表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
農民無双  作者: 弘松 涼
25/27

25 ローザ

 プライマーは一礼してローザの隠れ家を後にした。



「アキヒコ、ちょっといい? 実は裏口もあるのよ」


 奥にある棚をどけると、その裏には何とか人が一人通れるくらいの通路があった。

 ローザに連れられてその道を進む。


 村から少し離れた裏山にでた。


「んん~。やっぱ外は気持ちいいね」


 大きく伸びをするローザ。

 彼女の緑色の長い髪が、風に揺らめく。


「この穴、実はプライマーが提案してくれたの。他にも彼は色々策を練ってくれたんだ。実はね……」


「つまり、プライマーが俺を試していたのは、演技だった。そういうことか?」


「……うん。どうしてもアキヒコの器を見たかったみたい。あらかじめ私には断ってくれていたんだよ。だからね、お金を引っ張ってこさせるの、やめさせてあげて。アキヒコだって7日で倍だなんて、あれ無理なんだよね? 売り言葉に買い言葉なんだよね? 弾みであんなこと言っちゃっただけなんでしょ?」


 

 そうだったのか。

 あいつ……。

 だが俺は首を横に振った。



「いや、そのつもりはない。どうしても俺はプライマーの覚悟を知りたい」


「覚悟は十分あるわ!」


「……仲間の覚悟を知ることは、つまり俺に課せられた重みを知ることになる。今までだって生半可な気持ちで言っていたわけではない。だが俺一人だけではこの聖戦を成し遂げることは不可能だ。みんなの力が必要。だから、俺は――」


「いくら言っても無駄のようね。……分かったわ。フフ」


「どうした? 何がおかしい?」


「いえ、ちょっと考えてみたの。自由だ、自由だって言っているけど、本当に自由になったら私たちどうなるんだろって」


「……確かにな。

 理不尽で不平等な時代を変えなくては! そのことばかり考えて、俺たちがどうなるかなんて考えたことがないな」


「アキヒコは何かするの?」


「……そうだな……

 俺、何するだろ?

 前も言ったように、俺は君が幸せになってくれればそれで満足だ」





「私も……」




 見上げると満月がやさしく俺たちを見下ろしていた。

 今夜の風はちょっぴり暖かく感じる。




「私たち、同じだね?」


「はは、そうかもな。似た者同士なのかもしれないな。頑固で意固地で実直で、やると決めたら誰がなんといっても強行突破。外野からすればはた迷惑なことだって、見境なくやっちまう」



「ふふ。そうかもね。

 ねぇ?」



「ん?」



「アキヒコは、好きな人いる?」



 それは唐突に思えるよう質問ではなかった。


 ごく普通に。

 自然に。

 

 だから流れるように言えた。



「……君じゃぁダメかい?」



 ローザはやや俯いて小さく首を振った。



「ううん。うれしい」




 彼女の頬が赤みを帯びて見えたのは、あの満月のせいなのだろうか。



 俺は、自分の気持ちを悟っていた。

 彼女には、幸せになってもらいたい。

 そして俺は、ローザなしでは生きていけない。

 それだけに、彼女の片目を覆っている眼帯が、とてつもなくおそろしいものに思えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