21 レベルアップ
重たい話もあったが、普段のクナはいい奴だった。
場が暗くなると、「あ、ごめん」と話題を変え、焼けた魚を頬張りながら冗談を言い、ケラケラ笑っている。
どの道彼女はローザを目指している。
そこまで同行することにした。
「どうしてアキヒコもローザ様の長屋に行くんだ? あ、なるほど。あたしの話を聞いているうちに、農徒神教に入りたくなったんだろ?」
「……まぁ、そんなところだ」
食事を終え、村へ向かおうとした。
西の方角から、馬のひづめの音が聞こえてくる。
それもかなりの数だ。
おそらくガルキーナ一派か。
予定よりも一日早い赴任になったのか。
奴はクナの漁村を滅ぼした悪党だ。
いずれぶつかるだろうが、このタイミングでの激突はまずい。
クナは陽気で面白い奴なんだが、後先考えずに行動するタイプだ。
俺をダンと誤認した時だって、俺の話を聞こうとせずに攻撃を仕掛けてきたくらいだ。
村でガルキーナと鉢合わせになると、絶対に突撃していくだろう。
これを引き金に、睨み合っているふたつ――ダン率いる村の自治隊、ローザが募った農徒神教が正面衝突を起こすかもしれない。
そうなれば村は二つに分断する。
そのまま聖戦へと突入してしまう。
いずれそうなるのかもしれないが……。
まだその時期ではない。
ガルキーナやエルフ軍の力を把握してからでないと取り返しのつかない事態に陥る。
仕方ない。
日が暮れるのを待って移動するか。
「おい、クナ。俺はおごられっぱなしが嫌な性格なんだ。釣りのコツを教えてくれ。俺が釣ってごちそうをしてやる」
「は? なんだよ、それ。
村はすぐそこなんだし、早く行こうぜ」
とまで言ったクナだったが、俺の顔をマジマジと見て、なんかニヤニヤ笑うと鼻の下を指でかいて、
「ははん、アキヒコはあたしともうちょっと一緒にいたいんだろ。もっとうまい嘘を言えよ。仕方ないな。あたしもお前のこと、嫌いじゃないし、まぁ簡単な漁術くらい教えてやるよ。ほら、脱げよ」
クナは俺の上着を脱がそうとする。
「お、おい。釣りを教えてくれよ」
「釣りなんて暇人がすることだ。早く上手くなりたければ、こっちを覚えな」
クナは鉄のモリを生成して、俺に投げてきた。
「素潜り教えてやるよ。着いてこい」
そう言うと、クナは川に飛び込んだ。
そういや俺、泳げるのかな?
恐る恐る川に飛び込んだ。
二分程度で溺れかけて死にかけた。
「お、おい」
「……」
人工呼吸で蘇生してもらうこと、5回。
ようやく潜れるようになった。
「あはは、アキヒコ。大分うまくなったじゃないか。最初はあたしにチューしても貰いたくて溺れたフリしているのかと思ってほっておいたが、マジで死にかけていてびっくりしたぞ」
「うるせぇ!
……まぁ、でも、ありがとう」
クナの指導が良かったせいもあり、夕暮れ前にはコツが飲み込めてきた。
俺の漁術が上がった。
素潜りができるようになった。
もりで魚を突けるようになった。
西の空が赤くなってきた。
そろそろか。
ようやくローザに会える。




