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掌編小説集6 (251話~300話)

遠い時間

作者: 蹴沢缶九郎

八月、その日の役目を終えた陽は、そろそろ山の向こうに消えようとしている。



「みんなー、ご飯よー」


家族を呼ぶ母の声が聞こえる。


母はお皿に家族分のカレーをよそうと食卓に並べ、父はブラウン管テレビに映る野球を観戦しながらビールを飲んでいる。そこへ、お腹を空かせた子供達がやってきた。


家族は揃い、一家団欒、夕飯の時間が始まった。


「あなた、もうご飯なんですから、ビールはそれで最後ですよ」


「ああ、わかったよ」


「ねえ、今日花火しよう、花火」


「わあー賛成。線香花火しよう、ねずみ花火も」


「はいはい、ご飯食べ終わったらね」


「は~い」




廃村となり、人々に忘れ去られた一軒の廃屋での光景。彼らがあの世の者か、幻か、それは誰にもわからない…。ただ、遠い昔にいってしまった温かく優しい時間は、確かにそこに実在した。


一ヶ月後にはダムの底へと沈む村。


夕刻に吹く風が、「チリン」と風鈴の音を静かに鳴らした。

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