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蟲殺し  作者: ミノムシ
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訓練とアクシデント

 翌朝、秋兎は目の前の状況の理解に頭を働かせ、どう行動するべきかに悩んでいた。

 秋兎が昨日、ベッドで深い眠りに到達する前に、どこからかやってきた紅茶の香りがしたところまでは覚えている。だが、なぜ自分が半裸の女の子と寝ていたのかが思い出せない。

(あれ?そういえば、里山はいつもここで寝てるんだよな?じゃあ、俺はクッションとかで寝ないといけなかったって事だよな。じゃあ、里山は俺がいるのにも関わらず仕方なくベッドで寝るしかなかったって事か!?・・・・完全に俺が悪いじゃねぇか。里山が起きたら真っ先に謝ろう。まずは、この抱きつかれた状態から、どうやって前の開いた寝間着でブラも着けず、下はパンツ状態の女の子を退かすかが問題だ。このままだと、確実に寝起きでこの状態を理解した里山からビンタか罵倒かが飛んでくるよな。)

 秋兎が脳内で試行錯誤を繰り返している間にも、いつの間にか千花は起きていたようで。秋兎の胸板をトントンと優しく叩いて自分に気付かせる。

「うぉっ!」

「ふふっ、おはよ、秋兎くん。」

「お、おう。オハヨ。」

 千花はすっと起き上り、大きく伸びをしてベッドから降りる。秋兎も彼女に続いてベッドから起き上がろうとするが、ちらりと見えた服の中に不意を突かれて固まってしまう。

「どうしたの?朝ご飯出来たら呼ぶから、それまで寝てても良いよ?」

「い、いや、大丈夫だ。それより、前はちゃんと閉めとけよ?」

「ん?あ、うん、ありがと。・・・・別に見たかったら見せてあげるよ?」

 秋兎は彼女の朝の人の変わり様に少し不安を感じながら、朝食をごちそうしてもらい、時間を見ると午前六時。学校はいつも、夜襲訓練のある日を除いて午前七時半に始まる。まだ時間はあるなと思い、とりあえず携帯端末で玄朗から連絡が来ていないかと確認する。

「里山、ちょっとここの管理人殴って来るわ。」

「え、どうして!?」

「昨日、管理人がここに俺の着替え持って来ただろ?そん時に俺がここに泊まった事がバレて、爺さんに報告しやがった。それで今こうして爺さんからからかいの連絡が入ったって訳だ。」

 秋兎は千花に携帯端末を投げ渡し、送られたメッセージを見せる。

「『大淵から聞いたぞ、里山千花の部屋に泊めてもらったようだな。これは、孫が男として一歩進展した事を喜ぶべきか、交際もしておらぬのに他人の娘に手を出した事を嘆くべきか迷う所だな。だが、責任はちゃんと取れよ?俺にももうすぐひ孫ができるのか。若い事は良いものだな。』だとよ。んな事してねぇっての!とりあえず、スマンが今日の昼飯にでも事情を説明して誤解を解くの手伝ってくれねぇか?」

「う、うん。そうだよね、子どもはまだだもんね。」

「ちょっと待て!それじゃあ俺が里山に手を出した事が誤解されたままじゃねぇか!」

「あ、ごめんなさい!そうだよね、あたしは秋兎くんに何もされてない。うん。」

(なんか、里山って寝起きとそれ以外とで人が変わるのか?それに、なんでそんなに嬉しそうなんだよ。)

(秋兎くん、何だか困ったような、何かを考えているようなそんな感じの顔してる。やっぱり、変に見えるのかな?もう少し考えて行動しないとだなぁ。・・・・秋兎くんと寝たベッド。今日は洗わないでおこっと♪)

「なぁ、里山の家はここから遠いのか?」

「別に遠くはないよ。でも、登校中に何度か痴漢とかに遭って、それからここに泊まってるの。それに、この辺のそういう人って下手したら本当に何されるかわからないから。ここの寮、女の子が男の子より多いみたいなんだけど、もしかしたらみんなあたしと同じ理由かもね。」

「なるほど、確かにこの辺は俺ら軍人の候補として育てられてる人間が多いだけに、それなりに対抗できる犯罪者がいるからな。爺さんには新入生が寮に優先的に入れる制度の導入でも申請してみるか?素人同然の新入生は他の生徒に比べて狙いやすいだろうからな。」

「良いね、それ。あたしも最初の頃は中々寮に泊まれずに通学路で狙われてたから、それはこれから入って来る子たちにとっては安心できる制度だよ!」

 秋兎の提案に、大いに賛成と身を乗り出した千花。秋兎は玄朗に『今日の昼食の時間に色々と話したい事がある。覚悟しとけ。』と送り、千花に紅茶を出してくれと頼む。

 千花の出した紅茶を飲み終えたのが午前七時前。そろそろ出る準備をしようと、学校指定の軍服と同等の性能を持つ制服に着替え、秋兎は千花が着替え終わるのを待っている。

「里山、まだか?」

「ごめんなさい、でももう少し待って。今日は避蟲壁の外への遠征があるからその準備をしてるの。秋兎くんは大丈夫なの?」

「あぁ、俺はお前らを護る護衛側に就くからその分念入りに準備しないといけねぇが。爺さんが家から必要な物を持って来てくれるだろうし大丈夫だ。そういえば、今日の昼食も壁の外か。また栄養価と運搬都合しか考えてねぇ不味い飯を食うことになるのか。最近は改良されてマシにはなったが、不味い事には変わりないんだよなぁ。」

 秋兎が散々愚痴を言った後、千花は用意を済ませて隣の部屋から出て来る。その姿は昨日とほとんど変わりなく、学生カバンではなく遠征用のリュックを持っているのと、制服と共に支給されるスパッツを穿いている。

「じゃあ、行こっか。美味しくないお昼でも、無かったら死んじゃうかもしれないんだし。」

「そうだな、俺が死んだら護衛対象の奴らも死んじまうかもしれねぇからちゃんと食わねぇとな。」

 秋兎と千花は寮を出て校舎へと向かうが、その道中にいた寮の管理人は千花が秋兎を止めてくれた事に感謝しつつ、もう二度と口を滑らさないと全身の痛みに誓った。

 二人が教室に到着する頃には、既に何人かの生徒が来ておりそれぞれ荷物の確認作業をしていた。

「えっと、一人を除いて全員がちゃんと自分の荷物点検をしてるのか。思ったより悪くはないみたいだな。」

「あ?編入生が何上からもの言ってんだ?お前なんて荷物すらねぇじゃねぇか!」

 秋兎の挑発にまんまと乗っかったこの男子生徒は、昨日秋兎に虫を投げつけた後にボコボコにされた三人の内の一人。まだ骨折は治ってはいないが、ギプスでどうにか車いすに乗って動けるようだ。

「いや、ちゃんとこの教室にあるだろ?お前らザコというお荷物が。」

「はぁ?丸腰でこれから避蟲壁の外に行こうとする自信過剰なお前よりかはマシだぜ?ここの校長の孫だか知らねぇが、調子乗ってんじゃねぇぞ!」

「ピーピーうるせぇぞ、ザコが。三人がかりで俺一人まともに相手できない奴に向かって敬意でも払えと?冗談きついねぇ。ザコは大人しく地面に這いつくばって土でも舐めてろ。こんな風になっ!」

