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022 お嬢様、お茶会で学ぶ

説明回なので読みにくくてすいません。

なるべくはショート刑式で盛りこみたかったのですが細かい部分はやはり説明回が必要になってしまいました。


物を持ち上げたり人形を眺めたり母のお茶会を見たりエールトヘンをからかったり。

ローレンシアの一日は忙しかった。

いつの間にやらぬいぐるみ作りやダンスのレッスンも加えられ、本当に乳児の扱いか、とまで思えてくるものであった。

誰が念動力(サイコキネシス)で針を持ち上げ、糸を通し縫う訓練をするというのだろうか。

誰がこの歳でドレスだけでなく靴まで操りステップを習うというのだろうか。


そして教えるダリアもジーンも本当に容赦なく、ローレンシアが泣いても許してくれなかった。

そもそも乳児は泣くのが当り前だから2人ともそれに気づかず厳しい指導をしているつもりもなかったが。


ジーンはじっとローレンシアが針を扱う様子を眺め、縫う位置が違えばやり直しをさせられ、型紙の寸法を間違えれば作り直しをさせられるというハードモード。

ダリアもそれに触発されて、ステップを何度も練習させるという具合である。


「これも全てお嬢様の為です」


こう言われてしまえば断る事も出来ずに渋々と指導を受けるしかない、と覚悟を決めるローレンシア。

その瞳が涙で潤んでも、やはり乳児は泣くのが当然、と分かってもらえない。

その度にエールトヘンに愚痴ってもいるがうまくあしらわれる日々を今日も過ごすという結果、色々と上達した。

しかしその状況の異常さに疑問を抱く者はいない。

なぜならそのお嬢様自体が特別であったからその'類稀なる才能'の一言で片付けられたのである。


(なぜこんなことに・・・)


