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S146 あいつらを裏切って味方になれ。そうすればお前を殺すのは最後にしてやる。

クライドは気づいた。ブライアンが不正しているのを。政府からの支援金を使って皆の生活を援助していたブライアンが、賄賂を貰った連中から優先していて、しかも支援金のピンハネを行っていたのだ。ブライアンの悪事に気づいたクライドが警戒して行動してしまった為に、クライドの不審な行動に気づいたブライアンはクライドが悪事に気づいたと思い、ブライアンの方からクライドに話をしてきた。


おまえも(・・・・)一緒に皆の支援をしようじゃないか。多少の便宜は図ろう。」


ブライアンが何を言いたいのか少し考えたクライドはブライアンにニヤケた笑顔を見せた。



パーシーはモニカに時間を作ってもらって交渉した。モニカの居るチームとパーシーのチームは競争していてパーシーは少しでも多くの情報を手に入れたかった。だから日頃から何かと行動が問題視されるモニカに話を持ち掛けたのだ。モニカは相手チームで問題視されてあまり良い扱いを受けていない。ならこちら側に付けばそんな扱いをされる様な事はなく、リセット出来る(・・・・・・・)。その見返りに、ちょっと相手チームの情報を流してくれれば良いのだ。勿論元のチームのままで良い。その場合は情報に対する対価を受け取れば良いだけだ。自分からは何の資産も持ち出さずに利益が得られる。出すのは単にチームの何気ない情報だ。モニカなら確実に食い付く。その確信があるからこそモニカを選び、そしてその予想は的中した。



ジャレドはステュアートに提案した。味方を裏切れと。裏切らない限りこのままステュアートは死ぬしかなく、裏切れば便宜を図ってやるからステュアートは良い生活が出来る様になる。やる事は単純だ。連中の味方の振りして過ごしながら少しずつ嘘を流したり印象操作したり、ここぞと言う時にジェレド達に都合の良い嘘を捏造して流すだけだ。自身の持ち出しは無しで、たったそれだけで良い生活が出来るのだ。死ぬか良い生活をするか。上手くいけばジャレド達が援助するのでステュアートが自身の居る集団で偉い立場になれるかも知れない。ステュアートの様な利己的な人物にこれを断るだけの理由がない。そもそも自分の現状の何が悪いかを考えずに言い訳ばかりしていたステュアートなら藁をも縋る気で頼ってくるだろう。こういった自分の何が悪いかを見ない者程楽に操れる。



ウォルトはノリにノッていた。相手を打ち負かし、口論では叩き伏せ、隙を見せれば奪い取り、だれもウォルトに逆らえず、ウォルトは自分程優秀な奴は居ないと思っていた。そんなウォルトの所にある日、見知らぬ人物が訪れた。ウォルトがこの失礼な奴は誰なんだと思っているとその人物はこう言った。


「あなたは選ばれた。」


どうやらウォルトの功績を知って会いに来たそうだ。ウォルトが好きに動ける様に支援してくれるそうだ。ウォルトの邪魔をする連中は彼らが協力して排除すると言っていた。協力なんてなくともうまくやれる気はするが、確かにウォルトの行動を邪魔する連中は良く出てきてその度に忌々しい気持ちになっていたが、今後はそんな煩わしい気持ちにされずに済むのだ。何も失わないのだから受け入れても問題ない。


そうしてウォルトは強力な支援者を手に入れ増々自由に行動するのだった。




「というような事は起きるのじゃろうか?」


「知性の低い者にメリットを提示して、そのメリットを受け入れる対価を要求するが、その要求に従う事はルールやモラルを違反する事になり、知性の低い者にはその事実に気づく事が出来ないか甘い考えでどうにかなると思う状況を利用すると言う事ですね?」


