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S166 チーム一丸となって

今回の後半はグダってますw。前半もコメディではないので、筆者もションボリです。


ジョーゼフは『今が好機だ』と直感した。ジョーゼフのチーム、モスジャイアントは今、数々の強豪との勝負に勝ち抜いて決勝戦に挑んでいた。

ジョーゼフもそのチームのメンバーとしてこれまでやってきた。能力は高いと評価されてもここぞという時には失敗したりする、運のない奴。それがジョーゼフの評価だった。しかしジョーゼフが貢献した試合もあり、良くも悪くも癖のある選手だと思われていた。

そんなジョーゼフに今回も好機がやってきた。決勝の相手はハンナバルレイダーズ。周囲からはジョーゼフが得意とする相手だと思われていて、ここ最近の試合ではジョーゼフは勝ち越し点を決めたりと活躍していた。観客もジョーゼフに期待して観ている。


そして試合後半。オスカーからの絶好のパスがジョーゼフに渡り、ジョーゼフがマークされている相手を振り切ってゴールすれば逆転という状況でジョーゼフはあろうことか些細なミスから得点のチャンスを逃してしまった。本当に些細なミスだ。右に避けるか左に避けるかという場面で左を選んだら後続の相手チームの選手が得点圏ギリギリでジョーゼフに追いつきタックルを食らわせてジョーゼフを止めたのだ。あと少しでラインを越えて得点だという場面で、観客からは後ろから迫る選手が見えていただけに、なぜそこで左なんだと落胆の声が響き、やはりジョーゼフはここぞという場面で運がないと口々に言った。

その決定的な場面を逃したモスジャイアントはその後に調子を崩したのかふとした不意を突かれて追加点を決められてしまい逆転はならず、優勝を決める試合に負けてしまった。


試合後のインタビューでもあと少しだったのに惜しいと言われ、ファンも同じ様に口にしたが惜しかったのは事実で来年こそはという雰囲気で話に花を咲かせながらあまり負けムードにならずに飲み明かした。


そんなファンの知らないところである話し合いが行われた。優勝したハンナバルレイダーズが試合後のミーティングをしており、なぜかそこにジョーゼフが居た。


「皆、今日はご苦労だった。チーム一丸となって努力してくれたお陰でモスジャイアントに勝てた。来シーズンもこの調子で頼む。」


そう監督が切り出し、選手の皆も頷いているのだがジョーゼフも頷いている。そんなジョーゼフに監督が話しかける。


「ジョーゼフ。今日は良くやってくれた。普段からお前がレイダーズ相手に強いという印象操作が出来たお陰で無事お前がスタメンに選ばれて、ここぞという場面でそれが役に立ってくれた。あの時はヒヤッとしたぞ。もしお前じゃなかったら逆転ゴールされていた可能性が高かった。改めて礼を言う。よくやってくれた。」


その監督の言葉にジョーゼフはまんざらでもないという顔をしながら答える。


「でも監督のお陰ですよ。普段の内から多少の失点は覚悟して俺に得点を許してくれたから今日はうまくいったんですよ。でもあまり多用しないでくださいね。あんまりやるとバレちまう。ここぞという時だからこそ価値が出るんすよ。」


「ああ。そうだな。今回は本当に良い価値があった。ほら、今回の報酬だ。残りは振り込んでおく。」


「へへ。やっぱりチーム一丸になってやるのが一番だな!」


「そうだな。これからも頼む。」


「あ、そういや。あの話。数年後には移籍させてくれてしばらく使ってくれる話もよろしく。歳を取るとどんどん体力が落ちてそろそろ引退かなんて思っちまうんですよ。頼んますよ。現役が長ければ長いだけ稼げるんだから。それだけの活躍を俺はしてると思いますよ?」


「ああ。分かってる。次も頼む。」


そんな会話がハンニナバルレイダーズで行われている事をモスジャイアントは知らなかった。




「というような事は起きるのじゃろうか?」


「なるほど。普段は与えられた役割を悪事をせずにこなしているが、いざという時にその本性を表し、与えらえた役割を悪用して、本来は利益を生み出す役割を使い損失を与え、その損失を与えた結果から利己益を得るという事ですね。」


