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TGJC mission file 3:target<十四人目の執行官> 4

次章のタイトルくーいず

 白髪の狩人として吉原総理に依頼されて永田優斗暗殺を命じられたタツミ。

 適当に飛び出し彼が大阪に到着したのは午前十一時三十分。

「早すぎた……」

 タツミは裏路地に降り立ち、適当に時間を潰そうと街中をぶらつく。

「あー、ユイナ連れてくればよかったなぁ」

 などと呟きながら露店のたこ焼きをむさぼる。


 そして、時間は進み午後二時。

 大阪空港に軍事用航空機三機と巨大旅客機が到着する。

「これはこれは……随分とVIP待遇なんだな」

 ターミナル屋上関係者以外立ち入り禁止区域でスナイプポイントを探しているタツミの前に軍人が大量に表れる。

 彼は咄嗟に身を隠し軍人たちの話を盗み聞きする。

「いいかお前達。俺達はこの飛行場及びそれ周辺のスナイプポイントになる場所に徹底的に張り込み保護対象を守り切れ。もし不審人物を見つけたら支給した麻酔弾のみ発砲を許可する。では、事前に確認した各々の守備ポイントまで移動開始!」

 タツミは急いで屋上から飛び降り、軍隊の目から逃れる。

「チッ、大阪空港は内陸にあるからターミナル屋上か周辺の数個のビルしか狙撃ポイントはない……。しかし、飛行機は確実に永田専用のチャーター機。ほかの乗客やリストにない乗務員を乗せるわけがない。なら飛行機に乗る前に排除するか? 無理だ、確実にSPがいる。それに、成功したところで飛行場内から脱出できるほど空いている雰囲気もない。貨物室は……俺はあの期待に明るくねぇ……客席側につながっていればいいんだが」

 タツミは吉原に連絡を取る。

「なぁ、永田のやつありえないほど警戒していやがる。今思いつく進入方法は貨物室からしかないんだが、奴の乗る機体は客席と貨物室がつながっている機体か?」

『ちょっと待ってくれ……あぁ、この機体は繋がってはいる……しかし電子ロックがかかっていてコックピットまたは乗務員用のパネルからしか開錠できない仕様だ』

「どこか進入できそうなところはないのか?」

『ちょっと待ってくれよ……あったぞ、その期待は要人を乗せるための特殊機で、色々な改造が施されている。そして、機体後方にある排出用燃料タンクという場所、ここは外から中に入り狭い隙間を通っていけば客席後方に出られる。一応見取り図を送っておこう』

 タツミの携帯に吉原から画像が送られてくる。

「排出用タンク? なんだそれ」

『もし、上空で刺客に襲われエンジンが爆発して不時着する羽目になった場合、一番警戒するのはもちろんガソリンへの引火からの爆発。つまり、爆発を未然に防ぐため、爆発し、飛行不可能とパイロットが判断した場合、ガソリンをタンクに送り出し、早々に切り離して落とすシステムだ。だからなるべく早く脱出した方がいいぞ。頼んだぞ』 

 吉原は電話を切った。


 タツミは言われた通り飛行機後方の排出用タンクに目を盗んで侵入し、飛行まで待機する。

 今構えていても返り討ちにされるだけだからだ。

「にしてもこんなか暗くてよく見えん」

 タツミは携帯のライトをつけながら周囲を探る。



 それから約三十分後、飛行機は滑走路を走り始めた。

「よぉし、フライトまであと十分はあるなちょっとずつ通路を見始めるか」

 タツミは送られてきた画像と周囲を照らし合わせながら道を模索する。

「ちょっと……狭いなぁ……この通路本当に通れるのか?」

 連結部の通路に体を突っ込んだタツミだったが、飛行機が離陸のために加速を始めたため、一度タンク内に引き返した。

 それから飛行機は数分で飛行高度まで持ち上がり、期待を水平に安定させた。

「よし、安定したし今のうちにタンクから抜け出そう」

 タツミは再度狭い隙間に体をもぐりこませ、客間に向けて進み続ける。




「ふん、吉原も馬鹿よのぅ。私の事を信用するとは」

 機内でワインを片手にあざ笑う永田。

 数秒不快な笑い声が響いた後、機体が大きく揺らめく。

「な、なんだ?」

 飛行機はタツミではない別の刺客の攻撃を受け、左翼のエンジンを失った。

 オイル漏れが発生する危険性を考えたパイロットは、マニュアル通りガソリンをタンクに移す装置の作動を開始する。


「クソ……、なんだ今の揺れ……」

 まだタンク周辺をさまよっていたタツミも異変に気が付きペースを上げたが、突如通路が狭まり彼は壁に挟まれてしまった。

「そうか、エンジン爆発のマニュアルでタンクへのガソリン移動が開始されたわけだ! で、そのガソリンを移すためのホースは普段細くなっていて人間が通れるほどのスペースが開いているが液体が動くと同時に太くなる仕掛けか!」

