『た、大変! 戦闘機が来る!』

 二人の通信を割るようにアカリが叫ぶ。

「思った以上に早かったな」

 タツミはクリスにアイコンタクトを取り、全力疾走で最上階を目指す。

 腹に響く様な戦闘機の音が聞こえてきた瞬間、タツミ達の居る階の窓ガラスが割れ、二人に襲い掛かる。

 タツミはクリスの尻を勢いよく蹴り飛ばし、窓際から退避させ、自分はスローワールドを起動し破片をよける。

「ってぇなぁ! テメェ今本気で蹴りやがったな!?」

「お前の体はタフだろ? そんなことより、想像以上にロシリア軍の攻撃が速すぎる」

「そりゃ、宣戦布告されたからお前の首を土産にでも攻撃をやめてもらいたくて必死なんだろうさ」

 二人が体勢を立て直し、走り始めた瞬間。

『8だ! 無理だ! 爆撃で爆薬がやられたら作戦も元も子もなくなる!』

「作戦変更だ! 俺達が最上階につき次第ビルを離脱! お前はそれまで航空機からの攻撃から身を隠し、逃げ出そうとするレーリズ議員を殺せ!」

『分かった。一階組は大丈夫か?』

『こちら4! 戦車を盾に撤退を開始中!』

 通信を聞きながら、タツミとクリスは倒す対象を襲い掛かる者に絞り、さらに速度を上げて階を上る。

 サオリが撤退を始めたため、ビル内の通信系統の遮断が解除され、無線の盗聴コードに次々とメッセージが入り込む。

『ビル管制! 通信系統復活! 現在複数からの攻撃を確認! ビル十階、に戦闘機による着弾! 五階に戦車による着弾! 各所レーリズ軍に旧難要請! 全勢力をグランツィアタワーに集結させろ! 繰り返す! これはオルネリア・ウォルコット様の命令だ! 急げ! 脅威による攻撃はすでに開始されている!』

 通信を聞いてタツミは鼻で笑う。

「これはアメリカ軍が攻撃を開始するまでに内部崩壊するんじゃないか?」

「かもな。しかし、オルネリアが直接命令を出したということは、この場にいるという事じゃないか?」

「さぁな。あいつのことだ。きっとモニターで参加しているに違いない」

 

