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「はっ……!」
目が覚めた。
顔を上げ、辺りを見回してみる。
まだ夜。真っ暗な部屋の中にいた。
「夢か」
息をついた。
額に手を当ててみる。
汗をかいていた。
なぜ、こんな夢を……。
首を振る。理由がわかった。
悔しかったのだ。
七月末。
紫光院高校野球部は西東京大会を勝ち抜き、春夏連続の甲子園出場が決まった。
その翌日、天玄堂も甲子園に出ることが決まった。
部員たちは休憩中にその知らせを聞かされた。
誰も彼もが、驚いていた。声を出すもの、口をつむぐもの、そうだろうなと納得するものなど、反応はいろいろあったが。
神楽は、神代将一の顔を思い出した。そして、あの試合が浮かんできた。
グラウンドに出ている最中は、一瞬たりとも気が抜けなかった。
神代将一が所属する天玄堂高校、そこは恐ろしく強いチームだった。
――また、試合できるのか? また、神代も出てくるのか?
当然出てくるだろう。
そのとき、奴の球を打てるのか?
奴を討ち取れるのか?
真夏日の練習で体中汗だらけ。だが、すぐに汗は引いた。
天玄堂は夏の大会、二連覇を狙ってくるだろう。少なくとも、全国的に有名になり、マスコミやプロからも注目されている。
センバツの優勝メンバーがそのまま残っている、つまり、優勝候補の筆頭だ。
奴……神代将一が地区予選のマウンドに立ち、勝ち抜いたことも知っている。
当然、甲子園のマウンドに立つだろう。
――今度は、負けん!
休憩時間はまだ残っていたが、神楽はじっとしていられなくなった。