 タツミは壁とホースの間を腹ばいになりながら一生懸命進む。

「ということはまずいな。吉原に送ってもらった画像によると、切り離す部分はホースとポンプの連結部までだから、早く奥まで行かねぇとここも海へポイだ」

 手足を動かし一生懸命前に進もうとするが、ホースの中が液体なこともあり、中々思うように進むことが出来ない。

 更に飛行機は高度を下げ始めたため、ホース上部にいたタツミを圧迫する。

「クソ……! こりゃマジで死んじまう……! こんなところで圧迫骨折からの窒息死なんて御免だぜ!」

 呼吸もろくにできず、絶体絶命のッ状況下でもタツミは精神論だけで歩を進め、ポンプの連結部が見えてきた瞬間、前方から金属のロックが外れるような音がする。

「まじか」

 タツミが呟いた瞬間、ホースは細くなり壁から少しずつ外の光が入り込む。

「待て待て待て! もうちょいだ!」

 タツミは角度を急にしていく機体後方を全力でダッシュし、決死の思いで落ちるタンク部分を蹴り本体の連結部品に片手でしがみつく。

「あ、危ねぇ……」

 眼下には落ちていく巨大な部品と雲、そして海が広がっていた。

「空が飛べても飛行デバイスを起動したらさすがに周囲の機体にばれちまうからな……」

 タツミは片手で自分の体を持ち上げ飛行機内に戻す。

 タツミは客席と連結部分のドアを蹴り開けてハンドガンをリロードする。

「もっと報酬増やしてもらうか畜生」

 少しイラつきながらドアを蹴り開けると、豪華な客席が広がっていた。

「ったく、良いご身分だぜ」

 タツミは永田を探しながら歩いていくが、人の姿の一つすら見当たらない。

 そのままコックピットの前まで来てしまった。

「ど、どうなってやがる」

 コックピットの中にも人の姿はなく、完全にAIの自動航行となっていた。

 すると、いきなり無線機が騒ぎ出す。

『やぁ、そこの暗殺者君。言っておくが、この航空部隊に永田優斗は居ないぞ。そして、その飛行機は常にロックされているからな。海の藻屑となるがいい』

 突如レーダーに無数のシグナルが入り込み、飛行機後方に激しい衝撃を与えてくる。

「追尾ミサイルだと!? まずいな!」

 タツミは無線機を持ち。

「おい、永田はどこにいる?」

 と尋ねると。

『あのお方なら飛行機離陸と同時に港から潜水艦で出発したぞ。それと、この航空機で輸送されるという情報は総理大臣及び身辺の人間のみだから今後の活動には気を付けてもらいたいね』

「その情報ならもう多方面に出回っているんじゃないか? さっきこの機体はエンジンの爆発させられたじゃないか」

『何を言っている。飛行場を固め、機内を固める。そうした場合、政府の人間は確実に燃料タンクに潜り込んで侵入してくる。本当ならマニュアル通りに君諸共切り離したかったところだが、まぁ大体読み通りってことだ』

 話しているうちに機体の高度はどんどんと下がっていく。

『不可能とは思うけど一応言っておく。我々はアメリカ空軍。我々への攻撃は日本からの宣戦布告とみなす』

「面倒だな……」

 タツミは無線機を握りつぶし、どこかへ電話をする。

「聞こえるか」

『や……ちょ……お……?』

「チッ、電波が死んでやがる」

 タツミは飛行機後方へ移動し、何とか飛行機から脱出し、足のジェットで空中にとどまる。

「衛星マップは生きている。ふむ、これによるとここはまだ日本よりの海域らしい。飛行機よりも潜水艦の方が速度は遅い。まだ日本の海域内にいるだろうが……探す手段がない。近くの島で電話をするとなると時間は足りないし……そうだ、機体の中に衛星電話は無いか?」