「概ねそう。」


「ルールやモラルを逸脱するのはかつて争いになった経験が薄れ、新たに体験して情報を強化出来ない為に、なぜそのルールがあったのかを忘れる事で生じます。元々ルールが存在するという事は、悪意に起因するものは例外として、争いになる要因がありその要因を排除して争いにならない様にする為に存在しています。しかしなぜそのルールになっているかを理解できない知性ではそのルールが存在する根拠が分からず、そのルールで作られた環境においてはそのルールそのものが機能した実感を得る事は少なく、機能してきたからこそ現状の習慣などが形作られ、形づくられた後には少し逸脱しても現状が急に変化する事もなく、しかし確実に蓄積しますが、知性が低く認識能力が低い者にはその事実が分からずに容易に逸脱する可能性が高くなります。そうすると、自身の短期間の利己益の為に環境を劣化させ、自身が受ける筈の長期の利益を、自身を含めた周囲を巻き込み失わせる行動をしてしまいます。この例えとして"環境や先人の遺したものを切り売りして捨て値で売りさばく"などと言われる事があります。自身の持ち分はそもそも少ないですが、その全部を売り払えるのであれば捨て値でも充分に利己益が稼げるという事です。明確な自身の財産としては存在していないものを明確に自身の財産に変換出来るというメリットがあります。後の事など気にしないなら自身から見た効率はとても良い事になります。自身の持ち出しはほぼゼロで、多くの利益が得られるのです。

今回の話にある様な不正行為に加担する事で利益を共有する選択をして不正行為を受容する選択をした場合、これは端的に表すなら『あいつらを裏切って味方になれ。そうすればお前を殺すのは最後にしてやる。』と言われているのと同義になります。

こういった"裏切り"などと言われる方法を行う者と言うのはその役割を与えられ、実際にはその成果を渡す集団の外部に位置付けられ、集団の維持には関係ないのが通常です。つまり、現状の役割を終えたら新たに与えられる役割がないと言えます。ですので同じ様にまた誰かを裏切る役割を与えられるのでなければ成果を渡していた集団からは用済みの存在になります。仮に集団内部に受け入れられても役割がなければ新たな収益を得られず、手持ちの資産を切り崩すだけになりやがて枯渇しどうにもならなくなります。この状況で生き残るには、その集団に新たな利益をもたらす何かを保有しているか、もしくは自身の求める役割をしている者を押しのけて代わりにその役割に就くかになります。

前者は難しく、その様な特別な何かを持っているのなら裏切るなどの方法で利益を得る必要がなくその現状に陥る事はまずありません。そして後者ですが、個人の能力で勝てる程に強いのであればそもそも裏切る必要がないわけです。元々役割を得て安定した生活を過ごしている状況を捨ててまで得たい利己益がなければわざわざ自身の安定した生活を放棄する者はほとんど居ません。勿論それが分からない知性の持ち主は居ますがここでは割愛します。後者において周りが既存の集団に新規で入り、その能力で他者を押しのけるだけの自信がありそれだけの能力がなければそのハンデを覆せません。そして、裏切る行為をした実績を持つ者を快く受け入れる者はほとんど居ないでしょう。なぜならその者を受け入れるなら次に裏切られるのは自身かも知れないと思うからです。それらのハンデ全てを覆す能力が求められ、大抵はそれを示す事が出来ずに脱落するのが末路と言えます。

但し、その裏切った者を受け入れた集団そのものの性質が悪質なら能力次第で生き残れる可能性はあります。皆が利己益中心の考え方でつながっているだけなら、他者よりも有益であると思わせる事が出来れば他者の役割を奪い成り代わる事が出来ます。そう成るまでの不利な期間の資金があればですが。しかし可能性はゼロではなく、自身の能力で生き残ってこれたのだと環境が与えてくれていたバックアップを顧みない者達で構成されるのであれば皆が利己益中心に動く為に裏切るなどの行為を軽視する認識を共有しているが為にその様な集団では生き残る可能性が高く、また、その様な集団だからこそ他の集団に裏切りを提案する状態になります。


裏切る者というのは裏切る事で得られるメリットが魅力的な者になり、大抵は社会や集団における下位の者になります。上位になるにつれ社会から得られる利益が大きくなり、社会が正常に機能すればする程に利益が得られるので裏切るメリットが相対的に低くなります。但し、元々下位に居た者が他勢力の支援を得て上位の立場になった場合は事後の話なので別になります。他勢力の味方になり、現状の集団が崩壊しても自身には立場が用意されていると思っているので現状の環境を崩壊させても問題無いと思っており利己益を求める為により多くの選択を行えます。そういった状態になる前であれば、裏切りの提案を受ける者は現状の集団や社会から得られる利益に不満を持ち、他勢力からそれ以上のメリットの提示を受けてその表面的な利益のバランスのみを考える者が適任であり、比較的知性の低い者が選ばれます。知性が高ければその提案が社会基盤になるルールや環境を壊すものであったり、単に使い捨てるために選ばれたのが分かる為に選ばれる事自体が低くなります。なぜならその提案をした事実は取り消せず、状況によっては提案をされたが拒否した側を消し去る事でしか隠蔽出来ないからです。提案して拒否されたのであればその提案がされた事実を広められ対策を練られ、相手が気づかないうちに計画を進める事が出来なくなります。そうなればその方法で利益を得るのが難しいか成果が低減するのでターゲットとして選ぶのは慎重に行われます。