 更に階を上り、二十五階程に差し掛かったところで、外から入り込んでいた光が遮断される。

「なんだ?」

 クリスが外を見ると、そこには空を飛ぶ巨大な戦艦が光の通り道を占拠していた。

「来たな。レーリズの飛行戦艦……」

 タツミは明らかに顔を不機嫌にする。

「これが例の……ホログラムじゃない方なのか?」

「多分、この戦いはレーリズが最も戦力を費やすべき戦いだ。本物に違いない」

 タツミは獲物を見つけた狂犬の様に戦艦を見つめる。

「おい、今は上を目指すのが先だ! 別にあの船に対する怒りは大したものではないだろ?」

「いや。あの船には絶対オルネリアの野郎が乗っているはずだ……」

「だとしてもだ! 今は寄り道してる時間なんてねぇ!」

 クリスはタツミの腕を引っ張って歩みを進ませる。

 彼は軽く舌打ちをしクリスに従った


 地上三十四階。

 会議室へと続く唯一の道には、今までとは身なりも体格も明らかに違う傭兵がいた。

 スーツを身に着けサングラスをかけているのが十人程。

「やぁ、お兄さんたち? 外大変な事になってるね? 君達は逃げなくていいのかい?」

 クリスが堂々と男達の前に出る。

 拳を振りかぶった男の前に手を突き出し。

「まぁまぁ落ち着けよ。別にあんたらの親玉を殺そうってんじゃないんだ。ただ、早く逃げなくていいのかい? と聞いているだけさ」

 クリスはそう続けたが、男はクリスに向けて拳を振り下ろす。

「はぁ」

 彼は一度ため息をついて男のみぞおちに拳を入れ込む。

 男は、口から唾を吐き出し気を失う。

 それに続いて次々と男達が襲い掛かるも、クリスの体術で一瞬にして倒されてしまった。

「もういないのか?」

 相変わらず戦艦を睨むタツミに話しかけたが、話を聞いている様子はなかった。

「たしかに、お前にとって奴は親の仇みたいなものだ。仕返しをしたい気持ちは十分理解できる。だがな、今はそれどころじゃないんだ! わかるだろ?」

 タツミの肩をがっしり掴んで前後に揺らす。

「……だが……」

「いいか。今のお前は昔とは違う。今のお前には、仲間も、守るべきものもたくさんあるだろ? 命をなげうつ行動は控えろ!」

「わかった……」

 タツミは静かにハンドガンをリロードし突入態勢を整える。

「行くぞ」

 クリスの掛け声で、二人は同時に扉を蹴り開ける。

 しかし、内部に武装した傭兵はおらず、議員が震えながら机に隠れているだけだた。

 タツミは天井に向けて一発弾丸を放ち堂々と真ん中を通り抜けて最上階へと向かった

 屋上では、マサキが物陰に身を隠し攻撃から逃げていた。

「無事か、マサキ」

 タツミは彼に駆け寄る。

「大丈夫だ。しかしどうする、この状況では任務続行は難しそうだぞ」

「そうだな。本当ならこのビルを爆破し、ロシリア軍到着までにトンズラするつもりだったが……。とにかく今は地上部隊が撤退を待って、混戦に紛れて離脱するしかない。さすがに俺達でも二ヶ国にも匹敵する軍隊相手に勝てるわけがないからな」

 そういって離れていくタツミの背を見ながらクリスはマサキに問う。

「なぁ、マサキは大丈夫なのか?」

「なにがだ?」

「いや、タツミのオルネリアへの恨みというか対抗心みたいなものが異常なくらい高くてな……。さっきまでロクに戦闘に集中できてなかったんだぜ?」

「なるほどな。まぁあいつはTGJCの中でも特異な人間だしな。それに、あの男が『獅童辰巳』を保っていられるのも先生の存在が大きい。だから先生が殺されたときのタツミはひどく荒れていてな。毎日命がけ、寝る間も惜しんで暗殺犯を負ったんだ。結果、実行犯はタツミによって惨殺されたんだけど、首謀者にはたどり着けなかったんだ」

「惨殺って……」

「あぁ。猟奇的殺人の域だったと聞いているよ」

「で、その首謀者が今目の前に現れたと」

「あぁ」

 二人は離れたところで撤退状況を聞くタツミを眺めた。

 

「地上部隊の撤退がほとんど完了したらしい! 俺達も撤退を始めるぞ!」

 彼の掛け声で二人は物陰から姿を出し、飛行デバイスを起動する。

 三人の離陸と同時にロシリア軍がビルに攻撃を仕掛け、激しい音と共に傾いていく。

「こりゃすげぇな」

 クリスが感心していると。

「眺めてる場合じゃねーぞ。ロックオンされねぇうちにとっとと飛び去るぞ」

 とタツミが急かす。

 