「なっ、グアァッ!」

 髪を引っ張られて車いすから落とされた男子生徒は、まだ癒えていない手足を床にぶつけた苦痛に叫び、そこに秋兎は彼の足を思いっきり踏みつける。

「秋兎くん、やめてあげてっ!」

「ふぅ・・・・そうだな、こんな事しても何の意味もない。里山、一緒に来てくれ。」

「う、うん、わかった。でも、少しだけ待っててね。」

 千花は他の生徒と協力して男子生徒を車いすに乗せ、廊下で待っている秋兎の後をついて行く。

「ねぇ、どうしてあの千花ちゃんがあんな奴と一緒にいるのよ。」

「さぁな、もしかしたら千花ちゃんはあいつのいう事を無理やり聞かされてるのかも知れねぇぜ?っていうか、それ以外にありえねぇだろ?」

「確かに、あの編入生ならやりそうだな。もしかしたら、里山さんが自分の命令を聞くのを良い事に、あんなことまでさせてるかもな。」

「最低っ!今日の遠征で背中を刺してやりたいわ!」

「それ良いね!じゃあ賛成の奴はちょっと集まろうぜ。」

     *

 秋兎は千花を連れて普段生徒が来ることはない会議室の前に来ると、秋兎は壁に背中を預けてその出入り口をじっと見つめている。

「秋兎くん?何をしてるの?」

「いや、特に何も。それと、すまんな、さっきは止めてもらって。里山が止めてくれなかったら、たぶん俺はあのゴミ虫を踏みつぶしてただろうな。」

「・・・・秋兎くん。なんか、寮であたしといた時と違って、秋兎くん怖いよ?そんなに昨日虫を投げられたのが嫌だったの?」

「・・・・正確には嫌いなんじゃない。恨んでいるんだ。虫を、過去の自分を。ちょっとした昔話だが、聞いてみるか?」

 秋兎に見つめられ、千花は一瞬後退りしそうになるが、何とか堪えこくりと頷く。

 秋兎はなるべく千花に威圧感を与えないようにニッと笑い、一息ついて話を始める。

「まぁ、結論から言うと、俺の両親は死んだんだ。二人とも、爺さんの率いる討伐軍で中隊を任される程に強く賢い将校だったよ。でも、やっぱり親っていうものは自分の子どもの事になるとバカになるらしい。俺が正規軍に入ったばかりの頃はスゲェ怒られたよ。でも、俺がしっかりと戦えるってわかってからは親父の中隊に入って前線で戦ったよ。でも、俺はその時は己惚れていたんだって後になってわかったんだ。去年習っただろ?異界蟲の階級。あの中で四番目の異界蟲、他の異界蟲と交配して産まれた新型の中で危険度が高いやつだ。そいつの討伐任務で、俺たちはそいつを誰も死なせずに瀕死まで追い詰めたんだ。でも、じっくりと着実にっていう命令を破って俺が止めを刺そうと突っ込んだらよ、そいつの最後の抵抗に反応できずに俺は動けなくなってよ。気が付いたら、何人かの死体が俺の親と一緒に別の荷車に乗ってたんだ。全員が親の中隊の人間だった。爺さんの話じゃ、その死んだ全員が俺を抱いて後退する母親を援護して死んだらしい。親父は、俺を母親に渡してすぐに。母親は、その時は何とか生きて帰れたんだが、その後にいつの間にか体内に植え付けられていた蟲の卵が孵化して・・・・目の前で喰い殺されたんだ。だから、俺は虫を恨んでいるんだよ。」

 秋兎の話を聞いていた千花は、どうしていいのかわからないが、自分にできる精一杯の事をしようと思い秋兎をギュっと抱きしめる。

「秋兎くんが虫を嫌いな理由はよくわかったよ。でも、気を落とさないでね。秋兎くんにはお祖父さんがいるし、あたしも秋兎くんが来てくれたら精一杯慰めてあげるから。余計な気遣いだとは思うけど、あたしは秋兎くんの味方でいるから。」

「・・・・ありがとう。でも、今は大丈夫だよ。俺の事を理解してくれる人が一人増えたんだ。これほど安心できる事なんてそうそう無いよ。でも、そろそろ離れてくれないか?」

 いやだと言わんばかりに抱きついてくる千花だが、秋兎はもうそろそろ玄朗が今回の遠征の事での話し合いを終えて目の前の会議室から出て来る事を知っているので、更なる誤解を招かないためにも離れて欲しかったのだが、もう手遅れのようだ。

「ほぅ、こんなところで互いを求め合うとは、若い者は予想の出来ん事をするのぉ。」

「え、校長先生!?どうしてここに!?」

「里山、ここは会議室前だぞ?遠征前に教員が会議してたんだよ。」

「えぇ!秋兎くん、どうしてそれを言ってくれなかったの!?」

 ぽかぽかと千花に叩かれている秋兎を見て、玄朗はフッと鼻で笑う。

「秋兎、男は十八になるまで結婚してはならんぞ?」

「わかってるよ。っていうか、なんで今それを言うんだよ。」

「さぁな、少し考えればわかるんじゃないか?」

 玄朗は部下(教員)を行かせ、三人でのんびりと集合場所に向かう。

「それで?俺に何か言いたいんだろう?」

「あぁ、大事なことから言うと、新入生に寮の部屋を優先的に回せるようにする提案だ。爺さんも知ってると思うが、この辺りの犯罪者は独学か何かは知らないがそれなりに俺たちに対抗できる技術を持った奴が多い。だから、まだ自分を護る力を持たない者が多い新入生に安全に通学できるように寮の部屋を優先的に回してやって欲しい。」

「なるほど。確かに近年は新入生を狙った犯罪がこの辺りでは多くなり始めている。次の会議までに資料となるものを集めないとな。秋兎、お前に頼みたかった所だが、お前は周りに嫌われすぎているな。里山千花、頼めるか?お前なら生徒から好かれていて信頼もある。それなりに適任だと思うのだが。」

「は、はい!了解しました!では、遠征から戻り次第、今期の新入生へアンケートを取らせていただきます!そのために、まずはアンケート用紙の製作を行いたいのですが、よろしいでしょうか?」

