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S094 騙された方が悪い

今回はちょっと内容薄いかも知れません。

ランディはあまり物事を考えない男だった。考えずとも世の中上手くいっており自身の生活もそれほど不自由もなく、やれ畑仕事が大変だ、隣のとこの奥さんが身重だから隣を手伝うだと大変な事はそんな程度の極平凡な生活だった。皆と一緒に領主様は素晴らしい、村長は良くやっていると言い合っていればその日一日は過ぎ、悩みと言えばちょっとは税を負けてくれないかなと言う程度のものだった。

そんなランディだからこそだったのだろう。ある日商人が行商にやって来た。村の広場でランディは商人に話し掛けられた。


「ちょっとそこ行く旦那!そう、あなたですよ。肩で風切るイイオトコ、あなたの事ですよ。どうです、そんな旦那にこそ相応しいものがありますぜ。」


そんな風に声を掛けられたランディは普段言われない気持ち良い言葉につい露店を覗いて見た。すると商人はここぞとばかりに商品を売り込む。


「さあ、お客さん、あなたにはこれなんか似合っていると思うんだがどうだ?生地もしっかりしていて着心地も良い。丁度あんたと同じ大きさで仕立て直す必要もないと思いますよ?いっちょこれを来てお目当ての女でも口説いてみたらどうです?いけるかもしれませんぜ。」


そんな事を言われてランディは少し気分が良くなり、少し見た目派手な服だが確かに着心地は良さそうだと思い値段を聞いてみたところ、銀貨1枚だと言う。高いな、とランディは思った所に商人が畳みかける。


「そりゃあすこしお高めですよ。なにせあなたの様な人向けに拵えたものですから。イイオトコには良いものが良く似合う。これは世の中の常識ですよ。それなのにあなたがこれを着ていないのは実に勿体ないと私は思うんです。これを着たら皆放っておかないですよ。お気に入りのあの娘のあなたの事が気になって仕方ないに違いありません。」


そうかな?と思ったランディは最近ランディに素っ気ないマリーの事を思い出す。どうもロコに気が向いている様でランディが声をかけてもあまり良い言葉が返って来ない。『あ、うん。またね』だとか『ちょっと今は忙しいから』とあの手この手でランディの言葉をはぐらかすマリーをどうにかしたいと思い、既にランディの欲求は溜まりかねていた。だからランディは商人のその言葉でグラッときてつい聞いてしまった。


「だがなぁ。ちょいと高いんだよ。」


すると商人はシメたと思い、ここが正念場と話を続ける。


「そうですか。いや残念です。お客さんの様なこの服に相応しい方を見つけたと思ったんですがね。いや、まあ、本当に残念です。うーん、でもなぁ、折角この服に相応しい人に出会ったんだ。このままじゃこの服が可哀想だ。ええい、仕方ないお客さんだけに特別に銅貨1枚負けて銅貨9枚でどうです?こっちも少し苦しいがお客さんとこの服の幸せの為だ。飲み込みましょう。」


「え、そうなのか。ならもう少し飲んでくれても良いじゃないか。銅貨8枚。」


「くっ。仕方ない。私もこの服を着こなした人を見てみたいと思ってしまったのが運の付き。銅貨8枚と鉄貨5枚。これ以上はさすがに苦しい。お客さんは商売上手だ。」


「よし買った。ありがとな。」


そう言ってランディと商人は取引を終えて別れた。

そして2日後、ちょうどランディは村の共同作業で荷物の運搬をする時にとっておきの服を着て村の中央に集まった。皆はランディを見て『何かあったのかあいつ』などとヒソヒソと話しているがランディはそうとも気づかず服を見せびらかす様に堂々と立っていた。少しでもマリーの目に入る様に、そして男らしく堂々と胸を張っている姿を見てもらうのだとランディは自信満々に立っていた。

ランディの買った服は色合いが少し赤めで村人が普段着る服とは違っており、仕立ても肩パット入りという悪目立ちするもので、周りの皆も声はかけるもその姿については話題を避けていた。

女衆がランディを見てヒソヒソと話すのを澄まし顔で佇むランディはそれとなくマリーの姿を見つけるがマリーもこちらを見ているのを知り、尚の事堂々と胸を張ってみせた。

そうしている内に作業が始まり少し経った時ある出来事が起きた。ランディの来ている服が荷物に引っ掛かり荷物を勢い良く下ろした時に肩口の縫い目から破れたのだ。ランディも驚いたが周りの皆も驚いて思わず囃し立てる。


「おいおいその服大丈夫かよ。その内全部脱げんじゃねぇだろな。お前いつからコメディアンになったんだよ。」


そんな言葉をかけられて顔を真っ赤にしながらも作業を行って身体を動かせば動かす程に破れた所は裂け、作業も終盤に差し掛かるともう肩口から袖が外れたのでポケットに仕舞い込んでしまった。

作業が終わって皆で集まってみればそこには片側の袖がないちんちくりんな姿のランディが居た。良く見ればあちこちほつれている様にも見え、男衆はともかく女衆はそんなランディの姿を笑いながらヒソヒソと話し合っていた。よく見ればマリーもランディの方を見てクスクスと笑っているではないか。ランディはもう恥ずかしさの余り、村長の締めの挨拶を聞かずに帰ってしまいたかった。

そうこうしている内に村長が無事に作業を終えたと言って解散を命じたが、ちっとも無事じゃねぇよ、とランディは思いながら急いで帰ろうとした時に、目の端でロコに話し掛けるマリーに気づいてしまった。さりとてランディはこの姿。話に割って入って邪魔をしようにも下手すれば話題になりかねないので、苦虫を噛み潰した様な顔でその場を去るしかなかった。


そして服を買ってから1週間後、村に行商人がまた訪れた。ランディは逃がすものかと行商人に怒鳴り込んだ。


「おい、お前。お前から買った服はとんだ不良品じゃないか。簡単に袖が外れたぞ!お蔭で俺は赤っ恥だ!どうしてくれる!」


怒鳴り込んだランディに行商人は別段驚く様子もなく平然と言い返した。


「さて、お客さん。その服は本当に私の所から買った物なんですか?疑わしいですねぇ。変なモノを押し付けようとしてるんじゃあないですか?」


「それはお前だろう!しらばっくれるな!お前以外にこんな服売ってる奴は居ねぇよ!」


「こんな服とはまあなんて言い方でしょう。自分で買った服なんでしょう?自分の美的センスをけなすなんて面白い方だ。しらばっくれるも何も覚えがありませんねぇ。私の所から買ったという何か証拠でもあるんですか?ないなら単なる言い掛かりですよそりゃ。」


「てめぇ!この野郎!いいから金返せ!」


「ヒィ!あ、あなたは強盗ですか!?昼の日中の村の真っただ中で盗みをするなんて。なんて大胆な!」


「うるせぇ!さっさと出せよ!」


ランディと行商人がギャーギャーと騒ぎ立てていると他の村人が伝えたのか村長がやってきて仲裁に入った。ランディは事情を話しながらも商人に金を返せと喚き、商人はそんな覚えはないと突っぱねこう言う。


「仮に、仮にですよ?ウチで買ったものだとして破れたからってこっちの所為にされたんじゃ堪らない。大方使い方が荒かったんじゃないんですか?どう見てもそんな感じじゃないですか。そもそもがウチはちゃんと商品を並べてお客さんに見て貰って、買う気があるなら触っても貰ってるんです。それで買ってるんだから買った時はしっかり仕立てていたから買ったんじゃないんですかね。どうなんです?」


