二人が仲良く眠るだけ
「今日は疲れましたわ」
フラフラと魔法学園の自室に戻るやいなや、贅を尽くしたフカフカのお布団と合体したのは覇王勇者イーリス・エル・カッツェその人であった
普段から多忙なイーリスだが、今日はいつにもまして忙しかった。北で暴れていた魔人を討伐し、南で行われていた暗黒の儀式を粉砕し、アリスの愛にクロスカウンターで応え、某所で行われた世界悪役連盟の会合に参加した。
連盟の会合で多種多様な悪を確認出来たのは嬉しかったが、中にはただのゲスも含まれていた。そんなゲスはイーリスや連盟の求める悪に相応しくないためその場で排除されたが、ゲスや外道であるだけで悪役だと勘違いする者は多い。イーリス達の求める悪は、単純なクズとは一線を画するのだ。
ままならないとイーリスはため息をつく。イーリスの最終目標は至高にして唯一の悪役だ。人々を、世界を害するだけの外道が増えるのは喜ばしくない。
イーリスが最後の悪役となった時こそ、イーリスや悪役達の目的は達成されるのだ。
「ワタクシはイーリス・エル・カッツェ。世界最高の悪役令嬢を目指す者。この程度で負けて……負けて……ああ、お布団が気持ちいい……」
覇王勇者でもお布団には勝てない。いつの間にか侵入していたアリスに抱きしめられ、アリスの二つの膨らみの柔らかさを感じながら、イーリスは目を閉じた。
「アリス布団ですよー、イーリス様ー」
「布団は喋りませんわー」
「お風呂には入らないんですか?」
「疲れましたわー」
「お食事は?」
「疲れましたわー」
「私の相手は?」
「疲れますわー」
「ひどい!?」
そんな他愛ない会話をしながら、アリスは愛の力でイーリスを清潔にし、空腹感を一時的に忘れさせ、しかし必要な栄養を補給し、全ての疲労を回復させた。
「イーリス様、大好きですよー」
「そうですのー」
「イーリス様は立派な悪役ですねー」
「そうですのー」
「抱いてくれると聞きましたー」
「そんなわけないですわー」
「えー……」
毒にも薬にもならないくだらない会話だが、イーリスを眠りに導くには十分すぎる効果を発揮するようだ。
アリスの声に反射的に声を返しながら、イーリスは眠りの世界へと導かれた。
そして、アリスはイーリスの安らかな寝顔に癒やされながら、また自らの愛を際限なく高めながら、イーリスを抱きしめて眠りにつく。
今日だけはアリスも眠っているイーリスに何もすることなく、二人は仲良く一つのベッドで眠りについたのだった。




