奇跡の終わり
短いけど・・・
アルンを倒す糸口を見つけたというリオは腰に抱きつくアデルに声をかける。
「なぁ、アデル。あれ、持ってるか?」
アデルは泣いて赤くなった目を擦り、顔をあげるとリオを見つめて答える
「あれって何?お父さん?」
「ほら、お前が俺に見せてきた・・・・・・」
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リオはアデルが必要なものを持っていることを確認すると全員に作戦を伝え、すぐさま実行に移した。
「はああああ!!」
キールが鉈を構え、アルンに向かい走り出す。
「まだ分からぬか愚か者!!『審判の光』」
しかし、向かう途中で魔法によって吹き飛ばされてしまう。
「『機関炎銃』」
アルンが魔法を発動した直後、発動を待っていたリオが魔法を放つ。
リオの魔法により発生した無数の細かい炎弾はアルンの巨体に次々と着弾し続ける。
しかし、いくら被弾しようがアルンの身体は被弾箇所を新たな肉で埋め、即座に再生する。
「小賢しい!!『天罰の光』」
アルンは、飛んでくる炎弾を爆発させる。
爆発により発生した爆煙で辺りの視界が一時的に奪われる。
「炎よ!敵を射抜く銃弾と化せ!『狙撃する炎弾』」
爆煙の中、放たれる一発の魔法。
しかし、その魔法はアルンの方向へは向かうが明らかにアルンを狙ったものでは無かった。
魔法の標的はアルンの上空。
爆煙の中、アデルによって投げ込まれた小瓶に向かって魔法は飛んでいく。
そして、見事魔法は小瓶を捉え、中からこぼれ出した液体がアルンに降り注ぐ。
「な、何だ!?何だこの液体は!!」
突如降り注いだ液体に慌て出すアルン。
そこへ再び魔法が放たれる。
「「『機関炎銃』」」
「『機関土銃』」
「炎よ!散弾し、敵を討て!『機関炎銃』」
4人の一斉射撃による無数の細かい炎と土の弾丸がアルンを襲う。
「無駄だと言っている!!」
次々と着弾する弾丸。だが、依然としてアルンの体は被弾箇所から肉が溢れ傷口を塞ぐ。
「諦めろと言っているのだ!」
傷つき、再生する。
この堂々巡りを繰り返している戦いがこの無数の弾丸により戦況が動いた。
「何だこれはああああ!」
アルンが自らの身体に起きている異変に気づき絶叫した。
「気づいたか?」
リオは魔法を放ち続けながらアルンに言い放つ。
「私の身体に何をしたのだああああ!」
アルンの傷口からは肉が溢れ次々と傷を塞いでいる。
しかし、傷が塞がった後も肉が溢れ続け、アルンの体は溢れ続ける肉でさらに巨大化を続けている。
「さっき、お前が浴びた液体はうちの娘の新作でねえ、回復能力を向上させる薬なんだよ。つまりお前の体は高すぎる自動回復能力の限界を超え、暴走状態に陥っている!」
キールが続ける。
「そして、私たちは苗木の魔力が尽きるまで魔法をやめない!」
「やめろ!!やめろ!!やめてくれええええ!!」
自らの肉に溺れながらアルンは悲鳴をあげるがアデルたちが魔法を止めることは無かった。
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やがて、再生暴走によるアルンの体の肥大化を止まり、ただの肉塊と成り果てたアルンがそこには転がっていた。
リオたちはアルンに近づくと、肥大化したアルンの身体は光に包まれ消え、そこには枯れた苗木を抱えた干からびたかのようにやせ細ったアルンが現れた。
そして、キールは魔法を放ち苗木を燃やした。
アルンは苗木に魔力を吸われ、すでに息は無かった。
シャロンはアルンの遺体のそばに座ると手を握りしめ涙を流した。
「アルン牧師、一体どこで道を間違えてしまったのでしょうか。あんなに優しかったあなたが何故ですか。幼くして天涯孤独の身となった私には、私にはあなたしかいなかったのに」
ボロボロに崩れた教会の中でシャロンの泣き声だけが静寂の中静かに響いた。
苗木の消滅と共にワイバーンも消滅し、しばらくして駆けつけたギルドの救護隊や娘達にリオたちは手当てを受け、そのまま医療施設で夜を明かすこととなった。
翌日、頭に包帯を巻いたリオは炎帝と共に町外れの酒場にいた。
「結局、あの牧師がどこから『魔人の種』を手に入れたかは分からずしまいか」
酒を飲みながらリオが呟いた。
「『魔人の種』は普通の人間が手に入れられるものでは無い。本来は悪用禁止のために国の保管庫に厳重に保管されているものだ」
「謎は深まるばかりだな」
「それよりも勇者、あの程度の敵に殺されかけたそうだな」
「・・・まぁな」
「はっきり言わせてもらうぞ勇者。その封印された体では何も守れないぞ」
「分かってる。近々王都へ出向くつもりだ」
リオは俯きながらグラスを握りしめた