「いや、アンケート用紙はこちらで用意しよう。里山千花、お前は遠征から戻り次第アンケート内容を考案し、それを俺宛にと教員に渡してくれ。いや、秋兎の方が良いか?」

 玄朗はイタズラな笑みを浮かべ、千花と秋兎を交互に見る。秋兎は万が一の情報漏洩の回避と誤解するが、千花は頬を赤く染めてこくりと頷く。

「よろしい。では、もう一つの方も聞かせてもらおうか。」

「単刀直入に言うが、俺と里山は親密な関係じゃない。昨晩も何も無かった。それだけだ。」

「ほぅ、その割には彼女の反応がちょいと怪しいのぉ。本当に何もなかったのか?」

 秋兎は先程から顔を真っ赤にしている千花の様子を見て、ようやく彼女がどうして変な行動を起こしていたのかを察した。

「もしかして里山、俺の事が好き、なのか?」

「・・・・う、うん。」

「ふむ、本来であればここは、熱でもあるのか?くらいの見当違いな事を言うもんだろうに。秋兎、王道的なシチュエーションをぶち壊すのは良くないぞ?」

「何言ってんだよ。それよりも、里山に聞きたいんだが。俺、何かお前に好かれる事したか?」

 秋兎の記憶にある限り、彼女に好かれるような行動を起こした覚えがない。他に何か理由があるのなら聞きたいと思っているくらいだ。

 だが、千花は少し困ったような感じに口ごもる。

「その、えっと、遠征から帰って来たら、教えてあげるね?」

「お、おう、そうか。」

「はっはっはっ、秋兎も大変だなぁ。同期の護衛をしながら、自分が好かれた理由を聞くためにこの子まで守らねばならんとは。まぁ心配はないだろう、遠征先は小物ばかりの森だ。余程日々の訓練をサボっている奴でない限り死ぬことはないだろう。」

 玄朗は秋兎に初めて女が出来た事に喜びを感じながら、秋兎の母、自分の娘が嫁いで行った時の寂しさのような物も感じていた。

「まぁ、それじゃあ俺は準備してくる。その、里山も、しっかり準備しろよ?」

「うん、わかった。秋兎くんも、しっかりね?」

 玄朗は、二人の様子を見て、秋兎の両親が結婚した時の光景を思い出し涙を流しそうになるがなんとか堪えた。

「それで?お主は準備しに行かんのか?」

「・・・・あ。い、行ってきます!」

 慌てて階段を駆け下りて行く千花の後ろ姿を見て、若いな、と思う玄朗だった。

     *

 遠征参加者が全員準備を終え、本日の集合場所に集まった事を確認した教官たちは立ち台にあがって遠征の内容を口頭で伝える。

「・・・・よって、今回の遠征は事前に伝えたものより危険度が増している可能性が高い!故に、我々教官と特別編入生として貴様らのクラスメイトとなっている霧島秋兎が護衛を務める!だが安心しろ。多少なりと、我々の温情で貴様らにも獲物がまわって来るだろう。質問はあるか!?」

「質問よろしいでしょうか!」

 手を大きく挙げた女子生徒は、教官に発言の許可をもらい質問をする。

「なぜ、私達の同期の中で優秀な生徒ではなく、新たな編入生を私達の護衛に付けるのか理由がわかりません!」

「その程度、少し考えればわかる事だろう。こいつは校長である玄朗殿の実の孫でありながら、わずか十四歳にして異界蟲討伐正規軍に入っているのだ。詳細は後に話そう。他に質問は?」

 全員が黙り込む様子に、教官はよしと頷き避蟲壁の門の前に立つ。

「ではこれより、短期遠征訓練を始める!門を開けぇ!」

 教官の合図によって、中間に大隊二個が余裕で入れるほどの空間のある二重構造の門が二つ同時に開いた。

「第一、第二訓練隊、俺に続け!後の第三、第四訓練隊の指揮権は出雲に任せる!では、行くぞ!」

 一つの訓練隊に教官ら五人が護衛に就き、秋兎は第三訓練隊の護衛を任されている。千花も第三訓練隊にいるが、隊列を乱さないようにしないといけないので、話すことは出来ない。

「ねぇ、千花ってあいつとどんな関係なのよ?」

「えっ!えっと、今は、わからないかな?秋兎くんがどう思っているのかわかんないし。」

「そ、そうなんだ。別に無理やりいう事聞かされてる訳じゃ、ないのよね?」

「え、うん。そんな事はないよ?秋兎くん、すごく優しいから。みんなの前っていうか、始めに秋兎くんに虫を投げた子にはどうしても強く当たってしまうだけみたい。」

 女子生徒は千花の意外な言葉に秋兎の見方を間違えたかな、と思うが、もしかしたらという可能性も捨てきれずモヤモヤとした心境になる。

「止まれ、虫が来るぞ。」

 教官の言葉に訓練生らはザワザワとし始めるが、秋兎は武器を抜いていないので、教官の言葉が本当なのかと疑問に思う者もいる。

 だが、その隙を狙ったかのように、訓練隊の左側の木々の間から三メートルを超える巨大なカマキリが口から赤い液体を垂らしながら秋兎に襲い掛かる。

「キシャァッ!」

「うるせぇ、黙れ。」ズドォン!

 秋兎は手に持つ散弾銃でカマキリの大鎌を吹き飛ばし、もう一丁の散弾銃で頭を吹っ飛ばす。

 頭を失ったカマキリは、しばらく痙攣した後に動かなくなると秋兎は散弾銃を背中のホルダーに納める。

「ここから先は異界蟲との遭遇率も大きくなる。なるべく私語は音による索敵が機能しにくくなるので控えてもらいたい。では、行こうか。」

 教官の後に続く訓練兵たちは、初めて見る異界蟲第五ランクの内第二の異界蟲と、それを銃弾二発で倒した秋兎に衝撃を隠せなかった。

「お前ら、こんなんで唖然としてたら正規兵になんてなれねえぞ?正規ルートの兵士はどうかわかんねぇが、俺はこの程度を一人で殺せて初めて軍に入ったんだ。お前らも、それくらい強くなれよ。じゃないと、誰かはおろか、自分の身も護れねぇぞ?」

 訓練隊の全員を嘲笑うように見下した態度も、今では説得力がある。そのせいで、訓練兵の中で彼に不満を持つ者は、それを押し殺す事しか出来なかった。

 その後も、第三、第四訓練隊は行進を続け、目的の平地へと着実に進んで行く。

     *

 第一、第二訓練隊は、蜂型の異界蟲三匹に襲撃を受けていた。

「きゃぁっ!」

「うちの生徒に、針を向けんじゃねぇ!」

 智香は助けに入ってくれた教官委に礼を述べつつ、周囲の状況を把握しようとしていた。

「先生、あれって・・・・」

「あれ?・・・・な、あれは!クソッ、全員撤退!教官らは生徒を集めて退避と共に生徒を死守せよ!第三異界蟲と第二異界蟲の群れだ!」

 教官らが緊張を隠そうともしない雰囲気で、周りの生徒も不安そうになるが、教官の一人が撤退の指揮を執る。

「全員来た道を戻れ!前方の生徒は索敵警戒だ!異界蟲を発見次第俺に伝えよ!」

 教官らが後ろで異界蟲を止めている間に、退避していく訓練生ら。彼らが取りこぼした異界蟲は訓練生らの後方にいる教官が倒す。

 だが、数が劣勢なだけあって、次々と取りこぼしの数が増えて来る様子に、生徒らを護る教官にも疲労が見えて来る。

「早く、行け!もう四キロ先に避蟲壁があるだろう。避蟲壁の一キロ圏内に入れば、第二異界蟲は、お前らに近寄れない。さぁ、早く!」

 教官に怒鳴られ、訓練兵らは急いで避蟲壁へと向かって走って行く。

「クソッ!第二の群れは想定していたが、第三異界蟲まで出て来るとは。突破してあいつらの増援に入りたいが、後ろのガキどもの安全が最優先だ。」

 登郷秀虎とごうひでとらは、自分のもうすぐ七歳の息子が、自分の仇を取るために戦場へ身を投じる事は望まないが。もし、仇を取るために戦場に身を投じる事になった時に、彼らが良き指導者と、良き先輩兵士として成長することを願い、その二十九年の一生を異界蟲の群れによる攻撃と捕食にて終えることとなった。

