150 お嬢様が言えばクロもシロになるかも知れない
コメディムズイ。
シェリーの一日は忙しい。実の所、良い所の貴族邸は超ホワイト企業だ。重労働はあまりない。ただ細かい。力仕事が無い代わりに細かい。力仕事がない代わりに精度が求められ、その精度が出せるから勤める事が許され、その精度を出せるのは長い年月掛けて習慣として繰り返した結果身に付いた技術を持つ者であり、その繰り返しの多い貴族の子女が勤める事になる、という結果論的な伝統がある。素人にいきなりやれと言っても出来ず、そして仕事は失敗されると影響が出る。教育に時間を掛ける事が出来る時は良いが、教育する側も自身の役割を持っており、専属の教師でもなければ日常で手間を煩わされると本来の役割が滞り、手間が掛かり対処する時間が増え、増えた結果として教育も滞り、教育が成されないから練度が上がらず、本来の役割に時間が掛かり、また教育が疎かになるという悪循環を繰り返す事になる。そうした中で平等だと言って誰でも雇うといつまで経っても悪循環から抜け出せず、雇われる側にもそれなりの心構えを持った者、かつある程度の才能を示す者が必要になる。一から百まで起こり得る状況全てに対しての対応方法など教える事など出来ず、雇われる者自身が対応出来る様に努力しなければいつまで経っても教えた手順通りにしか出来ない者にしかなれず、雇う側は安心して使う事が出来ない。だからと言って、誰もが最初は素人である。今は貴族の子女として側仕えをしている者も数代前にも遡ればその先祖は平民だったかも知れない。そこから徐々に教育を受けて世代を積み重ねて精度を上げてくるのである。平民から男爵家に仕え、経験を積んだ世代が子爵家に仕え、その過程で縁戚を持ち、貴族の血族として取り込まれ、取り込まれた者で貴族家の子女若しくは従者の血統に属する者が更に伯爵家や侯爵家、更に上位となる公爵家や王家へと仕える事になる。より大きな権力を持つ者にとっての些細な失敗はその配下に与える影響が大きく、排除するのが当然となり、貴族に仕える従者においても例外ではなく、従者の失敗や裏切りは貴族の行動に影響し、その失敗は配下へと影響する。だからこそ順序立てて一つずつ段階を踏んで篩にかけるのであり、その過程で、失敗しやすい者、誘惑に負けやすい者を選別して落とすのだ。だから成り上がりの様な夢を見る者も排除され、シンデレラストーリーなどは平民の見る夢物語になる。シンデレラにはシンデレラとして成り上がるバックボーンがあり、大抵は貴族のご落胤だとかが現実的な話だったりする。数代前に貴族の血が入りそれが色濃く出た、などの理由で召し抱えられるのだ。それでも大抵は男爵家から順当にまた上がっていくのだが。
しかし全てがそうではない。いまだ貴族に取り込まれた事もなく家から極稀に貴族家に仕えるだけの品行方正な性格を持つ者も現れるのだ。とはいっても、戦争の度に成り上がる者や没落する者が居て誰がいつどの様な立場であったかも分からない現状においては、貴族の血が入っているかどうかも分からないがどの家からも可能性があり、そして実際にそれだけの性質を発現させた者を召し抱えてまた貴族社会というシステムの中に血を取り込んで淘汰していく。
そんなシェリーの家も平民ではあるも郷士と呼ばれる地元の有力者の家であり、元々貴族家との付き合いが少しはあった。そんな家だから嘘か真か数代前は男爵家から降嫁してきた女性が居たとかいう話もありそこそこは元から可能性があったのだ。貴族の前に出た時の態度や話し方を日常の中で少しでも聞く機会があるというだけで混じり気もないと言っては何だが平民とは言えない立場だった。まるっきり夢を見てメイドとして働いているのではなく、大まかにはこんなものだろうと言うイメージを持って雇われたのだが。