その言葉に村長は頭を抱える。良くあるのだ。というより昔は良くあったのだ。村人も行商人に騙されまいとじっくり商品を見てから買っていたのだが、ある時から村長が村で商売する行商人をある程度選んで許可を出すようになってから素性の良い商人が多くなってこんなトラブルは滅多にない様になった。しかし丁度いつもの商人が遠くに出かけていてその代わりなのかこの行商人が空いた場所に入り込んだ。村としても物を運んできて売ってくれる商人は貴重だから場所が空いているんならと許可を出したのが間違いだった様だ。

ランディの事は村長も知っている。少し頭の軽い奴でそそかっしいが悪い奴じゃあない。買った服を粗末に扱って破れたからいいがかりをつける様な真似はしないだろうし、今回は何か腹に据えかねた事でもあったのだと思うがどうにもランディが一杯食わされたらしいと見当は付ける。

しかし村長はこうも思う。少し甘やかしすぎたか、と。行商人相手のトラブルなんてものはいつの時もあって、そのトラブルの仲裁が手間で時間の無駄だと思うから行商人には許可を与えていたのだが、それがどうやら村人の考え方を甘くさせてしまったようだ。商人は粗悪品を売りつけない、ぼったくりをしない、なんて都合の良い錯覚を抱いた様でこれはランディにも非はあるし、これを教訓に学んでもらわないと駄目だ、と村長は考え、こう言った。


「ランディ、諦めろ。騙された方が悪い。」


「そ、村長。なんでだよ!こいつがこれを売りつけたから悪いんじゃないか!」


ランディはそう言い行商人を指差すが、指を差された行商人は村長の出した答えに満足していてランディにニヤリと笑いかける余裕まであった。そのにやけ面が気に入らないランディは激昂しかけたが村長に止められ、村長はそんな2人を見ながら行商人に言う。


「なぁ、あんた。あんたらは仕入れに失敗したらどうにかしてでも捌かないと破産して野盗にでも成らないと生きていけなくなるのは分かるがちょっと感心せんなぁ。儂の若い頃でももう少し後先考えたもんだぞ?」


その言葉に行商人は悪びれる事なく、そして悪い事などしていませんという体で答える。


「おや、村長。聞き捨てが悪いですね。私が何かしましたか?安全安心をモットーに商品を売っているだけの善良な商人ですよ?いいがかりを付けられて評判が下がったんじゃ困るんですよ。」


「ああ、分かった分かった。もういい。どうせ証拠がないって言うんだろう?」


「ええ、そうです。私からその服を買った証拠、そしてその仕立てが悪かった所為で敗れた証拠っていうものを見せて貰えないと、もしウチが売ったのだとしても単に破いたから返品したがっている様にしか見えませんよ。自分で破いておいてそれはないんじゃないですかとしか言えないし商売上がったりです。」


「ああ、そうだろうな。なぁ、あんた。次からはもうこの村には来ないでくれないか。」


「ええ、私もこんなガラの悪い村人の居る村なんて遠慮させてもらいますよ。良い商売先がないか探してただけですからね。ここにはそんな場所がなさそうなんで。」


「なら早めに出て行ってくれ。」


「言われなくても。もう会う事もないですがお元気で。」


「ああ、達者でな。」


そう言った商人と話を終えた村長は今だ怒るランディを強引に広場の外れまで連れ出して宥める様に言った。


「まあ運が悪いと諦めな。でもな、騙されたお前も悪い。ちょっと調べれば分かったんじゃないか?」


それにランディが反論する。


「なんだよ、俺が悪いってのか。大損した俺が。」


その言葉に村長は溜息を付く。そもそもが行商人など余所者で、向こうも後腐れなくどこかに行けるから助け合いする為の一線を越える事なんてそれほど深刻に考えてもいないのだ。村人の信用を得る為にルールを守る、信用を得なくて良くなればルールを破っても良い、ましてや商売に失敗して自身の身が破滅しそうなら利益さえ得られれば破滅を回避できるからルールを破っても新しい別の所で商売すれば良い、程度の考えでしかないのだ。相手の事情も考えずに生活しているツケが出たな、と村長は思う。村という小さい世界しか知らないランディは村から外に出た事もないから同じ村人の状況しか知らず、商人などがどういった生活をしているかも分からないのだろう。だからこそ今回は良い勉強代だと思って貰うしかないと村長は思い、口にする。


「良い大人が簡単に人を信用するんじゃない。村のモンはお前と仲が良いからお前を騙すなんてひどい事はしないだろうけど余所者にとってお前がどうなろうと関係ないんだよ。お前がそれで死んでも酷い目に会っても余所者にとっちゃ物を買って売り上げに貢献した客の1人だよ。」


「なんだよそりゃぁ。そんな事が許されて良いのかよ。」


「駄目に決まってるだろうが。そんな奴に良い目を見させちゃ駄目だからお前ももっとしっかりしてくれ。あんな奴が平気でのさばって貰っちゃ他の行商人も迷惑だし、村も行商人に頼れなくなる。」


「ああ、そうだな。いつものあの、なんだっけ、ハンスって奴は来てないのか?」


「ああいった人気のある奴はいくつか行く宛てがあるんだよ。だからウチにもちゃんと来て貰う為にも変なトラブルは避けたい。それがあるからあの手の奴に強気にも出れない。この村が行商人から金を巻き上げたなんて噂でも流されたら人気のある行商人はこの村を避けてあんなどこの馬の骨とも知れない奴しか寄って来なくなる。な?今回は高い勉強代として次からは気をつけてくれ。」


「なんだよ、畜生。なんなんだよ、畜生。」


ランディはそう言って唾を吐き捨てた。



ザックは、先日起こった出来事を思い返していた。ミレットが騙されて大損して露頭に迷いそうになったのだが、町長がミレットの損害を代わりに払ってくれ、ミレットには変わらぬ働きを求めるだけで済ませたそうだ。ミレットは凄く感謝していたそうだが、気前の良い事だとザックは思う。

ミレットはお人好しで、広場で辺りを見回す老婆を見つけて話し掛けた。老婆は取っ手のついた壺を持っており、ミレットが話し掛けると「ああ、すいません。ちょっとポシェットから物を取り出したいのですが壺を置く場所がなくて。地面に置くわけにもいかず。すいませんがちょっと持って貰えませんかねぇ。」と言ったそうだ。そしてミレットがその壺を持つと老婆はポシェットをまさぐり始めたが中々に目当てのものが見つからないらしく時間がかかり、それを今か今かと待つミレットが持つ手に少し力を入れたら取ってが外れたらしい。するとその老婆が突然凄い形相で、やれミレットが壺を壊しただの、どうしてくれるんだだのと言い出して凄い騒ぎになったそうだ。すると町長が何事かと仲裁に入ったのだが老婆の主人が出てきてこれが隣町の金持ちで問題はややこしくなった。周りの皆もミレットが壺と壺についていたと思われる取っ手を握っているのを見てしまったからミレットを弁護しようにもどうにも歯切れが悪く、ミレットは真っ青になりながら泣きじゃくっていたそうだ。そんなミレットをなだめる町長がいたのだが老婆の主人の金持ちはミレットに容赦なく弁償しろの一点張りで引く気配もなく、仕方なく町長が払う事で話はついた。

そしてこうも考えた。あれは絶対老婆が自身の失敗を他人に擦り付けて責任から逃げようとしたんだろうなと。薄々と金持ちも気づいていたんだろうが、こんな機会はないと思ったのか阿漕にも金勘定をしたのだろう。婆ァなんぞ弁償も出来ないだろうし、売り飛ばす事も出来ないがミレットは若くそこそこ器量が良い。売り飛ばしても良い値段で売れ、妾にでもすれば良い目に会える。こんな良い機会はなかったんだろう。もしかすると元々ミレットが目当てだったんじゃないかとも思う。ミレットの目の前でああやればミレットは必ず老婆を助けようとするなんてこの小さい町の人間ならほとんどが思いつく。