     *

 数刻後、第一、第二訓練隊が任務続行不能および教官らの死亡が確認されたとの報告を受けて、第三、第四訓練隊の護衛の教官らは、涙を堪えながら遠征任務を続けることに。

「出雲少佐、俺に一時的な自由行動をさせてくれませんか?」

「ダメだ。第三異界蟲が近くにいるかもしれないというのに、お前を一人にさせる訳にはいかん。」

「ふっ、それは誰か一人でも抜けたら第三が来た時に生徒を守り切れないかもしれない。という意味で合ってますか?」

「よくわかっているじゃないか。それでもお前は単独行動をしたいと?」

「いや、気が変わりました。やめておきます。」

 秋兎がニヤニヤと笑いながら自分の持ち場に戻るのを見て、訓練生らは不謹慎だと小さく言い合うが、彼をよく知る教官らは咎めるどころか感謝の目を向けている。これは、秋兎が独自で編み出した周りの人間が自分の感情に任せて暴走しないようにする方法だ。あえて自分が仇を取ると単独行動の許可を求め、断られることで周囲に任務が優先だと言い聞かせているのだ。案外、これで感情任せの暴走をする新米兵士は減り、誰かが暴走しないようにするのが、いつの間にか秋兎の担当となった。

「さぁ、着いたぞ。時間もちょうど良い。ここで昼食としよう。霧島は森から虫が来ないか見張ってくれ。飯は後で支給しよう。」

「了解。じゃあ、せめてマシなもん食わせてくれよ。」

「ははは、それは厳しいな。後で帰って美味いもん作れ、としか言えんよ。」

「そんじゃあそうするよ。もしかしたら、俺が作るより美味いもんが食えるかもだけどな。」

「ははは、確かに、玄朗さんの飯は美味いよなぁ。」

 教官たちが笑うことで、生徒達も話を始め、場が明るくなってきた。が、やっぱり昼飯はおいしくはなかった。

 少しして、秋兎がいる簡易監視塔に、誰かが上がって来る音が聞こえてきた。

「秋兎くん、あたし、千花だけど。ご飯、持って来たよ?」

「おう、すまんな。教官共はどうしたんだ?」

「えっと、なんかあたしに持って行って欲しいって。教官たちはみんなとお話してたし、良いかな?って。」

「なるほど、爺さんが口を滑らしたか、普通に見られてたか。」

「そういえば、古手川さんが後ろからついて来てたような。」

 やっぱり、とため息を吐いた秋兎は、千花から昼食という名の食べられる軍事支給品を受け取り、それを口にして水筒に入った水で流すように飲み込む。

「あ、そうやって食べるんだね。みんなよく食べるのに苦戦してたから、あとで教えてあげよっかな?」

「ははは、俺はこうして流し込まねぇとのど通らねぇからな。そうだ、今日も里山の部屋泊まって良いか?また飯食わせてくれたら嬉しいんだけど。」

「え、うん。良いけど・・・・その、秋兎くんが食べたいものとかある?あんまり具体的なものじゃなくていいよ?」

「そうだな、鶏肉が食いたい。爺さんらが若かった頃は肉も安かったみたいだけど、今じゃ高いみたいだからな。でも、鶏肉は鶏の飼育に必要なスペースも食料も少なくて済むから他の肉よりは安くて済むし。それ以前に俺、鶏肉好きだし。」

 ニッと笑顔で語る秋兎に、千花もニコニコと笑顔になる。下から千花を呼ぶ女の子の声が聞こえ、その声の主にもう少しで降りると伝える。

「それじゃあまたね。鶏肉なら近くのお店にあったから、帰ったら一緒に買いに行こうね。」

「おう、またな。」

 千花が無事に下まで降りた事を確認し、秋兎は森の様子を見る任務に戻る。

 しばらくして、避蟲壁へと帰還予定の時間が訪れてきた。秋兎ら護衛班は訓練生らの準備が整ったのを確認すると、隊列を組ませて待機させる。

「秋兎、お前は訓練生らの様子を見ててくれ。もちろん、周囲の警戒も任せたぞ。」

「了解。教官らはじっくりとルートの最終確認をしててください。」

 秋兎が訓練生らの待機する場所へ行くと、千花がみんなに荷物の確認をするように促していた。

「みんな本当にこれに見覚えが無いの?誰も本当に落としてない?」

 どうやら、訓練生らに支給されている短剣が落ちていたようで、千花が落とし物としてみんなに確認を取っていてくれたようだ。

「里山、落とし物か?」

「うん、これなんだけどね。みんな持ってるし、誰の落とし物なんだろうって確認してるの。秋兎くんは誰のかわかる?」

「・・・・これは、この中の誰の物でもないみたいだな。前回の遠征の時に誰かが落とした物だろ。一応、俺が預かっておくよ。」

 秋兎は千花から短剣を受け取り、腰のベルトに装着しておいた。

 教官らはようやくルートの最終確認を終え、秋兎に説明した後に訓練生らにそれを伝える。

「えー、これから避蟲壁へと帰還する訳だが、今朝の第三異界蟲の襲撃の事も考えるので時間を大幅に取らせたことを詫びよう。そして、事前に知らせた帰還ルートからの変更点を伝える。まずは、第三異界蟲は、未だに討伐出来ておらず予定していた東のルートは危険とみなし安全が確保出来るまで遠征では使わないように封鎖された。故に、貴様らは迂回ルートである南東にある入口へと向かって進んで行くことになる。第一異界蟲が数多く生息しているが、貴様らは第一異界蟲であれば討伐出来得る技量が備わっているとみなし、このルートを通ることに決定した。質問はあるか?」

 出雲教官は誰も質問が無いとみなし、訓練生らに戦闘陣形を組ませる。秋兎を含む教官らを先頭に、訓練生らをそれぞれ中隊規模で割り当てていく。

「各自、戦闘になった場合は指揮官である者に全体の指揮を任せる。では、帰還するぞ!」

 出雲教官に続いて、秋兎の率いる訓練中隊も足を進める。

     *

「全員隊列を乱すな!落ち着いて戦えば絶対に切り抜けられる!」

 秋兎らの中隊は既に他の中隊と数分前からはぐれて行動をしている状態。第一異界蟲の群れに発見された生徒を助けに入った所、まだ見つかっていない他の中隊とは別行動をして蟲を引き連れる事になっていた。

 だが、訓練生らは異界蟲の群れに怯えているせいか戦えている者は秋兎を除いて半数もいない。残りの生徒らはなんとか隊列は崩していないものの、武器を手に持つだけでまともな攻撃すら出来ていない。

