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TGJC mission file 5:<ミルリグロスとTGJCの教官> 2

この連載は、最速で三日、最低でも二週間以内には更新するつもりでありたい(願望)

「私はオルネリア・ウォルコット。佐崎十三郎の暗殺を企てた張本人だ」

 その言葉を聞いた執行官達は目の色を変えた。

「ミカ、俺の部屋のロッカーに六千メートル以上の狙撃をしたあのライフルがしまってある! ロックは外してあるから好きに使え!」

 タツミはミカに命じた後、時間を稼ぐために男との会話を試みる。

「おいあんた。いきなり艦隊引き連れて攻撃とは随分な事してくれるじゃないか」

「別にかまわないだろう。日本軍が過去に起こした旧シベリア港奇襲事件に比べたらましだとは思わないかい?」

「はっ。いつまでも過去にとらわれてちゃ前に進めねぇぜおっさん」

「やはり若者の言葉には説得力がありますね。ですが、過去を振り返らないというのも愚かな事、佐崎十三郎の死。そして元執行官№0候補【水樹みずき 恵那えな】の事とかな」

『タツミ、左にずれて!』

 彼の左すれすれを弾丸がすり抜けていく。

 しかし、そのまま老人の額をすり抜けて彼方へと飛んで行ってしまった。

「そうやすやすと頭は姿を現さない。鉄則じゃないか。さて、今回の用件だったな。これは宣戦布告だ。まぁ世間一般人はまだ気が付いていないようだが、君達裏の界隈の人間なら気づいておろう。もう第三次世界大戦勃発は避けられない。だから我々現ロシリア帝国は日本に宣戦布告させてもらう。とは言っても俺達も馬鹿じゃない。第三次世界大戦勃発までは動かないでおいてやろう。では」

 そういうと、巨大戦艦は光学迷彩を展開し退却、それに大型、中型が続いて消えていく。

 しかし、小型戦艦と航空歩兵は攻撃を再開した。

「クソみてぇな置き土産しやがって……」

『こちら10、作戦を再構築する! 11、そのまま迎撃を続行。その他の行動も順次伝えるがその前に、タツミは一旦下がれ。君は飛行デバイスは大群向けじゃない。地上に降りて電気回路の生きているこっちまで来て現状を吉原に報告してくれ』

 通信を聞いたタツミは悔しそうに舌打ちをした。

「わかった」

 そう言って前線を離脱していった。


 その後、上空に残った執行官は、掃討戦の方法で残りの敵を殲滅した。

 かすり傷程度の被害はあったものの、主だった被害もなく無事に全員帰還した。


「吉原、状況は把握しているか?」

『まぁ何となくだが耳には入れている。これから緊急国会が開かれ今後の方針が決められる。連絡は後にしてくれ』

 電話の向こうから聞こえてくる混乱の声で向こうの焦りも聞き取れたので、タツミは一度引き下がった。

 手足の表面が熱で溶け剥がれ落ちている現在の状態でミルリグロス部隊候補生の前に現れるわけにもいかず、タツミは肌を復活させるため彩芽の元へと一度帰ることを決めた。

 飛行デバイスを起動し飛び立とうとしたその時。

「教官!」

 背後から八重原が呼び止めた。

「何か用か」

 振り向いたタツミの目に映る恐怖と困惑の眼。

 確かに、何も知らない一般人の手足が機械仕掛けで、足の裏には小型ジェットエンジンが搭載されている。

 彼女の反応はいたって正常だ。

「えっとその……教官は……もう戻られないんですか?」

「は?」

「だ、だって今まで本気で戦闘の仕方とかを見せていなかったのってその手足を見せないようにするためですよね? で、でも見られちゃったからもう来ないのかなって……」

「お前……見てたのか……?」

「あ、えっと……はい……。というか、ウォンのドラッグ研究の時からなんかやけに詳しいなと思ってました……。教官たちは『SJC』ではなく、『TGJC』の方たちですよね?」

 タツミは彼女に反論できなかった。

「きょ、教官! ここに残ってまだ私たちの教官をやってください! まだ教官達の正体に気づいているのは私だけです! もし、それが叶わぬのなら私もTGJCの近くに置かせてください!」