そしてこうも考えた。じゃあ俺が壺を壊して困っている所を見たお人好しの領主は俺にも立て替えてくれるだろうから、そこいらの流れ者と手を組んで初めから壊れた壺を使って演技すれば町長から金を巻き上げられるんじゃないか。そうなれば一瞬にして大金をせしめる事が出来る。


そう考えたザックは早速仲間を募ると隣町の金持ちと知り合いの奴がいて話に乗ってくれるらしく、一見して普通だが壊れた壺も町の古物商ですぐに見つかり、その壺を買ってアンガスに渡した。そして準備が整った所でザック達は計画を実行した。

ザックの共犯者のアンガスが広場の向こうから歩いてきて、ザックとすれ違う時に軽く体がぶつかる様に寄って来た。軽めだったにもかからわずアンガスは大げさに尻もちをついてからこう叫ぶ。


「お前がぶつかってきたから壺が壊れたじゃないか!どうしてくれる!」


さあとばかりにそこからザックとアンガスで喚き立てて周りの視線を集めて状況証拠を作ると、騒ぎを聞いた町長がやって来て仲裁に入る。

すると丁度良いタイミングで金持ちがやってきて『弁償しろ』と言い出した。

そしてザックは『自分は壊してない』と狼狽しながらもチラチラと町長を伺いながら思う。さあ、お人好しの町長、騙されてカモにされている俺を救う時だ、と。

ザックがそう思っていると町長はザックと壺を何度も交互に見比べた後、腕を組んで考え出した。

どうにも様子がおかしいとザックが思っていると何か決まったようで町長はザック達を一通り眺めた後にザックに向かってこう言った。


「騙された方が悪い。」


そう言って町長は立ち去った。

あまりの出来事に呆然としているザックだったが、横から話し掛けられハッとして振り向くとそこには不満そうな顔のアンガスが居てぶっきらぼうに言う。


「どうでも良いけどよ、ザックさん。この壺どうしてくれんだよ。勿論弁償してくれんだよなぁ?」


「おい、何を言ってるんだ?」


ザックがそう言い返すとアンガスの連れてきた金持ちが追い打ちをかけた。


「お前こそ何を言ってるんだ。大事な壺を壊したのはお前だろう?ちゃんと弁償してくれよな?」


その言葉を聞いたザックは思わず言い返す。


「何を言ってるんだ!初めから壊れてたじゃないか!」


「それこそ何を言ってるんだ。いいがかりもよいところだ。お前がぶつかってうちのアンガスが倒れた拍子に壺が割れた。ならお前が弁償するのが当然だろう。」


「おいおい、よしてくれよ。作戦は上手くいかなかったんだからよそうぜ。」


「おいおい、作戦て何の事だ?変な話を持ち出して煙に巻こうなんて考えてるんじゃないよな?まあ、俺も鬼じゃない。全額払えとまでは言わないが半分は払ってもらおうか。」


「払うわけがないだろう!アンガスの方からぶつかって来たんだろうが!」


「なんだ?どちらが悪いか分かりにくいからこちらは痛み分けで折半で我慢しようって言ってるんだぞ?」


「折半だと?町で見つけた二束三文の壺を高値を売りつけようってのか?初めから壊れてただろうが!」


「だから何度も言っているが言い掛かりはよせ。ここで壺は壊れた。あんたがぶつかったからアンガスが倒れた。そして壺が壊れた。こちらとしては全額弁償して貰いたいところなんだよ。だがまあこっちにも丸っきり非がないわけじゃないから折半で良いと言っている。折角のこちらの好意を無駄にするのか?」


「好意も何もでまかせじゃねぇか!」


「おいおい。そこまで言うなら裁判所で白黒つけようじゃないか。まあ、折半が妥当だと思うがね?」


「チキショー!てめえら!最初からそのつもりだったな!」


「言い掛かりはよしてくれと言っているのに何度言ったら分かるんだ。全く、こちらは高い壺が壊れて大損なのに。」


そう言って金持ちはアンガスに調査官を連れてくるように言い、ザックをウンザリする様な目で見た。


広場を離れた町長は帰宅しながら従者に指示を出す。


「前に私の家で壊れた壺を二束三文で古物商に売った事があるが誰が買ったか調べて貰ってくれ。あんな店を余所者が知っているとは思えん。好事家なら同じ趣味として私があの金持ちを知らないはずがない。」



ランディはロコと一緒に仕分けていた。先日の事はもう忘れたつもりで村の噂もそれほど長くは続かなかった。まあ冷静に考えれば単に袖が取れただけ。それだけだ。そう思い込むランディだが、思い込めないものもあった。あれ以来どうもロコに差をつけられた感があり、以前はちょっとばかりと思っていた差もマリーの笑顔の向かう先が自分ではないのでロコとはあまり差がついていないと思い込もうとはしてもどうしても明らかな差にランディは不満な顔をしてしまうのだった。


2人して穀物を袋詰めして倉庫へ運ぶ、という男手の要る作業だが『なんでロコと』などとランディは思わず心の中で愚痴っていると、詰め終わった袋を倉庫へ運ぶから仕分けていてくれとロコが言い出した。わざわざ自分から重たいものを運ぶと言うかね、などと思いながらラッキーと思う反面、その男前の良い行動にモヤモヤとわだかまりを感じた。

そうしてロコが倉庫に入って運び込む準備をしていると、マリーが様子を見にやってきた。マリーの姿を見つけるとランディは思わず笑顔を浮かべたが、マリーはランディの姿を見ても軽い会釈だけしてキョロキョロと誰かを探す仕草をした。

その姿を見て顔には出さないものの内心ではしかめ面のランディはロコに合わせたらダメだと直感で閃いた。そんなランディに目当てのものが見つからない様なマリーは話し掛ける。


「ねぇ、ランディ。ロコは確かここよね?どこ行ったの?」


「え、ああ。ロコな。さっき疲れたとか言って怠けに家に帰ったよ。しばらくしたら戻ってくるんじゃないか?」


「そうなの?ロコらしくないわね。珍しい。どこか具合が悪いのかしら。ちょっと行ってみるわ。ありがとう。」


「・・・」


今はロコとマリーを合わせるのはとにかくマズイと思ったランディは咄嗟に嘘をついてしまったが、すぐにバレそうな嘘をどう誤魔化そうかと考えているとマリーはさっさと行ってしまい、ランディだけが残された。

まあ些細な嘘だから単なる冗談だと言えば許してくれるだろうと楽観的にランディが考えて作業しているとロコが倉庫から出てきて『調子はどうだ』と聞いて来たので『悪くない』と答えるだけで済ませた。


そんなある日、ランディの耳にどうにもロコとマリーがくっつきそうだという噂がチラホラと聞こえてくるようになった時、ロコ達と材木運搬する事になっった。木を切り倒すのはともかく所々で人手が必要になり、きこりの手伝いを若手でする事になり、皆でロコを冷かしつつ木に縄をかけ、丸棒を敷きながら運搬していく。ランディを除いて。

ランディは気に入らないその会話には加わらずに黙々と働いていたが、アントンがこんな事を口にした。


「おい、ロコ。そんでよぉ。お前プレゼント贈ったのか?」


「え、いや、まあ、その。なんか良いのが思い浮かばなくてさぁ。」


そう言ったロコの幸せそうな笑顔にランディは毒づきそうになりながらもふと遠くにある崖が目に入り思わず言ってしまった。


「そういや、あの崖の真ん中らへんに花が咲いていて、マリーは欲しそうにしていたかもな。」


ランディがそう言うと皆がロコを見てニヤリと笑い、ロコも苦笑しながら崖に目を向けた。崖と言ってもそれほど切り立っておらず足場もあれば手でつかめる出っ張りもある。皆で材木など放ったらかしにして崖に来てみると確かに中程に白い花が咲いていた。6、いや7m程か、と皆で目算している中、どうやらロコは登る気になった様で出っ張りに足を掛けて登り始めた。