「戦闘可能な者は戦闘不能の奴らに異界蟲共と接触させるな!下野!奥谷!里山!生肉を遠くに投げて気を引け!」

 秋兎は戦えている者に命令を与え、なんとかして突破しようと試みる。

 秋兎に従い疑似肉を投げた三人のお陰で、秋兎が突破口を開き、そこから全員を突破させた。

「まだ安心するのは早いぞ!俺に続いて走れ!この際、隊列は気にするな!」

 秋兎ら訓練中隊はなんとか逃げ切ると、後から来た出雲教官ら訓練隊と合流することが出来た。

 秋兎らが避蟲壁に戻って来たのは日の落ちかけた夕方。教官らの間で密かに危惧されていた夜道の帰還はギリギリ免れた。

「千花ちゃーん!」

「え、智香ちゃん!?」

 どこからともなく現れた智香に一瞬驚いた千花は、彼女が第三異界中に襲撃された第一訓練隊にいた事を思い出し、涙を流して再会を喜ぶ。

「出雲さん、襲撃を受けた部隊の教官らの遺品は、どうやら武具と辛うじて確認できた軍属手帳のみだったそうです。彼らの骨は見つかりましたが、ほとんど破片の様なもので、遺伝子鑑定にまわしても時間の無駄では、と。」

「そうか、せめて骨と遺品が拾えただけマシだ。後は、彼らの遺書と我々からの遺族への手紙を書いて共に送らねばな。」

 その日、生徒らが再会を喜ぶ裏で、教官らは二度と再会できぬ友との別れを悲しんだ。

 秋兎は、千花の部屋で、智香と共に千花の手料理が出来上がるのを話をしながら待っていた。

「如月、ちょっと嫌な事思い出させるかもしれないが。第三異界蟲は、どんな奴だった?」

「あ、えっと、蜂みたいなやつだった。でも、やっぱり第三だから他の虫も混じってると思う。多分、カマキリ。大きい鎌が背中から生えてたから、あってると思う。」

「そうか、ありがとう。じゃあ話を変えよう。さっき買い物してる時、いつの間にか寄り道してたけど、何かあったのか?」

「えっと、うん。ちょっと、千花ちゃんに似合いそうな服があったから、着せてみたいなぁって思ってただけで。」

 智香は顔を赤く染めて、秋兎から目を逸らすようにしながら紅茶を飲む。

「そ、それよりも!霧島くん、昨日千花ちゃんと一緒に寝たらしいね?千花ちゃんに何かした?」

「ぐふっ!な、何でそれを!?誰から聞いたんだよ!?」

 秋兎の反応に少しばかりショックを受けたような智香は、ムスッとした顔で秋兎から再び目を逸らす。秋兎は詮索を諦めて、千花に淹れてもらった三杯目の紅茶をすする。

 その後、千花の手料理が出来上がり、三人で一緒に食べた。

 夕食も食べ終わり、智香、千花、秋兎の順でお風呂に入っていく。

「あれ、千花ちゃん?霧島くん、千花ちゃん知らない?」

「ん?洗面所にいたと思うけど、見てないのか?」

「ありがと、見てくる。」

 智香が洗面所のドアを開けて、千花がいることを確認。彼女に敷布団はどこかと聞こうとして、智香は静かにドアを閉めた。

「あれ?里山、いなかったのか?」

「ううん、いたよ。いたんだけど、ちょっと取り込み中みたいだったから。」

(友だちとして言える訳ないじゃん!千花ちゃんが霧島くんのパンツを、誰も見てないと思って顔に押し付けてたなんて!絶対に言えないよ!)

 しばらくして千花が戻って来た所に、智香は聞きたかった事を聞いて、敷布団の場所を教えてもらった。

「あ、予備の布団あったんだな。じゃあ俺がそっちで寝るから、二人は一緒にベッドで寝てくれ。」

「あ、うん、わかった。でも、あたしは・・・・」

 口ごもる千花の言葉は二人には聞こえなかったが、智香は何となく想像がついた。

 智香は秋兎を女の子同士の話があると言って一時的に追い払うと、頭に?を浮かべる千花に秋兎を追い払った理由を話す。

「本人の前だと話しにくいと思ったからちょっと出てもらったけど。千花ちゃん、霧島くんのどこを気に入ったの?確かに冷たい態度だったのに実は優しかったりギャップがあるのはあたしもわかるけど。どうしてそこまで気に入っちゃったの?」

「え!?・・・・その、あたしもよくわからないんだけど。秋兎くん意外と優しくて、色んな表情があって、本当はみんなの事をよく考えようとしてくれてて。だから、かな?」

 千花の恥ずかしそうな、でも嬉しそうな顔を見て、智香は少し秋兎に嫉妬してしまった。

 その後、秋兎は千花とまた同じベッドで寝ることに。

「それじゃあ、おやすみ。あ、霧島くん。」

「・・・・なんだ?」

「あたし、霧島くんが千花ちゃんの彼氏だってこと、まだ認めてないから!」

「は!?俺、まだ里山と付き合ってないって思ってたんだけど!?」

「あ、あたしだって、ちゃんと付き合ってとか言ってないのに、秋兎くんに迷惑だよ。」

 その日、三人が寝た時間は午後十二時前。明日の朝起きれるかという不安は全く無かったが、二人の距離感にもどかしさを感じる智香であった。

     *

 翌朝、目を覚ました秋兎は、隣でまだ眠っている千花を起こさないように起き上り、リビングにある椅子に腰掛ける。

(さてと、女の子の部屋の冷蔵庫を勝手に開ける訳にもいかないし。どうしたもんかねぇ。)

 起きて早々暇を持て余している秋兎は、とりあえず眠っている二人の様子を見てみる。

「ん、くぁ・・・・ん?あぁ、おはよ、霧島くん。」

「おぅ、おはよう。よく眠れたか?」

 こくりと重たい頭を落とすように頷いた智香は、まだ寝ている千花を起こそうと彼女の身体を揺さぶる。

「千花ちゃん、起きて、朝だよぉ。遠征後のお休みが気持ちいいのはわかるけど、朝起きるのは習慣付けしないとでしょ?」

「んぅ、もうちょっと寝かせて。朝ご飯できてから起こして。」

 智香の言うお休みとは学校の自習日であり、生徒が自由に行動できる日として生徒の間では休日として扱われている。中には、バイト感覚で学校に来ている依頼で稼ぐ者もいれば、のびのびとショッピングをする者もいる。この二人はどちらかと言えば後者だろう。

「もう、ちゃんとご飯が出来たら起きてね?」

「うん、起きる。」

「里山は、この日はいつもこうなのか?」

「うん、ここに来る前はいつもあんな感じだったんだって。まぁ、別に今日は先生が叱りに来るわけじゃないし大丈夫なんだろうけど。ま、そういう訳で、朝はあたしが作るからね。」