なぜかシェリーは色モノ会議に出席していた。いや、出席者がガーゴイル、人体模型、甲冑、剥製の狼と言った色モノだから色モノ会議というわけでは決してなく、なぜかその色を決める会議だからだ。今日という日常も、かつてシェリーがご近所さんから聞いていた貴族邸でのアレコレとは違っていて困惑させられる。さすがに誰もこんな状況での適切な対応は教えてくれなかった。確かに"お嬢様のお人形遊びに付き合わされる時には機嫌を損ねない様に"とは教わった記憶があるがコレはない。色々な意味で。
当のお嬢様はいまだ乳母車に乗ったまま出席なのだ。部屋に置いてある茶を愉しむ為のテーブルがそのまま会議用として使われており、人体模型やガーゴイルがテーブルを囲んでいる所にシェリーが加わっている。これだとわたしも色モノ扱いかとシェリーは疑ってしまう。しかし困った事に相手はお嬢様。確かに"お嬢様のお人形遊びに付き合わされる時には機嫌を損ねない様に"とは教わった記憶があるがやはりコレはない。
どうにか良い所が無いかとあえて探してみると、さすがに甲冑そのものは騎士様が兜も取らずに参加しているだけと取れなくもなく、剥製のウルフは現在後ろ足で立ちながら前足をテーブルに乗せているので可愛らしくも見えなくもない。尤も、甲冑の中身は骨格標本だしウルフは大型犬並みに大きい上に迫力があって可愛気の欠片もないが。要はイメージだ。イメージこそが重要なのだ、やってやれない事はない、と覚悟を決める。あれだ、自分に話しかけてきた男の残念さから目を逸らして良い所だけを見てやる要領だ。高望みはいけない。そう、心は広く寛容に。今こそ母の教えを実践する時なのだと心に固く誓い、『この会議が終わったら必ず会いに行くから、ダン、待っていて!』とストレスの発散先の確保も充分だ。
「それでお嬢様・・・」
「『ン?なんじゃ?』とお嬢様は仰られています。」
「なぜ私が色を決める会議に参加しているのでしょうか?てっきりその話が終わってから呼ばれると思っていたのですが。」
「『それは決まっておる。シェリーには2役3役やってもらうからの。』だそうです。」
「まだ役が余ってるんですか・・・」
「『いや、あえてシェリーの為に用意してみた。非常勤のメンバーじゃ。』と言っておられます。」
「お心遣い頂きありがとうございますと言いたいところですが出来ればこれ以上増やして欲しくありませんでした。」
「『何、ほんの少しの追加じゃ。ふと思いついた時にしか出番はない。』だそうです。」
「つまり、お嬢様の気が向けば出番があると・・・。」
「さすがシェリーさん。良く分かっていらっしゃる。」
「そもそも非常勤メンバーって何ですか。ヒーローそんなに他の用事優先で休暇取るんですか・・・」
「『ヒーローだって育児休暇とか嫁のご機嫌取りにデートするかも知れないじゃろ』だそうです。」
「街のピンチより嫁の方が重要な設定なんですね・・・」
などと良くわからないお嬢様設定を聞きながら、とりあえず会議を終わらそうとシェリーは会議が進むのを待つ事にするとローレンシアが話し出す。
「『では早速、会議を始める。皆の意見を調整して役割を決める。良いの?』、あ、しばらく私はお嬢様の言葉だけを述べますので。」
しれっとローラが我関せずを決めたのでシェリーは内心『ズルイ!』と思いつつもローラが話しているのかお嬢様が話しているのか話がややこしくなるからそれはそれで良いかと思い直す。ローラになら色々言えてもお嬢様には言えないのだ。お嬢様の発言をローラの発言だとウッカリ間違えて暴言を吐いたらとんでもない目に会いそうだ。いや、待て、間違えたと言ってしまえばそれもありか?とシェリーは若干思いもするが後が怖いのでやめておく事にした。