 戦火を背に三人は無事に郊外まで脱出することが出来た。

 地上部隊は、乗ってきたトラックに乗り込み空港へ、戦車は海路から輸送されるため、協力者の巨大トラックに積まれて運ばれていった。

 対空レーダーを潜り抜けて飛行するタツミ達が空港へ着くころには地上部隊が先に到着して負傷者への手当てを始めている所だった。

 幸い、死者もおらずマサキは無傷、タツミとクリスは爆発などで飛来したガラス片で切り傷を負ったくらいだった。

「なんであんたらそんなに無傷でいられるわけ?」

 帰還したタツミにベッドで横たわりながらユイカが言う。

 左肩にまかれた包帯には血がにじみ出ていた

「大丈夫か?」

「なんとかね。一発だけ入れられたけど貫通してたみたいだから」

 そういう彼女の額には汗があふれていた。

 彼女は、ハッキングをするサオリを護衛する最中に弾丸を食らってしまったのだ。

 奥からサオリがタオルを持って現れユイカの額を拭く。

 ユイカの介抱をする彼女の顔はとても申し訳なさそうだった。

「そんな顔しないでサオリ、別にあなたが悪いわけじゃないわ」

「で、でも……」

「あなたを守ってついた傷よ? むしろ誇りだわ」

 ユイカはサオリの頭を右手で優しく撫でた。

「けど不覚だったわ。遮蔽物を貫通してくるとわは……」

 タツミは近くの丸椅子を引っ張り腰を下ろして。

「まさか貫通弾を使用してくるとは俺も思わなかった。俺の方なんて炸裂弾も混じっていた。戦力誤算があったにも関わらず死者がいなかったのはとても素晴らしい事だと思う」

「ただレーリズを潰す作戦は失敗しちゃったわね……」

「それは第三勢力として戦いを仕掛けたロシリアに任せればいい。で、例のあいつはどこだ?」

「飛行機内の軟禁部屋の中よ」

「助かる」

 タツミは腰を上げて飛行機内に入る。

 

 軟禁部屋の中では少女が警戒しながら椅子に座っていた。

「どうした? 緊張してるのか? いい部屋だろ。ベッドも机もテレビもある。結構普通に生活できるんだぜ? 中から外は見えないけど逆は可能で内側からは特殊な鍵がないと扉を開けられないけどな」

 部屋の中に入ったタツミが少女に話しかける。

「私を日本に連れて行って何する気?」

「さぁな。それはお前が決めろ。俺らの受けた依頼は依頼を受けただけだ。まぁ、その体じゃまずは入院だな。素人の俺でもわかるくらいの栄養失調だ」

 タツミは置いてあるソファーに横たわる。

「言い忘れていたが、この部屋外からは丸見えだからな。着替えとか気を付けろよ。イギリスの変体共に覗かれねぇように布団の中で着替えるとか……」

「イギリス……? なんで日本とイギリスが……?」

「それはお前に関係ない」

 等と話をしていると、突如爆音と地鳴りが部屋中に響く。

 タツミは急いで立ち上がり外へ出る。


「どうした!」

 飛行機の外は砂埃が舞い視界が悪くなっていた。

「怪我人を中に! 戦闘準備!」

 指揮をとるユウヤに近づきタツミは状況を尋ねる。

「どうやらレーリズがこちらの動きに気が付いて兵を送って来たみたいなんだ。ロシリアの相手をしていることもあってそんなに兵はまわせないはずだけど……」

 視界が晴れて空を見上げると、巨大なレーリズの飛行戦艦が停泊していた。

「そ、そんな馬鹿な! 飛行戦艦はポリシアタウンにいたはずじゃ……」

 驚く二人の元にミカが駆け寄ってくる。

「見て! あの飛行戦艦、前に宣戦布告してきたヤツとは違う戦艦だよ!」

「二隻目……だと!?」

 タツミはハンドガンを抜いてマガジンを入れる。

「それに、あの戦艦突如上空に現れたの! もしかしたら超光学迷彩を搭載しているのかも……! だとしたらすでに……」

 ミカが呟いた瞬間、タツミ達の飛行機を取り囲むようにロボットの軍勢が突如姿を現した。

「囲まれたか!」

 タツミは周囲を見渡して突破口が無いか確認したが、完全なる布陣を敷いたロボット兵に死角などなかった。

「全く、君達も策士だね」

「オルネリアか!」

 どこからともなく聞こえてくるオルネリアの声に殺意をむき出しにするタツミ。

「残念ながら君達の逃げ場はもうないよ。まぁ、その珍妙なメカを使って逃げ出すことは可能かもね。もしそうしたら飛行機の中の人たちは死ぬよりつらい経験をするかもしれないけどね。はっはっは!」

