179 間劇--シンデレラと七人の魔女 第一部 毒リンゴに秘められた想い--
さくっと流しました。
あるところにシンデレラという名の少女が居ました。その少女は母が死んでから健気に父を支えていましたが、ある日父が再婚し、継母と義理の姉が出来ました。継母と姉は家に乗り込んできて父の贔屓を受けて好き勝手に暮らし始め、邪魔なシンデレラに辛く当たりました。シンデレラは貧しい食事と辛い家事を押し付けられながらも父の認めた事だから、新しい母の言う事だからと耐えながら過ごしていました。
そんなある日。この国の王子様が婚約者を決める為の舞踏会を開くと言い、王国中の淑女の中から選ぶと言いだしました。シンデレラも王子様と会って踊ってみたいと思って継母にお願いしてみましたが継母はそんなシンデレラに更に辛く当たりました。舞踏会の当日はいつもより多くの家事をシンデレラに押し付け、自分達は綺麗なドレスを新調して出かけていきました。シンデレラは今日一日では終わらないかも知れない家事をしながら継母の部屋にある鏡を見ながらこう呟きました。
「はぁ・・・。私も舞踏会行きたかったな。一目でいいから王子様を見たかった。」
するとです。
突然床が光り、そこからこげ茶色の貫頭衣に深緑のフードを被ったいかにも魔女といった姿の老婆が現れました。そしてこう言います。
「お前のその心意気が気に入った!ならば試してみるが良い!」
「セリフ!違うから!(わざとでしょう!ローラ!)」
「いやいやすまん。お嬢さん。普段のオヌシの健気な姿にほだされての。オヌシを応援させては貰えんか。王子様に会いたいのじゃろ?」
「ええ。会いたいわ。きっと素敵な方なんでしょうね。」
「ええ、ええ。そうですとも。王子様は素敵な方ですとも。あなたも頑張って王子様を射止めて継母や姉をギャフンと言わせてやりなさい。」
「そ、そこまでは無理なんじゃ・・・。」
「いえいえ、あなたは自分で思っているより美しいのです。それを私がプロデュースするのですから他の誰よりも王子様をゲットする可能性があるのよ。あいつらより。」
「え?」
「いえいえ、なんでもありませんよ?さぁ、では早速着替えましょう。ホーレ!」
そう言って魔女が持っていた杖を掲げるとシンデレラの周りに囲いが上がってきました。しばらくしてその囲いが降りるとそこには見事なプレートアーマーを着込んだシンデレラが立っていました。
「これ違う!やっぱりわざとでしょ!」
「いやいや、どうも歳を取ると間違いやすくてな。ホーレ!」
魔女がそう言うと囲いが上がってきて、また囲いが降りるとそこには綺麗なドレスに身を包んだシンデレラが立っていました。
「まぁ、綺麗なドレス!これを私に?」
「ええ、ええ。もう私には必要ないですから。」
「え?」
「いえいえ。年寄りの戯言ですじゃ。さぁ、馬車も用意しておりますじゃ。王子様をゲットしてくるのです。勇者よ。」
「勇者じゃなくシンデレラです!」
そうしてシンデレラは綺麗なドレスを着て舞踏会に参加しました。シンデレラのドレスは勿論、シンデレラの綺麗な容姿は他の女性達よりも目立っており、王子もすぐに目をつけました。
「綺麗なお嬢さん。どうか私と踊ってください。」
「私で良いんですか?」
「ええ。あなたでなければいけません。この場でもっとも輝く太陽から目を逸らしては、それは罪とも言えます。」
「まぁ。」
そう言ってシンデレラはダンスを申し込む王子様の手を取り、束の間の至福の時間を過ごします。2度、3度と踊った後にシンデレラはもうこれで充分満足したと思って再度ダンスを申し込む王子様に休憩を申し出て会場の端に移動します。
王子様がシンデレラの為にデザートを取りに行っているとそこに1人の給仕がやってきてこう言いました。
「お嬢様。お疲れでしょう。このデザートをどうぞ。」
そう言ってカットされたリンゴを勧めてきます。シンデレラは喉も乾いていた事もあってそのリンゴを食べて喉を潤しました。
するとどうでしょう。突然シンデレラが苦しみ出したのです。異変に騒めく周囲に王子様が気付き引き返してきてシンデレラを抱きかかえます。
