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元カノが コンビニで    作者: 三ツ星真言
22/25

残り半分の理由

「で、残りの半分は何よ。早く言いなさい。」

 問い詰める先生の質問に、僕は言葉が出なかった。

 僕の心の古傷がズキズキ痛み出したからだ。

「どうしたの。」

 流石に、先生も心配になったようだ。

 僕は、古傷の痛みを必死に我慢することにした。

「実は、大学の4年の時から付き合い始めた彼女がいました。

卒業してからも遠距離恋愛をしていましたが、ふられました。

 彼女、看護師をやっていたんですが、医者と結婚したんです。

 僕は、彼女との結婚を真剣に考えていただけに、そのショックは大きく、

もう、二度と恋なんかするものかと、随分へこみました。

 このままでは駄目になると思い、友人に誘われ、クリスマス会に参加して

元カノと出会って、付き合い始めるようになったんです。

 それが、3年前のことでした。

 当時、元カノは看護学校の学生で、二十歳にもなっていませんでした。

 僕は遠距離恋愛の彼女との結婚に破れたばかりだったし、そんな若い女の子との

結婚は全然考えていませんでした。遊びで付き合った訳ではないのですよ。

 向こうも、そうに違いないと思っていたんですが、元カノ、僕との結婚を真剣に

考えていたんですよね。

 今、思うと母子家庭に育ったものだから、結婚生活、家庭を持つことに人一倍

憧れていたんだと思います。

 先生、これが考え方の違い、性格の不一致というものですよね。」

 僕は、ここまで頑張って話したが、先生はダメだしを出す。

「それだけじゃないでしょ。何か、隠していない。」

 やはり、女のカンは鋭い。怖い。

「僕は、元カノと手を握ったり、キスをしたことはあるんですが、

一線を越えることができませんでした。」

バコン

 これは、かなり痛く、絶対に体罰だと訴える暇もなく、先生は

厳しく言い放つ。

「何が、半分よ。それが、全部じゃない。

一線を越えられなかったのは、元カノが拒んだせい。違うでしょ。

 絶対に、明に抱かれたがっていたはずよ。

 二十歳になっていなくても、女は女よ。なめないで。

 明がどう思っていたかは関係ないの。

 その子、本当に愛されているか、不安だったのよ。

 女としても魅力がないのか、随分悩んでいたはずよ。

 きっと、明の心の奥にその遠距離恋愛の彼女の存在を

感じていたのよ。嫉妬して、悶々していたはず。

 ううん、否定しても無駄。女は、そこを見抜く。

 愛するがゆえに。」

 図星だった。光との最後の日のことを思い出す。

 泣きながら、「何故、抱いてくれないの。」と僕に訴えた。

 今でも、あの切なく、悲しそうな声を、顔を忘れることはできない。

「そんで、元カノとの最後の別れはどうなったの。」

「「さようなら」とだけ言って、泣きながら、僕の部屋から飛び出していきました。」

「追いかけたの。」

「全然。ふられたんだから、追いかけませんでした。」

「メールとか、電話は。」

「しませんでした。それっきりです。」

「あきれた。明、あんた馬鹿よ、女遊びは随分うまくなったけど、

 肝心の根っこというか、女心をわかってない。

 何故、追いかけなかったの。何故、連絡しなかったの。

 所詮、明の元カノさんへの想いはそんなものだったの。

 元カノさんは、絶対待っていたはず。

 もしかしたら、今でも待っているかもよ。」

ガーン

 この言葉は、何よりも僕の頭を激しく打ちのめした。

 僕の心を深くえぐった。

「さあ、もう帰って。私、もう寝るわ。

 明日にでも、元カノさんと話をしてみることね。

 今のままでは、お互い前に進めないじゃないの。

 明君だって、気になってるんでしょ。

 お休み。」

 先生は、僕を追い出した。


 それが、先生の優しさだということはわかった僕である。






 












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