 タツミは服と荷物を墜落した飛行機の浮いている所に置き、沈んでいく運転席の方へと潜水する。

 目の痛みをぐっとこらえ、沈んでいく恐怖に耐えながらコックピットの中から衛星電話を探し出し、酸欠寸前で水面に這い出る。

「はぁ……あったぞ……」

 タツミは少し大きめの浮いた瓦礫に座り、服を着て電話をかける。

「俺だ、吉原総理」

『タツミ君! 一体何があった!?』

 タツミはあったこと、今自分が置かれている状況を説明した。

『なるほど。では、海底スキャン用探査船をサオリ君にお願いして出してもらおう。ついでに、酸素ボンベなどの潜水用具を乗せておく。サオリ君と一緒にユイカ君も同船させ、ヘリで墜落地点に迎えに行くよう伝えよう。一時間半程漂流していてくれ』

「一時間半? それじゃ逃げられちまうぞ」

『いや、時速と波から考えてまだ日本の領海にいることは確か。了解には所々密入国船が来ないようにセンサーが配置してある。それに反応しないよう進んでいるのであれば一時間半立ったところで領海からは逃げられないだろう』

「海上保安庁が買収されているかもしれないぞ」

『確かに可能性はあるが、密入国船のセンサーが反応すると海上保安庁と同時に私の所まで連絡が来る仕組みになっている。それに、その装置の設定用パスワードを知っているのは総理大臣だけだからな』

「そうか分かった」

 タツミは電話を切って、その場で寝転がり暇を持て余す。

「この仕事終わったら休みでも貰おうか……いや、ユウキの見舞いに行かなくては……というかそもそも俺に休みとかいう概念ないわ。仕事がある日はして、無い日はゆっくりする……緩い職場だよ……命の危険はあるけどもー」

 などとつぶやき続けてかれこれ九十分。

 タツミの視界にユイカの乗るヘリが現れる。

 ヘリは縄梯子を垂らしタツミの元へと近づく。

「たすかるわー」

 タツミは縄梯子に捕まり、ヘリに乗り込む。

 乗り込みを確認したユイカは梯子を切り落とし探査船へと帰還する。


「で、今度は一体何の仕事してるの?」

 潜水スーツをスーツの上からきているタツミの元へユイカが現れる。

「聞いてないのか?」

 タツミはユイカに位置から事情を話した。

「タツミあんたさ、気を付けてよ……? 確かに私たちがしている仕事は常に危険と隣り合わせだけど、タツミは私たちの何倍も危険な仕事してるんだから……。昔から一緒に生活している家族みたいに感じているんだから……」

 タツミは表情穏やかにユイカの頭に手を乗せる。

「大丈夫。俺は死なない」

 歩き出そうとしたタツミにユイカが抱き着く。

「もう少しあなたがいなくなったら悲しむ人がいるっていることを考えてよ!」

「そんな大げさな……」

「大げさじゃないよ! 家族が飛行機の墜落で漂流したり、二年間疾走した後手足が人口になって帰ってきたり! 確かにタツミ程ではないけど私達も訓練を受けてて強いんだよ!」

「わかった……これからはユイカたちにも頼るとしようか」

 タツミはユイカの腕を優しくほどき、サオリの方に向かう。


「どうだ? なにかあったか?」

「うん。三百メートル先。なにか巨大なもの映ってる」

「よし、少し前に出す感じに止めてくれ。海底まで潜って船体に穴ぶち開けてやる」

 サオリは頷き船を動かす。

 タツミは甲板に上がり、酸素ボンベなどを背負い飛び込む準備をする。

 

 暫くして船の速度が落ちてきて、サオリが合図を出してくれたのでタツミは海に飛び込んだ。

 タツミは足のリミッターレベルを一つだけ解除し、足ひれを使って高速で潜水し、数分も立たずに海底に到着した。

 暫く海底で待機していると、潜水艦が現れたので、タツミは張り付き、下部のハッチをこじ開ける。

 薄暗いハッチ内でタツミは潜水スーツを脱ぎ、スーツのネクタイを締めなおす。

「何者だ!」

 一人の男が武装した状態で入ってきたが、タツミはサイレンサーをつけたハンドガンで制圧しこじ開けたハッチに捨てる。

「ふむ、各ブロックに見張りがいるような感じか」

 タツミは手袋をはめて船内への潜入を開始した。



 それから何人かを倒して進んでいるうち、船内がざわめき始め、侵入者防衛用の隔壁が下りタツミを閉じ込める。

「はぁ、クールダウンがそれなりにあるから脱出までには解除しなきゃなぁ」

 タツミは少し溜息をつきながら腕のリミッターを三まで解除し扉を熱で溶かしながら進んでいく。

「リミッターを三まで解除すると銃も持てなくなるからそれが厄介なんだよな」

 とつぶやきながら襲い掛かってくる船員の首を焼き切る。

「まぁ、昔からの癖で仕事中は手袋するのが俺のスタイルだと言ったらもらえたアヤメニウム繊維の手袋は熱伝導率もいいし、とても使い勝手はいいからそれで我慢するか」

 






