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それぞれが信じるもの



教会へと走るリオ、アデル、キールの3人。



空では未だにワイバーンが生み出され、街には人々の悲鳴が木霊している。



「お父さん、あれ!」



アデルの示す先には先日ギガゴブリンと戦った教会前の広場に降り立っている2体のワイバーンとそれを必死に槍で食い止めているロビンの姿が見えた。



それを確認したリオは一層スピードを上げ、加速。

加速しながら左手の周辺に黒く渦巻く時空の歪みを発生させ、左手を突っ込む。

歪みから左手を素早く引き抜くとそこには真紅の鞘に包まれた太刀が握られていた。



素早く刀身を鞘から引き抜き、鞘を再び時空の中に乱雑に放り込んだ。

そのまま、両手で柄を握りワイバーンへと速度を保ったまま突進していく。



「ロビン!伏せろ!」



リオがロビンに向かい叫び、その声に反応しロビンが身を屈める。



ロビンが身体を折るのを確認した瞬間にリオは地面を蹴り、少し飛び上がり魔法を発動した。



「『瞬雷斬』」



魔法が発動とほぼ同時に発破音のようなものが鳴り響き、リオの体が消えた。



しかし、瞬く間にリオはワイバーンの後ろに現れた。

それと同時にワイバーンの身体がぐにゃりと揺れるとそのまま地面に撃墜した。



ワイバーンが倒れ、リオが地面に屈むロビンにおもむろに手を差し伸べているとキール、アデルがリオに追いついた。



「勇者様、いまの剣技は一体?」



「いまのは剣技じゃなくて魔法。『瞬雷斬』は身体を閃光のように早く動かせる雷魔道の魔法だよ。その証拠に切り傷が黒く焦げたようになっているでしょ」



リオが倒したワイバーンを指しながらキールに説明する。



「それよりも・・・」



リオは視線をワイバーンからロビンに向ける。



「勇者様?」



勇者の視線に首を傾げるロビン。

そんなロビンにリオが言い放った。



「ロビン、俺たちはいまから奇跡事件の終結に教会に向かう。もしかしたらシャロンさんが危ない目に合うかもしれない。一緒に来てくれないか?」



リオの言葉に驚きの表情を浮かべたロビンであったが決意に満ち顔で自分の槍を握りしめ答えた。



「はい!!」



そして、リオ、アデル、キール、ロビンは勢いよく教会の扉を開け放った。





教会のホールにはアルン牧師とシャロンが居るだけで他には誰もいない。



「あれ?皆様そんなに慌ててどうなされたのですか?」



シャロンが穏やかな笑顔で話しかけてくる。



「シャロン、キミは外の惨状を知らないのか?」



ロビンがシャロンに問いかける。



「外?何が起きてるのロビン?さっきまでアルン牧師と祈りを捧げていた所だから」



ロビンは俯きながら答える。



「外はいま突如現れたワイバーンの大群によって大混乱だ。いま、ギルドと警備兵のみんなが戦ってる」



「そんな!!じゃあ、いますぐ怪我人の手当てやお手伝いを!!」



外に駆け出そうとしたシャロンの手をアルンが掴んだ



「・・・アルン牧師?」



シャロンが驚きの表情でアルンを見つめる。

そんなシャロンに向かい、アルンは一度ニッコリと微笑むと胸元に引き寄せ、首にナイフを突きつけた。



「シャロン!!」



「ここにぞろぞろとやってきたと言うことは気づいてしまったんだね?」



アルンがシャロンを人質にとった状態で問う。



「あんたが『魔人の種』を使っていることまで分かってるんだ。大人しく苗木を渡せ」



「いいのか?そんな態度で?私はいまからシャロンに種を植え付けても?そして彼女が死ぬまで魔力を吸う」



「卑怯だぞアルン牧師!あなたは自らの信じるものの素晴らしさを広げていた立派なひとだったはずです!」



「若いですね~ロビンくん。何事にも限界はあるのですよ」



種を徐々にシャロンに近づけていくアルン。



「お父さん、さっきの魔法でどうにかならないの?」



「ダメだ。あれだけ密着されるとシャロンさんがどうなるか分からない」



「そんな!!」



「さぁ、シャロンよ!育ての親である私のために魔力を捧げるのです!」



ついにシャロンの胸元に種を近づけたアルン。





