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あの時負けた  作者: 迫田啓伸
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2

 九回裏、最後の攻撃。

 神代がマウンドに立つ。

 味方のアルプススタンドからは大音量のブラスバンドに乗せて、激しい応援が流れてきた。

 この回、一番から始まる。

 トップバッターが出塁し、二番バッターの送りバントでワンアウト二塁。

 三番がセンターフライに倒れ、四番がライト前ヒットを打つ。ツーアウト一三塁。

 五番の内野安打でツーアウトフルベース。

 神楽の打順が迫ってきた。

 六番がバッターボックスに向かい、神楽もヘルメットをかぶり、バットを持つ。

 六番の気迫が伝わってくる。せめて同点にしようという気持ちが伝わってくる。

 ピッチャーマウンドに立つ神代の顔にも、疲れの色が見えてきた。六番はツーストライクと追い込まれたが、ファールで粘る。

 何とか塁に出たら、自分に回る。今度は自分が神代の球を打つ。絶対に打つと。そう考えながら、六番の打席を見守った。

 スリーボールになった。

 あと一回ボールになれば押し出しの同点。

 自分に打席が回ってくる。

 が、次の投球は、ど真ん中に来るストレートだった。振らなければアウト。

 六番は打った。

 ボールをバットの真芯で捕らえ、快音とともに打ち返した。

 強烈な打球は、セカンドの真正面に飛んでいった。

 セカンドゴロに討ち取られ、試合終了。

 ゲームセットの声が聞こえた。

 呆然としていたが、他のナインに肩を叩かれ、整列したのを覚えている。

 負けた。

 まけたのか!

 試合が終わったとき、球場から耳を突き破らんばかりの声が聞こえた。


 東東京代表、天玄堂高校野球部は、弱いことで有名だった。

 元々インターナショナルスクールだった。そこから派生してできた学校。

 サッカー部やバスケットボール部、陸上部などが活躍している。

 だが野球部だけは、試合に勝った記録もなく廃部寸前だった。

 ところが、去年の夏の甲子園では初出場初優勝。

 甲子園に出られたのは、まさに奇跡だったと、誰もが言っていた。

 このときから、弱いことで叩かれていた天玄堂高校は、各マスコミに賞賛された。

 過去、勝ったことがないと揶揄されていた姿はそこにはなく、どこからも勝利を讃える報道ばかりされていた

 甲子園の常連校である紫光院とは、全く正反対のチームだった。

 部員も紫光院の五分の一程度。全員がベンチ入りできたぐらいだ。

 この大会、天玄堂は並み居る強豪を打ち倒し、優勝。

 春夏二連覇を達成した。


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