神の力
「はああああ!『大炎斬』」
アルンに向かい、一気に駆け出したキール。
素早い動きで近づき、炎を纏った鉈を振り上げる。
「『審判の光』」
しかし、アルンに当たる直前魔法に阻まれ、吹き飛ばされてしまう。
「くっ、やはりあの魔法があっては近づけない!」
吹き飛ばされたキールと入れ替わるように今度はリオが走り出す。
「『瞬雷斬』」
圧倒的なスピードで近づくと、リオはアルンに思っきり斬りかかった。
「ぐおおおお!『審判の光』!」
切られたアルンは叫びを上げながらも魔法を放ち、リオを吹き飛ばす。
吹き飛ばされながらもリオは体制を整え、アルンに視線を向ける。
確かにアルンの巨大な肉には斬った後が残っている。
しかし、次の瞬間アルンの傷口から光が発生し、傷口の奥から肉が溢れ傷を塞いだ。
「傷口が再生!?」
「いえ、あれは寧ろ再生と言うよりも増殖に近いですね」
「斬ってもダメならば次だ。ロビン!」
リオがロビンに指示を出す。
「はい!炎よ!敵を射抜く銃弾と化せ!『狙撃する炎弾』」
ロビンが発射した炎弾はアルンに真っ直ぐ向かい、着弾。肉を削る。
しかし、先程と同じように着弾箇所に肉が溢れ出し、傷を埋める。
「斬ってもダメ、燃やしてもダメなんて」
「お父さん、次は私が」
リオの横に並び立つアデル。
「行くぞ、アデル!『圧力の拳』」
リオが魔法を放つと、アルンに突進していくアデル。
「『審判の光』」
アルンが妨害のため、魔法を放つ。しかし、光を浴びてもアデルは吹き飛ばない。
アデルの前を進むリオの放った魔法が風よけの役割を果たし、『審判の光』の威力を弱めているのだ。
アデルはアルンの元までたどり着くと右手に渾身の力を振り絞り、己の発明を振るう。
「パイルッバンカー!!」
アルンに叩き込まれたパイルバンカーはその巨体が波打つほどの衝撃を走らせた。
「『審判の光』」
「きゃあああああ」
しかしアルンにはダメージがあまり通らず、魔法でアデルは吹き飛ばされてしまう。
「アデル!!」
吹き飛ばされたアデルをリオが受け止める。
「あの肉が衝撃を逃がして内部までダメージが通らないなんて!」
「さて、それでおしまいか?『天罰の光』」
そんな中、アルンは魔法を放つ。
アルンから再び光が溢れ出し、光に照らされた部分から爆発が起きる。
「ぐうううううう」
爆発に巻き込まれ、リオたちは倒れてしまう。
「これが神の力なのだ。さぁ、トドメだ。『救済の光』」
間髪入れずに魔法を放つアルン。
アルンの放った魔法により上空から多数の光が降り注ぐ。
降り注いだ光は教会の天井を次々と崩し、その瓦礫がリオたちに降り注ぐ。
「『瞬雷斬』!!」
リオは咄嗟に魔法を放ち、瓦礫の落下地点にいるアデルたちを遠くに投げる。
そして、4人全員を避難させるために投げた瞬間リオの上に瓦礫が降り注いだ。
「お父さん!!」
「勇者様!!」
仲間たちの叫びがボロボロになった教会に木霊する。
しかし、リオの返事はない。
「そんな、そんな、いやああああ!」
アデルが悲鳴が上げる。
キールやロビン、シャロンも目の前の瓦礫の山を見て立ち尽くす。
「これが神の力よ。勇者など神である私の前では無力」
そんなアルンを睨みつけ、アデルとキールが飛び出す。
「お父さんを返せ!」
「勇者様をよくも!」
「無駄だ。『審判の光』」
しかし、アルンの魔法で2人は吹き飛ばされる。
「ああああ!」
倒れても何度も何度も向かうアデルとキール。
しかし、その度にアルンに吹き飛ばされてしまう。
「アデルさん、キールさん、もう!」
何度も吹き飛ばされ、所々から血を流す2人を見て、ロビンは思わず2人を止める。
その時、瓦礫の山から光が溢れ、瓦礫が吹き飛んだ。
全員の視線が瓦礫に向く中、瓦礫からひとつの手が這い出てきた。
「ちくしょう、気を失ってたじゃねえか。軽く走馬灯まで見たぞ」
そして、頭から血を流したリオが現れた。
リオを見つけるとアデルは物凄い勢いで駆け出し、リオを抱きしめた。
「・・・お父さんのバカ」
腰に抱きつくアデルにリオは手を置き、頭を撫でる。
「心配かけた。頑張ったな」
そして、アデルの後に駆け寄ってきたキールたちを見つめる。
「ほんとうによかったです」
「勇者様、ご無事で・・・」
「勇者様、よかった。ほんとうに」
「・・・心配かけた」
全員に謝るとリオはアルンを睨みつける。
「まったく、お前のせいで娘泣かしちまったじゃねえか」
「ふっ、死に損ないめ。今度こそ屠ってくれるわ」
「ああ、確かに死に損ないだな。でも、死にかけたおかげでお前を倒す方法を思いついたぜ」