 そう言って智香は数分でサンドイッチを作り、再び千花を起こしに行く。

「ほら、サンドイッチできたよ。起きないと朝ご飯抜きにするよ!」

「うん、いま起きるから。まって。」

 千花が起きてきた頃には、秋兎は自分の分のサンドイッチを食べ終えていた。

 千花が椅子に座ると、智香は残りのサンドイッチを千花の前に出す。

「あれ?秋兎くん、どこか出掛けるの?」

「あぁ、ちょっと依頼を見にな。じゃあ、行ってくる。」

 秋兎はそう言って部屋を出て行く。その様子を見ていた二人は、色々な意味で、馴染んでるなと思った。

 依頼を受けようと、掲示板を見に来た秋兎だが、そこで珍しい人間を見つける。だが、彼女に目もくれず、秋兎は依頼を見ていると、こちらに気付き向こうから声をかけてきた。

「あぁ、ちょうどいい所に。なぁ、あたしらと一緒にこの依頼受けて欲しいんだけどさ。良いかな?」

「あ?避蟲壁の修繕のための周辺の第一、第二異界蟲の駆除?で、なんで俺なんだ?」

「いや、あんたがいればあたしらも楽して依頼をこなせるし、できれば組んで欲しいんだよねぇ。あたしそろそろお金無くなってきちゃったからさぁ、頼むよぉ。」

 ふと六花の後ろを見てみれば、渋々といった感じの生徒らが三人固まって話をしている。

「まぁ、俺も暇だし構わんが、ちゃんと働けよ?」

「やったぁっ!大丈夫、暇でつまんない訓練と違ってちゃんとやるってば。さぁさぁ、あんたの気が変わらない内にレッツゴー!」

 六花に連れられ、秋兎は昨日遠征から戻る際に使った門の前へとやって来た。六花が軍の兵士に依頼表を見せ、修繕要員と共に壁の外へと出て行く。

「それではみなさん、よろしくお願いいたします。」

「わかっていると思うが、修繕中は壁の効力が薄くなって異界蟲共が近くまで寄って来る。油断はするなよ?」

 それぞれが得意とする武器を持ち、周囲への警戒をしながらも話を始める。

「お前ら、前方三時の方向、第一異界蟲の群れが来るぞ。槍持ち二人は俺の斜め後ろ、あとの二人は後ろで取りこぼしを叩け。」

「はいはぁい、あたしは後ろであんたのおこぼれ拾っとくよん♪」

 秋兎は散弾銃で襲い来る蟲を吹き飛ばし、槍持ち二人が秋兎の背中を護る。わずかなおこぼれを後ろの二人が叩き落とし、出だしは順調に思えた。

「ふぅん、この程度かぁ。暇だなぁ。」

「・・・・槍持ち、修繕要員を下がらせろ。第二の群れが来る。」

「え、は、はい!」

 槍を持った男子生徒は、秋兎の言葉を修繕要員に知らせ、一時的に門の中へと下がらせる。その様子を見て、六花はもう終わったのかと地面にハンマーを突き立てる。

「氷野、まだ終わってないぞ。第二異界蟲が群れで来る。念のためお前らも下がれ!」

「やっだよぉ♪ほら、あんたらもさっさと来る!これからが面白い所なんだから!」

「え、でも。」

「でもじゃねぇ!さっさと来い!」

 有無を言わさぬ彼女の言葉に、男子生徒らは怯えながらも武器を構える。

「じゃあ、さっきと同じ感じで行っちゃう?」

「いや、唯一の盾持ちのお前が奴らの気を惹きながら後の三人が氷野を死守。俺は少し前に出て少しでも敵の数を減らす。」

「えぇ、あたしそんな危ない役になるのぉ?あ、じゃあ絹井、あんたがこれ持って。」

「は、はい。」

 六花は細身の両手剣を持った男子生徒に自分の盾を渡し、敵を迎え撃つ準備に入る。

 秋兎は異界蟲の数を大幅に減らし、後ろでは四人が順調に蟲を倒していっている。

「あぁもうっ、あんたら邪魔!そこをどけ!」

「うわっ!」

 突然六花が男子生徒を突き飛ばし、盾を持った生徒の周りの蟲を倒していく。だが、突き飛ばされた生徒の方までは気がまわらなかったようだった。

「う、うわぁっ!た、助けてくれぇ!」

「どうした!?」

 秋兎が後ろの様子を見ると、槍持ちの生徒が一人異界蟲に襲われているのが見えた。もう一人は苦戦する六花に加勢しており、盾持ちも自分たちに襲い掛かる蟲を捌くので手一杯のようだ。

「クソっ!待ってろ、今行く!」

 秋兎は襲われている生徒を助けようと走り、散弾銃を撃とうとするがどちらも弾切れ。仕方なく銃身で蟲の頭を殴り、腰ににあるククリナイフに持ち替えて蟲の頭を刎ねた。

「た、助かった。」

「おい、こっちも頼む!そろそろ限界だ!」

 秋兎は助けた生徒から槍を借り、ククリナイフを投げて三人から一番近い二匹の異界蟲の頭を刎ね飛ばす。その後、後ろの生徒が襲われないように突破しようとする蟲を殺しながら、三人の態勢が立てなおるまで一人で無双する。槍持ちだった生徒は秋兎が投げ飛ばしたククリナイフを持って戦線復帰。四人で秋兎の後ろで戦い、ようやく群れの最後の一匹を倒した。

「はぁ、はぁ、危なかったぁ。あんたマジでやるじゃん!どうよ、これからもあたしと組んでくれるか!?」

「・・・・お前、自分が何をしたのか、わかっているのか?」

「・・・・え?」

 全身蟲の体液にまみれた秋兎の怒りの眼に、六花は本能的な恐怖を覚える。

 秋兎は六花の頬を思いっきり殴り、倒れそうになる六花の胸倉をつかんで引き寄せまた殴る。これでもまだどうして殴られたのかを理解できていない六花に、今度は腹部を思いっきり蹴飛ばし、地面を転がっていった彼女の大きな胸を踏みつける。あばらが折れる音がしたような気もするが、それも彼女の叫び声にかき消された。その後も、何度も蹴り、踏みを繰り返し、六花は服も身体もボロボロになっていった。

「叫ぶな、耳障りだ。下手すりゃ、お前が突き飛ばしたあいつはこの程度では済まなかったかもしれねぇんだぞ?わかってんのか?」

 秋兎の問いに答える余裕も無く、六花は苦痛に呻き叫ぶ。そして、やりすぎだと思った槍持ちだった男子生徒が秋兎を羽交い絞めにして攻撃が届かない距離まで六花から遠ざける。

「き、霧島さん!もうやめてください!氷野さんも、これで懲りたでしょうし。さすがにここまですれば反省もするでしょう。」

「・・・・そうか、ならいい。修繕要員、それと医療班も呼べ。」

 間もなくしてやって来た医療班によって六花は回収されたが、まだ任務は終わっていない。

 その後、約三十分の時間が経ち、秋兎たちの任務は終了した。報酬を受け取り、秋兎とその他の生徒で分け、秋兎はそのまま千花の部屋へと帰って行った。

「邪魔すんぞ~、里山はいるか?」

「あ、おかえりなさい、ってどうしたのそれ!?服がボロボロじゃない!?」

「あぁ、これは、ちょっと任務でアクシデントがあってな。まぁ、大したケガはないし大丈夫だ。」

「そう言う問題じゃないでしょ!ほら、服脱いで。さっき校長先生から秋兎くんの服渡してもらったとこだからこれに着替えて。その、あたし、包帯とか出来ないから救急箱渡しとくし、これで傷の手当をしてね。」