「では皆の担当色を決めますが希望する色はありますか?」
するとシェリーを除く皆が一斉に用意された紙に書き始めて見せたのだが。
「なるほど。皆ブラックが良いと。」
シェリーにとってはどんな色でも面倒事には変わりないがどうやら色モノ連中はブラックがいいらしい。しかしそんな願いをローレンシアはすげなく却下する。
「却下じゃ。大体グレイ被りの次はブラックじゃと。もっと華々しい色合いを出さんか。そもそも良く考えてみるが良い。」
そう言いながら目線を皆に向けるローレンシアだが、なぜ私まで見るとシェリーは困惑気味だ。
「大体じゃな?ブラックにしてみろ。夜怖いじゃろ?居るのかどうか分かりにくい事この上無いのに突然動き出されたらビクッとするわ。コスチューム?良く考えてみぃ。鎧の上にコスチュームとか違和感過ぎるじゃろ。そもそもウルフ、オヌシそのふさふさの毛の上から着るのか?どんなコスチューム?そんなの全身タイツに決まっとる。え?決まってない?異論は認めん。だからじゃな?鎧の上から全身タイツとかありえんじゃろ?毛の上からもじゃな。だから染めるじゃろ?そうなると夜に見ると怖すぎるんじゃ。色を落とせばよい?何日ロケがあると思ってるんじゃ。細部まで細かく染めるのに毎回毎回やってられん。」
片や筆談片や通訳という本当にコミュニケーションが取れているのかと心配になる話し合いを沈黙に笑顔を込めて眺めるシェリーは、この流れでは私も全身タイツかそれは御免被りたいと思いつつも、ここで口を出すとシェリーの衣装の話に飛び火するのでじっとタイミングを待っている。幸いにもローレンシア達は会話に夢中でシェリーを放置してくれており会話が続けられる。
「そもそもビルダー氏とヤマダはまだ全身タイツでも良いがの。なんじゃビルダー氏?ん?外部装甲を外してマッスルピンク?むしろレッドじゃろ。却下じゃ。リアルに躍動感溢れ過ぎて怖いわ。じゃあそのまま?マッスルベージュとかただの通行人じゃろそれ。しかもブーメランパンツ。ただの不審者じゃ。」
「ん?ウルフ?ならイエローで良い?と殊勝じゃな。それでライオンカットにしてくれ?強そうに見えるから?却下じゃ。ウルフ。忘れておるかもしれんがオヌシ剥製じゃぞ?一度刈ったら元に戻らん。いずれ損耗して無くなるのじゃ。毛が無い哀愁は後の為に取っておけ。じゃあイエロー止める?我儘じゃな。お嬢様に言われたくない?却下じゃ。」
側で話を聞くキャメロンはその様子を微笑ましく眺めていた。子供の頃の遊びはコミュニケーションの練習になり、自分以外の考え方を知り、だから自身と他者との境界を知る機会になる。他者を知り、付き合い方を知る事で集団内でどうやって行動していくかを学ぶのだ。キャメロンから見る限り、ローレンシアは相手の意見を聞こうとしている点で好ましく、幼い子供はまだ自制を知らずに終始我儘を言うものだ。どうにか自身の欲求を満たそうとし、しかしどうやるのが良いかを未だ知らないから出来る限りの方法を行う。大声を出す、怒る、泣く、暴れる、そういった諸々を試して他との付き合い方を覚えていくのだ。時として好ましくない方法で押し通せると錯覚して問題になるがそこを保護者が修正するのだが、この調子だとキャメロンもエールトヘンも余計な手出しをしないで済むなとキャメロンは考えてあえて口を出さずにいる。尤も、シェリーからしてみれば却下却下と言うローレンシアはこのまま成長すれば独裁者になるんじゃないかと心配になっているのだが。
そんな周囲の大人達の考えなど知らず話は続けられる。
「ん?アーマー、決まったか?ホワイト?確かに綺麗に見えるかも知れんが、汚れが目立つ。手入れする側の事も考えてくれ。ん?少しの間だから?いや、アーマーの場合は塗装かメッキじゃからな。そのままも良いんじゃないかと思っておる。白だと良く掃除せんとのう。どうじゃ、シェリー?」