「……安心しろ。お前らを立派な兵士にするまでは教官をやるつもりだ。大体、なんでウォンの私軍にいた奴等はTGJCに身を寄せたがるのか俺には理解できない。どちらかと言えばあんな危険なところからは手を引きたいだろうに」

「私の他にもいるんですか……?」

「あぁ。ユリってやつとマイナってやつだ」

 突如八重原が駆け寄ってくる。

「あの二人と知り合いなんですか!? 今どこにいるんですか!? 声聞かせてくれませんか!?」

 タツミはあまりの勢いに後ずさりする。

「えっと……あいつらはちょっと特殊なところにいてな……今の回線状態で届くかどうか……」

 そう言いながらタツミは携帯から彩芽に電話をかけたが、一向につながる気配がない。

「まぁそうだよな。困った、衛星電話じゃないと届かないなこりゃ。ってことは島にいるのか……」

 掃討作戦も終了し、何も知らない候補生が校舎からいつ現れてもおかしくない。

「おい八重原、ちょっと飛ぶぞ」

 タツミは彼女を抱え上げ、飛行デバイスを起動し演習場から少し離れた電波の届くところへ移動した。

 そこで再度電話をかける。

「博士、俺だ」

『あぁ、何となくわかっている。皮膚の修復だな。問題ない、今から本土に向かう』

「なぁ、無線に突発的に入ってきてすぐ抜けて聞くだけ聞いているというのはどうにかならんのか?」

『いいじゃないか。無線に衛星を経由して侵入するのは非常に大変なんだ。あの情報を伝えて直ぐに送信の回路は遮断されてしまってな。盗聴しかできなかったわけだ。しかも艦隊撤退のせいで衛星波が乱されて回線そのものがシャットアウトされてしまったんだ』

「まぁそっちにも事情があったのか。まぁいい。本部に集合でいいな」

『わかった』

 その後、ユリに電話をかけ、携帯を八重原に渡してタツミは一人本部へと飛んでいった。




 薄暗いTGJC本部の扉から光が差し込む。

「タツミ、戻ってるんだろ? 電気位つけろよ」

 ソファーに座っていたタツミは何か思いつめた表情をしていた。

「どうした、君らしくないじゃないか。……水樹 恵那って子のことか……?」

「大したことじゃないさ」

 軽く笑って見せてはいたが、目に光は無く思いつめている表情には変わりがなかった。

「一体何があった? 話せば楽になるかもしれないぞ」

「そうかもな、エナは国に処分されたのさ」

「処分?」

「そうだ。前総理大臣を覚えてるか?」

「あぁ。確か、政界を独占し日本政府史上最高の悪徳政治家、【水樹 和義(みずき かずよし】……水樹……?」

「そう、あいつはTGJC候補生の中で俺、ユウキに並ぶ強さだった。だが、『水樹の血は断つべきだ』と騒いだ過激派の政治家の策略によって処分されたのさ。まぁ、それがあったから今の執行官の対悪徳政治家としての神経が成り立っているといっても過言ではないかもな。まぁ、殺したのは実際俺なんだけどな」

「どういうことだ……?」

「あいつは俺とユウキと実践訓練で暴力団のアジトを潰す依頼を受けた。その時、俺とユウキの二人を足した強さとエナの強さは大差なかった。だから裏と表に一対二に分かれて突入したんだ。しかし、表に組員は一人もいなくてな。不思議に感じて裏口に回った時にはもう遅かった。エナは首と胴が離れ、腸は飛び出していた。俺とユウキは怒りに任せて全力でアジトを潰した。その後、今回の案件を持ってきたのが過激派の政治家だということに気が付いた。つまり、俺達の行動は読まれていた。その上でエナは殺された。俺があの時もっと気を付けて依頼者まで確認していれば……」

 タツミは勢いよく机をたたいた。

「それは……君に非はないのでは……?」

「だが、俺は仲間を守れなかった。過程は過程、結果は結果だ。その後、佐崎は補充にユイカを連れてきた。俺はあいつを本気で強くした。自分も鍛えながらな。まぁ振り分けテストで……まぁいい」