裏切る者を裏切らせる者が属する集団が受け入れる事は少なく、単にそう錯覚させて操るのがセオリーになります。或いは裏切る者の集団を乗っ取り、集団の上下関係を作る事で利益が得られる構造を作り、利益が得られなくなれば関係を解消し裏切った者を使い捨てます。裏切った者が生き残れるかどうかは結局の所その者の能力に依存し、それまでの間に裏切る事で得た利益でどれだけ能力を向上させられるかで決まります。しかし自身の立場が存在する集団は裏切り者が上位に居ればそれだけ他の勢力に利益を奪い取られ先細りとなり、裏切り者が得ている良い立場もそれに合わせて先細りになります。そして自身は裏切る事で付加価値を得てその分の利益を得られるので他より有利になり、他者より長く生き残れますがそれも限界を迎え、裏切らせる側の集団に入る事が出来なければ、自身が裏切る事で作られた劣悪な環境に裏切る事で得ていた支援も無い状態で臨む事になります。ですのでこういった裏切りの提案は『あいつらを裏切って味方になれ。そうすればお前を殺すのは最後にしてやる。』と言われているのと同義になります。


そしてそういった裏切る者や裏切らせる者というのはその性質の悪質さから、裏切り者を利用する対象の集団がどうなっても構わないと思っているので色々な手段を使って搾取出来る様に行動します。いずれその集団がつぶれるのだとしてもそれまでの期間が長ければ長いだけ利益は得られ、果実を最後の一滴まで搾り取る事が出来ればそれだけ利益は大きくなります。ですので、気づかれず、疑われる事なく、長い期間利益を得る為に対象の集団の知性を下げて搾取出来る状態を作り出そうとします。知性を伸ばさずとも生活出来、知的好奇心などは実利の得られるものではなく快感原則を満たす刺激的なものへ誘導して判断能力や判断に必要な知識を得させようとせず、そうして付け込む隙を作り出した集団から搾取し続けようとします。『あいつらを裏切って味方になれ。そうすればお前を殺すのは最後にしてやる。』という事実があるのなら、最後にならない様に搾取される側を量産し続けようとするのです。そう出来ている間は自身が最後を迎える事はなく、かつ良い生活を保障して貰えます。破滅する状況から逃れるために抵抗しようとも抵抗出来るだけの環境を自身で潰しているのです。裏切る状況が続けば続く程に逃れられない状況へとなっていきます。」


エールトヘンは締めくくる。


「裏切る者というのは裏切ったメリットを受けながら今までと同じ様な生活が出来、上手くいけばより良い生活が出来ると錯覚して行動します。しかし裏切る事で失われるものは大抵においてその者が得ている利益以上のものであり、だからこそ裏切る事で利益が得られると言えます。問題なのはこういった手法の対象となる人物というのは対象となる集団の中で下位の者や弱者になり、誰かに与えられた環境に育ち、誰かの決めたルールに従っている為に、デメリットの判断がまともに出来ない事にあります。社会の構成員の最低限の知性がその集団のセキュリティに関係すると言え、最高の知性にばかり目を向けるのは商行為におけるメリットだけを見るのと同じです。社会を運用する為にはデメリットも見る必要があり、知性のデメリットとして知性が低い場合にどういった状況が想定されるかと、知性を育むシステムがメリットばかりに重点を置いていないかを確かめる必要があります。システムの構築を含めて全体の知性の最低基準を上げる為にはまず、それを実施する者達の知性がある程度の高さになっている必要があり、その中でもリーダーは高い知性が求められます。お嬢様は貴族です。どの様な計画も実施する者が計画を俯瞰出来るだけの能力が必要になり、その為の知性と知識を得る必要があります。その為にも、さぁ、頑張りましょう。」


-->知性を伸ばさずとも生活出来、知的好奇心などは実利の得られるものではなく快感原則を満たす刺激的なものへ誘導して判断能力や判断に必要な知識を得させようとせず

<--パンとサーカス


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