「概ねそう。」


「私達はかつて成功した誰かの行動を真似て、失敗しない様に成功する方法を学びます。その際に、成功した者がどの様な考えで行為し行動したかに関係なく行動という目に見える形を真似る事で行動による結果を得られます。形に見える部分だけを見て形に見える部分だけの結果を得ます。その際に行為を真似る事が出来ているか、トレース出来ているかは考慮されておらず、トレースされた行動が行われた環境とトレースした行動が行われた環境が違えば違う程に行為がトレースされたかは分からなくなります。魔導学においては形に見える部分を重視し、その再現性のある結果を証拠に論理を組み立てますが、同時に再現性があり誰からも疑いようもない結果のみを証拠として使用する為に、目に見えないものを取り扱う概念を再現出来ているかの保証は出来ません。ですから行動を真似ても重要な部分となる行為を真似ているかは保証されません。行動というのは行為を私達の体で表現したものです。人間という存在の体で行える様に概念を制限したものとも言え、その制限の為に同じ時点の行動で表せない為に時間上に手続きを組み、一意の行為として表現します。手続きとして組み合わせる個々の行動は、部品として他の行為における手続きにも使用され、それぞれの行動がそれを使用する行為を錯覚させる事になり、それを故意に悪用も出来ますし、過失として受け取られる事もあります。

例えば、頭を触ったりする行動をする事があります。その理由は色々とあるかも知れません。髪を整えたり掻いたり悩み事があって頭に手を当てるなど色々な行為が思いつきますが、これがもし相手と敵対している時や暴力で虐待された者の前であるなら、手を振り上げ殴り掛かる行動の一部として取られ、暴行しようとする行為と誤認される可能性があります。

場面毎に行為がどれだけ誤認されやすいかはどれだけ物理面での制限が多いかで変わります。もし私達の腕が4本あり、腕の使い方は同じでも上の2本を使えばAという行為で下の2本を使えばBという行為を表すとすれば、それだけ行為の区別は出来ます。しかし私達の腕は4本もないので2本で表現出来る範囲で行為を表現出来る様に組む必要があり、それだけ誤認されやすくなります。ここでは悪意を持って誤認させる可能性は考慮しません。腕が4本あって2本ずつで分けたとしてもその腕が同じ機能を有していたならどちらを使っても同じ行動が出来、相手を騙す事が出来ます。性善説で語るならそこに区別をつける様に出来ますが、性悪説で語ればそこに違いを出せるパターンというのは限定されます。例えば上の手で棒を握れば殴る前段階であり、下の手で棒を握れば作業をする前段階だとしても、悪用しようと思えば下の手で棒を握って殴る事も出来、性悪説で語られる存在はそれだけで行動に制限を掛ける必要が出てきます。そうすると効率は低下し、それだけ自由も失われ、自身の生活の利便性を低下させます。

例えば私達の生活では武器の携帯は認められていません。それは自衛の為に持ち歩いていると主張した所でその目的が実は誰かを加害する為であるかも知れず、その行為は行動から断定出来ないからです。しかしこれが制限を解除される一定の条件があれば武器は携帯出来ます。狩猟大会やクレー射撃や剣術大会などの武器を使用しなければ目的を達成出来ない場合に限り携帯が許可されます。しかしそれが濫用されたり悪用されない様にさらにいくつかの制限を加えてその行為を許可します。この時、武器の携帯は行為として正当性があるかどうかはその行動に依存していません。その環境を含めた状態に依存しています。これが魔導学が行為を再現出来ない理由です。

魔導学は私達が概念を取り扱う際に、対象とそれ以外に分けるのと同じ事をしますが、それをどの様に使うかの情報は持っていないのです。その情報は対象に含まれずそれ以外の部分に含まれ、行為の中でそれがどの様に使われているかはその状況により変わります。刃物を振り回していても、ある時には誰かを加害している場合や、自衛の為や、料理をしているのかも知れませんし、ただのパフォーマンスで使っているのかも知れません。薬品の科学的性質を再現したとしても、それが製品を作る為か誰かを毒殺しようとしているのかで行為は変わり、科学的性質を再現しても行為は一意に定まりません。それ単体の行為としては科学的性質を再現した、と表現できますが、その様な使われ方は日常において非常に稀であり、大抵はその有用性を利用して何かの行為を行うために行動の一部として組み込まれます。これは行為も同様で、小さな行為は大きな行為の部品となり組み込まれます。それはさながら体の様に、細胞の機能をいくつも組み合わせて体という一つの機能を形作っているのと同じです。単体の細胞の機能をそのまま大きくしたのが体ではないのが私達が科学的性質をそのまま使って行為をしているのではない例の一つになります。