今更嘘でしたと言い出しにくいランディは不機嫌そうに顔をそっぽ向かせながら目でロコを追っていると突然ロコが足をかけていた出っ張りが崩れて崖からロコが転落して足の骨を折った。

怪我したロコを皆で急いで運んでベッドに寝かせると騒ぎを聞きつけてきた村長とマリー、そして村医者がロコの家にやってきた。ロコの両親を交えてロコと一緒に作業していた若手から村長が事情を聞き出す中、マリーがロコに少し怒ったような口調で問う。


「何やってるのよ。あんたらしくない。いい年してガキ大将のつもりなの?」


「マリーがあの崖に咲いている白い花を欲しがっていたと聞いたから無茶をした。ごめん。」


その言葉に驚いたマリーは言い返す。


「そんな事言った覚えないわよ!誰よ!変な事言ったのは!」


マリーがそう言うと一緒に作業していた連中は皆ランディの方を向く。皆の視線を浴びたランディは居心地が悪そうにしながらそっぽを向いて答えた。


「ふん、騙された方が悪い。ほんのちょっとした冗談だったんだよ。冷やかしついででさ。まさか登るとは思ってなかったしあんな所から落ちるとも思ってもなかったんだよ。俺ならきっと落ちてないね。」


怪我をしたロコは失敗して落ちたから自分にも思う所がありその言葉にムッとしながらも睨むだけで済まそうとしたが周りは違った。ランディのその悪びれる事ない一言に呆れて思わず誰かが口にした。


「ランディ、おまえ・・・」


そうやって声を掛けられてもそっぽを向いたままロコや皆と目を合わそうとしないランディを見て村長は頭を抱える。以前の事が面倒な程にこじれていると村長は思う。確かに事実を確認せずに思い込んで行動し、そして崖の危険さを見誤り失敗した時の事を考えずに登ったロコにも反省する点はあっただろう。しかしそれで騙して良い事にはならない。ランディはランディで自分のついた嘘でどうなるかを考えなければならなかった。村長がどうやって諭そうか悩んでいるとマリーがランディを問い詰める。


「前からロコの事でときたま嘘ついてたわよね?どうしてよ。」


「フン。騙された方が悪い。どうしてかって自分の胸に聞いてみな。」


「私はあなたにそんな事した事ないわよ。何言ってるのよ。」


村長は『もう分かった、充分分かった』と心の中で思いつつもとりあえずはロコがまだ大丈夫で安堵するが、ランディが前の怪我から立ち直ってないのをどうしたものかと考えながら仲裁に入る。


「マリー。分かった。この件は私が預かろう。ランディ。お前はちょっとこじらせてるな。ここではなんだ、俺の家で話そうか。晩飯くらいは出してやる。」


そう言って村長はランディを連れ出していった。皆はボカンとした表情でお互いを見回すとプッと吹き出し笑った。


「おいおい、ランディの奴、晩飯を馳走になるってよ。今からだぜ?こってりやられるぜありゃあ。」


「まあ、今回はあいつが悪いしな。それにけしかけた俺らもな。ロコ、すまん。マリーもさ、ロコも大事には至らなかったんだから許してやってくれよ。マリーの為にさ、プレゼントが欲しかったんだからさ。」


そう言われてはマリーもこれ以上怒れず、


「なら今度はちゃんとしてよね。足もしっかり治す。」


とだけ言ってロコの母親と共に出ていった。



ボビーはようやく舞台が整ったとほくそ笑んだ。あの町長、『騙された方が悪い』なんて言いやがった。そんでだました商人はお咎めなし。まあ居づらくなって他の町に行ったらしいからそれに関してはすっきりした。だがあの町長は許せない。明らかに俺が騙されたのは分かりきっているのに大きなため息と共に『騙された方が悪い』だ。何か?世の中騙した者勝ちなのか?そうか、ならやってやんよ。そうボビーは思って今日まで準備を整えてきた。

現在のボビーの状況はとても面白くない。商人に騙されて大損した金を町長が渋々立て替えて、その返済に町長の小間使いをボビーはやっている。町長はボビーのやる事に一々小言を言い盛大に溜息を付く事もある。そんなに俺が嫌かよ、とボビーは思うが金を返すまでは逆らうとマズイのでボビーはボビーで隠れて物に当たり散らしてストレスを発散する日々だった。それもしばしば物を壊してまた叱責を受けるという悪循環だったりもするのだが。

そうやってボビーは働いている内にそもそもが町長はあの商人とグルだったんじゃないかと思う様になっていた。あの商人はボビーの金をかっぱらい、町長はボビーを使い倒す。どちらも大きな儲けだ。損をしているのはボビー1人。勘ぐれば勘ぐる程に町長と商人は繋がっていると思えてきた時に証拠が手に入った。

町長に言われて苦手な書類整理をして過去の取引記録をまとめていた時にあの商人と町長の取引記録を見つけたのだ。つまり、以前から町長とあの商人は知り合いだったという事だ。この名前、間違うはずもない。2週間は『あいつめ、どうしてやろう』と事ある毎に名前を思い浮かべたのだから間違いない。やはりそうだ、町長とあいつはグルだったんだとボビーは決めつけ、着々と計画を練った。


町長がいつもの様に取引を決め、荷物が大量に運び込まれてくる。町長は木箱の1つを開けて中身を見て物に間違いがないかを確認した後、ボビーにこう言った。


「儂は商人と話すから後の検品と搬入は頼んだぞ。」


「はい。」


そう言って町長は応接間に商人と丁稚を連れて入って行った。残されたボビーと商人の下男はニヤリと笑い肩を組んで話し出す。


「いやあ、ボビー。お前のお蔭でたんまり稼げたぜ。」


「良いってことよ。で、ちゃんと俺の取り分あるんだろうな?」


「勿論だって。お前の取り分差っ引いてもこっちは充分儲けはある。」


「そりゃ助かる。これでこの生活ともおさらばだ。手切れ金としちゃ充分だ。」


「とりあえず、ばれちゃいけねぇから運んじまおうぜ。倉庫ん中ならすぐにはバレない。」


「おし、そうしよう。まだ終わっちゃいないからな。」


そう言ってボビーと下男は中身も確かめずに木箱を倉庫に雑に放り込み始める。どうせ粗末に扱っても中身もそれ相応の粗悪品だ、とばかり扱いは雑だった。そうして全て運び終えると下男は荷馬車を裏口に玄関に回し商人を待ち、ボビーは作業の完了報告をする為に応接間に向かった。


「町長。荷物運び終えました。」


「おう。ご苦労。じゃあこれが代金です。」


そう言って町長は商人に代金を手渡すと商人がこう言う。


「では私共はこれで。良い商売でした。」


「何、こちらこそ。少し負けて貰って助かりました。」


「いやいや、誰に売ろうかと考えていた所に丁度良い縁だと思いましたので。」


「そうですか。またご贔屓に。」


「ええ、そうさせて貰います。次の機会があれば。」


「ボビー。玄関までお送りしなさい。」


「はい。」


商人と町長は話し終え、ボビーは玄関まで送る事になった。

ボビーが先導して扉を開けて商人を外へ送り出す。屋敷の門まで来てボビーは商人にこう話す。


「じゃあ、俺の取り分をくれ。」


「分かってる分かってる。そう急くな。ほらよ、色を付けといた。お前も早くずらかれよ。」


「言われなくても分かってるよ。それに町長が|認めた[・・・]んだからよ。最後まで確認しなかった町長が悪い。」


「ハハ。怖い世の中だ。」


「お前が言うなって。じゃあな、もうお互い会わない方が良さそうだ。」


「違いない。」


そう言って商人は金の入った袋をボビーに手渡して去った。ボビーは応接間に戻るとまだ町長はそこに居て考え事をしているようだったので用件を切り出した。


「町長。実は相談が。」


「ん?なんだ?言って見ろ?」


「以前借りた金を返す目途が出来ました。これで間違いないですか?」


「お?結構散財してると思ったがため込んでたか。感心感心。ふむ。確かに。次はもう騙されるんじゃないぞ。」


「騙された方が悪い。」


「ん?あの時儂はそう言ったな。覚えてたか。良い心がけだ。それを忘れるなよ。」


「ええ、分かってます。町長も気を付けて。」


「ハハ!お前の様な小僧に言われるとな!分かってるよ。それでどうだ?このままここで働かないか?丁度儂も年でな、体力が落ちてきてるんだよ。お前の様な男手があれば助かる。」


