レタリア
とりあえず導入部。
今後も短く話が区切られてくかと・・・
「お父さん、新しい薬なのだけど・・・」
次の街に移動中の馬車の中、アデルは新たに作りだした新薬を嬉々とした表情で父であるリオに見せている。
しかし、リオはここ数日の疲れから船を漕いでいる。
結局、あの後街に戻り町長であるサーガに報告。
ギルド本部にパーター卿の一件などを通達し、旅の準備のために数日滞在した。
街に戻ってからは色々と大変なことが多く、サクラの様子がおかしかったり、アデルはアデルで「吸血鬼対策をする!!」とか言って宿にこもって何やら開発に没頭していた。
そのため、サクラに付きっきりで話を聞いたりなだめたりと奔走したリオであったが、追い打ちをかけるように甘えたがりの長女と四女の嫉妬をかってしまい昼はマリアとデートという名の買い出しを、夜はエリザとの飲み会と休む暇さえ与えてもらえず、次の町での休息を期待しつつ馬車に乗り込んだリオであった
時は現在に戻り、今度は開発ばかりで構ってもらえていなかった三女が訴えかけてきているのである。
「・・・さん!!・・・お父さん!!」
再三に渡る呼びかけにようやく目を覚ましたリオ。
「ん、あぁ、どうした?アデル?」
眠気眼を擦りながらリオは起こしてきたアデルの方を見るとアデルは何やらビンを持ってニヤニヤしている。
「出来たの!!新しい薬!!」
どうやら手に持っているのがそれらしい。
「で?どんな効果なの?」
そう質問した瞬間、リオだけでなく他の娘達もやってしまったと言わんばかりの顔をした。リオに至っては数秒前の寝ぼけていた自分をぶん殴ってやりたいと思うほどに。
「これはね!!回復能力や回復魔法の威力を増大させる薬なの!!主な原料はマンドレイクの根っこにリザードマンの鱗を粉末にしたものにサンオン山に自生する山菜をベースとして、理論の方はね・・・・・・」
こうなるとアデルは止まらない。対象が家族限定の奇病みたいなもので、家族の間では薬を持ったアデルに近付くなという暗黙の協定があるくらいだ。
「・・・それでね、それでね!この薬のさらに凄いところは!」
薬トークがそろそろ1時間に達する頃、荷台から避難していたマリアが戻ってきた。
「お姉ちゃん、パパ、次の町が見えたって!!」
助かった。そう思い、ほっと胸を撫で下ろすリオであった。
新たな町に着き、町の門番に税などを払っていると門番がリオに話し掛けてきた
「随分と美しい女性を大勢連れていますが、どのような関係でしょうか?」
「ああ、娘なのですよ」
「そうなのですか!では、この街で娘様たちにとって良いことが起きるかも知れませんね。」
「どういうことですか?」
リオはおもむろに聞き返した
すると門番はこう答え、ニッコリと笑った。
「この街の名は『レタリア』奇跡の街、レタリアでございます」