 彩芽は机の上に修復キットを広げながらタツミの話をきいていた。

「それをあいつらは過去を見たほうがいいだのと俺が何も思ってないみたいな言い方しやがって……」

 彼は拳を強く握りしめた。

「タツミ君はその過激派政治家をどうにかしようって思わなかったの?」

「思った。けどユウキに止められた。まぁ結果、過激派は水樹 和義暗殺の首謀者となって法に裁かれたからもう今の俺らにどうこうすることは出来ない。わざわざムショまで会いに行こうとは思わないからな」

「何年だ?」

「さぁな。生きているうちは出てこれないんじゃないか? 水樹の他にも裏で色々やっていて全てがばれちまったからな」

 タツミは溜息をつく。

「私からは特に何も言えないな」

 彩芽は無言で手足の修復を進めた。



 その後、演習場に戻る頃には一通りの生存確認や応急手当てが終了し、候補生は一時待機に、執行官達は緊急の会議が開かれる事になった。

「タツミ、吉原に連絡は取れた?」

 ユウヤは机に埋め込まれたデジタルモニターをいじりながら訪ねた。

「だめだ。ミルリグロス発足前までは吉原と周囲数人で事を進めていたからそれなりにスムーズに話が進んではいたが、どの政府役員も現状を理解してしまっている以上、国会の難航は目に見えている。このままだと日本政府が自壊する位の勢いで論争が起きてるんじゃないか?」

 彼は呆れた表情で一通りを説明した。

「そうなると、ミルリグロスの運用開始をイギリス合流後よりも速めて日本国内で運用させなくてはならないね。今日は何とかなったけど、次どうなるか分からないうえ、あの巨大艦隊が攻めてきたら勝てる気がしないよ。だから、各部隊の中で成績の秀でた者を引き抜いて新部隊を構成することを提案するよ」

 ユウヤの提案に反対するものはおらず、着々と準備を進めることとした。


「教官! お疲れ様です!」

 八重原がタツミの前に姿を現した。

「おう、どうかしたか」

「はい! 私は、獅童辰巳教官の補佐に立候補したく参上しました!」

 姿勢を正し、手を素早く額に持ち上げ敬礼した。

「いいのか? 本当にそれで」

 タツミの問いかけに彼女の返事はなかったが、向けられた視線に迷いはなかった。

「よし、じゃあ早速仕事だ。今回の件で日本政府も戦争を真剣に考え始めた。俺やその他の教官の元へ、様々な方面からの招集状が届いていてな。一週間ほどここを離れて東京に戻る。だから、その間に俺の部隊の奴らの成績上位者四名を抜粋しておいてくれ。どうするかの内容は教えられないが出来るだけ早めに」

「その旨に関して候補生に説明は……」

「成績上位者が選ばれるということは言うな。選ばれた人間はミルリグロス部隊卒業だと伝えておいてくれ。いいか、八重原。一人一人丁寧に確認していけ。それぞれの得意不得意、集団に置いての立ち位置とかな」

 説明している所に、たまたまミカが通りかかる。

「あれ♪ タツミ何してんのー!」

 駆け寄ってくる彼女に八重原は敬礼して挨拶をする。

「お疲れ様です、稲川教官!」

「あはは! 君面白いねぇ♪ まだ朝の五時なのにお疲れ様ですって♪ 名前は?」

「や、八重原です!」

「ほー、君がタツミの選んだ補佐ちゃんかー! じゃあもう教官じゃなくて上官だね!」

 二人の会話にタツミは割って入る。

「ところで、こんな早朝に何してんだ」

「理由は多分タツミと一緒よ。政府に呼び出し食らったの。私の飛行デバイスこの前の戦闘のメンテナンスで今使えないから車で行かなきゃいけないんだけどここから五時間だよ!? 信じられる!?」