そして私達は行為行動し、その結果をフィードバックして次に活かします。その際に失敗も成功も経験し、次の行為行動に影響を与えますが、その組み合わせに今までにない方法を思いつき、それが今までのルールを守りつつ、しかし今までとは違う行動を付加出来た場合に問題になります。行為とはそれを含んだ概念のセットの中にあって初めて正当性を得ます。そのセットの中に定義されている行為同士が一意に識別され誤認しないからこそその行為の正しさが認められるのです。これは料理をする為に包丁を振り回しているのであって、誰かを加害しているのではない、威嚇しているのではない、などの様にそれと分かる様に様式や手続きを決めて定義しているので、もしその定義から逸脱した行動を追加されるとそれまでの概念のセットでは対応出来ずに悪用出来る隙が出来る可能性が出てきます。未だ未分化な定義ではそれが顕著になり、より自由であればより悪用しやすくなります。例えば料理人であれば一定の範囲で刃物を持ち歩いても良いとされたなら、その範囲で料理の為に刃物を持ち歩く振りをして実際には襲い掛かる為に刃物を使用する事が出来ます。しかしそれを規制してしまうと利便性が損なわれ、そしてより厳しいルールを履行できる能力を持つ者がほとんど居ないのならそれも適用出来ず、その社会に属する者の能力次第でルールの厳しさは変わります。しかし属する人員に合わせてルールの基準を柔軟に変えたからといって、悪用されなくなるというわけではなく、瑕疵を使って悪事が出来る程度の精度しかルールが出せないのであれば常にそのリスクは生じ、それに対する対策とセットになります。

簡単に例えるなら、刃物を持ち歩いていいスペースがあったとして、それが料理などの社会活動の目的か加害が目的かのどちらかか分からない。ならそのどちらであっても良いような対策を講じる、という所までがセットになります。ブラックボックス法で分析してどちらの結果が出てくるか分からないならどちらの結果が出てきても対処出来る様に定義する、というのが私達の考え方になります。

しかし、その対策に瑕疵があると、悪用を止める事が出来ず、悪事を成した者程不正に利益を得やすくなり、社会はやがて崩壊します。そうしてもっと大きな包括的なセーフティーネットが求められます。

例えば、社会の中で富の偏在化が起きれば、それは社会の中で正しく経済が機能していない事の実証であるので、一定の期間で判断して一定の差が生まれていれば富の再分配を実行する、というのが元々の考えです。しかしそれをさもしなくて良い様に社会を捻じ曲げてしまうと、社会の中で悪事をして不正に利益を稼ぎつつもそれを回収されない状況を作り出す事が出来、虎視眈々とその機会を狙い、社会の目的を達成する為には行為せず、自身の利己益を得るために不正行為と事実の改ざんとルールの改ざんを行う悪人が現れます。


そしてルールの精度が向上しないと言う事は、それだけ高度な社会を構築出来ないという事になります。競争を続けていくと、より小さな差で競い合う事になり、その差を判別する為にも厳密なルールが必要になっていきます。しかし厳密なルールを履行できない者達で競争すればルールを緩和する為にそこに悪事を行う瑕疵が出来上がり、競争させても不正行為ばかりしようとします。厳しいルールを守れないからという理由で緩和すれば、緩和したルールを悪用して悪事を行うのです。そしてまたルールを厳しくすればそれに不満を表し、緩和してくれればルールを守ると言いながら、緩和した後にまた緩和したルールを悪用して不正行為を行うのが私達の歴史の繰り返しです。

それには期間が変わりますがその長短は性質の悪質さにより変わります。初めから騙す気で緩和を求める者達なら緩和してすぐにでも不正行為を行うでしょう。ルールを守る気があった者でも、時間が経過して忘れる事で、ルールを緩和してもらった事を忘れたり、厳しいルールが必要な根拠を忘れてその根拠部分が足りなくなる行為を行って気づかずに不正行為をする、という結果もまた私達の繰り返す歴史の一つです。

この忘れやすさを改善するには私達が遺伝子により情報を継承しているという事をまず認識させる必要があります。そのそれぞれがいまだブラックボックスの様に細部が分からないとしても、それまでの成功と失敗の経験から自身の間違いやすい事や忘れやすい事や不注意になる事などが自身の経験で得られます。それらを積み重ねさせ、自身がどういった時には間違えるのかという情報を積み重ねさせて、失敗をさせない様にする必要があります。そして忘れるという事実があるという事を前提に日々の習慣を作らせて、より社会の中で適合した社会活動が続けられる様にします。