 服と救急箱を渡され、洗面所に押し込まれた秋兎は、仕方なく傷の手当をして服を着替え、よくできましたと千花に褒められた後に彼女の淹れた紅茶を飲んだ。

「そういえば、何で爺さんが俺の服を?」

「え、秋兎くん、ここに泊まるんじゃないの?」

「まぁ、泊まるんだけど。でもよ、さっきちょっと俺の荷物確認したら、完全に引っ越しレベルで俺の物が揃ってたんだが?それで、あの部屋は?」

 玄朗が持って来た荷物は、秋兎が玄朗と共有して使用していた物を除いて、秋兎の私物が全てが段ボール箱二つ分に入れられており。千花は秋兎が依頼を受けている間に、ほとんど使っていない部屋を秋兎の為に片付け、そこに秋兎の荷物を置いていた。

「あ、うん。秋兎くんのためにキレイにしておいたの。どうせ使ってない部屋だし、秋兎くんの部屋にしちゃおう、って思って。さすがに荷物は置いておくしか出来なかったけどね。もしかしたらえっちな本とかあるかもだし。」

「いや、それはねぇだろ。んなモンあったら、今すぐ爺さんを殴りに行く。まぁ、部屋分けてくれてありがとな。」

 秋兎の無意識なお礼も千花にはとても嬉しかったようで、口元が緩み頬を赤くして微笑む。秋兎は千花の姿にドキッとするが、それは紅茶の入ったカップで誤魔化された。

 少しして、どこかに行っていた智香が帰ってきた。秋兎は智香の荷物を見て何かを買って来たのだと予想する。

「わぁ、智香ちゃんこんなにいっぱい。ごめんね、こんな事にお使いしてもらっちゃて。」

「いいの、千花ちゃんの美味しい手料理が食べられるならこれくらいどうってことないよ。」

「ほぅ、鶏肉か。なんでこんなに?それに、傷一つ無いとはな。これ、そこそこ高かっただろ?」

 普段肉となる家畜は危険性の低い第一異界蟲に分類される蟲に喰われる事が多く、喰われた後も人体には何の悪影響もないので、普通に売られている。だが、そんな蟲の被害もなく無傷の肉類は傷物より少し高く売られており、牛であれば安いもので二百グラム一万から二万円となる。いくら軍の養成所の訓練生として国からの割引がされていても、例に挙げた牛肉と同量でも三千はするだろう。それをこれだけ、目測では十二キロはあるだろう肉を持ってくるとは、智香は金持ちか養鶏場を持っているとでもいうのだろうか。

「まぁ、あたし養鶏場のお偉いさんと友だちだから。今回は特別に傷の無い鶏を分けてもらったの。あ、あたしが養鶏場の人と知り合いなのは秘密にしてね?」

「おう、それはわかった。でも、これだけの鶏肉を分けてもらえるなんて、よっぽど気に入られてるか、それ程に余裕があるのか。」

「秋兎くん、早くあたしに渡してくれないとお料理できないよ?」

「あ、あぁ、スマン。」

 秋兎はいつの間にか手に持っていた鶏肉を千花に渡し、智香とテーブルで一緒に待つことにした。

「如月、お前ってさ、よく里山の部屋に来るのか?」

「えっと、確かによく来るね。特に今日みたいに休みの日は千花ちゃんとお買い物とか、依頼を見てお小遣い貯めたりとか。あ、あとは近くの温泉に行ったりとか。」

「あぁ、霧雨温泉だろ?あそこ結構爺さんらに連れられて男湯が大混雑になった事あるぞ。」

「あぁ、そういえばたまに男湯の方で待ち時間が出来てた時あったよね。あれって霧島くんたちだったんだ。こっちでも女性の軍人さんがたくさんいたけど、そんなに混雑はしなっかったなぁ。」

「まぁ、爺さんの率いてる大隊が主力部隊なんだが、あの温泉に行く時は爺さんの率いてる戦闘団が押し寄せるからな。二百人弱くらいだったと思うんだけど、その中でも女性軍人は三十五人くらいだし最初から混雑してない限り女湯はそこまで混雑しないだろ。」

「えぇ、二百人弱って。それ、本当によく出禁にならなかったね。」

 秋兎と智香が霧雨温泉の話題で盛り上がる中、千花はせっせと昼食を作っている。

 ころころと変わる話題に二人は徐々にテンションが衰え、智香が急に秋兎の写真をケイタイで撮るので、秋兎は少し戸惑った表情になる。

「おい、なんで今俺の写真撮ったんだ?」

「ん?まぁ、これ見たらわかるよ。」

 そう言って智香が見せてきたのは、秋兎にウサギの耳が生えたように見える画像。どうやら人の写真に色々と細工が出来るアプリを使ったものだろう。

「ほら、霧島くんってさ、名前に『兎』ってあるでしょ?だから、うさぎさんにしてみましたぁ♪」

「どんな理由だよ。ん、スマン電話だ。」

 秋兎は電話に出ると共に廊下に立ち、電話をかけてきた相手にため息を吐く。

「はぁ、もしもし?」

『おやおや、年頃の孫が人様に迷惑をかけてないかと心配で確認の連絡を入れてやったというに、何だその態度は。』

 電話の相手は霧島玄朗。秋兎のケイタイに、今一番長い間連絡先が保存されている相手だ。

「はいはい、で?なんの用事だ?」

『いや、今からそちらに新入生の寮の優先化についてのアンケート用紙のコピーを送ろうと思ってな。秋兎が出て来てくれれば大変助かるのだが。』

「あぁ、残念ながら今から女の子に手料理を振る舞ってもらうんだ。今出て行くのはこちらとしては大変後ろ髪を引かれる思いでね。孫のワガママを聞いて、爺さんの方から来てくれると俺としてはすごく嬉しいんだが。」

『そうか、なら仕方ない。今回はそちらに出向いてやろう。では、切るぞ?』

 そう言って電話を切った玄朗は、数分としない内に千花の部屋までやって来た。出迎えた智香は玄朗の顔を見るや否やドアを閉め、その後すぐに秋兎が少し傷心気味な玄朗を回収した。

「本当に申し訳ございません!まさか校長先生が自らお越しになられるなんて思いもしなかったもので。」

「いやいや、構わんよ。自分の顔がどれ程生徒たちに怖がられているのか、それなりに自覚しているつもりだからな。」

「んなことより、里山、なんで爺さんの分まで作ったんだ?」

「え、だってせっかく来られたんだし、それにお肉いっぱいあったから。」

「えっと、爺さんは昼飯食って来たのか?」

「あぁ、つい先ほど鉄火丼を三つ程。だが、この程度の量であれば食えるぞ?」

 そう言って玄朗は千花の作ったチキン南蛮をぺろりと平らげ、一息つくとフッと笑い秋兎の頭をワシャワシャとかき回した。

「お前、こんなにもうまい飯を作れる女に好かれるとは、運の良いやつよのぉ。」

「なんだよいきなり。まぁ、確かに里山の作る飯はうまいが、爺さんだって負けてないだろ?」

「いやいや、俺が言っているのはそこじゃぁない。ったく、こういったところは鈍いのぉ。里山千花、こんなバカな孫だが仲良くしてやってくれ。校長からの言葉ではなく、まだ若い孫の事が心配でたまらん老人の頼みだと思ってくれればいい。」

