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【季節ネタ】ハロウィンネタ③四聖精霊と生徒会役員(その一)


「おー、相変わらずの人気(にんき)っぷり」


 隣でそう言うノエルに、様子見で役員たちの教室を見に来た私が馬鹿だった、と言わんばかりに、キソラは溜め息を吐いた。

 本来なら休み時間であろう時間に、近付いたのが悪かったらしい。


「どうする? また後にする?」

「今だろうが後だろうが、あれだけの人なんだから一緒だろうが」


 ノエルの問いに、同じく同行していたアキトが返す。


「後にしとくよ。少し気になることも――」

『トーーリック、オア、トリーート!!』

「ぐっ!?」


 最後まで言葉を紡がせないほどの背中への強力なダメージに、誰が来たのかを察したキソラは怒気を纏いながら、ゆっくりと振り返る。


「……シぃ~ルフィ~?」

『あ、あは?』


 さすがに本能的にヤバイと判断したらしい。


『ごめんなさい。キソラちゃんのお菓子に釣られました!』

「正直なのは認めるけど、今は場所を移るよ」


 何事かと目を向けてきた人たちを余所に、猫が子供の首根っこを掴んで移動させる要領で、キソラもシルフィードの首根っこを掴むと、そのまま移動を開始する。


『あの、キソラちゃん。ボク、ちゃんと自分で移動……』

「ん? 何か言った?」

『イエ、ナンデモアリマセン……』


 暗に首根っこを掴むのを止めろと訴えようとしていたシルフィードだが、有無を言わせぬ笑みを向けられ、思わず片言になるレベルでそう返す。

 だが、キソラもキソラで、実はそんなに強く掴んではいないので、シルフィード自身が離れようと思えば離れられたりする。そんなことを知りながらも、シルフィードが離れようとしないのは、キソラがそんなに強く掴んでいないことを理解しているからだろう。


 場所を移し、キソラはシルフィードに小分けした焼き菓子の一つを渡す。

 飛び付いてきた際に、彼女が『Trick or Treat』と言っていたことには気付いていたのだ。


「ほら、お菓子」

『わーい、キソラちゃんのお菓子ー』


 どこかで見たような反応だな、と思いつつ、キソラはそんなに嬉しいかね、と思う。


『ありがとー。それと、あんな場所で飛び付いて、ごめんなさい』

「分かれば良いんだよ」


 シルフィが怪我する可能性だってあったんだし、と付け加えるキソラに、シルフィードは目を見開いた後、ふんわりと笑みを浮かべる。


『うん、こっちも心配してくれてありがとうね』

「……」


 まさに美少女と言っても間違ってはいないであろうシルフィードに、今度はキソラが目を見開く番だった。


『キソラちゃん? どうかした?』

「っ、いや、何でもないよ」


 そんな二人のやり取りを見ながら、ノエルたちは思う。


「ねぇ、この場所はいつからラブストーリーの舞台になったの?」

「女二人でラブストーリーでは無いだろ。そういうジャンルがあるとはいえ」

「でも、ラブストーリーとかに当て嵌めると、この場合はキソラが男側になるのかな……?」

「だな。シルフィードの方がどこをどう見てもヒロインだ」


 外野が好き勝手言っていたからだろうか。キソラが正気に戻る。


『さて、と』

「もう行くの?」

『本当はもう少しキソラちゃんたちと一緒に居たいけど、ボク、行かなきゃならないところがあるから』


 彼女がこれからどこに向かうのかなど、もう予想は出来ているのだが、それを口にしないのは彼女と今頃これから向かう先で待っているだろう相手のためだ。


「良いもの、貰えると良いね」

『……キソラちゃん?』


 キソラが察していることをシルフィードも理解したのだろう。


『やっぱり敵わないなぁ、我が主様(あるじさま)には』


 それじゃあ行ってきます、と空き教室を飛び出していったシルフィードに、キソラは笑みを浮かべながら見送る。


「何この『惚れた女が別の男の元に向かうのを見送る男』みたいな図は」

「そういう奴に限って、良い奴だったりするんだよなぁ」

「そうそう。何で彼や彼女を選ばないのーって」

「ノエル、アキト。言いたいことは分かるけど、そろそろキソラがキレる」


 ノエルの言い分に、納得したかのように頷くアキトだが、ユーキリーファが声を掛ける。


「二人の言い分は分かったけど、あの子にはもうちゃんとした相手が居るから、期待しても無駄」

「まさか本当に『惚れた女が別の男の元に向かうのを見送る男』の図だったとは」

「だから、(ちげ)ぇーって、言ってんだろうが。つか、現実に戻ってこい、現実に」


 衝撃が走ったとばかりの反応をするノエルに、キソラも対応に面倒くさくなってきたのか、扱い方が雑になりつつある。

 それでも、今のキソラとしてはノエルたちのことよりも、四聖精霊である彼女と後輩である彼の関係の方が気になって仕方がない。

 もしも(・・・)の場合は、使えるものは何でも使うつもりだが、それはあの二人が望んだ場合だ。

 だが、キソラが学院に通っている間ぐらいは自由に会わせてあげよう。


(それが私に出来ることだろうしね)


 そもそも種族が違うために、(きた)るべき時はいつかきっと()る。

 それが、シルフィードと彼だけの問題ではなく、キソラと四聖精霊たち、守護者たちとの問題でもあるのだから。

 だから、せめて――後悔していないと言えるような判断をしたいし、してほしいものだと、それが『生と死』という空間魔法の使用者となったキソラの想いだ。



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