しかし、性質が悪質である程に、それらを偽装し、また、快感原則を優先して忘れない為の習慣を身に付けずに、その場その場で自身に都合の良い主観の世界の考えを押し通そうとします。ですが、同時にそれらを偽装しつつルールの瑕疵をつくには、その方法を行う為だけに必要な知性を高めている者も現れ、社会活動に必要な知性を高めるのではなく、不正行為をする為の知性を高めている者達が世代継承しながら、悪事を行う経験を積み重ね、場合によっては血統と呼べるものまで高める者が現れます。

その2つの知性の違いはどういったものになるかですが、正しい知性を高めた者が社会の秩序を維持して向上させようとしてルールを決めたとします。その時その者は社会で争いがなくなる様にルールを決めたとして、それとは違う知性を高めた者はそのルールを見て、どの様に悪事が行えるかを考えるのです。どちらも知能としては高い知能を有しているかも知れませんが、社会にとって有益かどうかで違いがあります。そして正しい知性を高めた者とその者達が作ったルールを悪用して不正行為をする者との勝負では大抵は不正行為をする者が勝ちます。それは簡単な話で、効率が違うからです。世界を見て、細分化しながらルールを定めようとする者とその定めたルールを見れば良いだけの者では、扱う次元が違います。チャレンジアンドレスポンスの結果も含めて計算し推測しなければならない者とチャレンジアンドレスポンスに含まれる瑕疵を探せばよいだけの者ではその難易度が違うからです。ルールを定義するのがごく一部の少数で、そのルールで不正行為が出来るかどうかを調べるのが大多数だとすれば、初めからその処理能力に差が出ます。そしてその大多数の側の性質が悪ければ悪い程、悪用され不正利益は稼がれ社会は正常に機能しなくなりやすくなります。

この対策として、封建制では貴族の特権が行使され、富の没収や再分配で不正行為が顕著になった結果を是正します。不正利益により社会が混乱しそうになれば富の再分配がされるのであれば不正利益を得ても無駄だという結果につながり、抑止力の一つになり、不正利益を稼ぐのをある程度の範囲内に収めようとする者達が現れ、それ以上の不正行為を行おうとする者を排除するという状態を作り出します。それはベストでもなくベターでもないですが、ルールを悪用して不正利益を得ようとする者を生じさせない対策が出来なければ、抑止力として最低限のラインを決める方法にはなります。


そして正しい知性を高めた者と不正行為をする様に知性を高めた者で、不正行為をする様に知性を高めた者が有利なのは、ルールを定義する際に正しい知性を高めた者は、既知の範囲以外に未知の範囲も考慮しなければならず、不正行為をする様に知性を高めた者は既知の範囲、つまりは利己益が稼げる部分はないかだけを考慮すれば良いだけだからです。

これは王と宰相、大統領や首相と経済界の大物の関係とも言え、ただ既知の範囲で金銭や数字の扱いだけをしていれば良い者はそれを繰り返し、その能力を強化しますが、リーダーは常に未知の領域を考慮して考えるために同じ思考の繰り返しでは対応出来ないからです。同じ思考の繰り返しが情報強度を高め、遺伝子上にもその性質を強めたとして、リーダーが未知の領域に対して思考を繰り返す事は既知の範囲の思考の繰り返しにならず、既知の領域を繰り返して情報強度を強化するにも時間的余裕がなく、それだけを行う者との差が出来てしまい、不利になります。そうなると長い期間、その2つの関係を続けた場合、既知の枠組みにおいて有利な立場を作るのは後者、王と宰相では宰相、大統領と経済界の大物では経済界の大物になります。同じ出来事に対しての行動の仕方や結果から推測する利益など効率よく思考し、より正確に行動します。すると王と宰相で力関係が逆転し、乗っ取られるという事態に直面します。また、大統領や首相と経済界の大物では経済界の大物の意見の方が実際には影響力があるという事態に陥ります。しかし、そこには問題を解決する思考はないのです。今の状況が問題を含み、それにより悪影響が出ているのなら、それを効率よく繰り返せばより効率よく悪影響が出ます。欠陥のあるシステムを効率良く動かせばそれだけ効率良く損失も出るという事です。しかしその状況で合法だとされたルールに従っているのであれば、合法だと思い込んで行動出来、罪悪感もなく行動出来ます。

簡単な例として、改善策を考えながら通常の行動をしている者と通常の行動をしているだけの者では、通常の行動をしているだけの者がその習熟度は上になります。しかし通常の行動をしている者は改善策を考えていないので現在の方法を変える事も、その必要があるかどうも考えていません。しかし現在行っている行動だけを見ればその者の方が能力があるかの様に見えます。完成したシステムだという保証があればそれで良いのですが、そうでないなら一概にはそうは言えなくなります。


