明日橙花
暑い日差しが照りつける、外にいるだけで汗が出る。
急いで試合会場の応援席にむかう
空いてる席に座り、一息ついてる煙草を1本吸う。
セミの鳴き声が聞こえる。そして、
「聖女ファイトオー!!!」
エンジンを組んで気合を入れる選手達
応援席からも声援が送られる。
生憎僕はソフトボールのルールを知らない。
でもこれが最後の攻撃で、1点負けていることは分かった。
バッターは石原さん
ピッチャーの1球目、ストライク
石原さんは手を出さなかった。
2球目、ボール
3球目にカーブ
待ってましたとばかりに石原さんは大きくバットを振った
カーンっと大きな音とともにボールはぐんぐん伸びる
壁にあたり、彼女は二塁まで進んだ。
「いいぞー!!続けー!」
ベンチと応援席が盛り上がる。
次のバッターは宮野さん
1球目にボール
しかし宮野さんが振ったためストライク
2球目はストライク
これは見送ってしまいあとが無くなった。
3球目にスライダー
宮原さんはバットを振りボールに当てる。
大きく伸びたがファールの判定
4球目。渾身のストレート
バットには当たらなかった。
三振した宮原さんだったが、僕はそれより次のバッターが気になった。
何故なら次は
「キャプテンファイトおおお!!!」
僕の妻、明日橙花だから。
長い髪が揺れる。遠目でも分かる。凛として美しいから。
バッターボックスに立つ彼女は若干緊張している様だった。
でもそれはすぐに杞憂だと分かった。
ピッチャーの1球目
橙花は足を上げ勢い良く振り切った
カーンっと大きな音を立てた。
ボールは伸びる。しかしラインを超えてしまった。
「ファール!」
充分な牽制になっただろう。ピッチャーに焦りが見えた。
2球目は動揺のボール
3球目はカーブのボール
橙花は良く見ている。
3球目
ピッチャーの焦りなのか、ボールは高いストレート
よく見ていた橙花は反応が遅れた。
そのボールは橙花のヘルメットに当たってしまった。
鈍い音が響く。橙花がゆっくり倒れた
思わず立ち上がる、心臓がうるさい。
すぐに駆けつけたかったがそれは出来ない。様子を見つめる。
監督や選手が心配そうに駆けつける。
相手のピッチャーも座り込んでしまった。
試合が一旦中止されて審判と医師による診察が入る
彼女は目を覚まさない
それから十分もしないうちに救急車が来た。
彼女は担架に乗せられ病院にむかった。
僕も居てもたってもいられず、自分の車で病院に向かう救急車について行った。
心臓がうるさい。もし何かあったら、なんて最悪な想像をしてしまう。