「いえ、もう決めてるんで。お世話になりました。」


「なんだ。すぐ出ていくのか。その様子じゃもう荷支度も済んでそうだな。残念だが仕方ない。元気でな。」


「はい。町長もお元気で。」


ボビーは話し終えると一礼してそそくさと手荷物を持って出て行った。町長が事の顛末に気づくのはしばらく後だった。




「というような事は起きるのじゃろうか?」


「なるほど。同じ言葉でも使われ方でニュアンスが変わるという事と、使う側の考え方が違うという話ですね。」


「概ねそう。」


「私達は性質と形質から成り、形だけを見て快感原則を満たす行動をして生死のサイクルを繰り返してきました。それでは生存出来る可能性に限界を感じ、やがて知性を得て概念を定義し行動だけではなく形ある行動に意味を持たせ行為を行なう様になりました。しかし多種多様な概念つまりは知識を扱うにあたり、私達の身体は1つの頭、2つの腕、2つの足、10本の手指、10本の足指、大体外見的にはこの様な特徴で成り立っています。この体を使って社会の高度化に合わせて増える概念と行為の違いを表す必要があり、その為、手順や手続きと呼ばれる概念を定義hして、時間軸上に行動をつなげる事で、一意の行為を識別出来る様にして違いを表す方法を選択しました。その方法がなければ行為の違いを表す事が出来ず、私達は単純な行動に近い行為しか行う事が出来ず、また、行動そのものの違いの差が少なければ錯覚を生み出し、性悪説を基準に考えれば、その僅かな差しか作れない状況を悪用して、悪事が成されるでしょう。

例えば物の交渉をするとして、右の手の平を上げて相手に見せ、小指を立てていたら交渉で、小指を曲げていたら贈与だとします。ある人物が交渉しようと右手を上げて話し掛けたとして、それを見た相手はどう思うでしょうか。私達は快感原則に従って行動し、自身の快楽を優先する様に行動します。それがいままで積み重ねてきた生存の可能性と結果に繋がるからです。ではこの時、交渉をしようと話し掛けた人物の手が曖昧に見える状態でわずかに指が曲がっていた場合、どちらだと思うのがより快楽を得られるのかを考えれば自明になります。この様に僅かな差しか作れないのであれば錯覚も起き、また、あえて錯覚して思い込もうとし、争いの原因になります。そのため、ルールセットを作り違いが分かる様にして多少大仰でも分かりやすい手順が組まれます。そして私達の身体が行う事の出来る動作という制限がある為に、関係の遠い分野は除外して関係の近い分野で錯覚が起きない様にルールセットが組まれます。

関係の遠い分野、例えば育児と工業の分野となればあまり関係性がないと言えるでしょう。この様な分野であれば同じ場所でそれぞれが行なわれる事がまずない為に似たような動作に違う概念を付随させて意味を持たせてもそれを錯覚する者はいないでしょう。もし私達がもっと個人毎に明確な差が分かる行動を取る事が出来ればそういった方法も必要なく、全ての概念に一意に形に見える行動を関連づける事が出来るでしょう。しかしその様な状況は社会が高度になって概念や知識の数が増えれば増える程に不可能になり、また、コストの面で実現不可能になります。その方法が成立したわかりやすい状況はかつてのけものの時でした。牙で噛めば攻撃している事にもなり、しかし同時に甘噛みして相手の注意を惹いて甘えるという動作も体感出来るのでまだ違いの分かりやすいものになります。爪で相手をひっかくのも攻撃している事が明確に分かり、木で爪を研ぐのもそのままの意味になり、明確な違いを識別できます。しかし、それではけもののままであり、私達は生存の可能性を高める事が出来ず、知性を高めて概念を定義し行動の違いを表す事で生存の可能性を向上させました。その時から私達は体感出来ない行為を識別する必要性が生じ、同時に錯覚しやすい可能性も生じました。

概念を定義し行為を行う事で、私達は直接的な行動に一致する行為以外の行為を行う事が出来るようになりました。爪で木をひっかき研ぐだけでなく、縄張りを示すマーキングとしても使う様になりました。それはかつて意図せずに行動範囲を示して自然と縄張りを示していたのかも知れませんが、自身の敵の爪跡がある場所には近づかない行動をした者が生き残り、その行動が習性となりやがて性質となるまでに蓄積される結果、爪痕を残す事で縄張りを示す様になります。こうして行動と直接結びつく行為を行わない様になります。同じ様に小便を行いマーキングをする場合もあります。自身の匂いを残す事でこの先に自身が居ると示す事で相手を追い払う方法になり、これも単に小便をするという行動に直接的な結びついた行為とは別の行為になります。こうして、同じ動作であるにもかかわらず、違う行為が付随されますが、この場合はその行われる場所で違いを分かりやすく示す事が出来ます。

この様に行為はその行われる場所と時間で限定して違いを出す事が多く、それは私達の身体で示す事の出来る明確な差の数が少ない為に生じます。また、目に見えない行為を形として表す事の難しさが錯覚を助長します。

『愛している』と言ってもそれが何か形で示す必要があり、誰かにとっては単なる言葉だけの行為であり、誰かにとっては身体を動かしての行動を伴う行為になります。定義自体は出来るのですが、定義単体では意味がなく、全体の中で変わりない位置を示す必要があり、それが出来ない為に悪用され、錯覚を用いられ、『愛』というものの定義は常に変動してしまう状況になります。しかし同時に大まかには『愛』というものの定義は存在し、私達はその大まかな概念から外れたものを『愛』とは呼ばず、意図的に悪用した者を異質なものとして扱います。しかしその定義の曖昧さにより明確に違いが分かる場合を除き、明らかな態度で排除するような事はしません。

これは『食べる』という行為に比べると形として分かりにくい為に起きる状況と言えます。『食べる』という行為はそれ以外に同じ行動を取る行為が少なく違いを用意に判別出来る事が要因になりますし、私達の基本的な行動の一つであり数多く繰り返す行為の為にその認識能力も高い事も要因です。『食べる』という行為を間違うものは少なく、それは生活の中で何度も繰り返して間違いを修正出来る環境がある為に可能な事です。

しかし、『愛している』はどうでしょう。そもそもが『愛』とは何かという定義が必要です。冷静に『愛』とは何かを判断出来るならそれは『愛』ではないと言う者もいるでしょうが、それは『恋』であって『愛』ではありません。『恋』とは欲求から生じる感情であり、『愛』とは『してあげたい』気持ちから生じるものです。故に『愛』とは惜しみなく与えるものだと言われます。一緒にいたい、一緒に過ごしたい、一緒に遊びたい、というものから一緒に居て貰いたい、一緒に過ごして貰いたい、一緒に遊んでもらいたい、という様に相手の事を考える様になったものが『恋』から『愛』への変化と言えます。厳密に言葉にすれば、一緒に居たいと思える様にしてあげたい、一緒に過ごしたいと思える様にしてあげたい、一緒に遊びたいと思えるようにしてあげたい、という事です。一緒に居たいなどの自身の願望のみでは強制になる可能性があり、そこから相手が自身と同じ気持ちになれる様に行動を変化させるのが『愛』と言えます。相手が自身と同じ様な『恋』をしている時はお互いの行動がお互いの欲求に合っているので問題ないですが、欲求と感情に差が出来始めると途端に不和の原因が生まれます。お互いがお互いに相手の事を考えていないからです。その様な状況から相手の事を考えて相手の感情や状況を受け入れる行為が『愛』と言えます。

