害虫駆除
「全ク、貴様ラ愚カ者ノセイデ奥ノ手ヲ出サネバナラヌトワ」
蜘蛛の化け物へと変貌したパーター卿。
人間の面影はあるが、顔面は蒼白し、目は6つ、お尻のあたりは肥大化し、元々あった腕と足とは別に背中からフサフサとした長い蜘蛛の脚が6本突き出ている。
変貌したパーター卿を見て賊から怯えたような声が次々あがる。
そんな中、リオは冷静に問う
「それがあんたの本当の姿?」
「私ハ、貴様ラヲ捕食シ、全テヲ手ニスル」
そう言い放つと、パーター卿は空に向かって糸を吐き出した。
糸はゆっくりと落下すると賊に貼り付き、次の瞬間賊の生気が消えた
「フゥ、役立タズ共デハコノ程度カ」
「吸ったのか。生気を」
リオが睨むように言い放つ
「私ガ雇ッタノダ。ドウシヨウト勝手ダ」
「下衆が!!」
「サクラ、俺がやる」
いまにも斬りかかりそうなサクラを制止し、リオが前に出る
ゆっくりと歩きながらリオはパーター卿との距離を詰める
ある程度近づくと立ち止まり、リオは右手を横に出した。
すると右手の周りに黒く渦巻く時空の狭間の様な歪みが現れる
リオはその歪みに右手を突っ込み、ゆっくりと引き抜いた。
そこには刀身が赤く光るシミターが握られていた。
「虫退治には炎が一番だろ?焼いてやるよ蜘蛛野郎」
「下等冒険者風情ガ、大人シク捕食サレロ!!」
深く息を吸い込み、大量の糸を吐き出すパーター卿。
糸は空中で広がり、蜘蛛の巣のようになり、リオの行く手を阻む
しかし、リオは臆することなく糸の中に突っ込む。
炎をまとった剣を振るい、糸を切断しながら瞬く間に距離を詰める
射程内に入ると跳び上がり、パーター卿に剣を振り下ろした。
しかし、リオの剣は空を切った。
当たる直前にパーター卿の肉体が崩壊したのである。
いや、正確には崩壊した訳では無い。
大きな体が小さな無数の蜘蛛の子となって散ったのだ
そして、散った蜘蛛の子は集結し、元の化け物の姿を形取る
「蜘蛛の子を散らすようとは、まさにこの事だね。」
振り返りながらリオは言う
「コレガ、選バレタ人間ノチカラダ」
「そうか。少しアプローチを変えよう『火の玉演舞』」
リオが弧を描くように剣を振ると軌道上に次々と炎の玉が発生し、次々とパーター卿に向けて発射され始めた。
「蜘蛛ノ俊敏サヲ知ランノカ!!」
発射される玉を次々と避けるパーター卿
しかし、リオも発射を止める様子はない
隙を見て、距離を詰めるパーター卿。
間髮入れずに胴体に剣を突き立てるリオ
再び散る蜘蛛の子。
蜘蛛の子が集まったところで発射を再開する炎の玉。
「あーさっきからチョットずつ掠ってるけど、大丈夫?パーター卿?」
「コノ程度ノダメージ、造作モナイワ!!」
「そう。ところでさ、知ってる?蜘蛛は聴力が衰えてる代わりに体にある毛で周囲の情報を得るんだ」
ここで少し炎の玉の発射頻度を弱めたリオ
「さっきから結構掠ってるから、燃えてるよね?背中から出てる脚の毛?」
リオの問答に勘付いたパーター卿であったが時すでに遅し。
振り返った先には、
「『氷結破壊』」
エリザの魔法でパーター卿は氷漬けとなった
「『剣戟~カムイ~』」
そしてすかさず、サクラが氷を刀でバラバラに切り刻んだ
「これが家族の力だ。パーター卿。・・・まぁ、聞こえていないだろうが」