 彼の不快な声が響き渡る。

「きっと奴は戦艦にいる。周りのロボは俺達で引き受ける。行ってこい」

 クリスがタツミの肩に手を置き言うのを全員が承諾する。

「……任せろ」

 タツミは皆に冷静な口調で言い、丸い物体をクリスの胸の透明な小物入れ飛行デバイスを起動した。


 タツミが一定の行動に達すると、戦艦から数体の飛行ロボが現れる。

 ロボは空中を自由自在に飛び回り、タツミを四方八方から攻撃する。

「くそうぜぇ!」

 放った銃弾も避けられてしまい、完全に回避行動しかとれない状態になってしまったその時。

「そのまま真直ぐ飛んで」

 無線機から声が流れた瞬間、背後から弾丸が飛来しロボに着弾した瞬間激しく爆発した。

「ミカ! 助かった!」

 タツミはデバイスの出力を高め、ミカの援護を受けながら戦艦にたどり着く。


 彼の降り立った甲板には数体の生きた兵士がいたが、一瞬にして狩られてしまった。

「まさか本当にここまで登ってくるとは……。面白いですね」

 前檣楼の頂上からこちらを見下ろすオルネリア。

「降りてきやがれクソ野郎!」

「あなたが登ってきたらいかがかな?」

 オルネリアが指を鳴らした瞬間、室内へつながる薄暗い通路から見たこともない形のパワードスーツを着用した者が現れる。

 頭部はヘルメットに覆われており、人間か機械か分からない。

「お前がロボット兵士の親玉か?」

 タツミが問いかけても返事は帰ってこない。

「そうか」

 銃口を向けた瞬間、兵士は速度を上げてタツミの後ろに回り込む。

「人間か! 体系から見て男だな」

 タツミは銃を持ったまま背後から殴ろうとしてきた男の攻撃をよけるため逆立ちし、回し蹴りで体制を崩させ退避する。

「ほぉ、相当な運動神経だな。普通の人間ではいくらパワードスーツを着ていてもその動きは出来んだろう」

 タツミは銃を持ちながら格闘の構えをとる。

 男は一息の間を入れ再度タツミに拳を突きつけたが、得意の近距離格闘術で全て交わして一撃の拳を相手の頬に入れる。

 能が揺れてふらつきながらも男は腰の拳銃を抜いたが、照準を定めることが出来なかった。

 しかし、直前の動きで男を警戒するタツミは一度距離をとり姿勢を立て直した。

「リムリミッターリリース……」

 タツミが解除コードを送ろうとした瞬間、男は今までの中で一番素早く彼に襲い掛かった。

「ふはははは! その男は君を殺すためだけに訓練されているからね! そう簡単に解除コードは送らせないよ」

 後退するタツミにさらに距離を詰める男。

 