こうして『愛』を定義してもまだ変動は置きます。現実の環境により個々人に与えられる環境が違うからです。貧民もいれば金持ちもいるでしょう。金持ちであれば障害になる事が少ないので『愛』というものの定義も簡単でしょう。発生しない障害は条件として考えなくて良いからです。しかし貧民になればどうでしょう。生活状況が影響するでしょうし、その将来や周囲のしがらみも影響するでしょう。また、卑しいとされる職業に就いているならそれも考慮されるでしょう。こうしてその環境によっては『愛』の定義が変わり、大きな愛、小さな愛などと言われる様にもなります。

しかしそれでも『愛』の基本的な定義は変わりません。しかし相手の示す『愛』が自身の求める『愛』かどうかも分かりにくい事になります。こういった部分に形を表す為に作られた概念とは違う形に見えない概念の問題があります。

ここで例として挙げている『愛』とは何かについて考えた事もない者は、他者の行動する『愛』を見てそれが『愛』なのだと思い込みます。そうするとそこにも錯覚が生じ争いの原因になります。誰かが花束を渡して『愛している』と言ってその相手が受け入れた、から自身も同じ様に花束を渡せば無条件に受け入れて貰えるかと言えばそうではありません。誰かが成功させた既成事実をそのまま実行してもその根拠を満たしているかを保障しません。以前に団体競技の例で言った通りです。

相手が花束を贈ってもらいたい、何でも良いからプレゼントを貰いたいと思っているならその行動は『愛している』という行為を示す行動になるでしょう。しかし相手がそう思ってもいないのならその行動は『愛している』という行為になりません。自身のアプローチとしては『愛している』つもりでも相手の求める『愛』とは違う為に『愛』を受け入れては貰えません。受け入れてもらう為にはまず相手がそれを望む様に行動する必要があります。相手からは行動者の行為は行動を通してしか推測出来ません。

しかし私達は自身の欲求や自身に都合の良い結果を推測して行為をしているつもりで行動し、求めた結果が得られず不満を表し、その不満を相手にぶつけ争う場合があります。自身から見た世界の『愛』と相手から見た世界の『愛』が違うからです。


この様に知性を得て概念を定義した時から私達は目に見える行動から行為を推測する必要性が生じ、高度な社会程多種多様な概念が生じ、その中から正しい行為を判別する必要が生じます。新たな知識や技術が増えればそれまでの概念も変化する可能性があり、その度に調整しながら社会を維持していく事になり、調整した事による変化により錯覚が生じ争いを生み、また、変化の差を悪用され争いが生じます。

例えばある社会で『愛している』と言えば結婚の意思があり肉体的な関係を持つなら責任を取るという風習がある時にはそれが『愛』の条件ですがそれ以外の地域ではそうでなかったとすれば、それ以外の地域で生活していた者がそのある地域に訪れて女性に『愛している』と言った場合に問題が生じます。そして、この事実を用いて相手を錯覚させて利益を得ようとする者が現れます。


以前にも言いました様に、私達が環境を向上させていく過程で生じた体感は年数が経過するか世代をまたぐ事で忘れる事により薄れていきます。それを知性で考える事によって補完するのですが、考えない者はその補完が行われません。そして現状で必要とされる行動のみで生活出来る為にそれぞれの行為の根拠が薄れて少なくなっていきます。そうなると他者との概念定義の間に差が生じ、争いの元になります。

足りない根拠だからこそそこに利益を見出し行動するが他者から足りない根拠を理由とした更なる行動を求められ、行動すると利益が得られず損失が大きくなるために拒否して争いになる事は良く起きます。また、だからこそ相手を錯覚させて行動する様に仕向け、後になって相手が予想していなかった行動を突き付け、損失を与える事で利益を得る方法が悪用されます。また、曖昧なままの定義を悪用して相手が恐らくそうだろうと思っているが違う事実で相手を騙し、その後に相手が条件として含まれていたと思い込んでいた条件を別物として交渉する手法も用いられる様になります。


ではわたしたちが社会の中で社会を維持する為のルールの根拠を忘れるという事を山での生活で例えてみます。まず山の麓にいる時は生活するのに山の上程の苦労はないでしょう。食料を生産するに適した土地があり、川の水も手に入ります。生活するための環境が整っていると言えます。ではそこから徐々に山の上に住む場所を移していくとします。山の高さで社会の高度さを例えて見ます。

山を登っていくという事は山の高度が上がるにつれ酸素が薄くなり息苦しくなる状況だと言えます。社会が高度になっていくというのは役割分担が行われる様になるという事であり、それだけの人数が増えるという事です。高度になればなる程、管理されなければされない程、人数は増え、1人当たりの資源量は減り、社会の中で息苦しさを感じる様になります。住む場所も狭くなるでしょうし、豊富な資源があった時の様に不自由なく食べる事も出来ないでしょう。

山の高い所に移動すればする程ふもとの平地とは違って食料生産には適していない場所になるでしょうから食糧をふもとから取り寄せる必要が出てきます。これは丁度役割分担する事と同じになります。技術力が低く知識量の少ない社会では役割がより生活に密着し、食料生産や日用必需品の生産などにしか役割分担がされないでしょう。しかし人数が増えるにつれ生産の効率も上がり、労働力に余裕が出てくるとそれ以外の活動をする時間が出来ます。その中で特に秀でた者が社会のニーズに応える形で新たな役割を担う様になります。芸能もそうですが、裁判官や徴税官もそうですし、教師や兵士などもそうです。そして、村長や町長や領主や王もそうです。集団が大きくなるにつれ、グローバルメリットは得られますが、同時に普段から関係しない者同士で交渉を行うなど以前までとは人同士の付き合い方が変わる為に争いが起こります。争って集団を別にすればグローバルメリットは小さくなるが争いは望まない、という状況になると全体をまとめる存在が必要になりリーダーという役割が出来ます。リーダーは全体を調整して、社会が維持向上出来る様に方向性を示す事で争いの原因に対処し、方向性から外れる考えを排除もしくは更生させて社会の秩序を守ろうとします。集団になって助け合おうとしている状況では、盗みや暴力は集団を維持出来なくなる要因になりますのでこれらを罰し、社会に居させるなら更生させて対応します。

役割分担する事で作業効率化と資源効率化を行い、各人の能力の限界に合わせた形で役割における知識の特化を行う事で高度な社会を築く様になります。

では山の高い所に移動するのか、という理由が必要となり、その山に貴重な資源が埋まっているからで、それを得る事が出来ればよりよい生活が出来るから住む範囲を広げる事になります。私達はかつてけもの同然でした。けものであった時は雨風に避ける様にしのぎ、他のけものに怯え、餌がなければ飢え苦しむ状況になり、いつも快適な生活が出来る状況ではありませんでした。しかし知性を得て状況をより大きな視点で判断出来る様になると貯蓄して飢えるリスクを減らし、住む所を作り雨風をしのぎ、柵や家などで他のけものに襲われない様にする事が出来る様になりました。こうして社会を高度に発展させる事で以前より快適な暮らしを得る事が出来、それは社会の技術力が低い状態では出来ない事でした。社会を高度に発展させる事で快適な暮らしを得ようとし、実際に得られますが同時に高度な社会とはそれだけ役割分担が進み人数が増え、相対的に資源が減少し不快な状況も作り出します。