「は、はい。ですが、わたしまだ秋兎くんにちゃんとそういう事はしてないのですけがそれはどうなりますかね?」

 千花の言葉に、秋兎と智香は吹き出しかけるがなんとか堪え、秋兎は悟られぬよう何事もなかったかのように食事を進める。

「はっはっは!なに、別段難しい事ではないさ。遠征前のあのやり取りも、見ようによっては告白の一つともとれるだろう。あとは、秋兎の返事待ち、という所だろうなぁ。」

「・・・・そういうことなら、俺は付き合っても良いと思ってるぞ。それに、さすがの俺も、女の子に告白されて何も返さねぇほどクズじゃねぇからな。」

 秋兎は冷静を装いながら精一杯の返事をするが、智香には態度的に許されなかったらしく、秋兎の足を思いっきり踏みつけた。

「いってぇ!何すんだよ如月!?」

「別に、霧島くんの態度が上からに見えたからイラってしたりしてないし。」

「もう、智香ちゃん!秋兎くんだって悪気があって言ってる訳じゃないんだから。」

 秋兎は千花に図星を突かれ、どうにか誤魔化そうと玄朗の目的を思い出す。

「そうだ、アンケート用紙は渡さなくて大丈夫なのか?」

「おぉ、そうだった。危うく忘れる所じゃった。ほれ、お前が考えたアンケート内容をコピーしておいたぞ。こちらとしては、少しミスがあった方が面白みがあって楽しいのだが、里山は優等生なだけあってミスが一つも見つからなかった。そうだな、お前が卒業できたらその日に秋兎の専属佐官にでも昇格させてみようか?」

「え、そんな、一介の訓練兵が卒業と同時に佐官にまで昇格なんて、そんな事しても大丈夫なのですか!?」

 自分の卒業後の急激な昇進の話に戸惑う千花だが、玄朗はそのくらい俺の権限で何とかなると笑って返す。秋兎は鶏肉を全て平らげ、逃げるようにキッチンへと食器を持っていく。

 突然インターホンの音が鳴り、千花が入り口のドアを開けると、伝達兵が整った敬礼をして立っていた。

「えっと、何かありましたか?」

「はい。ここに、霧島秋兎少将殿はおられますでしょうか?」

「えっ、あ、はい。秋兎くん、伝令さんが来てるよ?」

 千花に呼ばれて、秋兎は何だと顔を出す。

「少将、お手数おかけしますが保健室へ来ていただけますでしょうか?」

「あぁ、氷野の事か?」

「はい、あなたに言いたいことがあると。」

 秋兎は大きくため息を吐くと、嫌そうに伝達兵の後をついていった。秋兎の姿が見えなくなると、千花は玄朗になぜ秋兎が呼び出されたのか聞いてみることに。

「ん?あいつ、呼び出しくらったのか?俺は、はっきりとした理由は知らんが、どういった呼び出しかは想像がつくな。」

「それって、どういったものですか?」

「まぁ、あいつは反抗する相手を反抗する前に亡くしたからな。俺以外の所で反抗期特有のキレやすいのがどこかで発動したんだろう。」

 そういって、キレられた相手が死んでいない事を祈りつつ、千花に頼んだコーヒーをグッと飲み干した。

     *

 保健室にやって来た秋兎は、六花がいる病室の前でノックをしてみる。

「霧島だ、氷野はいるか?」

「はいはい、いますよぉ~入って来てくださぁい。」

 部屋の主に了承を得て、秋兎は病室に入る。

 中には特に何もなく、無造作に置かれた見舞い品が数個ある程度。他には、食事を済ませた後なのか、ベッドに付属している台が少し汚れているといった程度だ。

「随分と質素な病室だな。こんなんじゃ暇だろ?」

「まぁね、あいつらは一応の見舞いって感じだったし、渡すもん渡してどっか行っちまったよ。あたしって、随分嫌われてるんだねぇ。」

 六花はまだ新しい秋兎に与えられた傷が痛むのを堪えて起き上ると、見舞い品として置かれた缶ジュースを取ってそれを飲む。

「随分と痛むみたいだな。」

「はっ、誰かさんが元気に踏んづけてくれたからねぇ。自分より小さな女の子に向かって容赦なく踏んだり蹴ったり、ね。」

「確かに、その立派な脂肪の塊以外は小さいな。」

「やっぱりあんたも男だし、女の子のココ、気になるのか?なんなら、触らせてやってもいいよ?」

 六花は制服のボタンを開けて胸元を開けるが、秋兎はその様子に特に反応することなく。六花は恥ずかしくなったのか、ボタンを付け直す。

「さすがに、無反応は悲しいなぁ。ちょっとは反応してくれよ。」

「悪いな、俺はロリ巨乳には興味ないんだ。」

「ざっけんな!誰がロリだアホ!っ、イテテ。」

 急に動いたことで傷を痛め、六花はベッドの上で大人しくなる。

「アホはお前だ、けが人が急に動くな。」

「誰のせいでこんな目に遭ってると思ってんだよ。」

「それはお前が仲間を死ぬかもしれない窮地に追いやったからだろ。まだ串刺しにして異界蟲共に振る舞わなかっただけマシだと思え。」

 六花はふてくされたようにムスッとした顔になり、秋兎は六花の頬をつまんで口の中の空気を抜いてみる。

「なにすんだよ!」

「いや、まさか本当に空気が出るとは思わなくて。あぁ、それで、結局俺を呼んだ理由は何なんだ?」

「・・・・ちょっと、暇だから。あたしをこんなんにした罰として話し相手になれって言いたかっただけだ。」

「つまり、寂しかったのか?」

 秋兎に図星を突かれて頬を赤く染めた六花は小さく、暇だからだし、と否定する。

 コンコンとドアをノックする音が聞こえた後に、看護婦が六花に入室しても良いか聞いて来る。六花は彼女に入室を許可するが、いちいち聞いて来るなよと愚痴をこぼした。

「失礼いたします。あら、霧島さん。もしかして、お邪魔でしたか?」

「いや、そんな事はない。俺はそろそろ戻るが、氷野。この三堂には気を付けろ、こいつはガチレズのロリコンだからな。」

「そんな事はありません!・・・・さてと、はい六花ちゃん、お着替えしましょうかぁ♪汗かいたままだと風邪ひきますよぉ♪」

「え、ちょっ、やめろ、あぁっ!下着は大丈夫だって、大丈夫だからぁっ!」

 秋兎は六花の悲鳴を聞いていないフリをして病室を出る。そして、特にすることもないので、とりあえず千花の部屋に向かった。

     *

 玄朗が仕事に戻るために部屋を出て行ってから数秒。千花と智香は、平和な時間をのんびりと過ごしている。

「ふぅ、なんか、する事なくて正直暇だね。」

「そうだね、あたし達で何か依頼でもしに行こうかな?」

「うん、なんなら霧島くんも誘ってみる?」

「秋兎くんが来てくれるなら、ちょっと難しい依頼でも出来ちゃいそうだよね。」

次話投稿です。前回、友人からは成長したなと褒められましたが、これを読んでくださった皆さんがどう思っているのかと思い慢心してられませんね。

軍的な要素がありますが、そのような知識はほとんどありません。少しずつ勉強しながらになると思います。誤字などがあれば指摘していただけると幸いです。

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