そのお嬢様はそんな事を考えてもいたが。


訓練に次ぐ訓練の日々を過ごした結果、良くも悪くもお嬢様の能力は向上していた。

極度の集中により針に糸を通せるだけの精度が、繰り返されるステップで持続力が向上していたのである。

繰り返される訓練で力も増しているのだが、誰もまだその事に気づいていない。

そう、その本人さえも。



そんな日々の中、エールトヘンやキャメロンとの会話がローレンシアの安らぎの一時であった。

エールトヘン達との会話は幽体離脱をしたローレンシアが混ざるという奇妙な状況になったが、これはローレンシアなりの気遣いだった。

キャメロンとは精神感応(テレパシー)が使えないからエールトヘンに伝えてもらっているが伝言ゲームのようで伝わりにくい。

それを補う為にどうにかジェスチャーで伝えようというローレンシア。

最初はキャメロンも戸惑ったのだが彼の職業柄?、すぐに慣れたようである。


そもそもキャメロンは聖騎士であり悪霊退治も引き受ける事があるので幽霊を見る事もたまにある。

もっとも、幽霊自体を驚く事はなかったがここまでフレンドリーに接せられるという事もない為に戸惑いはしたようである。

テーブルを一緒に囲み、エールトヘンが通訳して話している時に身振り手振りを加えてアフレコのようにしている器用さにはキャメロンも苦笑しか浮かばなかった。


色々とやらかしてはいるがそれでも乳児。部屋を出られないローレンシアの為にエールトヘンとキャメロンは色々な話をするようになった。

エールトヘンがこの世界の事を、キャメロンが国の事を教え、ローレンシアはこの世界がどういった世界なのかを知る事ができた。




そして今日も3人でのお茶会をするのだった。

見慣れたとはいえ、ローレンシアは改めて2人を見る。


まずエールトヘンのその姿。

アッシュブロンドの髪に灰色の瞳。切れ長の目にスラリとした鼻筋は中性的な雰囲気で、その落ち着き振りと優雅な身のこなしから'紳士'という感じが滲み出ている。

オールバックで裾は肩口まで伸ばしている、イケメンでなくば似合わないその髪型。

そしてこめかみの上あたりから半周するように花冠のような感じで髪を結っている。

イケメンのみに許された髪型だと言えよう。


そしてキャメロンはというと。

くせ毛で短い栗色に近いブロンドの髪と青い目が、スラッとした鼻筋が、『負けた』と思わせてくれる。

がっちりした肉体と精悍な顔立ちは「チクショーコイツモイケメンカ」と呪文を唱え、天に拳を振り上げたくなるとローレンシアは最初見た時に思ったほどだ。

悔しい事に魔力が足りないのか禁呪『リアジュウハゼロ』は発動しなかったのだが。

今は異種格闘技戦のようになってしまっている事がせめてもの救いだと言える。


しかし、ローレンシアはこうも思う。


類は友を呼ぶ


良い人というのは良い人を呼び寄せるフェロモンのようなものでも出しているのだろうかと考えてしまうローレンシア。

エールトヘンもそうだがキャメロンも『遊びは一日一時間』などと言い、結界を貼っても出歩く時間をくれるという気配りを見せるからだ。


そんな2人とのお茶会にローレンシアなりの気後れを感じる今日この頃。

見た目一般人な幽霊だから確かに周囲の注目を集めそうだが、この2人は注目の集め方が違い、『あれです!』と間違い探しをされている気分にもなる。

全身真っ白な時点ですぐに違いが分かるのだが。


しかしローレンシアにとってはこの2人には色々と教えてもらえる事で助かるのも事実。

何せ達成する目標が既にあるのだ。

準備は早いうちから始めるのが良いんじゃないかと思っているローレンシアにとっては非常にありがたい状況である。

そして得たローレンシアなりの考え。



どうやらこの世界は前世の世界の並行世界(パラレルワールド)のようなものらしい。

いわゆる'たらればルート'、'IF分岐'というものである。

あの時、あれが違っていたら、あれが成功していたら、あれが失敗したから、とかそういった類のもの。



ある国で。

JFKと呼ばれる人物が暗殺されなかったら。

リンカーンが髭を伸ばさなかったら。

北軍に外資が入らず、南軍が勝利していたら。

オーストリアでの暗殺が未遂に終わり、抗争が激化しなかったら。



ある人物について。

ユダヤ人科学者が情にほだされず原子力技術を漏らさなかったら。

ライト兄弟がもっと慎重に飛行技術を開発していたら。

あるインド人が'0'の概念を広めなかったら。



そういった違いがどこかであり、同じ道を辿らなかった世界。

ただ、そうなった結果には以前の世界にはなかったものが大きく影響しているとローレンシアは思った。

この世界には魔法が存在し、全てのものには魔力が含まれている。

それが大きな違いを生み出したんだと結論付けた。




この世界には魔法がある。

だから色々と違いはあるが分かった事が1つある。



現代チートなんてなかった。



つまり


「世界よ。これが千歯扱きだ(ドヤァ)」


というような事は出来ない事をローレンシアは知った。

エールトヘンに尋ねると『お嬢様は結構苦労されてきたのですね』と同情される結果となり慌てて否定し冷汗をかいた。

つまり、そういった物は既にある、と言う事が判明した。ええ、あるんですよー。自動脱穀機が。

魔力駆動でかつ、精霊魔法の使い手さんや妖精のお友達がいる人なんていれば


「ブラウニーさん。ちょっとやっててくれる?後でお菓子上げるわね」


なんて一言で済ませるそうです。


ただ、魔力持ち自体は珍しいそうで平民は大抵が魔力を持っていない。

だから科学も発達しているそうだ。

それはそうだろう。エルフとドワーフがいるし。


今はいるのかどうかも不明らしいけど、神と合わせて一つの官吏システムなんだとエールトヘンが言っていた。

神が官、エルフが吏。

光のエルフと呼ばれる一般的なエルフが知識を、|闇の〔スヴァルト〕エルフと呼ばれるドワーフが技術を教えてきたらしい。

でも今の世界は世界の頂点である創造神となぜか連絡が取れない。

ほんのわずかに特別な存在が極僅かな情報だけを交信しているがそれではまともに会話など出来ないから困っているのだそうだ。


それでも続けられるこの世界の営みは今となっては神が望んだ姿なのかどうかすら分からない、とも愚痴をこぼしていた。

だが場所によっては大禍なく過ごしているのが救いであり、その一つがこの王国という事になるそうだ。


大きな戦乱で一から国を作り直さなくて済むから技術の衰退もそれほど起こらず、また、エルフ達がサポートするから国が亡ぶような事もない。

そしてそれを支えるのが'王杯'と呼ばれる存在らしい。


王国を建国した英雄が授かった、世界から魔力を集める事が出来る王杯は、その莫大な魔力によって社会を安定させ、王杯から供給される魔力をより効率良く分散させるためにレプリカである貴族杯が作られ、それを授かる貴族達が国を治めている、という事で、その一人がどうやら父らしい。


それについては本当に良かったと思っている。

それがなければ現代チートなんてなかったからもう詰んでたかも知れない。

そう。こんな世界じゃロカの契約なんてこなせるとは思えなかった。


なぜって?

あれですよ?世界最先端技術でないと太刀打ち出来ないんですよ?