それでも求める目的がある為に私達は山の頂を、つまりは私達が社会を作る目的である平和と繁栄の実現を目指します。生死のリスクが常にあるのと資源の減少による行動制限のどちらが自身にとって利益になるのか、それは有ると無いの違いでもあります。死んでしまえば生きている状態で出来る行動は何一つできず、生きている状態だからこそ感じる快楽も得られません。生きている状態で多少の不都合を受け入れても同時に快楽を得られる状況も得られるかその可能性が残された状態にはなります。


しかし私達はまた間違います。相手がそうやって多少の不都合も受け入れる状況であるなら、自身に都合の良いルールを相手に押し付けながら『生きていくためには仕方のない事だ』、『皆ルールを守っている』などと言い、それが本当に必要な事だと錯覚させて受け入れさせようとします。社会の中で成長する私達は知性が未熟な状態である時があり、その状態では物事を正しく判断出来ません。それでも社会の中で生活する為にルールをあまり考えずに受け入れますが、それを悪用されます。知性が未成熟である状況は社会のルールがなぜ成立しているかを根本的な部分から導き出せない状況であり、その状況で社会のルールに従う事で死のリスクを回避出来るかを判断する事になり、ルールに従っていれば死のリスクを回避出来るという保証が既成事実として存在していますが、その信用を悪用して嘘を教え込みます。従わなければ死のリスクが存在する可能性がある不確かな状況になり、従えばとりあえずは死のリスクを回避できる安定した状況になるのでその根拠が分からずとも受け入れるのが一般的であり、そして社会のルールの根拠を知るためには高い知性が必要になり、その社会における出来事の大半を概念として知っている必要があります。知性が未成熟な頃である子供の時には判断が難しく、また大人になっても知性が基準に到達しないなら判断が難しいままです。

そしてだからこそ、知性の発達を阻害して未成熟なままの状態の他者を作り上げ、その差で優位に立って自身に都合の良い嘘を教え込もうとする者が現れます。そしてその人物は、自身はそういった妨害を受けずに居られる環境で成長し、自身は自身と同じ基準にまで能力を成長されると楽に相手に勝てる状況がなくなるので妨害する状況を作り出し、他者に対してはその人物が行う妨害がある環境で成長させる様に行動します。こうして、社会は一段劣化した状態になります。その人物は自身の考え方そのものが間違いである事に気づけるだけの知性がなく、またその人物にとっては自身が楽して欲望を満たせるなら何の問題もないと考えるだけの知性はありますがなぜ周囲が自身と同じ事をしないのかという根拠を考えるだけの知性はありません。


そういった要因も含めて私達は私達個々人から見た世界の中を生きる為に、自身の生活する環境とは異なる条件の環境についての知識を忘れていきます。

山の麓の者からすれば山の上の連中の食糧事情を握っているのは自分達だから優位に立てると思い込み、山の上の者は快適に暮らすための資源を握っているのは自分達だから優位に立てると思います。また、実際に山の麓の者が食料を規制して圧力をかければ山の上の者は川の水の流れを規制して圧力をかけるでしょう。全員の意識がルールを守る事に対して希薄にもなれば、山の麓の者は自分達を優先して質の良い食料を供給するでしょうし、山の上の者は利便性を重視して川の水が汚れても気にしない様になるでしょうし、山でしか採れない資源の良いものを自分達に優先するでしょう。全体効率を考えるなら非効率ですが、相手がルールを守るとは限らない為に自身から利己益を捨てる様な行動を取ってもし相手がルールを守らないなら相対的に損失を被り不利になるのでルールを守れない状況が日常になります。

そうして互いに不信感を抱き争う状況になったとして、ルールや他者を信用出来ず、ルールの根拠を知らない為にルールがなぜあるのかを理解できず、理解できない為に必要無いと判断すれば省き、自身の信じる考えで行動し、ルール違反をします。しかし個人の視点から見た世界では、より大きな社会を維持する為の概念を理解しているかどうかは分からず、グローバルメリットを得る為のルールなどは個人から見て大きな規模の集団を維持する目的がなければ必要のないものと判断出来ます。そして互いに相手の事を考えずにルール違反し、争いの原因を作り出します。


環境の違う者同士では基本的な行動を表す概念にも違いが生じ、例えば『水を汲む』という行為1つを考えても行う動作が変わります。川から『水を汲む』、井戸から『水を汲む』、ため池から『水を汲む』という様にそれぞれが違う動作を行いますが得られる結果が同じであり目的が同じであるから同じ言葉で表されます。しかし行動には違いがあり、ある環境から異なる環境に移動するとそういった概念定義の違いで錯覚が生じ争いになります。もしその2つの環境が元々1つの社会であるなら、相手側の環境も考慮した扱いがされるでしょうが、社会が劣化して自身の環境のみを考える状況になっていると相手側の状況を考慮せずに行動し、争いになります。

井戸から水を汲んだ事も無い者が井戸から水を汲むのが常識の地域に移動したとして、『水を汲んできてくれ』と言われて求められた行動が出来ない状況に対して『お前は水を汲む事も出来ないのか』と発言して不和の原因を作ったりするなどが起きます。


また、そうした場合とは逆に、違う環境から来た者の行為には現在の環境においてはルール違反とされる様なものを許容した行為が存在している時があり、それが不和の原因になる事があります。水が豊富な地域では水を垂れ流してもそれほど叱責を受けませんが、水が貴重な地域ではそのような使い方をすれば争いの原因になります。誰かに必要な分の水も消費する場合や水の対価が高価で不払いになるという場合もあるでしょう。その様な違いも含めて社会は争いのない様に組まれる必要がありますが、それを悪用する者は常にいます。

ルール違反をしても罰せられないならしても良いと考える者は常に居り、しかし生まれた環境の違いや個々人の性質によりその程度にも差が出来ます。ルール違反が横行して騙すのも日常的に行われる地域に住む住人からすれば、ルールが守られる前提で交渉したものもルールを守る必要もない為に良い取引に見え、そして明文化されてないなら履行する必要もなく、後になって争いになったとしても『それは常識ではないから履行しなくて良い』、つまりは『騙された方が悪い』という一言で済まそうとします。

それは環境の違いにより生じやすく、役割分担するという事は異なる環境に生きるという事であり、異なる環境間で交渉する場合は他の環境での考え方を知る必要が生じ、それを怠ると争いの原因にもなりますし、騙されやすくなり、場合によっては意図せずに相手を騙す結果になります。


先程『愛している』という概念の話でもしました様に、例え善良な者でもその地域では『愛している』という発言が『結婚を前提に付きあい肉体的な関係を持ったなら責任を取る』という意味を持たないとして、その意味を持つ地域に移住して『愛している』と発言したなら本人にその気がなくとも相手を錯覚させ結果的に騙す事になり争いの原因になるでしょう。発言者はそんな意味が含まれているとは思わずに発言しますが、相手はそういった意味がある前提で話を聞き、結果としてそのような意味があると考えて発言者に接します。すると発言者は自身が軽い気持ちだったとしても相手側が自身の基準からは考えられない程に自身に都合良く行動してくれたりして良い思いをしますが、後になり『愛している』とは言ったものの結婚する意志がないし責任を取るつもりもないという主張をする段階になればそこで問題を生じさせます。

また、その違いがある事を知り、前例として『愛している』と言っても最終的には相手に対して責任を取らずに済んだ結果があれば、それを悪用して『愛している』と言い相手を錯覚させて、『結婚を前提に付きあい肉体的な関係を持ったなら責任を取る』という意味がある前提で相手が行動する事で利益を得た後に、その意味がない主張を行い、利益だけを得て責任を取らない方法を実行する悪人が発生します。