 蹴り、殴り等と連撃を数回繰り返した後、男は右手でナイフを抜きタツミに振るう。

「クッ……」

 タツミはナイフを振った後の男の隙を突き腹に蹴りを入れる。

 男が下がり、彼が一息ついた瞬間タツミのスーツの左胸元が切れる。

 それを見て、スーツジャケットを脱ぎ捨て袖をまくる。

 ゴキゴキと首を鳴らし、たたまれていたサバイバルナイフを構え深呼吸をしたのち、勢いよく男に突進。

 ナイフ同士がぶつかり合う度、火花と金属音が飛び散る。

 互いに致命傷とはいかないまでも、数か所に切り傷を作り合い、再度距離をとるころには男のパワードスーツの一部からはショートの火花が出ている。

「やるねぇ……」

 タツミは息を整えながら切られた左頬から垂れてくる血を右手の甲で拭う。

 その瞬間、下から何かが爆発するような轟音が聞こえてくる。

「そろそろ終わりにした方がよさそうだな」

 口角を上げたタツミを警戒した男が腰を落とす。

「しかし、その機械に頼れないあなたがどうすると?」

 未だ上方から見下すオルネリア。

「上げられないなら……引き揚げろ!」

 タツミはポケットから金属製の缶を取り出す。

「増強剤だ! 飲ませるな!」

 オルネリアの指示で男は飛び掛かった。

 確かに、缶から薬を取り出して飲むまでにはそれなりの時間がかかる。

 しかし、タツミは缶を丸ごと口に入れ、金属を噛み切った。

「鉄か何かだと思ったか? アルミだよ」

 飛び掛かろうとしていた男は元の位置まで後退した。

 タツミは歯型の付いた缶の残骸を二つ地面に吐きつける。

 切れた口内から出た血を飲み込むと同時に、体中から煙が噴き出し、手足の皮膚が解けて機械が明らかになっていく。

「グハァ!」

 タツミは口や目から血を流す。

 段階を踏まずいきなり薬を飲んだせいで体に異常な負荷がかかってしまっているのだ。

 しかし、数秒で姿勢を持ち直し。

「行くぞ……」

 といった瞬間、男とオルネリアの視界から姿を消す。

「どこに……」

 オルネリアが地上を見下ろしていると。

「ここだよ」

 と背後から声がする。

「まさか……!」

 オルネリアが振り返るとそこには白い髪の毛が赤くなりそうなほどに血液を流すタツミが立っていた。

 オルネリアが次の言葉を発するときには既に前檣楼の柵の外にタツミに首をつかまれて宙吊りになっていた。

「ゲホッ……き……貴様……」

 そういってオルネリアは涙と唾を垂れ流しながら息を引き取った。

 そしてその死骸をタツミは船の外へと投げ捨てた。

 オルネリアを持っていた手を軽くワイシャツで拭き、自分も柵を飛び越えて男の元に戻る。

「これでお前を縛り付けるものは居ない。お前の力があれば軍で直ぐに昇進だ。もうやめておけ」

 という忠告をしたが、男は聞く耳を持つどころか、怒り狂った様な太刀筋のナイフで襲ってくる。

 怒り狂った人間の攻撃というのは、皮肉なことに読みやすくタツミに今までの様に攻撃を入れることは出来ない。

 タツミは攻撃をよけながら男を船の淵まで誘導する。

 あと一歩で落ちるというところで男の背に回り込み、左足を上げる。

「じゃあな」

 仕込まれた杭を男の心臓の位置を発射し貫いた。

 男は一瞬で動きを止めた。

 前のめりに刺されたため徐々に杭から体は抜けていき、やがて地面へと落ちていった。

 血まみれの杭も男の後を追って射出された。

 船上に脱ぎ捨てられたスーツを再度背負ってタツミはゆっくりと飛行デバイスを起動した。


 地上では激しい戦闘が行われていた。

 ロボットの数が多く、防御態勢をとるのがやっとという状態だった。

 何しろ、飛行機に傷をつける事だけは避けたい一行。

 そう考え、タツミが帰るまでの持久戦に作戦を切り替えた直後、小型の爆撃機が一機飛行戦艦の下を通過し現れ、地上に弾幕と爆弾を投げ捨て去っていく。

 その攻撃をよけるには飛行機を使うしかなく、羽には穴が開き、操縦室は見事に破壊されてしまった。

 爆撃機による攻撃により、死傷者を出してしまった同盟軍は、ロボット兵に押されてしまう。

 皆の応急処置のため一度武器を手放したミズキ。

 しかし、その瞬間斧を持ったロボット兵士が彼女の背中を狙う。

「ミズキ!」 

 彼女の危険を察知したマサキが声を上げて叫び、助けようとするが距離が届かない。

 咄嗟の判断でクリスが持っていたアサルトライフルで斧の攻撃を受けようと間合いに入ったが、武器は真っ二つに。

 斧がクリスの体を叩き切る直前、すべてのロボット兵士の動きが止まった。

 全員がその状況を理解できず、戸惑っていた。


 同刻、船の下では下半身の潰れたオルネリア、胸に穴が開き後から落ちてきた杭に顔面を潰された男が冷たい風に吹かれていた。




 帰還した血まみれのタツミはふらふらになりながらクリスにボタンの一つついたリモコンを手渡した後。

「間に合ったか?」

「あぁ危なかったぜ……よくわかったなって、ん? お前いつの間に右目にアイパッチなんてつけたんだ?」

 タツミはクリスの胸を指さす。

 船に行く前タツミが彼の胸に入れたもの。

「俺の義眼だ。実は映像を映す部分とそれを能に送る装置は違うものでな。お前の胸元からずっと下の戦闘を見ていたのさ……」

 タツミはそう言って意識を失い倒れたところをクリスが支える。


 その後、タツミは飛行機の中に残った医務室に運ばれた。

 クリスがタツミに渡されたボタンを押した瞬間、飛行戦艦が激しく爆発を起こした。

「……勝利の花火か……」」

 ゆっくりと地上に沈む飛行戦艦を背にクリスはボタンを地面に投げ捨て飛行機の中へと戻った。



 数日後、飛行機が送られてきて無事日本に帰還した。

 

 帰還後、すぐにベッドの中にいながらもタツミは今回の報告会に出席していた。

 もちろんユウヤも一緒だ。

「まさか本当にあの少数でレーリズを壊滅させてしまうとは……」

「信じていなかったんですか?」

 ユウヤの質問に吉原は。

「正直を言うと、信じていなかった。何せ、元はタツミ君に出した暗殺依頼から膨らんだ話だからね……。ロシリア行の許可も本当は却下するつもりだったけど、イギリス軍からの申し出もあって仕方なく許可した面もあるから……」

