18 漁スキル
猛将ガルキーナが村に赴任するまで一ヶ月かかるらしい。
日が暮れると、毎日のようにダンは村の集会所に若い農民たちを集めて話をしている。
どうも勢いがあるのはダンのみで、村のみんなは不安に包まれている様子だ。
「でもよ、ダン。どうしてガルキーナ様じゃなくてはいけないんだ?」
「他に誰がいるっていうんだ? 軍から見りゃ鎮圧するしかないんだよ。この村は」
「だったら、いっその事……。アキヒコをリーダーにして……」
「おい、リック。マジで言っているのか? もしアキヒコが逃げたらどうする? いや、逃げないにしても病気になるかもしれないし、討死だって考えられる。あいつが消えた後、どうする気だ? お前がリーダーになるってか? 敵はエルフ軍だけじゃないぞ。旗を立てれば人間軍やドワーフ軍、野盗集団も狙ってくるだろう」
「……だどもよ」
「俺達農民は、領主様の加護がなければ生きていけないんだ。ただ年貢を納めておけばいい。そうすれば俺達は殺されずに済む。こうやって農民は生きてきたんだよ」
「分かった。ダン。お前は正しい。わしはお前について行く」
「わしも」「俺も」
「よし、誓いを交わそう。俺たちはこれから一蓮托生となり、運命を共にする。恐らくアキヒコやローザが良からぬ悪知恵を入れてくるだろうが、徹底的に潰せ。いいな」
「分かった」
ガルキーナがやってくるまで一ヶ月の時間がある。
それまでこっちも動かなければ。
俺はファラード邸に忍び込み、勇者シローの書物を物色しては読み漁っていた。
勇者シローはカリスマ性もあり、部下には優秀な農民や漁民、そして漁師がいた。とくに漁民の操る漁術で海戦を渡りあるいたとある。
優れた農民が天候を操るのと同様、鍛え抜いた伝説の漁師は人食いサメや大王イカ、リバイヤサンを一本釣りで釣り上げることができたとある。
そしてその伝説の漁師がシローの配下にはいたのだ。漁師たちはバクフ海軍を幾度か返り討ちにしたと記されてある。バクフには海戦を得意とするプロの航海士がたくさんいる。戦艦だって違う。敵は鉄の城。こちらは木製の帆船だ。それでも海の男達は鍛え抜いた漁術を武器に、勇敢に戦い数々の戦果を上げてきた。
それでも聖戦に敗れた。
今の俺には農術しかない。
農民を守るためには、最低でも当時のシロー、そして古の勇者軍を越えなければならない。確かにダンの言う通りだ。
今の俺では一騎打ちでは勝利できても、編成された軍には勝てない。
とにかく時間が惜しい。
俺は漁スキルを鍛える為に、森の奥にあるエスタレンゲの湖を目指した。




