プロローグ
勇者リオは体に伝わる振動で目を覚ました。
「おはよう、父さん。もうすぐ次の街よ」
リオの視線の先には金髪ポニーテールの少女。黒いブレザーにミニスカート、そして一際目を引く腰の刀。
「ああ、分かったよ。サクラ。馬車の運転ありがとう」
彼女はリオの養子。三女のサクラ・アルパーナ
「近くに敵や魔物の気配もないわ。夕方には着くと思うわよ」
今度は馬車の荷台の上から声が聞こえてくる。
リオは声の聞こえた後方に目を向ける
そこには黒の長髪に白を基調とした着物を着用した妖艶な美人が荷台の屋根に腰かけていた。
「大丈夫かい?エリザ」
エリザ・クランネ。リオの養子では長女にあたる雪女。リオよりは年上ではあるが養子としてリオたちと行動を共にしている
「大丈夫よ。リオくん。それより、マリアちゃんは?」
「ああ、マリアならば俺の腰に巻き付いて寝てるよ」
リオの腰に巻きついているのはマリア・ガーディナー。
リオの養子の四女。肩程度までの茶髪にまだ幼さの残る可愛らしい顔の9歲。
「そろそろ次の街?今回は発明品を試せるかしら?」
荷台から巨大な拳を象ったガントレットを右手につけた少女が出てきた。
水色の三つ編みおさげに丸メガネをかけ、白衣を羽織ったリオの養子の三女、アデル・ジャック。
「まぁ、行ってみれば分かるさ」
リオはまだ見ぬ街を想いながら小さく笑った
これは剣と魔術の世界の話。
これはリオが世界を救ったあとの話
これは勇者と娘の話
これは魔王よりも厄介な者と再び戦うことになる哀れな勇者の話