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飼い主観察記

 今日も俺は魔法学園で主のことを観察する。

「悪役令嬢奥義! 美しき白鳥乱舞!」

「ありがとうございます!」

 俺の主は頭がおかしい。

 明らかに人間が出せる威力じゃない技を、ただの人間に食らわせている。いや、このアリスとか言う女は只者じゃないんだがな。

 かつて誇り高きフェンリルとして生きていた俺は、頭のおかしい主(イーリスとか言う名前のはずだ)に負けて……負け? て、哀れにもペットとして飼われることになってしまった。

 三食昼寝付き、毎日の散歩と、吐き気がするほど平和な毎日(イーリス主観)を過ごしている。

 平和ねえ……俺にとっては平和じゃないな。もっと強くするとか言って主は襲ってくるわ、君を試すとか言って変な男(カイルだったか?)が襲ってくるわ、ニコニコしながら下僕の女が噛まれに来るわ、全くもって平和じゃない。

 おかげで俺の強さも外で過ごしていた時よりも格段に上がってしまった。だが、それ以上の速さであの馬鹿三人が強くなっている。おかげで俺とあいつらの実力差は開く一方だ。

 あなたは全然強くならないですわね? 余計なお世話だ! お前らがおかしいんだよ! 見ろよ! 他の人間は俺を怖がって寄ってこねえぞ! かつての戦争でも今の強さがあれば、秒で異世界の神々を鏖殺できたはずだ! お前ら頭おかしいぞ!

 ああ、いや、今に始まったことじゃないな。こいつらが人外離れしてるのは今更だ。特にあの下僕の女は絶対おかしい。神をも殺す俺の牙を受けて無傷とか、プライドがポッキリへし折れるぜ。実際に何度かへし折れてるぜ。

 悲しい。何故俺はあんな女にも勝てないんだ。負けてるわけでもないけどな、倒せない時点で俺の負けみたいなものだ。

「ポチー! どこにいますのー!」

 おっと、主がお呼びだな。用事に付き合わないとうるさいからな、行かないとな。

 名前? まだ仮だ。命名会議とやらがまだ続いてるんだよ。変な名前になりそうになったら俺が必死に止めてるってのも、長引く原因だろう。まともな名前だったら何でもいいんだぜ、俺は。カッコ良ければなお良しだ。

「あら、いましたわね、ポチ。今日は魔帝が人間界に現れるそうですわ。討伐しに行きますわよ」

 へいへい、魔帝ね。さっさと……魔帝かー。そっかー、魔帝かー。

 確か俺と一緒に異世界の神々を倒した奴だったはずだよなー。その後魔界に降りて、魔王としのぎを削ってたはずだな。あいつと魔王、どっちが勝ったんだ?。

 当時は欲の塊みたいな奴だったな。きっと魔王が消えた魔界を統一して、今度はこの世界に乗り込もうって気なんだろう。馬鹿な奴だね、止めておけばいいものを。

 自称悪役令嬢の主は、自分以外の悪を許さない。だから、他の奴の手に負えないようなら、主はどこにでも飛んでいってその悪を叩き潰す。

 悪役は一人でいいとか、主は世界征服でもするつもりなのか? 世界を統治するなんて面倒なだけじゃないかね?

 まあ、俺には関係のない話か。俺は主の足になって、魔帝が来るとかいう場所まで主を送り届ければいいだけだ。

 後は離れた場所で主が戦う姿を見物するだけだ。楽な仕事だね。主と戦うよりは万倍楽さ。

「魔帝の側近に魔界騎士がいるはずですわ。本人が言ってたから間違いありませんわね。ポチにはその相手を任せます。安心しなさい、今の魔帝の五倍程度強いだけですから。あなたでは死ぬことはないですわ」

「くぅん……」

 ……ハッ! しまった! つい情けない鳴き声を!

 魔界騎士? 誰だそれは。俺は聞いたことがないぞ。

「魔界騎士イヴィル・キース・ブラッドブルー。かつて聖騎士と呼ばれた者ですわ。ワタクシが魔帝を倒すまでの間、ポチは時間稼ぎをしてくださいませ」

 聖騎士……聞いたことがある。確か、セイヴァー・キース・ロードレッドとか呼ばれていた男のはずだ。聖剣ユートピアに導かれる勇者だったはずだが、どうして魔界に? かつて俺と奴が戦った時は、ほぼ互角の勝負だった。

 しばらく会っていなかったが、おそらく少し前の俺と魔帝の強さもほぼ互角。主に拉致されてから俺も強くなったが、かつての聖騎士は魔帝の五倍強いだと? つまり、俺よりも五倍強いと言っているのも同然じゃないか。

 ……逃げたい。

 主よ。これも俺に対する試練なのか? 修行なのか? もっと強くなれというのか?

 やめてくれと、懇願の意味を込めて主を見つめるも、主は首を傾げるのみ。主様、あなたのかわいいペットが助けを求めているのに、あなたには通じないのですね。

 クソが。

 だが、主は俺を見捨てていなかった。一部だけだが、主は俺の意図を汲み取ってくれたのだ。

「あら、不安そうですわね。仕方ありませんわ。アリスさんを持っていくことを許可しますわ。盾として有効活用してくださいませ。いざとなれば投げつければ相手も怯みますわ」

「はい! イーリス様、任せてください!」

 いいのか、おい。アリスさん、それであんたはいいんですか? 完璧に物扱いですよ?

 喜んでいるならいいのかなー。いいんだろうなー。アリスさんはそれで幸せなんだろうなー。

 ……逃げたい。

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