有意義な会議と無意義な会議
アルン牧師の名前修正(2018/01/25)
「お前らは何をしていたのだ!役立たずの賃金泥棒共が!」
リオとキールが魔物についての議論を交わす中、教会前にて怒号が響いた。
怒号を放ったのは杖をついた銀髪の老人であった。
「あれは、ダーマ町長ではないですか」
老人を見てキールが呟いた
「あれがこの街の・・・」
「ええ。奇跡と言い始めた張本人ですよ」
「さて、儂はアルン牧師に用があるのだ。早くのそこに転がる魔物をどうにかせよ!景観を損ねる!」
町長はそう言い放ち、教会に入っていった。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
町長が教会に入ってしばらくした後、再び怒号が響いた
「このバカ息子が!こんなところで油を売っている暇があるならば街のために働け!」
その後、ロビンが放り出されるように教会から出てきた。
「ロビンさん、大丈夫ですか?」
近くの警備兵が近づき、ロビンに声をかけた。
「ああ、本当に大丈夫だよ。それより持ち場に戻らないとまた親父に何か言われるぞ」
「親父さんはいつもああなのか?」
そこにリオが歩み寄り質問する
「ええ、日常茶飯事ですよ。ところでこれから皆さんはどうなされるおつもりですか?私は報告も含めていまからギルドに顔を出そうと思っているのですが・・・」
「ああ、俺たちは教会に・・・」
「リオくん」
教会に向かう旨を伝えようとするリオの言葉をエリザが遮った
「リオくん。リオくんは被害者に話を聞く気でいるだろうけど、相手は女の子なんだよ。それに相当ショックを受けているかも知れないの。聞き込みは私たちがやるからリオくんはロビンさんとギルドに報告に行っておいで」
「ああ、そうだな。そうしよう。任せてもいいかな?」
「お姉ちゃんたちにおまかせなさい!まったく、リオくんはデリカシーが足りないよ~」
そして、エリザの提案通りに娘達は教会に。リオ、キール、ロビンの3人はライラの元に向かうことになった。
ギルドにむかう道中、ロビンがリオに話しかけた。
「いやーお姉さんですか?頼りになりますね」
「お姉さん?ああ、エリザのことか。エリザは娘だよ」
「む、娘!?でも、お姉ちゃんってさっき」
「エリザは俺より年上だからな。養子ってことで一緒に暮らしてるんだよ」
「何か複雑な事情があるのですね」
「まぁな」
「勇者様は会う度に謎がふえていきますねー」
隣でキールが呆れたように首を振る
その言葉を聞いたロビンの顔が再び驚きで満ちる。
「ゆ、勇者様!?」
「まだ言っておられなかったのですね。こちらのお方はギルド公認国家最高戦力である勇者様なのですよ」
自慢げに話すキールの言葉を聞いてロビンは渇いた笑いをあげた
「ははっ、通りでお強いわけですね」
そんな他愛もない話をしているうちにギルドへ着き、3人は奥のギルド長室へ赴いた。
ギルド長室へ入ると血相変えたライラがそこにいた
「ああ、勇者、それにキールさんも。ちょうど良かった。まずいことになったぞ」
「まずいこと?」
思わずリオとキールは聞き返した。
「・・・奇跡の被害者の容態が変化した。今朝になり何人もの子達が苦しみ出した」
「これは、早急に決着を付けなくてはいけないかも知れませんね勇者様」
「幸い医者の診察では命に別状はないらしいが、原因が分からない以上予断を許さない状態だ」
「とりあえず、いま分かっていることを報告し合おう」
それからリオ、キール、ロビン、ライラの4人は自らの知る情報を伝えあった。
「じゃあ、それぞれから得た情報をまとめるとするか」
ライラが頭を擦りながらまとめ始めた。
「まずはキールさんが中央ギルドから派遣してもらった特殊魔道士による『透視解析』の結果、肥大化した下腹部には大きくなった子宮はあるものの何もそこには無かった」
「ええ、つまりこの奇跡が処女受胎ということ自体が間違いであると言えます」
「ちなみにその特殊魔道士さんはいま何処に」
「一応、この街に後数日は滞在してもらう予定です」
「次に勇者とロビンが戦闘したギガゴブリンについてだが・・・」
「主な問題は2点。ギガゴブリンが本来ありえない再生をしたこと。そして召喚された可能性が高いということだ」
「こっちに関しては一刻も早く術者を見つける必要があるな」
「そして、最近の親父の様子ですが奇跡の街としての広報活動を本格化しようとしています。そしてここ最近は特にアルン牧師と会っていることが多いそうです。シャロンも教会にくる親父をよく目撃しているそうです」
「教会か・・・奇跡の被害者の様子を見に行っているのか・・・」
「いや、それが違うみたいなんです。親父は教会や被害者に用があるのではなく明らかにアルン牧師に会いに行っているそうです」
「アルン牧師か・・・」
その後しばらく意見交換し、4人はまたそれぞれ調査に戻ることになった。
「では、勇者様!私は医師の元に行き状況を確認してきます」
そう言い残し、キールはギルドを出ていった。
リオも娘達と合流すべく、ギルドを出ようとした際、
「あ、あの!勇者様!」
ロビンがリオを呼び止めた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
その日の夜、宿に戻ったリオは夕食を食べると娘達に用心を言い渡し、宿を出ていった。
「あー今日の収穫なしかー」
サクラがベットに倒れ込んで叫ぶ
「確かに教会の子達からはあまり有力な情報が得られなかったわねー」
「父さんの話だと、被害者のお腹には何もいなかった訳でしょ。謎だらけよね」
「それでもその情報のおかげで魔物か何かを宿されているという最悪な可能性は消えたわ」
アデルが全員分のお茶を用意しながら推論を述べる
「それでも怖いよ」
「そうね。マリアの言う通り急にお腹が大きくなるのは怖いわね」
「・・・冷静になると計り知れない恐怖ね」
「それにもう1つ気になることがあるわ」
サクラがベットに座り込んで真剣な顔になる
「ええ」
「そうね」
「マリアもあるよ」
「じゃあ、一斉に言うわよ」
部屋に唾を飲み込む音が響く。
しばらくの静寂が部屋を包んだあと娘全員が同時に口を開いた
『シャロンさんとロビンさんの関係!!』
「やっぱり!やっぱりそう思うわよね!」
「お姉ちゃんの長年の勘が告げてるわ」
「ゴブリンを倒した後に一緒に教会に戻った二人よ!心の中で頑張れって」
「あの二人は怪しいよ!」
マリアまで巻き込んだ不毛で下世話な女子会トークはリオが帰ってくるまで続いた。