知識を集積し、エルフとドワーフがサポートする。

情報だって精霊さんがいれば具体的に分かり易いようで、例えば火力調整だって『もうちょっと空気ー』だとかコミュニケーションしてるそうだ。

専門家ならぬそれそのものからのアドバイスが得られれば結果も早く出る。


だから元の世界から見れば歪な、というより違った発展をしている。

技術分野でも魔力を持たない者もがんばってはいるようだけど、やはり魔力持ちの方が結果を出し易いようで色々と偏るらしい。

分析も精霊と話して情報を得る方法だとかが主流になって、時間もコストもかかる'魔法を使わない'方法というのが発達しにくいらしい。

ある技術が優れているから、それで補える技術が促進されない、っていう弊害はどこにでもあるという事だ。


でもそれでもかなり助かった。

清潔なんだ。

良く考えてみると、こっちに来てからあまり違和感がない。

ほら、下水道完備してない所に旅行に行くとどうなるか。

汲み取り式なアレが実装されていて定期的に運搬されるからやはり臭い。

さらにどこか未開の土地にいけばスコップ片手に草むらへゴーだ。

そんな状態でなくて本当に良かった。


とにかく杯の魔力が主要な街や村に供給されて主なインフラを稼働させているそうだ。

もちろん貯蓄式の魔石もあって保存もしているらしい。



そして、なんといっても|魔導騎士〔マギア〕だ。

杯の魔力を受けて駆動する巨人。

ドワーフが作った操縦席代わりの大きな結晶が魔力を受け各部に伝達して動く。

貴族用のマギアは専用の契約紋を持った者にしか使えず、専用機として活躍する。

貴族用のマギアは杯を持つ貴族が杯から契約紋を授かり、その紋をドワーフが結晶へと刻み込む事で杯と結晶を繋いで魔力供給をする回路が出来る。

契約紋を通じて常に外部からエネルギーを供給されるマギアはその継戦能力においても比較にならない戦力という事らしい。

ただ、杯に蓄えられた量を消費すると、杯に常時供給される魔力量で活動が制限されるらしい。

それでもさほど問題にならないそうで、また、伯爵級以上になるとほぼその問題もクリアされるとエールトヘンは言った。

単に魔力消費の大きい戦術級魔法が行使出来なくなるだけでマギア単体の戦力は男爵級でもない限りは衰えないようだ。


ただし、従機を作らない場合、とも言っていた。

一機だけでは領内の治安維持は難しいから、複数体作って家臣に使わせるそうだ。

それぞれに専用の副契約紋を用意して扱わせるようで、嫡男などにも与える貴族もいるらしい。

もちろん杯の魔力は配分されて供給されるから主機の限界も訪れ易くなる。

だから男爵級だと、主機の力を優先するか、従機を作って小回りが出来るようにするか、などの配慮がいるらしい。

男爵級だと従機を2体も作れば限界になり、それ以上は供給に支障が出る。

最も、魔力以外のコストが大きいから従機は大量には作られない。

数を増やして見栄えを良くする資金があるなら領地経営を優先らしく、必要最低限での運用になるのがセオリーとなっている。



それ以外はエールトヘンから世界についてとキャメロンからは王国と周辺国について聞いた。

王国から西にドワーフの国ガッファール、エルフの国セルマ、獣人国ゼクスヘリアがあるらしい。

どれも王国の同盟国で、というより王国が帝国に対する防衛線のようになっている。

その主要3国に侵攻するには王国を通過するか、イー・ストライ湖南部のベルチア、ガシュアを通過する以外にないらしく西にいけばいくほど安全になるそうだ。


東のズールドア帝国は大きな領土を持つが争いが絶えない。

外に侵攻する以外に内部でも頻繁に争い、後継ぎ争いや大商会の買収工作、地方の反乱など色々と繰り返す事で殺し合いの技術だけは進歩している、とエールトヘンは言った。


中でもその国の紋章に刻まれる13首のヒュドラを表わす存在が大きな特徴になるらしい。

ズールドア皇帝と龍煌12星の13人。

帝国の誇る強大な暴力。

この話を聞くといつもエールトヘンは嫌そうな顔をするがそれでも聞かないわけにもいかなかった。

龍煌12星は帝国内での大きな権力を与えられた特権的な存在で、抑え付けるには力だけになるらしく、彼等を抑え付ける事ができるのは皇帝のみらしい。

皇帝が持つ能力に12人は逆らう事が出来ない為に大人しくはしているが、それでもその振るまいは傍若無人になるそうだ。

エールトヘンも会った事があるようで、傲慢な態度を崩す事もない彼等とは気が合いそうにないらしい。


そんな12人は帝国内で傲慢に振るまい、反抗する者は力でねじ伏せ、皇帝に命令されてようやく大人しくなる、という事を繰り返すらしい。

常に12匹の蛇が内部を喰い荒らす、それがズールドア帝国という存在だ、と語ってくれた。




つまり、とローレンシアは考えた。

ここにローレンシアがいるのだから、恐らくはルーシィもこの王国にいるはずで、大きな問題なくロカから与えられた依頼はこなせるだろう、とようやく安堵できた。

だがあのロカである。そのわずかな不安をローレンシアは抱えていたのだがしかし、その悩みは長くは続かなかった。

ローレンシアに悩む時間を周囲がくれないのだ。


ダリアにダンスを、ジーンに裁縫を、エールトヘンが教育を行い、キャメロンが王国の情報を与えてくれる。

そしてローレンシア自身の能トレの時間が、いつしかルーシィについて考える事を忘れさせていった。

目が覚めれば、常に誰かが居るのだ。

否応なしに始まる教育。それはもう英才教育と呼べるものであった。


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