現在の行動はそれが正しいという保証は実際にはどこにもなく、現在の行動は過去の実績から見て"恐らくそうだろう"というものでしかありません。そこに付け込む隙があるのが悪事の行い方ですが、ここでは割愛します。つまりは現在の行動の結果を過去の実績と同じだと"みなして"報酬などの結果を得るのですが、実際にはその行動の結果を見てから報酬が支払われるのが本来の在り方になります。

そして現在の行動から得られる結果の推測は、その分析の精度が低ければ、つまりはいくつかの行為を判別出来ない精度であるなら、それらを誤認します。その結果として未来に確定するその行動の結果は、現在推測した行動の結果と一致せず、2つの一致しない結果を比べると得られる利益に差が生じ、期待した利益が得られず支払った報酬が間違っているという結果になります。そして誤認させれば自身のした本来の行動で得られる利益よりも多くの利益が得られると考えて行うのが不正行為です。


そして今回の様な話になります。ある選手がその所属するチームに貢献しているかの様に見せかけ、実際は相手チームが有利になる様に行動して、そこから報酬を得ています。その所属しているチームはその選手に契約した通りの活躍を期待していますが、実際にはその偽装により誤認して本来なら期待出来る利益を得られない状態になっています。この場合、所属チームの方でこういった物事に対する対策が行えないのであればリスクを抱えたままになります。

これに対する対策の一つが実力主義などになります。その過程による行動が正当に見えるものでも結果が付随していないのならばどこかに問題があった、とみなせるから結果だけを見て判断する、結果主義とも言えます。それは確かに一つの方法と言えるのですが、問題はこの話にある様に、不正行為をする見返りがあるなら抑止力にならないという事です。今回の話の様に不正行為をして受ける罰よりも大きな利益が約束されれば不正行為を抑止出来ません。


こうして施した対策も瑕疵を持つ事で不正行為をする者を止める事が出来ずに社会は混乱してやがて崩壊する事になります。これはその性質にまで問題が遡るとも言え、そもそも不正行為をしない性質に改善する事が最も確実な方法とも言えます。自由というものを扱うには実際には能力が必要だと言えます。性質を性善説で語られる様に改善出来ないとすれば、出来る事はそれが合法か非合法かというだけではなく本来の役割や概念に適合した行為をしているかを認識出来る様にする必要があるのですが、やはり性質が悪質であればたとえ適合していようといまいと欲望を優先するのでたとえ知能が高くとも悪事を止めません。


概念は対象と対象以外に分ける事から始まり、その精度次第でどれだけの違った状況においても成立するかが変わります。精度が低く未分化である程に条件が少なく、数多くの状況の中で成立してしまいます。ですからよりルールを細分化して対応するのですが、その環境が作り出せなければそれだけ悪用出来る瑕疵が増える事になります。その為に過度な競争を煽り、そして常に何かの変化を起こし続ける事で細分化して一定の基準を作らせない方法が行われる場合があります。例えば非常時にはより誤認しやすい行動が緊急避難などで認められる事がありますが、それと同様の事を日常で出来ればそれだけ悪事がしやすくなるのです。そして間違った知識の使い方を覚えた者は、そうなる様に社会を組み立てようとします。ある一つのものや制度が使われ続けると経験が積み重なり、して良い事と悪い事の判別が出来る様になってきます。ならば定期的に一部を変えた新しいものを導入し続ければ、経験の積み重ねにより観念が収束せずに、収束する前に取り替え続ける事で、いつまでも瑕疵を使って不正行為を行い続ける事が出来る、という方法が行われます。見た目が変わっても本質的な部分でほとんど変わらず、しかし新たに"何だか良くわからないもの"として再度行う事で何度でも同じ経過措置を繰り返す事が出来るのです。それはあるマトリクスを変換したのと同じで、本質は変わらずその見た目上の数値だけが変わっているなどと同じであり、その判別が出来ない者達を騙すのに良く使われる方法になります。」


