天津飯の効果
最近、ついていないような気がする。
元カノとの再会、そして元カノとの危ない夜。
おまけに小悪魔の思わぬ告白に、僕は困り果てている。
畳みかけるように、実家の母親からお見合い話を進める電話が
かかってくるし、会社で別の上司からお見合い話を勧められる始末。
この年齢まで独身貴族をきどり、好き勝手に遊んでいた自分に
説教したくなる。
いや、過去を振り返るのはやめよう。
過去は変えることはできないから。
こんな時、元気が出るご飯を食べに行くしかない。
そう、それは焼き肉でも鰻丼でもない。
天津飯である。
僕にとって主役はカニではない。卵だ。
卵の甘みが僕を癒してくれる。
あんかけの粘りが具材とともに僕を奮い立たしてくれる。
カニ、卵、具材が一体化して、黄金の輝きを放つ。
至福の飯である。
恐るべし、中国四千年って言ってもいいだろう。
いきつけの中華料理店で心身ともに満足した僕は、
まっすぐ会社の独身寮に戻ることにした。
今日は、元カノがいるコンビニには絶対に寄りたくない
気分だった。
途中、金曜日の夜ということもあり、気が変わり、
飲み屋街をぶらついていたとき、ちょっとした事件に
巻き込まれてしまった。
それが、僕の運命を大きく変えることとは知らずに。