「おい、船内が騒がしいぞ? 座礁して浸水でも始まったか?」

 豪華な客席で食事を嗜みながら鼻で笑う永田。

「ご、ご安心ください永田様、少々見てまいります」

 そばにいた船員が去っていくのを見て永田は溜息をつく。

「全く、食事中なんだから静かにしてほしいものだね」

「すまんな、騒がせちまったようで」

「な……!?」

 独り言を言いながら料理を食べる永田の席の向かいに顔に血の付いた白髪の男が座っていた。

「貴様……執行官№0か?」

「二十五点」

 タツミは偉そうに机に肘をつき、話を始める。

「おっさん、覚悟できてるか?」

「ふむ、ウォンの件か? 私が直接手を下した証拠はどこにある」

「まぁ、それもあるが。デーモンズビリーバーは残念だったな。俺に潰されて」

「何のことでしょうか」

「おいおい、とぼけても無駄だぜ? お前だろ? トランプ部隊に脅迫状を送り、クイーン、エース、キングをあのビルに監禁する手助けをしたのは。まぁ、お前がとぼけるなら一から説明してやろう。お前は昔からアメリカ政府と個人的なつながりがあった。だがマッドマンがアメリカを大して必要視していないことにいち早く気が付き、トランプ部隊の三人の常駐する屋敷の場所をデーモンズビリーバーに売り、ユイナの父親の脳みそを使ったコンピューターの概要を流し、俺がデーモンズビリーバーを襲うように仕向け、返り討ちにして俺の首をマッドマンの手土産にでもするつもりだったんだろ? まぁ、結局失敗したわけだ。まぁ、俺には違和感しかなかったよ。隕石墜落で辺り一帯を無人に出来るほどの権力をデーモンズビリーバーごときが持っているのかと。だからマッドマンがコンピューター制作を依頼し一目置かれているデーモンズビリーバーに依頼した。違うか?」

 タツミの話を聞いた永田は机をたたいて立ち上がる。

「く、下らん! そんな話、出まかせに決まっているだろう! そんなくだらないデマを聞かせるために私の所に来たというのか?」

「そうだな、確かに何の確証もないが……」

 腕のリミッターを解除し排熱の終了した腕で銃を持ち、永田の眉間に銃口を突きつける。

「白髪の狩人は依頼された仕事は必ず成功させる。俺から逃れられる者はいない」

 タツミは無慈悲にトリガーを引いた。

 


 暫くして、海上に潜水服を着たタツミが姿を現す。

 探査船で回収してもらい、サオリとユイカに礼を言った後タツミは吉原の元へと向かった。

「いいのか? 総理大臣さんよ」

「何がかな?」

「飛行機で永田が輸送されるという情報はあんたにしか伝わってないわけだろ? そうすると、あんたが殺し屋を動かしたことも、TGJCという組織も明るみになってしまう可能性が高いんじゃないか?」

 タツミが言うと吉原は夕日挿し込む窓辺に立ち。

「大丈夫。TGJCの事だけは必ず極秘を貫いて見せる。君達が生きにくい世界など私が作るはずがないだろう」

「そうかい」

 タツミは総理大臣の部屋を後にし、ユイナの待つ自宅へと帰った。







「パパがいない間に電話来て、ミカお姉さんが『首謀が来た』って言ってたよ……?」

 自宅玄関で唯奈の言葉にハッとし、TGJC本部に急いで向かおうとしたが、少し悲しそうなユイナの顔を見たタツミは彼女を抱き上げ、ガレージに向かい助手席に乗せて車を発進させた。