しかし、シャロンの胸に種が入っていかない。



「何故だ!何故入らない!」



混乱するアルン。



「どういうことなのですか勇者様?」



キールが勇者に問いかける。



「炎帝の話だと種を植えるには対象の心が弱っていたり不安定でなければならない。つまりシャロンはあの状態で心を強く保っているということだろう」



勇者の答えにアルンが叫び、シャロンを強く締め付ける。



「馬鹿な!この状況で!?私に裏切られ、死ぬかもしれないこの状況でだと!!」



首を絞められ苦しみながらも凛とした表情でシャロンは話す



「いくらあなたが何をしようが今この時、私が絶望することはありません」



「何故だ何故だ何故だ!!」



今度は穏やか笑顔でシャロンは言った。



「だって・・・ロビンが私を助けてくれるから」



そして、シャロンは一瞬の隙をついてアルンに肘打ちを食らわせた。



急なシャロンの抵抗に予期していなかったアルンは少しだけシャロンの拘束を緩めてしまい、距離が離れる。



「ロビン!!」



それを見逃さなかったリオが叫びをあげる。



「はい!炎よ!敵を射抜く銃弾と化せ!『狙撃する炎弾(フレイムショット)』」



リオの叫びに合わせ、ロビンが魔法を発動。



狙い澄まされた小さな炎の銃弾はアルンの顔に着弾。小さな爆発を起こし、アルンとシャロンの距離を離す。



「『瞬雷斬』」



爆発と同時にリオが魔法で加速。

閃光のように素早い動きでアルンを蹴り飛ばし、蹴られたアルンは後方の壁に叩き付けられた。



「シャロン!」


「ロビン!」



アルンから解放されたシャロンはすぐさまロビンの元に駆け寄り、同じくすぐに駆け寄ってきたロビンと抱きしめあった。



「信じてましたよ」


「待たせたね。怖い思いさせてごめん」






「ぐ、うううう」



呻き声のような声に抱き合っていたロビンたちを含め全員が声の方を見る



「はぁ、はぁ、私が神となるのだ。私は間違ってなどいないのだ」



息を切らしながらゆっくりと吹き飛ばされたアルンが立ち上がる。



「何が神だ。自分の娘当然のシャロンさんを裏切ってあまつさえ殺そうとした。親として、人としてお前はもう失格だぜ、アルン牧師」



リオが冷たく言い放つと、アルンは叫ぶ



「うるさい、うるさい、うるさい!私が正義でお前らが悪なのだああああ」



するとアルンの身体が発光し、身体から苗木が現れた。



現れた苗木をアルンは天に掲げた。



「魔人の種よ!苗木の持ち主である私にありったけの魔力をおおおおおお」



苗木が激しく発光し、全員の視界が奪われる。














リオたちが次に目にしたのは4mはあろうピンクの巨大な脂肪の醜い化け物に変貌したアルン牧師だった




「・・・なに・・・これ」



その巨大さと鮮烈な見た目に言葉を失うアデル。



「それがお前の求めた神の姿か?だとしたら笑えねえわ。お前みたいな神はゴメンだぜ」



太刀を構え、1歩前に出るリオ。



そして、リオに続くように言葉を失っていたアデルやキールも武器を構える。



ロビンもシャロンを庇うように槍を構える。



「神である私に反抗するか。貴様らには天罰を『審判の光』」



アルンが呪文を唱えるとアルンの巨大な身体が発光し、周りと激しく照らし、その光を浴びた全員が吹き飛ばされた。



「ぐあああああ」

「くっ」

「きゃあああああ」








「大丈夫か?」



体制を立て直しながらリオが安否を確認する



「大丈夫よ、父さん」

「心配ありません」

「ロビンが庇ってくれて・・・」

「なんとか大丈夫です!勇者様!」



生存を確認するとリオは胸を撫で下ろし、再びアルンに切先を向ける



「勇者様、今の魔法は?」


キールがリオの隣で愛刀の鉈を構えながら聞いてくる。



「今の魔法は『審判の光』光を浴びたものに強烈な圧力を加え吹き飛ばす近距離魔法」



「近距離魔法であの範囲ですか・・・」



「あの巨体と苗木から得た強大な魔力だからできるって所だろう。・・・魔人の種、相当厄介な相手だな」



リオは柄を強く握りしめた。

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