「じゃあ俺はミカタクシーを使うとするか」

「へ? タツミは飛んでいけばいいじゃん」

「いや、実は俺も左足メンテナンス中なんだ」

 ズボンの中のタツミの左足は金属骨格むき出しのただの義足になっていた。

「皮膚の修復行ってから帰りまでどうりで遅いと思ったらそういう事だったのね」

 ミカは少し呆れ笑った。

「そういうわけだ、八重原。あと頼んだぞ」

「バイバーイ♪」

 タツミとミカは二人で歩いて行った。


「わ、私が教官代理……?」

 八重原は自分の部屋に戻り机の中を漁る。

「確か、前に補佐のお話頂いたときに練習メニューの見本があったはず……」

 彼女が引き出しから発掘した紙には。

『きつーい訓練をなんとなくやらせる』

 と汚い字ででかでかと書かれていた

「分かんねぇぇぇ!」

 八重原は部屋で一人絶望した。

「しっかりしなさい、八重原久乃! 大丈夫、私はあのタツミ教官に認められた……あのタツミ教官……タツミ教官……やっぱダメかも……」

 彼女の脳内にグラウンド隅の木陰で昼寝するタツミの姿が浮かび上がる。

 直後、八重原は首を左右に大きく振り。

「いや、でも戦闘はあんなにすごかったじゃない! それに私達を救ってくれた張本人でもあるのよ!」

 頬を手のひらで叩き活を入れる。

 

 八重原は朝練の時間に堂々と候補生の前に立ち。

「今日から一週間、タツミ教官が留守になるため、私が代わりとして皆さんを見ます! そして、この一週間の間に私は五人の方を選び、タツミ教官と相談した後、その方々はミルリグロス部隊卒業となるのでよろしくお願いします!」

 候補生たちはざわめく。

「あ、あの、えっと、もう、話はないので訓練始めてください!」

 八重原の掛け声とともに動き出した彼らはいつも以上に努力しているように見えた。

「な、なんか皆さん今日凄い熱量ですね……。そういえば、教官が出発際に渡してきたこの端末は……」

 ポケットから人差し指ほどの大きさの端末を取り出し起動すると、候補生たちの全ての行動が映し出され始めた。

 位置情報から心拍数まで、ありとあらゆる情報が二十九人分登録されていた。

「これは……教官がたまに木の下で眺めてる端末にこんな機能があったなんて……」

 八重原は心の中で教育者としてのタツミを少し見直した。

 その後も、彼女はタツミの様に指示を出し、訓練を見守った。


 一方、国家極秘会議室。

「今すぐ戦争だ!」

 小太りの中年男性が机をたたいて立ち上がる。

「しかし、まだ軍隊の訓練も完成してもおらん。せめてそれだけでも待つべきだと私は思うがね」

 スーツを着こなした老人が落ち着いた様子で腕を組む。

「訓練だと!? ただ銃を撃って走るだけではないか!」

 小太りは苛立ちを抑えきれずに血眼になって訴える。

 続けて。

「ロシアとアメリカ、そしてマッドマンが敵対している今、先手を打つべきだ! 国家の一大事だぞ!」

「いい加減にしないか」

 二人の論争と周りの空気を察して吉原が仲裁に入る。

「小原総理! 貴方も今すぐに攻撃を仕掛けるべき、そうだとは思いませんか!」

「静かにしたまえ、林外務大臣」

 そういわれて更に腹を立てたのか林は。

「大体、このガキは誰ですか! ここには簡単に人を入れてもいい場所じゃないでしょ!」

 と、机に脚を乗せて寛いでいたタツミを指さす。

「うるせぇなぁおっさん」

「なっ……貴様! なんと生意気な……!」

「おい小原、こんなクソみてぇな奴らとこれから一週間も会議しなきゃなんねぇのか? 俺はお断りだぜ」

 すると、先ほどまだ戦争をはじめに法がいいと提案した老人が。

「まぁまぁ、ミルリグロス部隊教官兼SJCコード0殿、我々上と呼ばれる人間に戦場を知る者は多くありません。そのため、貴方様のお力添えが必要となるのです。どうか、よろしくお願いします」

「さすが、戦場を知っている上の人間だな、長峰防衛相大臣」

「恐縮です」

 会話よりタツミの立場を理解した林が急に低姿勢へと変化して媚を売りに来たが、タツミは冷たい目で彼を突き放した。

「その他の方々の意見もお伺いしよう。ではまず、大形海上局長から」

「私は長峰殿の意見に賛成させていただく。私とて、先手を打つこともあるが、未だ盤面にはすべての駒が集まっていない。この状態で仕掛けてもしイギリス以外の国が敵になれば万に一つも勝ち目がないからね。私はタツミ殿の言う、戦場を知らない上の人間だ。できれば、一週間の会議を通して貴方様の考えも教えてほしいところだね」

