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マッドサイエンティスト



教会前に魔物が現れてから数日後の宿屋。



今日もリオは夕飯を済ませるとどこかに出かけていった。



「あれから毎日よね~」



サクラが身体を伸ばしながら言う。



「お父さんのことだから大丈夫でしょ」



椅子に座るアデルが何やら武器を弄りながら答える



「パパ、マリアたちを捨てないよね?」



マリアが涙目になりながらエリザの腰にしがみつく。



そんなマリアの頭をよしよしと撫でながらエリザはマリアをなだめる。



「リオくんは私たちのことを一番に考えてくれる自慢のお父さんでしょ?私たちを信じてくれるリオくんをマリアも信じなきゃね」



「う、うん。そうだよね!パパはマリアを愛してるから帰ってくるよね!」



「そうよ~リオくんはみんなが大好きなんだから~」



「それに父さんが夜いないのはあれから毎日現れる魔物のせいもあるかも知れないわね」



「確かに体調を悪くする被害者も日に日に増えてるからね」



サクラとアデルが悩んでいると部屋の扉が開いた。



「ただいま」



そこには出ていった時よりも服が汚れて帰ってきたリオがいた。



「リオくん、泥だらけじゃない!早く着替えて着替えて」



エリザに促され、リオが奥の部屋に着替えに行く。






リオが奥の部屋へ着替えに向かってしばらくした時、地響きが鳴り渡った。



「な、何!?」



サクラは咄嗟に刀の鞘に手をあてがい、アデルは武器を構える。

エリザはマリアを庇うように体制をとり魔力の錬成を静かに始める。



全員が臨戦態勢をとり膠着する中、今度は窓の外から爆音が響き渡る。



「ブモオオオオオオ!!!!」



アデルが咄嗟に窓を開けると驚くべき光景が広がっていた



「・・・何、あれ」



アデルらの視線の先には家の数倍の高さはあろう魔物が街の北側にある墓地に立っているのが目に入った。



「大丈夫か!?みんな!!」



全員が驚愕する中、奥の部屋からリオが慌てて飛び出しきた。



「お父さん、あれ」



窓の外を指差すアデルに促されるように外の魔物を確認するリオ。



「・・・これは不味いな。サクラ!俺と一緒にあいつの元に行くぞ。アデルとエリザ、マリアは宿で待機。何かあればすぐに逃げること。細かい判断は各自に任せる」



全員がリオの指示に頷くとリオはサクラの肩と膝を持って抱え込んだ。



「ふぇ?ちょっ!父さん!?これ、お姫様抱っこ!?!?」



「ごめんなサクラ。事態は急を要するから飛んでいくぞ。『空中闊歩スカイステップ』」



そう言うとリオはサクラを抱えたまま窓から飛び降りた。



「・・・お父さん、サクラが風魔法で飛べるの忘れるよね」



「リオくん、ちょっと天然だから」



「サクラお姉ちゃんずるい!マリアもー!」



呆れる残りの娘達を残して。




▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲



宿から飛び出し、魔力で作った足場を乗り継ぎ空中を移動するリオ。



「勇者様!!」



同じように魔物に向かって屋根を飛び移りながら移動していたキールが見つけ話し掛けてきた。



並走しながらも二人は会話を続ける



「勇者様、あれは一体?」



「おそらく魔界の魔物だろう。やはり誰かが召喚したとしか・・・」



「・・・勝てるのですか?」



「少し、本気をださないと行けないかもしれないな」



勇者は神妙な面持ちで目的である魔物を見つける



「それより勇者様、お抱えになられているサクラさんが真っ赤なのですが・・・」



「あー悪いサクラ。恥ずかしいよな。もう少し我慢してくれよ」



「いや!そういう訳じゃ!なんというかその・・・」



咄嗟に否定したサクラであったが当の本人であるリオの耳には届いて居ないようである。




「もうすぐだ!!」



墓地の前に3人は降り立ち、その巨体を見上げる。



3人が戦闘体制を取ろうとしたその時、



「『躍動する獄炎(フィーバプロミネンス)』」



巨体は火柱に包まれ燃え上がった。




「あれ~?珍しい人と会うね~」



リオたちが呆気に取られていると後ろからこちらに歩いてくる足音と掠れたような声が聞こえてきた。



リオは振り返りながら喋る



「来ていたのかよ、ヤマト」



そこには腰ほどまである銀髪に右目にはモノクル、そしてギルドの紋章入りの赤いロングコートを着た痩せ型長身の男がそこには立っていた



「一応、僕が受けた以来だからね~先にキールをやっていたが前の任務が終わって僕がわざわざ赴いたわけ。でもぉ、わざわざ来て良かった。勇者ぁ、君がいるなんて」



「と、父さん。この人は?」



「ああ、こいつはヤマト・エンジュ。ギルド認定の炎帝にして、キールが所属する『ロッソ』の隊長」



「おや?勇者ぁ、その子は誰だい?ついにめとったかい?」



「違う違う。サクラは娘だ」



「娘!!では、嫁は!ちゃんと優秀な魔道士や戦士と交わったのだろうね!!」



「養子だよ。養子!」



それを聞くと炎帝はがっかりとしたように前かがみになる



「なんだ、勇者の娘ならばいい研究材料だと思ったのに・・・

やはり、ここは勇者と私の子供を作るしかない!優秀な者同士ならば必ず素晴らしい子が出来るはずだ!ああ何故勇者!お前が女でないのだああ」



今度は絶叫しながら頭を抱え始めた炎帝。



その様子をみてサクラが恐る恐るリオに質問する



「お父さん、炎帝ってもしかして・・・」



「ああ、もしかしなくても変人。」



即答するリオ



「まぁ、実力と知識は確かなんだよ。ついたあだ名がマッドサイエンティストヤマト」




「あ、あの炎帝様!」



絶叫する炎帝にキールが声を掛ける。



「キールか。報告を頼むよ」



絶叫をやめ、真面目な顔になりキールの報告を聞き始めた炎帝。










報告を聞き、しばらく考え込むと炎帝は自分の推理を話し出した。



「・・・明日、特殊魔道士を連れて被害者の元に行きなさいキール。私も行くから」



「ですが、もう透視解析スキャニングは十分に」



「違う。まだ不十分だ。もっと深くしなくてはならない。そして、場所も違う。深く見る場所は大きくなった腹部ではなく、胸だ」



「胸・・・ですか?」



「ああ、そこに今回の奇跡の正体があるはずさ」



「それから勇者、お前もギルド長を連れて明日来い。それと、後ろにある私が燃やした物の後処理も頼んでおいてくれ」



そう言い残すとと炎帝は夜の闇に帰って行った。

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