 と苦笑いをした。

「さて、死傷者報告を聞こうか」

 吉原は仕切りなおしていった。

「はい。まず、死者は七人。いずれもイギリス特殊部隊員のみ。TGJCは全員帰還しました。負傷者は重傷者は計九人。TGJCではこの男とユイカです」

 ユウヤの報告を聞いてタツミは左目を開けて。

「そういや、いつもうるさく言ってくる博士がいねぇな」

 と聞くと、吉原は自分のパソコンを開いて操作した後二人に画面を向ける。

 モニターには題の無いビデオファイルが表示されていた。

「この映像は、君達がロシリアへ飛び立った直後、全世界で同時放送されたものだ」

 吉原がスペースキーを叩くと映像が再生される。

『緊急速報です。二時間ほど前、カナダ国際空港で現在指名手配中の殺人鬼『白髪の狩人』が射殺されたという報告がありました。カナダ警察によると、空港にいた白髪の狩人に職務質問をしようとしたところ、抵抗したため発砲したという事です。カナダ政府は、素性が分かり次第後悔していくとのことです』

 その映像を見てユウヤが立ち上がる。

「どういうことですか!」

「我々にもわからない。そもそも、日本政府に白髪の狩人が国際指名手配されているという情報は入っていない。もちろん、国内の指名手配リストにも入っていない」

 慌てるユウヤとは対極にタツミは落ち着いた様子で。

「つまり、疑問を抱いた彩芽が情報漏洩をサイバー攻撃を仕掛けるため、島にこもっていると?」

「七十点かな。実は彩芽君は今カナダ現地でハッキングをしているよ。流石に国外からの攻撃は今の情勢上まずいからね。おかげで君の情報漏洩は防げている。まぁ、ハッキングの件はどんどん大きな事件になってしまっているけどね」

 その言葉を聞いて、タツミは腰のあたりを探り携帯電話を取り出す。

「電話?」

 ユウヤが操作しにくそうなタツミの代わりに連絡先を聞いてかけてあげる。

「助かる」

 タツミは携帯を耳元に置く。

「よぉ、久しぶりだな」

『そうね。で。私に何か用?』

「何となくわかってんだろ?」

『さぁ? 死神が私の命を狙いにでもきたかしら?』

「まさか。それとも何か心当たりでも?」

『フンッ。私はあなたの事が大嫌いだけど、今回の件は全く関係ないわ』

 通話の内容を聞きながらユウヤは吉原に。

「えっと……誰でしょうか……」

「多分声的には元トランプ部隊所属コードネームクイーンかと……」

 小原も少し困惑している様子だった。

「なぁクイーン、今回の件何とかして調べられねぇか?」

『いやよ。なんで私があなたの下に付かなきゃいけないわけ? そもそも、あんたが生きている以外の事実は分からないの。そもそも、政府があんたを殺した情報が事実になるかも微妙なところだし……』

「どういうことだ? 真っ赤な嘘に決まっているだろ?」

『それが、政府によると死体を所持しているっていうの。現在解剖中っていうのも。私も詳しいわけじゃないけど』

「聞いておいてあれだが、そんなに情報を流していいのか? トランプ時代散々嫌っていた相手だぞ?」

『別に。そうね、しいて言えばエースを殺した件に関しては絶対に許さない。私が必ずあなたを地獄に叩き落すわ』

「クハハ。楽しみにしているさ」

 電話を切るまるで悪役かの様なタツミをユウヤと吉原は苦笑いした。

 一呼吸おいてユウヤは。

「で、行くの? カナダ」

「こりゃ罠だな。クイーンは俺を自分の戦場に引き込んで殺す気だろうさ。よって、絶対に行かない。殺された〈俺〉に関する情報は博士が仕入れてくれるはずだ。それから対処は考えればいいさ」

 タツミは目をつぶっていった。

 その後、報告はユウヤに寄って完了され、タツミはまた病院へ戻された。

次は筆休め入れるか迷ってます。

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