「悪いな大形局長。確かに、俺は戦闘に関しては自信を持っているが、まだ何とも言えない。我々SJCが秘密裏に調べた各国の動きも、『もしあの国が参戦を宣言したら一緒の所に行こう、反対に行こう』といった感じになっている。つまり、全てのピースを並べるか、集めるかしてから作戦は考えないと勝率を上げることは不可能だ。第一、第三次世界大戦の話は一体どこまで広がった? 最近の人間は、『終戦から何十年だ』とか言って平和ボケしている。そんな奴らにいきなり戦争だといっても確実な反感が起きる。昔の様に厳しい時代ではないんだ」

 その言葉で会議室は静まり返る。

 過去の様に天皇万歳の世界ではないのだ。

 確かに、格闘、拳銃の訓練は常に受けている教育社会であるが、戦闘に使われるアサルトライフルなどの重装備は見たこともない人間がほとんど。

 国民からの反対票は逃れられない。

 更に、TGJCの様に科学の発展を遂げた特殊部隊に対抗して作られた兵器に歩兵が意味を成すのかと言われればそれまで。

 つまり、戦車や航空機、TGJCの様な人間兵器、生物兵器が基本となるいわば科学戦争になるのだ。

 塹壕には上空から銃弾が降り注ぎ、森の中ではサーマルを所持した者が圧倒的優位に立ち、戦艦は航空戦艦に駆逐されるのが目に見えている。

 タツミは立ち上がって前に出る。

「第三次世界大戦は今ある人類の為になる技術をどれだけ殺人に使えるか。各国には、空飛ぶ戦艦にロボット部隊、人造人間までが戦争のために開発されている。つまり、我々に今必要なのは歩兵の数ではない。兵力増強のための科学力だ。日本国内からは頭脳、まだ賛成声明を出していない土地のある国を取り込んで研究所に工場を作るべきではないのか?」

「タツミ殿、今おっしゃられた兵器類は本当に実在するものなのですか……?」

 長峰は冷や汗をかきながら訪ねる。

「事実だし、俺はもう実際に戦ったことがある。軍隊の人間と強さはほぼ変わらないくらいの出来上がりだった。更に、遺伝子改良で作られた体内でガスを生成し宙に浮く巨大な化け物もいた。嘘かもしれないが事実だ」

 タツミは机の上に、自分の目に映した映像を画像にした写真を机に置いた。

「これは……」

 皆覗き込んで驚く。

「事態は一刻を争います。政府を全力稼働して対抗できるものを作成しなさい」

 吉原の言葉に皆が動き出した。

「一週間もいらなかったな」

「君のおかげだよタツミ君。もし君がいなければ一週間以上かかっていたところだよ。まぁ君には東京に一週間残ってもらうつもりだよ」

「かまわない。佐崎とエナの墓参りにもいくつもりだしな」

「いや、君に頼みがあるんだよ。ハンターの件で」

「場所を変えようか」

 二人は、会議室を出て総理大臣専用部屋に行く。


「で、暗殺依頼か?」

「そうだ」

 吉原は静かにタツミに写真を手渡す。

「こいつは……」

八重原やえはら 里香りか。ミルリグロス志願者、八重原久乃の妹だ。彼女はウォンから救出された後、短期間のカウンセリングを含めた施設生活を送り、世に出された。が、彼女には身寄りもなくてな。結果、ウォンの所と大して変わらない生活に成り下がっていた。姉とも別れた後、彼女はレーリズ半強制的な形で拾われ現在スパイとして生きている」

「ちょ、ちょっと待ってくれ……」

「君の身近な人間の血縁者を殺めるのは君でもつらいものなのか……」

「当たり前だろ!」

 タツミは憤りを感じて一歩踏み出す。

「だがな、彼女の存在は日本にとって不利にしかならない。これは命令だ……」

「もし断ったら?」

「本当に嫌ならばそれでもかまわない。だが、そうなった場合別の人間を送り込むことになるだろう」

「救う方法は……」

「ない。というか、もし彼女を取り込もうなんていう動きを見せたらそれこそ戦争の始まりだ。レーリズが必ず動く」

 タツミは写真を握りつぶして無言で部屋を後にした。

四話構成になるかなぁこれ。

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