Pre-(Post) Mortem 20X3
とある事務所の中、
机の上に書籍が置かれている。
開かれたページには、以下の文章と説明が記載されていた。
「これは、『塗装剤(内 副反応による錯乱)』から回復した
「明月変 調」が提供した供述の一部である。
彼は、「2076年 『塗装剤散布事件』」の実行犯であり、
自らも大量の『塗装剤』摂取により、精神および、行動に異常をきたしていた。
ただ、一方で、彼は、『塗装剤』の副反応について、
「DD社内」、警察、『静冷院』グループ へ順を追って申告し、
『塗装剤』の副反応に対応する薬品『アルカミレス』の開発および、
『塗装剤』の副反応を受けた状況を共有可能な『VRゴーグル』の開発にも協力していた。
注1) 記録映像 チャプターNo.xx 参考 (精神が不安定な方・『塗装剤』副反応後遺症該当者は閲覧非推奨)」
そのページなどを読み、
『塗装剤』の副反応からの帰還者、日立 千代子 は、
タプレット型PCに年表を記載する。
『塗装剤』の副反応から帰還して数年、
彼女は中学生になっていた。
「映像は見たくないなぁ、だって……」
なんてことを思いながら、
年表の端に記録映像のURLを記載するか迷い、
タッチパネルを触っていた。
そんな彼女のもとに、
もう一人の女性……明月変遼子--
かつて、『アルカミレス』散布の担当班であり、
明月変 調の妹……が歩み寄る。
「無理をして見なくてもいいのよ。
参考教材に映像まで付けるのが悪趣味なのだから。
それに……」
優しく接しつつも、言いよどむ遼子。
「それに?」
千代子はそっと続きをうながすが、
遼子は静かに首を振った。
「ううん、私も見たくはないからねって。
お兄ちゃんの内心……本心 は供述を見たってはかり知れないものだし、
今は、ただ、裁判結果が出るのを待っていたいの。
答えが出る前に、すぐに歴史になってしまう……
それも、やりづらいわ。
それでも、あなたが大人になる前に、
もう少しだけ、前に進めてみせる。」
遼子はそっと、事務所の窓を開けた。
私が作者として、創作世界を進められるのは
この話だな、調さんには少しだけ回復してほしい…… と思いました。
20X3 で濁してはいますが、作品中の時系列では2083年です。
未来ははかりしれないものではあるし、
キャラクターたちの内心もわかりません。
私も考えが変わり、「作品の批評」(その中の時代性の批評) は、
テキストの分析として作者の意図を離れても構いませんが、
それをもって個人への攻撃・誹謗中傷にはなってはならないと思います。
また、この作品(全体)に当事者さんへの攻撃・誹謗中傷をする意図はありません。