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悪役令嬢、絶体絶命!

 駆ける。

 駆ける。

 駆ける。

 疾風になってアリス・イル・ワンドは駆ける。

 王都の屋根から屋根へ、郊外の森の中を突き進み、邪魔な障害は蹴散らしながら突き進む。

(イーリス様……どうか……どうか……)

 何故、アリスがこれほどまでに急いでいるのか。それは、アリスが聞いた一つの噂がきっかけだった。

 

 ◆

 

 アリスがそれを聞いたのは偶然だった。

 

 覇王勇者イーリス・エル・カッツェが、山賊に捕まった。

 身動き一つ取れず、脱出することも出来ないらしい。

 今頃は男たちに自由にされているんじゃないか。

 NTR展開待ったなし。

 

 魔法学院の生徒たちが面白半分に噂していたことだ。それをアリスは偶然耳にした。

 生徒たちも信じているわけではないだろう。笑いながら話していたのがその証拠だ。よくわからない何かとしてよく知られているイーリスだが、同時に世界最強の勇者の一人であるということも知られている。そのイーリスが、山賊如きに好き放題されるわけがないというのが、生徒達の共通した認識だった。

 だが、次の瞬間には、アリスは走り出していた。

 一縷の望みにかけて、アリスは走り出していた。

 風になり、疾風になり、音を超え、光を超えて、どこまでもどこまでも加速する。

 アリスが捕まっている場所はわからない。だが問題はない。近くまで行けば、アリスはイーリスのことを感知できる。イーリスがいる場所を、自らの愛で知ることが出来る。だから、どこまでも走り続け、イーリスの感知できる場所まで行けばいい。

 どこまでも加速し続けたアリスは、やがて時間を超えた。もはや時の止まった世界の中で、アリスは走り続けた。

 西へ、東へ、北へ、南へ。時には星の中心まで行き、アリスがいないか探し続けた。身を溶かすであろう温度は愛で耐えた。

 星を何周しただろう。体感で年単位の時間を走り続けたことだろう。途方もない時の果てで、ようやくアリスはイーリスのことを感知した。

 なんてことはない。何処とも知れない洞窟の奥に、イーリスはいた。アリスの感知できる範囲外まで続いている、とても深い洞窟であった。そのため、アリスは見つけることが出来なかったのだ。自らの愛を更に高めることを、アリスはその時誓った。

 さて、もはや時間はないだろう。いや、アリスにとっては時間は止まっているが、イーリスが捕まり、それをアリスが知るまでかなりの時間がかかったはずだ。それまでに既に手遅れになっていてもおかしくないのだ。

 間に合え。間に合え。間に合え。その思いだけを胸に、アリスは走り、疾走り、ついにその場所にたどり着き――絶望した。

「あら、アリスさん。何故ここに?」

 洞窟の最奥部にいたのは、優雅に立つイーリス・エル・カッツェだった。

 イーリスを捕まえていたという山賊たちの姿は見えない。上半身を地中に埋められた犬神家のファンな男たちが二十人ほどいるが、ただの間抜けの成れの果てだろう。

 イーリスは、既に敵を壊滅させていたのだった。

 イーリスは、無情にも無事であったのだ。

「そんなああああぁぁぁぁ! イーリス様との○○○で○○○の○○○なひと時がああああぁぁぁぁ!」

「アリスさん、あなたは何のために来ましたの?」

「はい! 動けないイーリス様と愛し合うためです!」

「悪役令嬢奥義! 美しき白鳥乱舞!」

「ありがとうございます!」

 イーリスの放った美麗な連撃は、アリスを地中深くまで吹き飛ばし、その余波で洞窟は崩壊した。

 崩壊した洞窟を脱出し、イーリスが魔法学院に戻ったのは、それから一時間後のことだった。

 なお、アリスは三時間後に戻ってきた。

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