本部内ではユリが真剣な顔で座る椅子をその場にいた執行官が囲んで監視しているという状態だった。

「あ、タツミにユイナちゃん」

 二人の到着に気が付いたミズキが二人を呼ぶ。

「おい、こいつどうするつもりだ? 戻ってきて捕まえようとしたら話があるのはタツミだけだってかたくなに俺達と話をしようとしないんだ」

 マサキはイラついているようだった。

 タツミは何も言わずにユリの前に堂々と腰を下ろす。

「決めたか?」

「……マイナに会わせなさい。話はそれからよ」

「無理だな」

 あっさりと断るタツミにユリは大声をあげる。

「どういうこと? あなた、マイナを保護したって言ったわよね!?」

「あぁ、言ったな」

「どういう事よ!」

 タツミの表情が一気に恐ろしくなったのを感じたユリは席に着く。

「いいか? そもそも、お前がここに来た時点でTGJC本部の場所は敵に筒抜けという事だ。そんな危険なところで交渉材料を保護すると思うか?」

「そ、それは……」

 タツミはスッと立ち上がり。

「よし、みんな飛行機に乗るぞ」

 と宣言して皆を誘導し秘密飛行場に行くよう指示する。

「ユイナ、行こうか」

 タツミは彼女の手を握り一緒に向かう。


 何も知らされることなく皆は飛行機に乗せられ、どこかへ連れていかれた。

 その後、タツミは硬度が安定したことを確認してアナウンス用マイクを持って、大体を説明する。

「……ということがありましてー、俺この度クローズバリアアイランド及びその周辺を買い取りまして、超極秘裏に秘密施設を作成しましたー! とは言っても、まだ半分も完成していなくて、滑走路とヘリポート、居住区のみしか完成してないけど……まぁ、というわけでマイナとユリはここで保護という名目の上で隔離生活を送ってもらいまーす。ちなみに、彩芽博士の研究施設もこっちに移転になったから、生活の不自由などは彼女にお願いしまーす。そして、この島の事を知っているのはTGJC執行官とユリ、マイナ、博士、吉原総理だけなので、気密性と安全性はとても高いでーす。ちなみにこの機体のパイロットは博士なので、ご安心ください。以上、島を買わされた男からのアナウンスでしたー」

 皆はぽかんと口を開けたまま黙ってしまった。

「あ、あの島って激しい嵐が常に周りの海域を覆っていて、船も出せず、海流も早くて潜水艦も無理、飛行機は上空は追加できるけど、限界高度で通り抜けるくらい、ヘリも人を運ぶことは出来ても大規模な工事機等を運び込むには重量制限で無理っていう島よ!? 前タツミを迎えに行った時は人を運ぶだけだったから行けたけど、今乗ってるの飛行機だし、施設建てるって……どうやって?」

 ユウカが不思議そうに尋ねる。

『そこは私が説明しよう。あの海域は不定期な風と波で読めないから侵入も困難という事だったが、半月前のことだ。あの海域の嵐の風や波は六百年周期だったことが判明したんだ。クローズバリアアイランドと周辺海域が発見された当時の記録からすべての記録をとある気象科学者が一人で管理していたんですが、老衰により亡くなられたので、研究資料を知り合いに頼んで送ってもらったの。それを一から照合した結果、つい最近の気象と六百年の気象がぴったり当てはまったの。それが、今の今まで気象の変化し続ける魔の海域の正体だったの。だからその資料と島が世界に知られる前に私……いや、タツミに買い取ってもらったの』

 とアナウンスで説明する。

「ちょ、ちょっと待て博士? 俺は資料を買い取った覚えはないぞ!?」

 タツミの声と共に機内で笑いが起こる。

『さぁ、着陸態勢に入るぞ』




 飛行機から降りると、目の前にはきれいな砂浜に透き通るような海、奥の立ち上る暗黒の雲、そして工事中の島。

「おねーちゃーん!」

 奥からマイナが走ってきてユリに飛びつく。

 皆は二人の再開を優しい顔で見ていた。

 暫く二人は抱き合った後、博士に連れられて二人の居住区画へ行ってしまった。

 タツミは執行官達の前にスッと出る。

「いいか、今回政府秘密機関一角の長が暗殺された。そのため、世界は大きく動くことが予想される。そのため、いつTGJCが襲撃されるか分からない。ここの島は、そういう場合に退避するものと考えておいてくれ。ちなみに、これから島の周りにも防衛設備を建設するつもりだ。気を付けてくれよ。まぁ、訓練施設も海岸もリゾートスペースも作るから旅行としても来れるぞ」

 そういってユイナを抱き上げ。

「よぉし、ビーチ行ってみるか!」

 と言って二人で砂浜の方へ走っていってしまった。














 数日後、彩芽に買い出しを頼まれトボトボタツミが歩いていると、突如黒い車が隣に停車し。

「グレーヘアーハンターだな。これを渡す」

 と、手紙を突きつけ車は去っていった。

「おい! グレーヘアーは老化による白髪だろうが! 俺はしらがの狩人じゃなくて、はくはつの狩人だからな!」

 タツミは大声で叫び、少し腹を立てながらスーパーへと向かった。

最後のしらがじゃなくてはくはつな!っていう文を書きたいがために今までルビ振ってませんでした。

はくはつのかりうどという読み方でおねがいします。

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