また、そういった方法で悪用出来る事を知り、ある環境で嘘を教えこみ、違う環境に移住させた後にその環境で嘘が原因で失敗させ損失を出させてその損失分の利益を得る方法などが存在します。例えばある地域で騙したい人物に冠婚葬祭において、葬式は故人を偲ぶために立派な葬式をする必要がある、と教え、結婚式は一生に一度だから忘れられない程に派手にしなければならない、とさもそれが常識であるかの様に教えて育て、その人物が社会に出た後にその嘘に騙されて実行すれば、浪費する原因になり、また、嘘を教えた側がその浪費した分を利益として得る事が出来ます。そして浪費した差において不利になり、かつ利益を得た側は利益分有利になり、弱い立場に陥ったならそれを理由として譲歩される状況にもなるでしょう。

例えばこういった方法があります。子供の頃から浪費が通常の生活であるかの様に教えその環境で成長させた後、社会の中で働いた時にそのまま浪費させる事で周囲は多くの利益を得、そしてその人物が浪費の結果破滅しても、周囲は合法的に商行為をしただけであり、『自身は悪くない』と主張出来る状況を作り出す悪事が存在します。これらも既成事実の悪用です。

例えばこういった方法があります。ある物語で砂漠のオアシスを見つけた冒険者がオアシスに飛び込み水を全身で浴びてくつろぐというシーンが語られたとしてそれを信じて『しても良い』と思い、実際に砂漠に行き同じ行動をすると水が貴重な資源で共有財産だと思っている現地の者と大きな争いになるでしょう。


ここでの例は少し考えれば分かりそうな事でもあり、それを見た他者は『騙された方が悪い』と言うかも知れません。もし普通の環境で育っていればその程度の事は常識として理解出来、それが出来ていないのは本人の怠惰や考えの足りなさからくるものであり、罰を受けても妥当だと考えるかも知れません。しかし実際にそうでしょうか。異なる環境では当たり前の常識も常識として通用せず、その環境独自のやり方が良い場合も悪い場合も存在します。

知性を未成熟なままになる様に成長させ、間違いに気づけるだけの判断材料を与えない事で、間違っている事に気づかせない様にある人物を罠に嵌める為に組まれる環境があり、それを常習する集団がいるという事を、自身の成長した環境とは異なる環境には存在する可能性がある事を知っていれば簡単には先ほどの例を『騙された方が悪い』と片付ける事は出来なくなります。

しかし私達は自身から見た世界を生き、個人の居る環境にある情報しか普通に生活していれば知る事がありません。それ以外を知るには自身の住む環境がどうやって作られているのか、そしてそれはなぜそう作られているのかを知ろうとする知性が必要になり、その知性がなければ目の前で行われている状況についての客観的な情報は不足している可能性が生じます。

例えば、食事を使って加害する事も出来、軽い食中毒になる様に常に心がけ、軽い食中毒では悪心が発生しやすく、場合により投薬もされ、そして悪事を働きやすい状況を多く作り出し絶えず誘惑する事で悪事を働く様に仕向けながら育てる事も可能であり、そうやって成長させた者を外部の社会へと放り出し悪事をさせる方法が存在します。場合により、そうやって外部で金を稼がせて利益を得、その罪はその人物に押し付ける方法やその放り出した先の環境や集団を加害する目的も行われる事があります。しかし当人ではないので『自分達は悪くない』と主張出来る状況は容易く作られます。

『犯罪者とは社会が作る』ものである事は忘れてはいけません。役割不足により生活出来ない為に止む無く犯罪する者も居れば、こうして育てられる時点から捻じ曲げられる者も居ます。社会の不都合や他者の欲望を押し付けられる形で犯罪を犯す者は、その社会に属する不都合を受ける事のない者の悪意により犯罪を犯させられるとも言えるのです。しかし同時に常識的にその本人の性質が悪質だからこそ成される場合もありますがこの場合も社会が教育に失敗した事も要因の1つだと知る必要があります。この違いを認識出来なければ悪人はそこから利益を得続けるでしょう。」


エールトヘンは締めくくる。


「私達は集団に属する事で生存してきました。ですから大多数の側になった時にそれが『正しい』と錯覚してしまいやすくなっています。特に自身で能動的に行動せず誰かの指示に従って生きてきた者程、普段から他者と自身の行動を、良く分からないままに『周囲がしているから問題ないのだろう』という論理的に無根拠に行動している為に集団で行動出来罰せられない事は『しても良い』と錯覚しがちになります。普段からルールや自身の行動や周囲から得られる情報について考えない者は騙されて知らずと悪事を働く可能性があります。そうならない様に道を指し示し導くのが指導者の役割です。他者が指摘しないから間違っていないだろうからして良い、という様な考え方ではなく、自身の知性で行動の正当性を確かめ自身を制御する自制を身に付けさせる様に普段の生活から整える様に指導し、指導されなくとも自身で自制出来る様に生活を形作っていく様な性質に成る様に社会の在り方から作るのが貴族の役割です。忘れやすい私達が忘れない様に、忘れてもすぐに思い出せる様な社会を作るにはどうすれば良いかを考える為、さあ、今日も頑張りましょう。」


取引のトラブルで英さんと米さんで通貨の違いで大損した話があります。昔のイギリスではビリオンは10^12ですが米ドルは10^9でした。この差を勘違いした英さんの方が取引で大損したエピソードがあります。現在のbillionは10^9が通例の様です。どちらがただしかったかと言えば英さんの尺の取り方が正しかったと言えますが、デファクトスタンダードとして取引量の多い米さんの慣例を変えると混乱を起こすので英さんが変えたようです。

なぜ英さんの方が正しいかと言うと、millionは千の千倍で10^6だからです(といってもうぃきさんとかの説明をそのまま鵜呑みしただけですが。実際ミリだと言うなら千だと思いますけどね。後のonが増大辞とか言ってますがそれ自体は怪しいです。-onはギリシャ語に見られる様にそれ自体に増大という意味があるとは思えません)。だからそれが2つのbillionは10^6x10^6で10^12が計算上は合ってます。ですが、米さんは1の単位からのつながりを無視して使いやすい呼び名で実質millionとbillionにつながりのない使い方を選んだようです。millionの上だからbillionという安直な決め方の様で、millionの意味どこいったの?という感じです。英語圏の数字の区切りは3桁なのでmillionの上だから、millionを基準にして2つめだからbillion、3つめだからtrillionというような決め方のようです。それならもう慣習上のthousandを廃止してそこから決めなおした方が良かったんじゃないのと言えなくもないですが、ショートスケールと呼ばれる単位では、1の単位と名称の繋がりがなくなってしまって情報が欠損しているとも言えます。

いずれ、今の社会がなくなった時、未来の研究者がmillionの語源を知り、ではbillionは10^12だなと解釈する日が来るのでしょう。


-->しかし実際にそうでしょうか。異なる環境では当たり前の常識も常識として通用せず、その環境独自のやり方が良い場合も悪い場合も存在します。

<--聖書からの引用ですが、ベニヤミンという呼ばれる氏族がありまして、彼らの町に住む友人の所へ遊びに行った男性とその召使か奴隷か、確か奴隷になっていたと思いますが女性を連れており(実際にどうであったかは分かりません。妻だったのか愛人だったのかまたは別だったのかも遠い昔の話なのでわかりません)、その友人宅で一泊する事になるが、夜になると町の住人がその男性を襲いに集まります。男性は仕方なくその女性を生贄になるが男達に差し出し難を逃れ(本当に生贄にしたかは不明)、女性は暴行を受け死んでしまいます。この後の話が『サラ』の話につながるのですが、ここではこの部分が話につながります。気づかれなければ罰せられないから夜の内に人の目を逃れて、若しくは周囲には自分達しか居らず第三者が居ないから悪事を働こうとする例として聖書に書かれています。


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