突然、話を振られたシェリーはびっくりするも、掃除の手間など増やされたくないとばかり首をブンブン横に振った。
「というわけじゃ。アーマー。ワシも最初はプラチナにしようかと悩んだ。じゃがの。そこまで行くと汚れはおろか傷がつくもの躊躇うんじゃよ。傷や汚れも目立つからもっと環境に優しいのを頼む。え、じゃあお嬢様が決めてくれ?まぁ、そう言わずに楽しくやれる様に考えてみてくれ。労働環境は大事じゃぞ。」
「ヤマダ。決まったか?」
「やはりブラックでお願いします。」
唯一メンバーの中で話せるヤマダはそのアドバンテージを有効に利用して交渉し出した。筆談よりも伝わりやすく早い。
「オレ、前みたいに門番やるかも知れないじゃないですか?そういった時に黒だと汚れが目立ちにくいんですよ。」
「オヌシにずっと黒で居ろとは言っておらん。オヌシは全身塗るだけじゃろ。皮膚呼吸すらしていなさそうなんだからずっとでも構わんがそもそも塗るだけなら毎日でも構わんじゃろ?それかスキルか何かで色は変えられんのか?」
「いやそんな便利機能ないんですが・・・。そもそもガーゴイルって石像の振りですよ?他の色になるなんて普通ないですから。」
「バカモン!時代は常に変化しておるのじゃ。新たな可能性を模索せんでどうする?時代は個性が求められるのじゃ。他と同じでどうする。自分らしさを前面に押し出さんか!」
「いや、お嬢様。自分らしさが色を変えるだけというのはどうかと思うんですけど・・・。後無茶振りが酷すぎます。ガーゴイルにだって出来る事と出来ない事があるんですよ・・・」
「ならそれは良いとしてあれじゃ。他に希望する色はないのか?」
「ならブルーで。」
「ストライプドブルーとかでも良いんじゃぞ?」
「どうして変な意外性を足すんですか!縦でも横でも不気味じゃないですか!」
「縦だとスレンダーに見えて横だとグラマーに見えなくもないが?」
「オレ、プロボーション気にしてませんよ!とにかくオレはブルーで!誰もブルー希望しないですよね?」
「いや、ビルダー氏とヤマダはダメじゃ。どう見ても病人に見える。やはり寒冷色より温暖色じゃな。レッド、レッドはどうじゃ。」
「・・・。じゃあそれで。」
何やらローレンシアなりのポリシーというか譲れないラインがある様で、それを越えるのはかなり難しいのだけはシェリーにも伝わってきた。なら『初めからお嬢様が決めれば?』と思いながらもそこは口を出すべきではないとシェリーは見守る。ローレンシアだって全ての意見を却下しようとする分けではないのだ。交渉の末の妥当な案を調整する。それが重要なのだと言わんばかりだ。
ヤマダとローレンシアの会話が終わったのを見て、ビルダー氏がじゃあ次はオレとばかりにアピールする。
「ん?何々?スポッテッドブラックが良い?ストライプがありならスポッテッドもありじゃと?バカモン、ビルダー氏だと斑点が出る病気にしか見えんじゃろ。もっと自分の個性を活かすんじゃ。無理して奇抜な事をしても碌な事にならん。ん?でもマッスル成分は否定された?もっと別路線でどうにかならんのか。そう、自分の更なる可能性を追求するのじゃ。」
そんな無茶な、とシェリーは思ったが今まで更なる自分の可能性を実現してきたローレンシアだけにシェリーも強く否定する事も出来ない。それはキャメロンやエールトヘンも実感出来るのだが今ここでやれと言われると首を傾げてしまう。なにせビルダー氏は筋肉に特化した魔導人形だ。筋肉に関するものを取り上げて一体何が残るのか。上腕二頭筋に出来ない事を大腿筋にさせる事は出来てもいきなりロケットを作れと言われても困るのだ。どうしたものかと頭を抱えるビルダー氏に言い過ぎたかとローレンシアが言い直す。