「シンデレラ!どうしたんだ!シンデレラ!」
シンデレラはそれには答えません。まるで眠っているかのように目を閉じています。その姿を見た王子様はシンデレラが死んでしまったのではないかと思い呟きます。
「ああ、運命の出会いと思ったあなたが突然私の前から居なくなるなんて私には耐えられない!せめて別れの口付けだけはさせてくれ。」
そう言って王子様は涙を流し、そしてシンデレラにキスをしました。するとどうでしょう。シンデレラは目を覚ましたのです。
シンデレラが目を覚ましたので王子様がシンデレラに何があったのかと聞こうとすると、先ほどの給仕が叫びます。
「ええい、私を振った王子に嫌がらせしようとしたのに失敗するなんて。でも残念ね、王子。彼女は目覚めたけどまだ毒は残っているわ。解毒薬が欲しければ追ってくることね。」
その給仕はそう言いながら特殊メイクを剥がすとそこにはシンデレラに綺麗なドレスを送った老婆の顔がありました。
「あ、これも違うわ。」
と言ってさらに特殊メイクを剥がした老婆の下にはシンデレラが見た事ない若い女性の顔がありました。
王子様は給仕が老婆に、老婆が若い女性の顔になった事に驚きながらも逃げようとする女性を止めようと叫びます。
「待て!」
「待てと言われて待つものがいますか!」
そう言い捨てる魔女を追いかける王子様を阻む様に魔女の配下が立ちふさがります。そして無言ながらも大きく文字の書かれた紙を見せてきます。そこにはこう書かれていました。
キマリは通さない。
「誰だよ!それ!」
思わず王子様が言い返しましたがそれには何の反応も見せずに魔女の配下は紙を捨てて剣を抜き構えました。突然戦う事になった王子様でしたが、立ちふさがった魔女の配下を護衛の騎士と一緒に打ち破ります。
まだ間に合うかと思い王子様は魔女を追いかけようとしたとき、背後で叫び声がしました。
「きゃあ!」
見ると戦いに巻き込まれない様にシンデレラが距離を取り壁を背にしていたのですが、その壁から手が出てきてシンデレラを捕まえていたのです。王子様は急いでシンデレラの所に戻り壁から離して壁から出ている手を倒しましたが、どうやら魔女はもう近くに居ない様ですぐに追いかけるのは止めました。そんな王子様に抱き締められたシンデレラは王子様に尋ねます。
「王子様。私は一体どうなってしまうのでしょう?」
「心配は要らない。私が助けて見せる。さぁ、一緒に魔女を探しに行こう!。」
「わたしもですか?」
「勿論。すぐに解毒薬を飲めるようにシンデレラ、あなたも来るんだ。大丈夫。あなたは何も心配しなくて良い。私が守ってあげるから。」
そして王子様とシンデレラの旅は始まるのでした。
妥当にシンデレラの話を解釈するとこうなります。設定は小さな国。上と下の格差があまり大きくない国。
継母からいじめられるシンデレラ。周囲の人達はその噂をします。あの子は可哀想、でも健気にひたむきにがんばっている。そんな噂を聞いた王子は調査させます。そしてその性質が好ましいもので妃にするのに問題ないと判断してどうにか現状から救い出そうとして計画します。計画はどの様な女性でも参加できるという趣旨の舞踏会を主催する事で、シンデレラも参加する資格があるので問題ありません。そのままシンデレラが舞踏会に参加すれば良かったのですが継母たちはシンデレラを舞踏会に参加させません。ですからその対策として以前から用意していた方法を使い、シンデレラにドレスをプレゼントして城まで運ばせる部下を派遣してシンデレラを城まで運びます。シンデレラさえ来てしまえばあとはシンデレラを選ぶだけです。シンデレラが礼儀正しい人物であるという評価をつける為に、事前に「12時になると魔法が解けるからそれまでに帰る様に」と伝えているのでシンデレラはその言いつけに従って帰ります。後は王子が国中からシンデレラを見つければそれでハッピーエンドです。たまたまシンデレラが靴を落としていったのでそれを口実にシンデレラを見つけてハッピーエンド。靴を使って探すというのは成り行きの展開。
妥当に解釈するとこんな感じでしょう。