エールトヘンは締めくくる。


「悪人は騙す為に形だけ変えて、全く新しいものだと主張して他者の権利を奪ったり、また、それが社会の中で洗練されて悪用される瑕疵がなくなるまでの期間に不正行為を行い悪事を行おうとします。制度名が変わっただけでほとんど内容が変わらないものや、過去に行われて一見有効そうに見えるが試した結果として不正行為を行う瑕疵があり廃止されたものなどを、頃合いを見計らってその他者を錯覚させる事が出来る部分を強調して受け入れさせ、そしてまた悪事を繰り返します。私達は歴史として記録を残し、そういった間違いを二度としない様に対処して生活を安定させていきます。それが出来なければ争いの原因を放置する事になり、社会はいずれ崩壊しますが、悪人は自身の利己益だけを見て行動しているので、その様な間違いを平然と実行するのです。管理する側というのは過去に起こった間違いを犯さず、その上で、現在の問題に対処していくために、未来の未知の領域を模索する存在です。それを既存のルールに従い、そして起こる問題に対して対策をするだけという受動的な行動しかしないのであれば結果的に何にも対処出来ません。不正行為は隠され、問題として発生しないのであれば対策する機会がなく、その不正行為自体を失くす方法は現在の方法では出来ておらず、常に一歩先を見て、過去に照らし合わせ、現在から続く選択が間違いのない様にしていく必要があります。それには既知の範囲の繰り返しだけでは不可能であり、より細分化した状況で対処出来るかなどを常にシミュレーションし続ける事になります。その際に過去や現在の状況をより正確に分析するには高い知性が必要になります。また、どの様な選択をしたとしても社会を安定させていくには未知の領域への模索が必要になる事を理解した配下が必要になり、その配下を得られないならば、もしその配下が既知の出来事のみで優劣が決まると考えているなら未知の領域の探索をしている間に効率差によって能力差が出来、配下の者が『自身の方が能力がある』と錯覚した時点で実権を奪おうとするので社会を維持出来なくなります。その対処に自身も既知の領域の範囲での効率を重視して現状のシステムの問題を解決しない様になるからです。より高度な社会では、そういった最低限の知識を持つ知性を持った配下が必要になり、それが民衆に求められ、いかに民衆の知性を高めて社会を安定させていくかが高度な社会を作るには必要になります。それが出来なければ現状の問題への対処だけでリソースを使い尽くすからです。お嬢様は貴族です。王に仕える宰相の様に、宰相が自身の分をわきまえるだけの知性を持っているなら王のしている事に気づけますが、それを失ったなら宰相は自身が国の実権を持っていると錯覚して乗っ取りを図るでしょう。それは企業において従業員に仕事を任せたらその仕事に対する能力が雇用者より高くなったら乗っ取って良いと錯覚しているのと変わりありません。初めから自身が使われているという自覚が足りないのです。もし雇用者に過失があるとすれば、それはその様な性質の者を選んだという部分です。それと同じ様に王にもその様な宰相を選んだのが原因だと言えるのですが、私達は世代継承していく中で忘れてしまい、度々この様な問題を発生させます。もしそれを正当化しようとしても、実際にはなぜ自身で起業しなかったのか、宰相ならなぜ自身で建国しなかったのか、という部分にその矛盾が存在しますが、利己益を求める様になればその様な不都合は見て見ぬ振りをしますので、そもそも話が通じません。ですので貴族というのは、その様な知性の低い者を配下に選ばず、選んだ後も度々認識を再確認させて知性を維持向上させる様に配下を教育し続ける必要があり、まずお嬢様自身がそれだけの知性と知能を持つ必要があり、その為にも、さぁ、頑張りましょう。」


よく錯覚するのですが、自身は役割を果たしているから、他の問題は他者がやるのが正しい、という言い訳が行われる事があります。大抵これは自身には出来ない事に対して言い訳しているだけで、自身はそれが出来ないけれど与えられた役割を果たしているからしなくても許されるのだと自己正当化している場合が多いです。ここでの問題は他者に問題を押し付けて逃避しているだけという部分です。もしそれが簡単な事で出来るものなら『何だそんな事も出来ないのか』と言ってするでしょうから。そもそも最初の言い訳部分は、同じ様なレベルの問題に対して、自身も役割をはたしてリソースを使いその問題にまでリソースを回せないから自身には手が出せない、という状況において使われる自己弁護を、自身が能力がなく出来ないにも関わらず、かつて同じ言葉を使って自己正当化出来た者の結果を真似ようとしているだけでしかありません。その問題がより深刻な問題なら、それを放置している今の自身の行動自体も間違っている可能性があるという認識がまず必要なのですが、大抵はそもそも生活の中で受動的に逃避しているだけの者にはその事実は不都合で、それが正しかろうが正しくなかろうが、同じ主張をする者だけで集団を作り互いに認め合うという結果になります。


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