「別段、ブラックも悪くないのじゃがの?ほれ、皆にダメと言った手前ビルダー氏だけブラックにするわけにはいかぬのじゃ。しかしどの色にしてもビルダー氏はまずいかも知れぬな。ブルーは病人に見えるしレッドはアルコールに弱い酔っ払いにも見えなくない。黄色やオレンジからブラックの間は黄疸に見えそうじゃし、大人しく全身タイツじゃな。うむ。じゃあ、皆、これでどうじゃ。ビルダー氏はイエロー、アーマーはブルー、ウルフはグリーン、ヤマダはレッドじゃ。」
そう言ってローレンシアは皆を見渡したが別段誰も異論を唱えそうにもないのでこれで良いかと思ったがそこに声を掛ける者が居た。
「あのぅ、じゃあ私は何色が良いのでしょうか?出来ればピンクなんですけど・・・」
シェリーが『タイミング逃した!』と心の中で思うほどタイミング良く話したのはオタネである。内気なオタネは今まで会話に入れずにようやく話しかけるタイミングを見つけて話しかけた。そんなオタネを見たローレンシアはオタネをジロジロ見た後にヤマダに振り返った。ヤマダは嫌な予感がすると身構えると、
「じゃあ、ヤマダはピンク。」
「なぜ!?」
思わずヤマダは言い返した。ピンクと言いだしたのはオタネである。ヤマダではない。それなのになぜガーゴイルであるヤマダがピンクに染められねばならぬのか。そんな見た目になる為に故郷を出てきたのではない、せめてレッドやブルーなら分かる。だがピンクはない。ヤマダが更に言い返そうとしたときにローレンシアが先に話す。
「ほれ、オタネを良く見てみい。あの赤い果実。あれをピンクに塗るじゃと?ありえんじゃろ。貴重な薬に意味なく色を塗るなど罰当たりじゃ。自重せぇ。」
なぜか言った覚えもないヤマダがお叱りを受ける始末。言いたい事は分かる。ヤマダがレッドにこだわればオタネがピンクになる。そうするとあの赤い果実をピンクに塗るしかない。いや、果たして本当にそうなのか?と言いたいがともかくあの赤い果実をピンクに塗るのは確かにないとヤマダですら思った。皆そこに異論はない様でその状況ではヤマダもさすがに反論出来なかったが、やはりさすがにピンクはない。
「あの、どうしてもピンクなんでしょうか・・・。ピンクならその・・・」
とチラッとヤマダはシェリーの方を見た。飛び火した!とシェリーは焦りを浮かべるがここが勝負所だと考え話し出す。
「あの!私はパープルが良いです!衣装も自分で用意しますから!ほら、ジーンと一緒に考えますから!ね!」
巻き込まれるのが避けられないなら積極的に関わって自分に都合の良い状況へと誘導する、それがシェリーの結論である。話に流されたらどうなるか分からないのだ。リスクマネージメントは大事である。シェリーの懸命な訴えにローレンシアはうーんと唸った後にこう言った。
「じゃがの。パープルは色染めが難しいぞ。枯草色なんてどうじゃ?」
「お嬢様の中での私のイメージってどうなってるんですか!」
「冗談じゃ。シェリー、ホワイトなんてどうじゃ?ほれ、丁度色が空いておる。」
シェリーはなるほどと思う。衣装作成もきっちり考えてるんだなとローレンシアを見直した。ある意味遊びに妥協を許さない精神に感嘆してしまう。わざわざ何回着るかも分からない衣装にコストを掛けるのは得策ではないとシェリーもそれで納得した。
「ええ。じゃあそれでお願いします。それで、今日はこれで終わりですか?」
「うむ。ご苦労じゃった。衣装が出来たら次の予定を伝える。」
「はい。分かりました。では私は別の仕事がありますので。」
そう言ってそそくさと立ち去るシェリーと同じ様に解散しようとする皆をヤマダが『チョット!?まだ終わってない!』と言うのを誰も聞くこともなく解散し、その後しばらくヤマダがローレンシアに付きまとう事態にエールトヘンが苦笑する事になった。